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医療 x AI への
参入障壁を乗り越える
主催 : 日本マイクロソフト株式会社
DLLAB Healthcare Day 2021
INDEX
03
05
07
09
11
13
医療 x AI への参入障壁を乗り越える
厚生労働分野における
AI 技術の利活用について
厚生労働省 大臣官房厚生科学課 研究企画官
高江 慎一 氏
臨床応用を志向した医療 AI 研究:
その可能性と課題
国立がん研究センター / 日本メディカル AI 学会
分野長 / 代表理事
浜本 隆二 氏
医学と工学の垣根を越えた医療 AI 開発
名古屋大学 / クアドリティ
クス株式会社
大学院工学研究科物質プロセス工学専攻 准教授
藤原 幸一 氏
ICT を用いた健康なまちづく
りの
取り組みと AI 活用への期待
アカデミア パネルディスカッション
了徳寺大学 / 一般社団法人 IT ヘルスケア学会
教授
山下 和彦 氏
日本マイクロソフト株式会社
医療・製薬営業統括本部 事業開発担当部長
清水 教弘 氏
株式会社 FRONTEO
取締役 社長室長 兼 ライフサイエンス AI 事業本部長
山本 麻理 氏
先端技術がもたらす
よりよいヘルスケアのかたち
19
「ことば」
をAIで解析し、
医療や福祉の現場をサポートする
Cellspect 株式会社 / 株式会社 biomy
AI Lab 部長 / 代表取締役社長
小西 哲平氏
参入障壁を乗り越えるために
AI人材に求められることとは
インテル株式会社
APJ データセンターグループ・セールス
AI テクニカル・ソリューション・スペシャリスト
大内 山浩氏
Intel AI in Healthcare
成功事例に見るAIとの向き合い方
AIの力で適切な医療へのアクセスと
医療従事者の働き方改革に貢献する
21
23
Ubie 株式会社
共同代表取締役 医師
阿部 吉倫氏
企業から見た参入障壁の乗り越え方
ソリューション企業 パネルディスカッション
千葉大学医学部附属病院
亀田 義人 氏
ソリューション企業
アカデミア
28
用語解説
Deep Learning Lab を課題解決の端緒に
医療分野への AI の参入障壁について考える
 Deep Learning Lab
(ディープラーニング・
ラボ)
のヘルスケア部会では、
2019 年に初めて
「AI 推進人材を考える」
をテーマに据えて、
医療×
AI のシンポジウムを開催しました。
このテーマを
選んだのは、
当初私が、
「医療に AI を浸透させる
ためには、
医療機関の意思決定層やその支援人
材のなかに、
AI に関するリテラシーを身につけ
た人材を増やさなければいけない」
という問題意
識を持っていたからです。
シンポジウムでは、
AI
を使った内視鏡によるピロリ胃炎の高精度診断、
AI の手足となって動くRPA
(Robotic Process
Automation)
の紹介、
てんかんの推論といった
演目で、
大変豪華なメンバーに登壇いただき
ま
した。
 非常に反響は大きく、
参加者へのアンケートで
は 98% の方から
「満足」
「やや満足」
という高い
評価を得ることができました。
医療業界の皆さん
も最新技術のキャッチアップに興味を持っていた
という結果も出ています。
さらに、
医療分野への
AI 技術の活用に必要とされる能力としては、
AI
の知識、
医療の知識も重要ですが、
コミュニケー
ション能力やプロジェクトの管理能力、
コンプラ
イアンスや倫理といった要素が必要であるという
回答をいただいています。
医療に AI を浸透させるために必要なこととは
■ AI の知識
■ 医療の知識
■ プログラミング技術
■ プロジェクト管理能力
20.6%
21.3%
7.6%
11.6%
17.7%
10.8%
6.9%
3.6%
3.6%
■ コミュニケーション力
■ コンプライアンスや倫理
■ AI 教育能力
■ その他
医療分野への AI 技術の活用に必要となる能力
千葉大学医学部附属病院
亀田 義人 氏
佐賀大学医学部を卒業後、
千葉大学医学部附属病院循環器内科に
入局。
同大学大学院医学薬学府環境健康科学専攻循環器内科学博
士課程修了後、
厚生労働省へ出向 ( 雇用均等
・
児童家庭局母子保
健課 課長補佐、
医薬食品局血液対策課 課長補佐)
。
現在、
千葉大
学医学部附属病院病院長企画室総合調整員、
病院経営管理学研究
センター特任講師、
千葉大学予防医学センター特任助教。
社会医学
系専門医
・
指導医。
DLLAB Healthcare Day 2021
~ 医療 x AI への参入障壁を乗り越える ~
Deep Learning Lab を
課題解決の端緒に
DLLAB Healthcare Day 2021 03
 第 1 回で好評を受けて、
ディープラーニング
・
ラ
ボのなかにヘルスケア分科会を開設、
2020 年に
は 2 回目のシンポジウムを
「地方包括ケアとAI」
と
いうテーマで開催しました。
第 1 回同様、
豪華なメ
ンバーに、
介護の技術継承に AI を活用する取り組
み、
教師なし学習でも価値の高い情報を提供でき
る仕組みなどについてご講演いただき、
好評を博
しました。
また、
初めての試みとしてハンズオンを
開催し、
たく
さんの方にご参加いただきました。
 前述の通り、
私はこの活動を始めた当初、
医療
業界は保守的で、
得体の知れないものを受け入
れたがらない。だから医療従事者の AI リテラ
シーを高めなければ AI の普及は難しいという問
題意識を持っていました。
しかし、
この 2 年の間
に、
例えば循環器学会では AI に関連するセッ
ションが同日複数枠で開催されたり、
内科学会か
らは AI、
ICT といった異分野との融合が必要では
ないかという提言が出されたり、
日本メディカル
AI 学会の第 2 回学術学会では 1100 名を超える
来場者を記録したりと、
医療業界としてはむしろ
AI について関心が高く、
利活用していきたいとい
う状況にあることがわかってきたのです。
医療業界が AI に向ける熱い視線
依然とし
て課題とされる参入障壁
 しかし、
同時に依然として医療への AI 参入に
は障壁があるという声が聞こえてきました。
そこ
で私は、
守秘義務や患者プライバシー、
医療情
報の解釈の難しさなど、
いくつかの仮説を立てて
みました。
3 年目の活動となるディープラーニン
グ・
ラボのヘルスケア分科会としては、
引き続き
皆さんのご意見を伺いながら、
これらの仮説の検
証や、
実際に障壁を乗り越えた経験談などを情
報共有することで、
医療界への AI 参入の課題を
解決する端緒となるような場を設けていきたいと
思っています。
過去のシンポジウムの様子 2021 年はオンライン開催
(Teams Live)
DLLAB Healthcare Day 2021 04
 AI 戦略は国としても非常に重要な施策であり、
2018 年に立ち上がった
「統合イノベーション戦
略推進のための有識者会議」
を中心に、
さまざま
な検討が進んでいます。
実施初年度である 2019
年度の進捗としては、
8 割強が計画通りに進んで
いると評価されており、
「健康
・
医療
・
介護」
分野
においても、
「データ基盤整備、
医療
・
介護従業者
の負担軽減や人材育成検討に加え、
画像診断支
援領域での実用に向けて大きく進展があった」
と
して、
引き続き社会実装の取り組みを進めていく
ことになっています。
 また厚生労働省では、
「全国どこでも安心して
最先端
・
最適な医療を受けられる」
「医療従事者
の負担が軽減されることで、
より患者の治療等に
専念できる」
「新たな診断方法や治療方法が創出
される」
といった成果を期待して、
保険医療分野
における AI の活用推進に取り組んでいます。
AI
活用推進を阻害するロードブロックの解消につ
いても検討を進めており、
性能変化や可塑性と
いった、
薬機法とマッチングしにくい AI の特性に
配慮した薬事制度の対応や、
AI の学習
・
検証に
不可欠な医療情報の取り扱いに関する対策とい
った、
さまざまな課題と検討の方向性についてご
指摘をいただいているところです。
政府でも重要な施策と位置づけられる AI 戦略
DLLAB Healthcare Day 2021
厚生労働分野における
AI 技術の利活用について
厚生労働省
大臣官房厚生科学課 研究企画官
高江 慎一 氏
厚生省に入省後、
医薬局、
環境庁、
経済開発協力機構勤務な
どを経て、
医政局研究開発振興課 課長補佐、
経済課 課長補
佐、
独立行政法人医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一
部 部長を経て、
2020 年8月から厚生労働省大臣官房厚生科学
課 研究企画官 ( 現職 )。
DLLAB Healthcare Day 2021 05
医療業界で進む AI の社会実装
 いまは第 3 次 AI ブームと言われていますが、
これまでのブームとは全く様相が異なります。
ま
ず、
コンピュータの計算能力が非常に高くなって
いる。
また、
インターネット、
クラウド等の発達に
より、
大量のデータを取り扱う環境が整備されて
いる。
さらには GAFAM に代表されるビッグテッ
クが、
大量の資金と人材を投入している。
この 3
つの要素が相まって、
多くの AI が社会実装され
始めています。
これが今までとは決定的に異なる
特徴だと思います。
 厚生労働省でも、
医工連携や産学連携による
AI 実装研究事業を推進しており、
医療機器分野
では AI を実装した超拡大内視鏡の開発、
ディー
プラーニングを用いた COVID-19 肺炎画像解析
プログラムなど、
承認事例が増えています。
また
医療業界には参入障壁があるというご意見があり
ますが、
たとえばディープラーニングの特性であ
る可塑性とアルゴリズムのブラックボックス化をリ
スクとして見た場合に、
そのリスクの内容を医療
関係者の方に情報提供することで、
製品全体のリ
スク
・
ベネフィ
ットバランスをとっています。
つまり
AI だから特別な障壁があるというわけではない
ということを知っておいてほしいと思います。
 また、
保険医療分野における AI 活用推進懇談
会報告書に基づき、
ゲノム医療、
画像診断支援、
医薬品開発、
診断
・
治療支援、
介護
・
認知症、
手
術支援の重点 6 領域を定めて、
その開発
・
実用
化を促進するとともに、
「保健医療分野 AI 開発加
速コンソーシアム」
を設置し、
AI 開発及び利活用
を加速させるための課題や対応策、
及び本邦に
て取り組むべき事項の方向性についてとりまとめ
ています。
DLLAB Healthcare Day 2021 06
AI の可能性と責任の所在
 私たちが扱うデータは年々ビッグデータ化し、
すでに人間の能力を超えたものになってきていま
す。
そこから効率的に特徴量を抽出して医療に応
用するためにも、
今後 AI は必須になってく
るでし
ょう。
医療分野でも、
すでに 60 以上の AI 搭載
医療機器が米国 FDA から承認を受けており、
日
本でも、
PMDA に承認を受けた AI 搭載医療機
器の実臨床応用が進んでいます。
 ひとつの問題提起として、
ある事例をご紹介し
ます。2018 年に米国で FDA が認可した、医師
不要での診断を可能にした AI 医療装置です。
こ
れまで医師のサポート役だった AI が診断を行い、
医師が必要なくなるということですから、
相当画期
的な装置と言えると思います。
国土が広く専門医
が足りていないアメリカならではの事情もあります
から、
これがすぐに世界の常識になることはないと
は思いますが、
医療 AI の責任の所在や医師の役
割については議論する意義があると思います。
 たとえばアメリカ医師会は
「医療 AI で生じた
問題は、
使用した個人の医師ではなく、
AI の開発
DLLAB Healthcare Day 2021
臨床応用を志向した医療 AI 研究
:
その可能性と課題
国立がん研究センター /
日本メディカル AI 学会
分野長 / 代表理事
浜本 隆二 氏
2000 年、
東京大学医科学研究所リサーチアソシエイトとし
て所
属、
2011 年より同助手。
2006 年、
ケンブリッジ大学腫瘍学部所
属。
2007 年に東京大学に復帰した後、
2012 年からシカゴ大学
医学部に准教授とし
て所属。
2016 年に国立がん研究センター分
野長に就任。
日本メディ
カル AI 学会の代表理事も務める。
DLLAB Healthcare Day 2021 07
医療 AI 開発の成果と課題
 私の所属する国立がん研究センターでは、
25
万枚の画像を用いた教師あり深層学習を行い、
大腸がんの病変を高い精度で発見できる内視鏡
用 AI 診 断 医 療 機 器
「WISE VISION™」
を開 発
し、
昨年医療機器として承認を受けることができ
ました。
「WISE VISION™」
の開発を含めた私の
経験から意見を述べさせていただくと、
医療 AI
開発で大切なのは、
研究のための研究ではなく、
社会実装を念頭に置いた研究を心がけるという
ことです。
自分たちの研究の優位性と、
実装のた
めの課題をよく理解したうえで、
臨床を見据えた
改善を続けることが重要です。
 また、
医療 AI 開発は決して華々しい仕事ばか
りではなく、
先生方が、
診療が終わった深夜や週
末にボランティアでコツコツと恒常化、
標準化、
アノテーションづけといった作業をしてくださって
いるおかげで成り立っている。
日本の医療 AI 開
発は、
そういった先生方のモチベーションに支え
られている部分も大きいということを知っておい
てほしいと思います。
 また私は、
AI だけに依存することは非常に危
険だと考えています。
AI は人間よりも優れた面が
ありますが、
AI になにができてなにができないか
ということを考えて、
どちらかが一方的に依存す
るのではなく、
AI と人間がともに学びながら成長
する。
そんな社会が理想なのではないでし
ょ
うか。
元が責任を負うのが最適である」
と、
あくまでも
医療従事者を守る立場を表明しています。
一方、
日本では現状
「AI を用いた診断支援により診断
する場合には医師が最終的な判断の責任を負う」
ことになっています。
また、
2017 年に RSNA
(北
米放射線学会)
のトップが発した
「大前提として
AI が医療従事者にとって変わることはないが、
放射線科医のなかで AI が使えない放射線科医
は AI が使える放射線科医に淘汰されるだろう」
という言葉は、
大変示唆に富んだ意見だと思いま
す。
今後このような AI にまつわる議論は、
さらに
活発になっていくことでし
ょ
う。
DLLAB Healthcare Day 2021 08
Closed-Loop
てんかんケア
工学系人材から見た医療 AI 開発のポイント
 私は工学系の人間なのですが、
ここ 10 年ほど
は医療 AI、
医療データの解析を行っており、
その
経験から、
医工の垣根を越えた医療 AI 開発につ
いてお話ししたいと思います。
 私たちは現在、
てんかん発作予知 AI のアルゴ
リズムを開発しています。
このプロジェクトでは、
私が AI 開発
・
ソフト担当で熊本大学の山川先生
がハード担当、
医科歯科大学の宮島先生が臨床
担当として開発を行なっています。
より細かい精
度のデータセット構築や臨床での使い方を見越
したデザインなど、臨床応用を目指す医療 AI
開発においては、医学側、工学側がそれぞれの
専門、
得意分野を持ち寄って協働することが重要
なポイントとなります。
DLLAB Healthcare Day 2021
医学と工学の垣根を越えた
医療 AI 開発
名古屋大学 / クアドリティクス株式会社
大学院工学研究科物質プロセス工学専攻
准教授
藤原 幸一 氏
機械学習
・
医用工学
・
てんかん学
・
睡眠医学
・
プロセスシス
テム工学を研究分野とし、
民間企業での研究経験も豊富。
医療 AI 開発ベンチャークアドリティ
クス共同創業者。
人工
知能学会
・
日本てんかん学会
・
日本睡眠学会
・
計測自動制
御学会
・
化学工学会
・
IEEE 所属。
DLLAB Healthcare Day 2021 09
工学側に必要とされる意識とは
 では、
どのように医工連携を進めるべきか。
ま
ず工学側としては、
臨床のフローを理解すること。
どんな検査があって、
どんな治療や意思決定が
行われているのかを理解しておかないと、
開発し
た AI が臨床で使えるものにならないかもしれま
せん。
それから、
臨床現場は普段の診療でいっぱ
いいっぱいですから、
こちらから足を運んで、
協
力関係を築くこと。
いつのまにか検査装置や担当
技師の方が変わっていることもよくあります。
技師さんのアノテーションの違いといった些細な
ことでも、
AI の学習性能に影響を与えてしまいか
ねませんから、
定期的に足を運び、
状況を把握し
ておくことが大切です。
また、
倫理についても知
っておくべきでしょ
う。
法的制約やレギュラトリな
どを理解したうえで、
法的に大丈夫でも倫理的に
許されない行為があると理解しておくことが重要
です。
臨床データの向こうには、
疾患や障がいに
苦しむ患者さんやそのご家族がいるという想像力
を、
工学側も持つべきだと思います。
違いの専門性を尊重し、
理解を深める
 一方で、医学側にお願いしたいこととして、ま
ずクリニカルクエスチョンではなく、リサーチクエ
スチョンを伝えてほしいということ。臨床現場に
結びついているテクニカルクエスチョンではなく、
クリニカルクエスチョンまで落とし込んで、適切
な問題設定ができないと、実際の研究はできま
せん。
 それから MD の先生のなかにはプログラミン
グを学ばれている方もいらっしゃいますが、多く
の場合、工学系のプロフェッショナルには及びま
せん。それよりも、機械学習アルゴリズムがどう
いうものかを理解していただいた方が、工学側
へのアウトプットの要求が適切なものになります。
それから、特徴量を選択・設計する根拠となる生
理学的・病理学的な根拠や仮説をしっかり説明し
ていただくこと。よりよい AI の開発のためには、
解析まで考慮したデータの測定環境整備や判読
粒度の改善が必要ですから、そのような改善をし
ていただけるように、データ解析や AI 学習のメ
リットを現場の皆さんにも共有していただくことが
重要となってきます。まずは解析ができる粒度の
適切なデータを集めるためにお互いが知恵を出し
合い協力することが、
医工連携のスタートだと思っ
ています。
臨床のフローを理解するための現地現物
DLLAB Healthcare Day 2021 10
人口減少社会における、
健康なまちづく
り
 日本の多くの市町村では、高齢化に加えて人
口減少が問題になっています。山形県の某市で
は、この先人口推移が右肩下がりになると予測
されています。若者が減りますから、介護状態
になったときに助けてくれる人がいなくなる。ま
た人口が減るので、医療機関や商業施設なども
減っていきます。そういう状況で、どのように健
康づくりやまちづくりを進めていくのかを考えな
ければいけません。
高齢化が進むと、多くの人が疾病や障がいを持
ちますから、認知症リスクや転倒リスク、医療コ
ストが上がってしまいます。一方、
ソーシャルキャ
ピタルと呼ばれる、地域における社会活動に関
心を持つ高齢者の方はたくさんいます。
「介護予
防」という言葉がありますが、私たちは AI や
ICT を活用しながら、高齢者の身体機能や生活
機能を保ち、ソーシャルキャピタルに参加する
きっかけややりがいを創出するためのソリュー
ションづく
りに取り組んでいます。
DLLAB Healthcare Day 2021
ICT を用いた健康なまちづく
りの
取り組みと AI 活用への期待
了徳寺大学 /
一般社団法人 IT ヘルスケア学会
教授
山下 和彦 氏
東京大学先端科学技術研究センター研究員、
東京医療保健大学
医療保健学部教授、
大阪大学大学院医学系研究科特任教授を
経て現職。
研究テーマは、
高齢者の身体機能計測機器の開発と
リスク指標の構築、
子どもの発達支援のための身体機能計測と
評価指標開発、
RFID による手術器機と手術
(看護)
システム等。
DLLAB Healthcare Day 2021 11
要介護予防につながる歩行機能サポート
 要介護になる主な原因として、関節疾患と転倒
骨折、高齢による衰弱が挙げられます。60 歳以
上の 6 割以上に足部の問題があると言われてい
ますから、足元の健康をどのように維持していく
かが重要になってく
るわけです。そこで私たちは、
市民の方々に呼びかけて、歩行サークルや子ど
もの見守り活動への参加、フットケアや足部の計
測などを通して、社会活動に参加しながら研究に
も協 力して い た だく、
「Waas(Walking as a
service)
」
という活動を行なっています。計測デー
タを分析すると、こうした市民活動を行なってい
る地域では、医療費の削減やうつ病発生率の減
少といった効果があることがわかってきています。
 また高齢者は足部の爪や筋骨格系に問題のあ
る場合が多いので、放置したままだと歩くのも大
変ですし、転倒リスクも高まってしまいます。正し
い爪切りを続けるだけでも歩行機能は改善すると
いうデータもありますし、歩行改善できれば筋肉
もついて転倒リスクを軽減できます。老化だから
とあきらめるのではなく、しっかりケアをすること
が重要です。私たちは、フットケアのサポートに
加えて、スマートフォンで足の周りを撮影して三
次元モデルを構築することで、外反母趾リスクや
変形性膝関節症のリスクがわかる足部 3 次元構
成システムを開発しています。
人と行政とが一体となったシステム構築
 研究を進めるうえでは、データが得ることが目
的ではなく、人がそのデータを活用して、役に立
つ形につなげることが大切です。また、なにか
問題が起きてからではなく、未然に対応できるシ
ステム構築が必要ですから、地域のなかに入っ
て一緒に活動するアクションリサーチも重要で
す。大切なのは、市町村の行政と、市民の皆さ
んと連携しながら進めること。そうすると、自然
とたくさんの方が協力してくれます。まちづく
りに
は、ICT や AI、エビデンス、そしてなにより「人」
が必要だと感じています。
DLLAB Healthcare Day 2021 12
DLLAB Healthcare Day 2021
医療分野への AI の
参入障壁について考える
モデレーター 亀田 義人 氏
浜本 隆二 氏
山下 和彦 氏
高江 慎一 氏
藤原 幸一 氏
パネラー
千葉大学医学部附属病院
国立がん研究センター /日本メディ
カルAI学会 分野長/代表理事
了徳寺大学/一般社団法人 IT ヘルスケア学会
厚生労働省 大臣官房厚生科学課 研究企画官
名古屋大学/クアドリテ
ィ
クス株式会社大学院工学研究科物質プロセス工学専攻准教授
1
2
3
4
5
アカデミア パネルディスカッション
4 5
2 3
1
DLLAB Healthcare Day 2021 13
「理想論ではなく
て、
地に足をつけたプラクティカルな戦略が重要になる」
(浜本氏)
亀田 まず、
医療業界への AI の参入障壁につ
いて、
どんな参入障壁を感じていて、
それをどの
ように解決していくかという点についてコメントを
いただきたいと思います。
浜本先生、
工学系の
人々と医学系の人々がコミュニケーションを取る
うえで課題に感じてきたところや工夫してきたと
ころについてコメントいただければと思います。
浜本 エンドポイントをクリアにすることが重要
だと思います。
かつ、
それが医療側にとっても情
報工学系の方々にとっても Win-Win になるテー
マ設定がないと、
成り立たないと思います。
単に
プロジェクトがいいとか、
環境が整っているだけ
だとなかなかうまくいかない。
成功確率も含め
て、
最初から緻密に計画を立てることが重要だと
思うんですよね。
 モチベーションを最優先にしたいところではあ
るのですが、
いくら双方にモチベーションがあっ
たとしても、
もし達成できないことがあった場
合、だんだん下がってしまう。
ですから、
具体的
に達成可能かどうか、
公的研究費がどれく
らい取
れて、
企業がどれくらい出資してくれて、
その結
果どれく
らいのベネフィ
ットが出るのかといったと
ころを、
最初の段階で緻密に計算しておくことで
持続できるという事実はあると思うんです。
 エンドポイントがはっきりしていれば、
さまざま
なトラブルを克服できます。
企業としても、
いろ
いろと苦労があっても、
最終的に社会実装によっ
て報われるわけですからね。
冷めた意見で申し
訳ないですが、
夢物語であってはいけないと思う
んです。
単に患者さんが大事だからこうしよう、
だけではなかなかうまくいかない。
先生方も、
た
だでさえ診療も忙しいなか、
崇高な理念ばかり
アピールされても難しいところがある。
単に理想
論ではなくて、
地に足をつけたプラクティカルな
戦略が重要になると私は思っています。
「ビジネスになるか、
臨床応用できるかわからないけれど、
とりあえず研究し
てみまし
ょ
う、
ということもある」
(藤原氏)
亀田 やはり目的設定とKPI
(Key Performance
Indicator)
も合わせて最初の段階からしっかりす
り合わせしていくことが大事ということなんです
ね。
これを受けて藤原先生はいかがでし
ょ
うか?
藤原 浜本先生のおっしゃる通りだと思います。
私もベンチャー企業の役員をやっているのでわか
りますが、
最終的に利益につながるのか、
あるい
は承認が取れるのかというところは大事ですよ
ね。
そういう部分は最初に計画を立てておかない
と途中で齟齬が生まれてしまう。
その結果、
誰か
がやる気を無く
してしまうと、
プロジェクト自体が
止まってしまうことになる。
 一方で、
最初期の段階では、
ビジネスになる
か、
臨床応用できるかわからないけれど、
とりあ
えず研究してみましょ
う、
ということもあると思い
ます。
医療側には、
クリニカルクエスチョンという
べきものがあって、
それを解決したいという思い
がある。
一方工学側は、
人によってさまざまでは
DLLAB Healthcare Day 2021 14
「自分たちの活動の “見える化” について、
行政の皆さんはかなり関心を持っています」
(山下氏)
亀田 山下先生は行政との連携という分野が強
みだと思うのですが、
浜本先生がおっしゃってい
た KPI や目的を擦り合わせるという観点で言う
と、
行政とつきあっていて意識するところはあり
ますか?
山下 行政としては、
自分たちのやってきた活動
に、
本当に効果があるのか、
これからどのように
手を打てばいいのかということがほとんどわから
ないんですね。
「ただやっているだけ」
みたいなと
ころがある。
保健師の方がイベント屋さんみたい
になってしまって、
そうなるとどんどん疲弊してし
まいますから、
自分たちの活動の“見える化”につ
いて、
行政の皆さんはかなり関心を持っています。
 医療についても、
ひと手間入れることで便利に
なるという工学的な発想が、
現場で受け入れられ
ないことがよくあるんです。
現場でどういうフロー
があるかというのは医療でも保健でも同じなのだ
と思います。
ですから私は、
最終的になにをエビ
デンスとして出していくのか、
それがどんなふう
に活用できるかというところは意識しながらいつ
も行政と話をしています。
亀田 エビデンスをいかにつくるかというのも重
要ですね。
行政にとってもやっていることの説明
責任を果たすことになります。
藤原先生や浜田
先生のご意見のなかで、
データが鍵だというお
話もあったと思います。
今後エコシステムをつく
る上で、
データをいかに取得して活用するかとい
う観点があって、
すなわち、
ある程度共通化され
たデータのプラットフォームをつくって活用して
いくという方法がひとつあるかと思うのですが、
一方で目的にかなったようなデータを用意しなけ
ればなかなか真の問題解決にはならないという
発想もあるかと思います。
そのあたりについてな
にかご意見があれば。
あると思いますが、
私の場合は人が触ったことが
ないデータに触れるかどうかというところが結構あ
りまして。
データサイエンティ
ストのなかにはそうい
う人も結構いると思うんですよね。
「この先生と一
緒にやると、
結果がでるかどうかは別として、
こん
な面白いデータに触れるんだ、
面白いこと、
新し
いことができるんだ」
ということはあると思います。
 ただそれは最初期の段階であって、
長続きする
ものではないので、
途中から実際にビジネスや臨
床を見据えた設計というステップが入ってくるの
だと思います。
それは大きなお金を動かす段階か
もしれませんし、
企業が絡んでく
る段階かもしれま
せんが、
そういうふたつの段階があるのかな、
と
思っています。
亀田 企業でも研究部門がありますし、
工学系
の大学の部門もあると思いますが、
そういうとこ
ろにアプローチするときに、
はじめは興味から始
まってもいいのではないか、
というところでしょ
う
か。
藤原 大学としては最終的には論文にしないと
いけないとは思いますが、
最初はそれでもいい
と思います。
企業に関しては、
それなりに利益や
事業への貢献について言われますから、
ある程
度
「こういう形で御社事業とのシナジーがありま
す」
といったストーリーを描いてあげないと話が
しにくいかもしれません。
私としては、
最初は大
学と一度話をしてみるのがよいのではないかと
思います。
DLLAB Healthcare Day 2021 15
「データの利活用をきちんとしなければいけないという
議論がちょ
うど始まりつつあるところ」
(高江氏)
浜本 非常に重要かつ難しい問題だと思います。
まずエコシステム的な観点では、
私たちは今
NCC
(国立がん研究センター)
内で、
AI が自動
的にデータを集めるシステムを開発しておりまし
て、
最終的に臨床医が判断するだけという、
かな
り効率的なシステムができています。
そういう意
味ではデータ自体の収集については今後ドラス
ティ
ックに変わっていく面もあると思います。
ただ、
そのなかで気をつけなければいけないこと
は、
ドメインシフトの問題。
施設によってプロトコー
ルも違えば固定方法も染色方法も違うために、
分析結果にかなりの誤差が出てしまいます。
厚生
労働省と AMED のプロジェクトでも問題提起が
なされていて、
これは慎重に判断すべき問題だと
思います。
 私としては、
「標準化とはなんであるか」
という
原点に立ち戻って、
まずは世界最大規模の癌に
関する情報があるというアドバンテージを持って
いる NCC 内できちっとしたプラットフォームをつ
くる。
そのうえで、
できることとできないことを冷
静に判断しなければいけない。
単純な問題では
ないという認識です。
藤原 私は 2 種類のデータがあると思っていて、
ひとつは共通基盤となるようなデータセット。
もう
ひとつはそれぞれの疾患に集中的に集められた
データ。
画像であれば、
共通のデータセットの場
合は健常者のいろいろな部位の画像が、
特定の
疾患に関しては、
その疾患の患者さんの病変を
集めたものが出てくると思います。
このふたつが
ないと絶対にダメで、
特定の疾患のものだけ集
めても、
健常者側のデータがないと識別モデル
はできませんし、
逆も成り立ちません。
 ですから、
難しいと思うのは、
病院の場合は主
に患者さんのデータは取れるのですが、
健常者
のデータは取れない。
そこをどうやって集めるか
は行政との絡みになると思うのですが、
そういう
ことができるプラットフォームや基盤を整備して
いただかないと進まないのかな、
と思います。
 それから、
40 歳をすぎると、
誰しもなにかしら
の持病があるわけです。
そういう方たちにとって
の健常がどういうことなのかは、
わからない。
画
像なら病変がないということでいいと思うのです
が、
たとえば我々が扱っている脳波や心電図の
データにはだいたいなにか混ざってくるので、
表
は健常に見えていても、
データを見たら不整脈が
あったみたいなことがよくある。
そういったところ
の定義自体も考えないと、
いいデータセットはで
きないのかな、
と思います。
亀田 高江さん、
いかにエコシステムをつく
って
いくかという部分で、
行政としてなにか支援など
考えているところはあるのでし
ょ
うか?
高江 行政としての支援、
個別の研究費でいろ
いろとやってきていますが、
全体のデータの利活
用をきちんとしなければいけないという議論がち
ょ
うど始まりつつあるところです。
内閣官房の健
康医療戦略室を事務局として、
データ利活用に
関する協議会が立ち上がっています。
そこでは、
まずは AMED で取得された各種さまざまなデー
タを、
民間も含めて利活用するプラットフォーム
をつく
るといった検討をしています。
 これまで、
研究者の方にとっては、
自分が取っ
てきたデータが全てでしたが、
現在、
AMED や
国が使った研究費で集めてきたデータを、
民間も
含めてきちんとアクセスできる環境づくりをして
いくための議論が始まっています。
DLLAB Healthcare Day 2021 16
「医行為かどうかは、厚労省から出ている指針では
すべて網羅されていないので、
最終的には現場判断になってしまう」
(藤原氏)
亀田 話題を変えて、
レギュレーションの複雑さ
などについて、
課題と感じるところやこうやって
乗り越えたという経験があれば、
ご発言ください。
藤原 レギュレーションという意味では、
一番大
きいのが臨床研究法ですよね。
書き方もあいまい
で、
なにが本当に規制されているのかよくわから
ない。
最終的に医行為であるところが大きく効い
てくるのだと思うのですが、
では私たちがやって
いるような、
体の表面の電位を測る電極を貼ると
いう行為は医行為なのか。
侵襲ではないけれど、
もしかしたら皮膚に痕を残すかもしれないと考え
ると、
これは微妙なラインなんです。
医行為かど
うかは、
厚労省から出ている指針ではすべて網羅
されていないので、
最終的には現場判断になって
しまう。
今のところは、
倫理に詳しい方にお聞きし
て判断してもらっているのですが、
その手間をな
んとか減らしたいとは思っていますし、
ダメという
判断の場合は諦めざるを得ないのが現状です。
そこで止まっていたら研究が進まなくなってしまう
ので。
亀田 レギュレーションに関して、
どこにアクセス
すればいいのかは大事だと思うのですが、
高江
さんからアドバイスなどはありますか?
高江 藤原先生からご指摘のあった臨床研究法
に関して言いますと、
たく
さん事例があるため、
なかなかきちんとした形ですべてを示せないんで
すね。
逆にあまりガチガチに明確化してしまうと、
今度はポジティブリスト化してしまって、
倫理審査
委員会がそれ以外のものは全部認めないとなっ
てしまう懸念もあります。
私たちとしても匙加減が
難しいと思っています。
ただ、
臨床研究法に関し
てはさまざまな批判をいただいておりまして、
見
直しのための審議会を開催したところです。
議論
や意見募集などもあると思いますので、
そちらに
ご意見をいただければと思います。
 現場で動かしていくときには、
最終的には倫理
審査委員会が個別で判断する建て付けになって
いますので、
あまりにおかしなもの以外は、
研究
者のコミュニティのなかで相談や乗り切り方を考
えていただくのがよいかもしれません。
スタンフ
ォード大学の池野先生が、
医工連携や医療機器
開発は、
“Know How”ではなくて“Know Who”
だとよくおっしゃっていますが、
まさにそういった
ネットワークで、
誰に聞けばいいのかを判断して
いただければと。
 経産省や厚労省も含めて、
クラスターごとに医
療機器開発をやっている方のコミュニティがたく
さんあるでしょ
うし、
相談を受けるポータルサイト
などもあります。
そのなかで一番使いやすいとこ
ろを使っていただくのがよいかと思います。
「一方的に批判するのではなく、
自分たちも一緒につく
りあげていく体制が必要」
(浜本氏)
亀田 浜本先生と山下先生、
今のお話も含めて、
学会でそういうリソースや今後の推進について考
えていることがあればお聞かせください。
浜本 先ほどからさまざまなレギュレーションの
議論がありますが、
法律をつくる弁護士の先生と
お話しをしていても、
現場側があまり発信しない
DLLAB Healthcare Day 2021 17
「声を上げなければいけないし、
いかにその声を
拾い上げて発信しながら進めるかが重要」
(亀田氏)
亀田 個人情報保護という観点では、
今まさに市
町村の個人情報保護条例と独立行政法人と民間
の企業を一緒にしようという動きが起きていると
聞いています。
行政としてもしっかり働きかけをし
てくれているんだなということは私も感じていた
ところです。
行政側の思いもぜひ聞いておきた
いのですが、
高江さんからなにかコメントをいた
だけますか。
高江 行政側としては、
「研究者の皆さまには、
いろいろと役に立つ研究に邁進していただき、
あ
りがとうございます」
というのが正式なコメントで
す。
個人的なコメントとしては、
医工連携の難し
さというのは、
30 年、
40 年前、
それこそ人工心
臓の開発をしていた頃からの課題で、
医学系、
工
学系、
それぞれ皆さんが考えていることも使って
いる言語も違うなかで、
オープンなところで話し
てもなかなか言葉が通じない。
そんな経験を経
て、
近年皆さまがいろいろなところで連携の場を
作り出してくださっている。
そういった場所で
Seeds と Needs がきちんとマッチングできて、
かつそれを実用化するための施策をパッケージ
化した形で私たちから示していくのがよいのかな、
と思っています。
ただ、
医療機器やソフトウェア系の場合、
医薬品
と違って個別の背景が多種多様です。
行政として
も違う角度でアプローチしなければいけないと思っ
ています。
あとはスピード感ですね。
特にこの分
野の場合は承認申請してから数ヶ月で過去のモ
デルになってしまうこともあるという話を聞いて
いますので、
そういった点もどうにかしていかな
ければいけない。
これが個人的な意見です。
亀田 皆さんのご意見を聞いていて、
やはりコ
ミュニケーションが非常に重要なのだなと感じま
した。
浜本先生がおっしゃったとおり声を上げな
ければいけないし、
いかにその声を拾い上げて
発信しながら進めるかが重要だと思います。
 難しい問題ですから、
今日 1 日で解決できるわ
けではありませんが、
やはり、
ひとつは取り組む
姿勢。
そして医工間、
また行政との、
共通の目的
設定やコミュニケーションの大事さ。
また、
学会
のようなプラットフォームをしっかり使っていくこ
と。
これらのさまざまな示唆を得られたディスカッ
ションだったと思います。
皆さま、
ありがとうござ
いました。
というのがひとつ大きな問題点なのかな、
と感じ
ています。
省庁の方々も法律の専門家の方々も
忙しいですから、
受け身になっていてはダメだと
いうことではないでし
ょ
うか。
 私の教室からも厚労省に出向してそういう作業
をしている方もいますし、
学会主導でガイドライン
をつく
って、
それをもって省庁の方々ともお話しを
しています。
実務も臨床も忙しいですが、
それを
言い訳にせずこちらから積極的に働きかけてい
く。
一方的に批判するのではなく、
自分たちも一
緒につく
りあげていく体制が必要なのではないか
と思います。
山下 私たちが行政と組むうえでは、
大学の倫
理審査もそうですし、
行政の個人情報審議会など
を通すのがひとつの大事なフローになります。
倫
理審査はどうすればいいのか、
実験系はどうやっ
て組めばいいのか悩まれる中小企業も多いです
よね。
IT ヘルスケア学会でも相談に乗りますし、
日本生活支援工学会で倫理審査を行っています
から、
申請書の指導から倫理審査まで、
学会をひ
とつの受け皿にしていただければと思います。
DLLAB Healthcare Day 2021 18
先端技術がもたらすよりよいヘルスケアのかたち
昨今の技術革新に伴い、
臨床現場でも深層学習技術をはじめとする AI 技術やロボティ
クス、
センサ
ーといった IoT 技術、
HoloLens 等の Mixed Reality 技術への期待が高まっています。
その状況下
において Microsoft では、
国が掲げる医療サービスの生産性向上や、
先端技術の積極活用、
保険医
療データの整備
・
流通といった注力分野にアラインしながら取組を進めています。
特にこれからますま
す社会問題となってくる超高齢化社会が生み出す課題に取り組んでいます。
また、
高齢者の暮らし、
要介護者の暮らし、
そしてその方々に関わる医療従事者や介護事業者の皆さまの働き方改革を含め
て、
多くのことを実現できるよう、
データを軸に患者さまや医療従事者にフィードバックしていくための
取り組みを進めています。
たとえば物体認識の分野では、
実は動画、
静止画ともに、
限られたデータ
セットにおいては、
画面のなかにあるものを AI が人間の目と同等レベルで識別
・
認識する技術は大き
く進歩しています。
こうした技術を医療に応用することで、
経験を積んだ医療者の暗黙知を見える化し
て、
研修医の教育や事前のシミュレーションによる予測などを実現することで、
最終的には医療サービ
スの質の向上に寄与できると考えています。
また、
世界規模でのセキュリティ対策や、
学習済みの汎
用的な AI 技術を提供することで、
パートナー企業さまは、
より医療に特化したソリューション開発に専
念することができます。
また医療者にと
っては、
高い医療サービスを提供するためのデータの見える化
やシミュレーションが実現することで、
患者さまと向き合う時間を増やしていただく
といった、
働き方改
革への貢献も可能と考えています。
ソリューション企業
人の一生に寄り添う Microsoft の取り組み
日本マイクロソフト株式会社
清水 教弘 氏
人の一生に寄り添うMicrosoft の取り組み
医療・製薬営業統括本部 事業開発担当部長
DLLAB Healthcare Day 2021 19
Microsoft では、
Microsoft Research という、
約 8000 名のリサーチャー、
エンジニアが所属する、
世界最大規模のリサーチ部門を保有しています。
その活動にはヘルスケアに関する取り組みも多く含
まれており、
InnerEye と呼ばれる医療画像識別のプロジェクトや、
Empower MD と呼ばれる医師
の言語に関する自然言語処理のプロジェクトなど、
今後臨床の現場で必要とされる技術要素の開発
が進んでいます。
また米国では、
医療画像の識別プロジェクトで開発した AI を用いて、
糖尿病網膜
症の診断に関する医療機器として販売を行っている事例もあります。
一方、
AI 開発にはまだたくさん
の課題があります。
たとえば学習データの偏りによる AI の品質の偏りや、
透明性の確保の問題が挙
げられます。
Microsoft では、
よりよい世界を実現するために、
AI 開発に関する倫理基準を設けて、
信頼できる AI の開発に取り組んでいます。
もちろん医療業界には、
Microsoft だけではなく、
Google や AWS といった競合企業も参入しています。
AI の大きなムーブメントを起こしていくため
にも、
視野を広げて手を取り合い、
ともにモメンタムをつく
っていきたいと考えています。
そして、
ひと
りでも多くの患者さまが、
よりよい医療サービスを受けられ、
予防や介護領域で QOL を向上できる社
会を実現するために、
医療機関さまならびにヘルスケアサービスを展開される多くのパートナー企
業さまを、
引き続き多方面にわたってご支援してまいります。
多くのパートナー企業と、
大きなムーブメントを起こす
DLLAB Healthcare Day 2021 20
「ことば」
を AI で解析し、
医療や福祉の現場をサポートする
FRONTEO のライフサイエンス AI 事業は、
「KIBIT」
と
「Concept Encoder」
という 2 つの AI を
軸に、医療の向上やライフサイエンス分野の技術革新に貢献することを目的としています。いま承
認を受けている AI 医療機器は画像に関するものが多いと思いますが、当社の AI 医療機器は
「言
語解析」
がテーマです。言語解析というと、辞書やシソーラスが必要になると考える方も多いと思
いますが、当社の AI エンジンはそのような作業は不要です。導入したその日からすぐに解析可能
なのが大きな特徴となります。当社では現在、虐待予兆検知 AI の実証実験や会話型認知症診断
支援 AI の開発を行なっています。現場での検証を経て、
ベテランの知見がないために虐待の予兆
を見逃してしまったり、専門医にかかれなかったことで認知症の診断が遅れたりといった事態を防
ぐ効果が実証されつつある状況です。当社の強みである言語解析を武器に、専門家の皆さまを支
援できる国産 AI を少しでも多くお届けできればと考えています。
株式会社 FRONTEO
取締役 社長室長 兼 ライフサイエンス AI 事業本部長
山本 麻理 氏
参入障壁を乗り越えるために
AI 人材に求められることとは
試薬の開発やデータ分析を行なっている Cellspect 株式会社では、
AI 画像処理により、細胞診の判
断支援を行うシステムを開発し、判定結果の提示と判定根拠となる箇所を可視化することで、検査士
の作業量を削減することを目指しています。
また、AI を用いた創薬支援事業を行なっている株式会社
biomy では、
コンパニオン診断において、
AI による多面的な解析を行うことで、
より正確な投薬基準
をつくれるのではないか、
という研究を行っています。現在、従来のビジネスニーズに対して、AI がで
きることが増えてきており、AI のトレンドが
「すごい
!」
から
「どう使うか?」
に移ってきていると私たち
は考えています。今後のポイントは、AI ができることとビジネスニーズの重なる領域をいかに見つけ
出すか。
つまり、
AI 人材にとっては、AI に関する知識やノウハウだけではなく、
ビジネスニーズの理
解が求められます。医療業界のカルチャーや働き方を理解し、医療を一次情報として理解できる人材
になろうとすること。
その意識が、参入障壁を乗り越えるカギになるのではないでしょ
うか。
Cellspect 株式会社 / 株式会社 biomy
AI Lab 部長 / 代表取締役社長
小西 哲平 氏
DLLAB Healthcare Day 2021 21
Intel AI in Healthcare
成功事例に見る AI との向き合い方
当社は近年、
CPU を始めとするハードウェア製品、および、
ソフトウェア製品の強化のみならず、お客
さまの AI 導入やそれを用いたビジネス課題の解決支援など、
AI を戦略の中心に置いて事業活動を展
開しています。
AI を効果的に活用できているお客さまに共通しているのが、
最初から明確な課題を定
義している点と、
高い AI リテラシーを発揮されている点、
そして最終的に AI による効率化を実現でき
ている点です。
今後我々が AIと上手につき合っていくためには、
この
「課題ファースト」
「AIリテラシー」
「効率化」
というキーワードがポイントになるのではないでしょ
うか。
AI はひとつの課題解決ツールと認
識して、
自分たちはなにに困っていて、
どんな手段が必要で、
どんな解決方法を導けるのかを明瞭に
することが大切だと思います。
AI という技術は高効率化のための格好のトリガーとなり得ます。
国境や
業界の垣根を超えたコラボレーションによる
「未来の DX」
を見据える当社では、
課題のヒアリングから
実装支援、
導入支援までを総合的に支援しておりますので、
どうぞ気軽にご相談ください。
インテル株式会社
APJ データセンターグループ
・
セールス
AI テクニカル
・
ソリューション
・
スペシャリスト
大内山 浩 氏
AI の力で適切な医療へのアクセスと
医療従事者の働き方改革に貢献する
現在、
医療従事者の働き方改革は喫緊の課題となっており、
医療の
I
T化も求められています。
また、
新型
コロナウイルス感染症
(COVID-19)
の流行に伴い、
受診動線の確保や診療時間の短縮といった課題も生
じています。
当社が開発した
「AI 問診ユビー」
は、
自宅等での事前問診により、
症状チェ
ックや適切な医療
機関等の案内、
そして医療機関における症状に応じた振り分けや記録文章の自動生成等を行うことができ
ます。
ユビーの導入によって、
患者さまは適切な医療を適切なタイ
ミングで受けられ、
医療関係者は感染症
リスクの低減と同時に業務を効率化できます。
外来の問診時間を三分の一に短縮できたというデータを得
ることもできました。
ニューノーマル時代における感染症対策や業務効率化に貢献できるシステムとして、
現在、
全国で 300 超の医療機関に導入されています。
医療の形は地域によってもさまざまです。
当社は、
各地域における患者さまの適切な医療への誘導、
かかりつけの先生方のプライマリケア支援、
そして医療
機関間の情報の連携といった分野でも、
技術の力で下支えしてまいります。
Ubie 株式会社
共同代表取締役 医師
阿部 吉倫 氏
DLLAB Healthcare Day 2021 22
企業から見た
参入障壁の乗り越え方
ソリューション企業 パネルディスカッション
DLLAB Healthcare Day 2021
モデレーター 亀田 義人 氏
阿部 吉倫 氏
山本 麻理 氏
清水 教弘 氏
大内山 浩 氏
清水 由香 氏
小西 哲平 氏
パネラー
千葉大学医学部附属病院
Ubie株式会社
株式会社FRONTEO
日本マイクロソフト株式会社
インテル株式会社
インテル株式会社
Cellspect株式会社/株式会社biomy
1
2
3
4
5
6
7
1
2
5
3
6
4
7
DLLAB Healthcare Day 2021 23
ドメイン知識とチームづく
りの重要性
亀田 それでは始めたいと思います。
企業の立
場で見ると、
医療業界は参入のハードルが高い
という意見が多いのですが、
皆さんそれぞれの
立場で、
どのように感じていらっしゃるかを教えて
いただけますか?マイクロソフトの清水さん、
い
かがでし
ょ
う。
清水
(MS)
 私たちとしては、
多くのパートナー
企業の皆さまが、
AI を安心
・
安全に実装していた
だくためのクラウドプラットフォームという開発の
土台となる部分をご用意して、
医療に特化した部
分はパートナー企業の皆さまに色づけしていただ
くスタンスをとっています。
ですから、
臨床の現
場で活躍されている医療者の皆さまへの情報提
供やトレーニング、
パートナー企業さまとのエコ
システムの構築などを通して、
医療機関さまのデ
ジタルトランスフォーメーションの下支えになるよ
うな事業を進めていくことが私たちの責務だと
思っています。
亀田 他の皆さんはいかがでし
ょ
う。
医療に参入
された際に感じた障壁やそれを乗り越えたご経
験についてお聞かせいただけますか?
山本 当社では、
医療分野で実業に耐えられる
かどうかがテーマだと考えていました。
その障壁
を乗り越えるための解決策は
「組織」
だと判断し、
開発担当チームをメディカル系出身者中心に変
更したことが、
事業を加速できた要因になったと
思っています。
エキスパートを揃えることで、
知見
が蓄えられたわけです。
 それに加えて、
医療機器の承認プロセスにお
ける当局対応、
コミュニケーションの部分ですね。
国としても AI 医療機器に関する経験が少なく、
手探りで進む状況だったのですが、
幸いデジタ
ルの普及促進という流れの後押しもあり、
私たち
が思っていたよりレスポンスが早くて、
プロセス
をスムーズに進めていただくことができました。
小西 私たちもドメインの知識が重要だと思って
いまして、
医療や製薬の専門家を内部に入れて
いますし、私自身も知見を吸収していければと
考えています。
IT 畑の人間からすると、
時間軸の
ハードルの高さは感じますね。
IT の場合、
1~2
年かけてサービスをローンチするのが普通だと思
いますが、
臨床の現場で使おうとすると、
5 年以
上は覚悟しなければいけない。
特にスタートアッ
プがそこに挑もうとするには、
いろいろと戦略を
立てていかなければいけないところはあると思い
ます。
実用化のための UX デザインとアジャイル開発
亀田 自社の体力や人材を含めて考えなければ
いけないということですね。
インテルの清水さん、
いかがですか?
清水
(インテル)
 当社はグローバル企業という
ご評価をいただいているからか、
医療のソリュー
ションを持つ医療機器メーカーさまやベンダーさ
まから、
日本市場に参入したいというご相談を受
けることは多いです。
その流れのなかで、
他国と
比べて、
医療機関の先生方のなかにコンサバティ
ブな方が多い印象はありますね。
ですから、
長期
DLLAB Healthcare Day 2021 24
開発サイクルを回すための戦略
的な視野を持って、
ステップを踏みながら参入す
ることが大事なのかな、
と思います。
亀田 阿部先生はドメイン知識の塊だと思うので
すが、
逆にテクノロジー側の協力を得るにあたっ
て感じた障壁や、
どのようにチームづくりをした
かなど、
コメントをいただけますか?
阿部 当社はもともと私と共同創業者のエンジニ
ア、
彼の先輩や知り合いとでチーミングしたので、
実装に関してはとてもスムーズでした。
ただ、
当
社が扱っているのは業務支援サービスですから、
医師だけでなく看護師、
事務員の方々も使うツー
ルとして、
そこに多数存在する変数をどのように
デザインに落とし込むかといった点に課題を抱え
ていました。
そこで 1 年目は足踏みしてしまった
のですが、
チームにユーザー体験の UX デザイ
ナーを入れたところ、
課題を解決することができ
たんです。
ですから、
今後医療業界にサービスを
展開していくのであれば、
デザインは外せない要
素だと思います。
亀田 チームのなかに、
コンサルタント的な視点
を入れるのは課題解決のひとつの方法かもしれ
ませんね。
阿部 はい。
ユーザーのフィードバックをいただ
かなくては現場にフィ
ットするものにはならない
ので、
コンサル業界出身の方は親和性が高いと
思います。
当社で活躍している UX デザイナーや
ビジネスデベロップメントも、
コンサル業界出身
のメンバーが多いですね。
亀田 なるほど。
やはり調整型の人材が入ってい
かないといけないということですね。
AI を役立て
るためには目的設定が大事という意見も多いの
ですが、
いかがですか?
大内山 当社の、
東京デザインテクノロジーセン
ター専門学校さまの事例が参考になるかもしれま
せん。
もともとドメインの知識やスキルがそれほ
ど高くなかった方々が、
具体的な期間と成果物の
イメージをチーム内で共有しながら進めることで、
たった 2 週間で一定の水準を満たすシステムを
つく
りあげることができたという事例です。
 このプロジェクトが成功した要因は
「できあが
るものの品質にこだわらず、
とにかく実際に動か
せるものをつくろう」
という意識の共有だったと思
います。
ひとつやり遂げることで開発者の自信に
もつながりますし、
成果物を利用したフィードバッ
クを得ることで、
次によりよいものをつく
り出すた
めの糧になるわけです。
このような
「アジャイル
開発」
は、
重要なキーワードになってく
るのではな
いでし
ょ
うか。
亀田 いまアジャイルというワードが出ましたが、
開発したサービスをどれく
らいの段階でリリース
するのかをお聞きしたいと思います。
というのも、
アカデミアベースで考えると、
研究費をシーズに
してサービスをつくり上げて、
それを回してある
程度収益を挙げ、
再投資して品質を高めていく。
そういった拡大再生産のサイクルが非常に重要
だと思うんです。
阿部 当社の開発した問診 AI は、
最初は問診
を箇条書きのテキストにする程度の機能でローン
チしました。
その段階で、
カルテの記入に時間が
かかるという課題ははっきりしていたのですが、
私たちのエンジニアリングでその課題を解決でき
るか、
まだわからない状態でした。
ですから、
ま
ずはミニマムの機能要件でクリニックの先生方に
使っていただき、
その段階では課金制にしません
DLLAB Healthcare Day 2021 25
協業やリクルーティングでより強いチームをつくる
亀田 マイクロソフトさんやインテルさんは AI の
プラットフォームを持っているわけですが、
そうし
た既存のツールを使って事業化している事例は
あるのでし
ょ
うか?
清水
(MS)
 実態としては、
既存の技術要素を
組み合わせるだけですぐに事業化するのは難し
いと思います。
技術として実現できる領域がある
一方、
医療の世界では、
国内でのガイドラインや
制度の面にどう準拠していくのかといったことに
関しても、
多くの議論が必要と考えています。
た
とえば、
AI を実装したソリューションをパートナ
ー企業さまと開発したとしても、
当然、
臨床の現
場に導入するためには、
医療機器としての認証
を取るプロセスが必要です。
もちろん、
技術的に
でした。
いわゆるモニターのような形ですね。
 その後、
使っていただいた先生方やスタッフの
方々のフィードバックから、
医師の業務効率化を追
求するなら同時に受付の業務効率化も必要なこと
がわかり、
そこから患者さまの入力しやすさの重
要性が見えてきたことで、
その方向にシステムを
ブラッシュアップすることができました。
そこでは
じめて、
料金をいただく
フローに切り替えました。
亀田 貴重なお話ありがとうございます。
一方、
FRONTEO さんや Cellspect さんでは、
はじめ
に技術力を高めてからサービスをリリースしてい
る印象があるのですが、
実際はどうなのですか?
山本 FRONTEO にはリーガルテック、
ビジネス
インテリジェンス、
そしてライフサイエンスという事
業の 3 本柱があり、
事業化まで最も時間がかかっ
たのは、
やはりライフサイエンスでした。
先ほども
小西さんのお話にありましたが、
研究開発期間が
他の事業と比べて長いことが大きな理由です。
当
社では 3 つめのセグメンテーションで、
会社とし
ての体力が比較的あったからこそ投資できた部分
は大きいと思っていて、
もしスタートアップだった
ら厳しかったかもしれません。
 一方で、
世の中の流れとして、
製薬メーカーが
使っている大手の AI の切り替えタイミングがここ
1 年に集中したことで、
創薬研究分野が伸びてい
ます。
このよ
うに、
ひとつのき
っかけがあると、
事業
としても一気に進むという感覚があります。
先ほど
阿部さんもおっしゃっていましたが、
当社でもここ
数ヶ月の間に、
UI や UX を工夫することで、
ソフト
ウェアやアプリケーションの使い勝手が向上する
ことを実感しており、
これは商品自体を育てる意識
が根づいたという意味では、
とてもよいビジネスの
き
っかけになったのではないかと感じています。
小西 Cellspect では子宮頸がん細胞診 AI を
開発しているのですが、
これをサービスにするう
えで苦労したのは、
やはり法規制ですね。
今は、
いきなり日本でローンチするのではなく、
まず東
南アジア市場に参入して、
現地で日系の病院を
建てるときに一緒に日本でも導入していただくと
いったスタンスをとっています。
病理画像の解析
などは AI 開発に比較的時間もかかりますから、
短期的な体力をつけるために受託も併用するな
ど、
研究開発に対して投資できる体制をつく
って
いくことも大事だと思います。
亀田 皆さんの話を聞いていると、
Ubieさんのよ
うにスタートアップ系でニーズをすでに把握してい
て、
それを解決したうえで質を高めていく
という方
法と、
FRONTEOさんや Cellspectさんのように、
チームを新たにつく
ったり海外から展開したりして
ハードルを乗り越える方法があるよ
うですね。
DLLAB Healthcare Day 2021 26
実現できても、
製品化できるかどうかとは別の軸
で考えるべきだと思いますし、
当社としては、
パー
トナー企業さまへの細やかな情報提供や、
ときに
は米国本社のエンジニアや法務部門のリソース
を活用して、
パートナー企業さまの製品化につい
てのご支援を実施していく
ことで、
お客さまのニー
ズに対応していきたいと思っています。
清水
(インテル)
 当社はもともと PC やサーバー
の CPU をつくっていう会社ですので、
当社だけ
で医療機器の開発はできず、
パートナーさまとの
協業が基本になります。
アメリカでは、
画像診断
装置やソフトウェア系のツールを用いて FDA を
通過している事例もありますし、
医療機関の皆さ
まからデータをいただいて、
患者さまの予後予測
や医療従事者の効果的な配置などをサポートす
る活動も行っています。
こうした事例を日本の企
業や政府の皆さまにご紹介して、
協業という形で
お手伝いできればと考えています。
亀田 先ほどドメイン知識を持っている人を集め
てチーミングするのが大事という話がありました
が、
リクルートについてコメントいただける方は
いらっしゃいますか?
山本 当社では、
ここ 1 年でかなり組織を強化し
たのですが、
ホームページ上でチームメンバーの
経歴やコメントを公開したんです。
すると、
一定
のファーマメディカル出身者が揃っていたことも
あって、
「この人がいるなら入社したい」
と、
リファ
ラルに近い応募が増えました。
阿部 当社でもメンバー自身が積極的に経歴公
開や発言をするようにしています。
今日の私のよ
うにイベントに参加して話す機会を多く設けること
で、
興味を持ったメンバーが集まってくれる。
実際
に、
当社ではリファラル採用が 75% を占めてい
ます。
亀田 なるほど。
小西さん、
ご自身で医学系の博
士号まで取得したということでしたが、
自身で医
療系のコミュニティに飛び込むことは、
やはり新
しいチャンネルを開くのに役立ちましたか?
小西 そうですね。
医療業界で知り合った先生方
に協力していただくといった仲間づくりには日々
取り組んでいます。
そこから新しいアイディ
アも出
てきますし、
医療業界には AI に興味のある方も
たくさんいますから、
連携も生まれます。
あとは、
学会で発表を聞いて興味をもってくれた方にリ
ファラルのような形で協力してもらうケースも多
いですね。
亀田 確かに、
こうした対談や学会の機会を利用
するのはとてもいい取り組みですね。
インフラや
プラットフォームを提供しているマイクロソフトさ
んでは、
パートナー企業同士を引き合わせるよう
なこともやっているのですか?
清水
(MS)
 はい。
実際にパートナー企業同士の
マッチングや、
AI 研究を進めていらっしゃる医療
機関や大学との連携も行っています。
また、
医療
ではないですが、
健康という文脈で、
医療機関と
リテール企業の連携を行うことで
「生活動線のな
かでいかに健康に貢献できるか」
といった、
医療
業界ならではの裾野の広さを視野に入れた活動
のお手伝いもしています。
清水
(インテル)
 当社でも、
ハードウェアメーカー
とソフトウェアメーカーのマッチングをはじめ、
そ
れぞれ得意なパーツを持っているベンダーさまの
技術や製品を医療機関側のアイディアと融合させ
て、
3 社、
4 社でソリューションを一緒につく
り上
げて世の中に出していく活動をしています。
今日
集まった皆さまとも、
ぜひムーブメントを起こせれ
ばと思っています。
亀田 まさに私も、
自分で解決できないものがあっ
ても、
チームをつく
ったりドメイン知識を持つ人た
ちとつながったりすることで、
課題を解決できたと
いう経験が多々あります。
ここにお集まりの皆さま
やその周辺の皆さまが、
これをきっかけに一緒に
チームづくりをしていただけたら、
面白いことに
なるのではないかと思います。
今日は大変実りの
多いパネルディスカッションになりました。
皆さ
ま、
ありがと
うございました。
DLLAB Healthcare Day 2021 27
Deep Learning Lab
リテール、
ヘルスケアといったさまざまなインダスト
リーにおける AI( 人工知能 )、
ML( 機械学習 ) の社会実装の推進
を目的として 2017 年に設立。
医療従事者、
IT 事業者、
ヘルスケア事業者、
データサイエンティ
スト、
IT エンジニアとい
った各方面のステイクホルダーへの情報共有や、
複数企業同士での AI プロジェクト実証実験を中心に活動している。
ML
(機械学習)
Machine Learning の略。
AI を実現するための技術の一種で、
人間が行う学習プロセスと同様にコンピュータに情報
を与え、
ものごとやルールを理解させるための仕組み。
データと正解を与えて学習させる
「教師あり学習」
、
データだけ
を与えてグループ化させる
「教師なし学習」
、
よい結果に報酬を与えることで最適な方法を導き出させる
「強化学習」
に
大別される。
DL
(深層学習)
Deep Learning の略。
ML を発展させた、
AI の要素技術のひとつ。
人間の力なしに機械が自動的にデータから特徴
を抽出するディープニューラルネットワーク
(DNN)
を用いた学習。
ML はデータの特徴を開発者が指示するのに対し
て、
DL はデータの特徴自体をコンピュータが見分け、
自動的に学習していく。
アノテーション
AI の
「教師あり学習」
において、
機械学習のモデルに学習させるための教師データを作成すること。
アノテーションの
役割は、
データに意味づけや紐づけを行い、
互いに組み合わせること。
アノテーションの実施によって、
効率的に画像
やテキスト、
音声などの抽出や分析作業を行えるようになる。
KPI
(重要業績評価指標)
Key Performance Indicator の略。
目標を達成するうえで、
達成度合いを計測したり監視したりするための定量的な
指標のこと。
最終的な目標のことは KGI
(Key Goal Indicator)
と呼ばれ、
KGI を達成するための指標をつく
ることを、
「KPI を設定する」
と言う。
薬機法
医薬品や医薬機器等の品質と有効性および安全性を確保する法律。
保健衛生上の危害の発生および拡大の防止、
指
定薬物の規制、
医薬品、
医療機器および再生医療等製品の研究開発の促進を目的として、
製造、
販売、
広告などにつ
いて細かく定められている。
医薬部外品や化粧品の定義や健康食品の規制などにも活用される。
ヘルスケア業界へ参
入、
投資を行う場合には必ず把握しておくべき法律であるといえる。
PMDA
(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
Pharmaceuticals and Medical Devices Agency の略。
医薬品の副作用や生物由来製品を介した感染等による健
康被害に対して、
迅速な救済を図り
(健康被害救済)
、
医薬品や医療機器などの品質、
有効性および安全性について、
治験前から承認までを一貫した体制で指導
・
審査し
(承認審査)
、
市販後における安全性に関する情報の収集、
分析、
提供を行う
(安全対策)
ことを通じて、
国民保健の向上に貢献することを目的として設立された法人。
FDA
(アメリカ食品医薬品局)
Food and Drug Administration の略。
米国保健福祉省配下の政府機関。
食品や医薬品、
医療機器などの許可や違
反品の取り締まりなどを行う。
医療機器を米国市場で販売するためには、
FDA への施設の登録と機器目録の登録が要
求される。
また、
海外から米国に医療機器を輸出する場合も、
FDA への登録、
届出または承認を取得する必要がある。
AMED
(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)
Japan Agency for Medical Research and Development の略。
医療分野における基礎から実用化までの研究開
発が切れ目なく行われ、
その成果が円滑に実用化されるよう、
大学や研究機関などが行う研究を支援し、
研究開発や
そのための環境の整備に取り組む機関。
6 つの統合プロジェクトを定め、
プログラムディレクター
(PD)
の下で関係府
省の事業を連携させ、
基礎から実用化まで一元的に推進する。
用 語 解 説
DLLAB Healthcare Day 2021 28
日本マイクロソフト株式会社
〒108-0075 東京都港区港南 2-16-3 品川グランドセントラルタワー
DLLAB Healthcare Day 2021
※ 記載されている、
会社名、
製品名、
ロゴ等は、
各社の登録商標または商標です。
※ 製品の仕様は、
予告なく変更することがあります。
予めご了承ください。
※ 使用している画像はイメージです。
※ 記載の内容は、
2021 年 5 月現在のものです。

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DLLAB Healthcare Day 2021 Event Report

  • 1. 医療 x AI への 参入障壁を乗り越える 主催 : 日本マイクロソフト株式会社 DLLAB Healthcare Day 2021
  • 2. INDEX 03 05 07 09 11 13 医療 x AI への参入障壁を乗り越える 厚生労働分野における AI 技術の利活用について 厚生労働省 大臣官房厚生科学課 研究企画官 高江 慎一 氏 臨床応用を志向した医療 AI 研究: その可能性と課題 国立がん研究センター / 日本メディカル AI 学会 分野長 / 代表理事 浜本 隆二 氏 医学と工学の垣根を越えた医療 AI 開発 名古屋大学 / クアドリティ クス株式会社 大学院工学研究科物質プロセス工学専攻 准教授 藤原 幸一 氏 ICT を用いた健康なまちづく りの 取り組みと AI 活用への期待 アカデミア パネルディスカッション 了徳寺大学 / 一般社団法人 IT ヘルスケア学会 教授 山下 和彦 氏 日本マイクロソフト株式会社 医療・製薬営業統括本部 事業開発担当部長 清水 教弘 氏 株式会社 FRONTEO 取締役 社長室長 兼 ライフサイエンス AI 事業本部長 山本 麻理 氏 先端技術がもたらす よりよいヘルスケアのかたち 19 「ことば」 をAIで解析し、 医療や福祉の現場をサポートする Cellspect 株式会社 / 株式会社 biomy AI Lab 部長 / 代表取締役社長 小西 哲平氏 参入障壁を乗り越えるために AI人材に求められることとは インテル株式会社 APJ データセンターグループ・セールス AI テクニカル・ソリューション・スペシャリスト 大内 山浩氏 Intel AI in Healthcare 成功事例に見るAIとの向き合い方 AIの力で適切な医療へのアクセスと 医療従事者の働き方改革に貢献する 21 23 Ubie 株式会社 共同代表取締役 医師 阿部 吉倫氏 企業から見た参入障壁の乗り越え方 ソリューション企業 パネルディスカッション 千葉大学医学部附属病院 亀田 義人 氏 ソリューション企業 アカデミア 28 用語解説 Deep Learning Lab を課題解決の端緒に 医療分野への AI の参入障壁について考える
  • 3.  Deep Learning Lab (ディープラーニング・ ラボ) のヘルスケア部会では、 2019 年に初めて 「AI 推進人材を考える」 をテーマに据えて、 医療× AI のシンポジウムを開催しました。 このテーマを 選んだのは、 当初私が、 「医療に AI を浸透させる ためには、 医療機関の意思決定層やその支援人 材のなかに、 AI に関するリテラシーを身につけ た人材を増やさなければいけない」 という問題意 識を持っていたからです。 シンポジウムでは、 AI を使った内視鏡によるピロリ胃炎の高精度診断、 AI の手足となって動くRPA (Robotic Process Automation) の紹介、 てんかんの推論といった 演目で、 大変豪華なメンバーに登壇いただき ま した。  非常に反響は大きく、 参加者へのアンケートで は 98% の方から 「満足」 「やや満足」 という高い 評価を得ることができました。 医療業界の皆さん も最新技術のキャッチアップに興味を持っていた という結果も出ています。 さらに、 医療分野への AI 技術の活用に必要とされる能力としては、 AI の知識、 医療の知識も重要ですが、 コミュニケー ション能力やプロジェクトの管理能力、 コンプラ イアンスや倫理といった要素が必要であるという 回答をいただいています。 医療に AI を浸透させるために必要なこととは ■ AI の知識 ■ 医療の知識 ■ プログラミング技術 ■ プロジェクト管理能力 20.6% 21.3% 7.6% 11.6% 17.7% 10.8% 6.9% 3.6% 3.6% ■ コミュニケーション力 ■ コンプライアンスや倫理 ■ AI 教育能力 ■ その他 医療分野への AI 技術の活用に必要となる能力 千葉大学医学部附属病院 亀田 義人 氏 佐賀大学医学部を卒業後、 千葉大学医学部附属病院循環器内科に 入局。 同大学大学院医学薬学府環境健康科学専攻循環器内科学博 士課程修了後、 厚生労働省へ出向 ( 雇用均等 ・ 児童家庭局母子保 健課 課長補佐、 医薬食品局血液対策課 課長補佐) 。 現在、 千葉大 学医学部附属病院病院長企画室総合調整員、 病院経営管理学研究 センター特任講師、 千葉大学予防医学センター特任助教。 社会医学 系専門医 ・ 指導医。 DLLAB Healthcare Day 2021 ~ 医療 x AI への参入障壁を乗り越える ~ Deep Learning Lab を 課題解決の端緒に DLLAB Healthcare Day 2021 03
  • 4.  第 1 回で好評を受けて、 ディープラーニング ・ ラ ボのなかにヘルスケア分科会を開設、 2020 年に は 2 回目のシンポジウムを 「地方包括ケアとAI」 と いうテーマで開催しました。 第 1 回同様、 豪華なメ ンバーに、 介護の技術継承に AI を活用する取り組 み、 教師なし学習でも価値の高い情報を提供でき る仕組みなどについてご講演いただき、 好評を博 しました。 また、 初めての試みとしてハンズオンを 開催し、 たく さんの方にご参加いただきました。  前述の通り、 私はこの活動を始めた当初、 医療 業界は保守的で、 得体の知れないものを受け入 れたがらない。だから医療従事者の AI リテラ シーを高めなければ AI の普及は難しいという問 題意識を持っていました。 しかし、 この 2 年の間 に、 例えば循環器学会では AI に関連するセッ ションが同日複数枠で開催されたり、 内科学会か らは AI、 ICT といった異分野との融合が必要では ないかという提言が出されたり、 日本メディカル AI 学会の第 2 回学術学会では 1100 名を超える 来場者を記録したりと、 医療業界としてはむしろ AI について関心が高く、 利活用していきたいとい う状況にあることがわかってきたのです。 医療業界が AI に向ける熱い視線 依然とし て課題とされる参入障壁  しかし、 同時に依然として医療への AI 参入に は障壁があるという声が聞こえてきました。 そこ で私は、 守秘義務や患者プライバシー、 医療情 報の解釈の難しさなど、 いくつかの仮説を立てて みました。 3 年目の活動となるディープラーニン グ・ ラボのヘルスケア分科会としては、 引き続き 皆さんのご意見を伺いながら、 これらの仮説の検 証や、 実際に障壁を乗り越えた経験談などを情 報共有することで、 医療界への AI 参入の課題を 解決する端緒となるような場を設けていきたいと 思っています。 過去のシンポジウムの様子 2021 年はオンライン開催 (Teams Live) DLLAB Healthcare Day 2021 04
  • 5.  AI 戦略は国としても非常に重要な施策であり、 2018 年に立ち上がった 「統合イノベーション戦 略推進のための有識者会議」 を中心に、 さまざま な検討が進んでいます。 実施初年度である 2019 年度の進捗としては、 8 割強が計画通りに進んで いると評価されており、 「健康 ・ 医療 ・ 介護」 分野 においても、 「データ基盤整備、 医療 ・ 介護従業者 の負担軽減や人材育成検討に加え、 画像診断支 援領域での実用に向けて大きく進展があった」 と して、 引き続き社会実装の取り組みを進めていく ことになっています。  また厚生労働省では、 「全国どこでも安心して 最先端 ・ 最適な医療を受けられる」 「医療従事者 の負担が軽減されることで、 より患者の治療等に 専念できる」 「新たな診断方法や治療方法が創出 される」 といった成果を期待して、 保険医療分野 における AI の活用推進に取り組んでいます。 AI 活用推進を阻害するロードブロックの解消につ いても検討を進めており、 性能変化や可塑性と いった、 薬機法とマッチングしにくい AI の特性に 配慮した薬事制度の対応や、 AI の学習 ・ 検証に 不可欠な医療情報の取り扱いに関する対策とい った、 さまざまな課題と検討の方向性についてご 指摘をいただいているところです。 政府でも重要な施策と位置づけられる AI 戦略 DLLAB Healthcare Day 2021 厚生労働分野における AI 技術の利活用について 厚生労働省 大臣官房厚生科学課 研究企画官 高江 慎一 氏 厚生省に入省後、 医薬局、 環境庁、 経済開発協力機構勤務な どを経て、 医政局研究開発振興課 課長補佐、 経済課 課長補 佐、 独立行政法人医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一 部 部長を経て、 2020 年8月から厚生労働省大臣官房厚生科学 課 研究企画官 ( 現職 )。 DLLAB Healthcare Day 2021 05
  • 6. 医療業界で進む AI の社会実装  いまは第 3 次 AI ブームと言われていますが、 これまでのブームとは全く様相が異なります。 ま ず、 コンピュータの計算能力が非常に高くなって いる。 また、 インターネット、 クラウド等の発達に より、 大量のデータを取り扱う環境が整備されて いる。 さらには GAFAM に代表されるビッグテッ クが、 大量の資金と人材を投入している。 この 3 つの要素が相まって、 多くの AI が社会実装され 始めています。 これが今までとは決定的に異なる 特徴だと思います。  厚生労働省でも、 医工連携や産学連携による AI 実装研究事業を推進しており、 医療機器分野 では AI を実装した超拡大内視鏡の開発、 ディー プラーニングを用いた COVID-19 肺炎画像解析 プログラムなど、 承認事例が増えています。 また 医療業界には参入障壁があるというご意見があり ますが、 たとえばディープラーニングの特性であ る可塑性とアルゴリズムのブラックボックス化をリ スクとして見た場合に、 そのリスクの内容を医療 関係者の方に情報提供することで、 製品全体のリ スク ・ ベネフィ ットバランスをとっています。 つまり AI だから特別な障壁があるというわけではない ということを知っておいてほしいと思います。  また、 保険医療分野における AI 活用推進懇談 会報告書に基づき、 ゲノム医療、 画像診断支援、 医薬品開発、 診断 ・ 治療支援、 介護 ・ 認知症、 手 術支援の重点 6 領域を定めて、 その開発 ・ 実用 化を促進するとともに、 「保健医療分野 AI 開発加 速コンソーシアム」 を設置し、 AI 開発及び利活用 を加速させるための課題や対応策、 及び本邦に て取り組むべき事項の方向性についてとりまとめ ています。 DLLAB Healthcare Day 2021 06
  • 7. AI の可能性と責任の所在  私たちが扱うデータは年々ビッグデータ化し、 すでに人間の能力を超えたものになってきていま す。 そこから効率的に特徴量を抽出して医療に応 用するためにも、 今後 AI は必須になってく るでし ょう。 医療分野でも、 すでに 60 以上の AI 搭載 医療機器が米国 FDA から承認を受けており、 日 本でも、 PMDA に承認を受けた AI 搭載医療機 器の実臨床応用が進んでいます。  ひとつの問題提起として、 ある事例をご紹介し ます。2018 年に米国で FDA が認可した、医師 不要での診断を可能にした AI 医療装置です。 こ れまで医師のサポート役だった AI が診断を行い、 医師が必要なくなるということですから、 相当画期 的な装置と言えると思います。 国土が広く専門医 が足りていないアメリカならではの事情もあります から、 これがすぐに世界の常識になることはないと は思いますが、 医療 AI の責任の所在や医師の役 割については議論する意義があると思います。  たとえばアメリカ医師会は 「医療 AI で生じた 問題は、 使用した個人の医師ではなく、 AI の開発 DLLAB Healthcare Day 2021 臨床応用を志向した医療 AI 研究 : その可能性と課題 国立がん研究センター / 日本メディカル AI 学会 分野長 / 代表理事 浜本 隆二 氏 2000 年、 東京大学医科学研究所リサーチアソシエイトとし て所 属、 2011 年より同助手。 2006 年、 ケンブリッジ大学腫瘍学部所 属。 2007 年に東京大学に復帰した後、 2012 年からシカゴ大学 医学部に准教授とし て所属。 2016 年に国立がん研究センター分 野長に就任。 日本メディ カル AI 学会の代表理事も務める。 DLLAB Healthcare Day 2021 07
  • 8. 医療 AI 開発の成果と課題  私の所属する国立がん研究センターでは、 25 万枚の画像を用いた教師あり深層学習を行い、 大腸がんの病変を高い精度で発見できる内視鏡 用 AI 診 断 医 療 機 器 「WISE VISION™」 を開 発 し、 昨年医療機器として承認を受けることができ ました。 「WISE VISION™」 の開発を含めた私の 経験から意見を述べさせていただくと、 医療 AI 開発で大切なのは、 研究のための研究ではなく、 社会実装を念頭に置いた研究を心がけるという ことです。 自分たちの研究の優位性と、 実装のた めの課題をよく理解したうえで、 臨床を見据えた 改善を続けることが重要です。  また、 医療 AI 開発は決して華々しい仕事ばか りではなく、 先生方が、 診療が終わった深夜や週 末にボランティアでコツコツと恒常化、 標準化、 アノテーションづけといった作業をしてくださって いるおかげで成り立っている。 日本の医療 AI 開 発は、 そういった先生方のモチベーションに支え られている部分も大きいということを知っておい てほしいと思います。  また私は、 AI だけに依存することは非常に危 険だと考えています。 AI は人間よりも優れた面が ありますが、 AI になにができてなにができないか ということを考えて、 どちらかが一方的に依存す るのではなく、 AI と人間がともに学びながら成長 する。 そんな社会が理想なのではないでし ょ うか。 元が責任を負うのが最適である」 と、 あくまでも 医療従事者を守る立場を表明しています。 一方、 日本では現状 「AI を用いた診断支援により診断 する場合には医師が最終的な判断の責任を負う」 ことになっています。 また、 2017 年に RSNA (北 米放射線学会) のトップが発した 「大前提として AI が医療従事者にとって変わることはないが、 放射線科医のなかで AI が使えない放射線科医 は AI が使える放射線科医に淘汰されるだろう」 という言葉は、 大変示唆に富んだ意見だと思いま す。 今後このような AI にまつわる議論は、 さらに 活発になっていくことでし ょ う。 DLLAB Healthcare Day 2021 08
  • 9. Closed-Loop てんかんケア 工学系人材から見た医療 AI 開発のポイント  私は工学系の人間なのですが、 ここ 10 年ほど は医療 AI、 医療データの解析を行っており、 その 経験から、 医工の垣根を越えた医療 AI 開発につ いてお話ししたいと思います。  私たちは現在、 てんかん発作予知 AI のアルゴ リズムを開発しています。 このプロジェクトでは、 私が AI 開発 ・ ソフト担当で熊本大学の山川先生 がハード担当、 医科歯科大学の宮島先生が臨床 担当として開発を行なっています。 より細かい精 度のデータセット構築や臨床での使い方を見越 したデザインなど、臨床応用を目指す医療 AI 開発においては、医学側、工学側がそれぞれの 専門、 得意分野を持ち寄って協働することが重要 なポイントとなります。 DLLAB Healthcare Day 2021 医学と工学の垣根を越えた 医療 AI 開発 名古屋大学 / クアドリティクス株式会社 大学院工学研究科物質プロセス工学専攻 准教授 藤原 幸一 氏 機械学習 ・ 医用工学 ・ てんかん学 ・ 睡眠医学 ・ プロセスシス テム工学を研究分野とし、 民間企業での研究経験も豊富。 医療 AI 開発ベンチャークアドリティ クス共同創業者。 人工 知能学会 ・ 日本てんかん学会 ・ 日本睡眠学会 ・ 計測自動制 御学会 ・ 化学工学会 ・ IEEE 所属。 DLLAB Healthcare Day 2021 09
  • 10. 工学側に必要とされる意識とは  では、 どのように医工連携を進めるべきか。 ま ず工学側としては、 臨床のフローを理解すること。 どんな検査があって、 どんな治療や意思決定が 行われているのかを理解しておかないと、 開発し た AI が臨床で使えるものにならないかもしれま せん。 それから、 臨床現場は普段の診療でいっぱ いいっぱいですから、 こちらから足を運んで、 協 力関係を築くこと。 いつのまにか検査装置や担当 技師の方が変わっていることもよくあります。 技師さんのアノテーションの違いといった些細な ことでも、 AI の学習性能に影響を与えてしまいか ねませんから、 定期的に足を運び、 状況を把握し ておくことが大切です。 また、 倫理についても知 っておくべきでしょ う。 法的制約やレギュラトリな どを理解したうえで、 法的に大丈夫でも倫理的に 許されない行為があると理解しておくことが重要 です。 臨床データの向こうには、 疾患や障がいに 苦しむ患者さんやそのご家族がいるという想像力 を、 工学側も持つべきだと思います。 違いの専門性を尊重し、 理解を深める  一方で、医学側にお願いしたいこととして、ま ずクリニカルクエスチョンではなく、リサーチクエ スチョンを伝えてほしいということ。臨床現場に 結びついているテクニカルクエスチョンではなく、 クリニカルクエスチョンまで落とし込んで、適切 な問題設定ができないと、実際の研究はできま せん。  それから MD の先生のなかにはプログラミン グを学ばれている方もいらっしゃいますが、多く の場合、工学系のプロフェッショナルには及びま せん。それよりも、機械学習アルゴリズムがどう いうものかを理解していただいた方が、工学側 へのアウトプットの要求が適切なものになります。 それから、特徴量を選択・設計する根拠となる生 理学的・病理学的な根拠や仮説をしっかり説明し ていただくこと。よりよい AI の開発のためには、 解析まで考慮したデータの測定環境整備や判読 粒度の改善が必要ですから、そのような改善をし ていただけるように、データ解析や AI 学習のメ リットを現場の皆さんにも共有していただくことが 重要となってきます。まずは解析ができる粒度の 適切なデータを集めるためにお互いが知恵を出し 合い協力することが、 医工連携のスタートだと思っ ています。 臨床のフローを理解するための現地現物 DLLAB Healthcare Day 2021 10
  • 11. 人口減少社会における、 健康なまちづく り  日本の多くの市町村では、高齢化に加えて人 口減少が問題になっています。山形県の某市で は、この先人口推移が右肩下がりになると予測 されています。若者が減りますから、介護状態 になったときに助けてくれる人がいなくなる。ま た人口が減るので、医療機関や商業施設なども 減っていきます。そういう状況で、どのように健 康づくりやまちづくりを進めていくのかを考えな ければいけません。 高齢化が進むと、多くの人が疾病や障がいを持 ちますから、認知症リスクや転倒リスク、医療コ ストが上がってしまいます。一方、 ソーシャルキャ ピタルと呼ばれる、地域における社会活動に関 心を持つ高齢者の方はたくさんいます。 「介護予 防」という言葉がありますが、私たちは AI や ICT を活用しながら、高齢者の身体機能や生活 機能を保ち、ソーシャルキャピタルに参加する きっかけややりがいを創出するためのソリュー ションづく りに取り組んでいます。 DLLAB Healthcare Day 2021 ICT を用いた健康なまちづく りの 取り組みと AI 活用への期待 了徳寺大学 / 一般社団法人 IT ヘルスケア学会 教授 山下 和彦 氏 東京大学先端科学技術研究センター研究員、 東京医療保健大学 医療保健学部教授、 大阪大学大学院医学系研究科特任教授を 経て現職。 研究テーマは、 高齢者の身体機能計測機器の開発と リスク指標の構築、 子どもの発達支援のための身体機能計測と 評価指標開発、 RFID による手術器機と手術 (看護) システム等。 DLLAB Healthcare Day 2021 11
  • 12. 要介護予防につながる歩行機能サポート  要介護になる主な原因として、関節疾患と転倒 骨折、高齢による衰弱が挙げられます。60 歳以 上の 6 割以上に足部の問題があると言われてい ますから、足元の健康をどのように維持していく かが重要になってく るわけです。そこで私たちは、 市民の方々に呼びかけて、歩行サークルや子ど もの見守り活動への参加、フットケアや足部の計 測などを通して、社会活動に参加しながら研究に も協 力して い た だく、 「Waas(Walking as a service) 」 という活動を行なっています。計測デー タを分析すると、こうした市民活動を行なってい る地域では、医療費の削減やうつ病発生率の減 少といった効果があることがわかってきています。  また高齢者は足部の爪や筋骨格系に問題のあ る場合が多いので、放置したままだと歩くのも大 変ですし、転倒リスクも高まってしまいます。正し い爪切りを続けるだけでも歩行機能は改善すると いうデータもありますし、歩行改善できれば筋肉 もついて転倒リスクを軽減できます。老化だから とあきらめるのではなく、しっかりケアをすること が重要です。私たちは、フットケアのサポートに 加えて、スマートフォンで足の周りを撮影して三 次元モデルを構築することで、外反母趾リスクや 変形性膝関節症のリスクがわかる足部 3 次元構 成システムを開発しています。 人と行政とが一体となったシステム構築  研究を進めるうえでは、データが得ることが目 的ではなく、人がそのデータを活用して、役に立 つ形につなげることが大切です。また、なにか 問題が起きてからではなく、未然に対応できるシ ステム構築が必要ですから、地域のなかに入っ て一緒に活動するアクションリサーチも重要で す。大切なのは、市町村の行政と、市民の皆さ んと連携しながら進めること。そうすると、自然 とたくさんの方が協力してくれます。まちづく りに は、ICT や AI、エビデンス、そしてなにより「人」 が必要だと感じています。 DLLAB Healthcare Day 2021 12
  • 13. DLLAB Healthcare Day 2021 医療分野への AI の 参入障壁について考える モデレーター 亀田 義人 氏 浜本 隆二 氏 山下 和彦 氏 高江 慎一 氏 藤原 幸一 氏 パネラー 千葉大学医学部附属病院 国立がん研究センター /日本メディ カルAI学会 分野長/代表理事 了徳寺大学/一般社団法人 IT ヘルスケア学会 厚生労働省 大臣官房厚生科学課 研究企画官 名古屋大学/クアドリテ ィ クス株式会社大学院工学研究科物質プロセス工学専攻准教授 1 2 3 4 5 アカデミア パネルディスカッション 4 5 2 3 1 DLLAB Healthcare Day 2021 13
  • 14. 「理想論ではなく て、 地に足をつけたプラクティカルな戦略が重要になる」 (浜本氏) 亀田 まず、 医療業界への AI の参入障壁につ いて、 どんな参入障壁を感じていて、 それをどの ように解決していくかという点についてコメントを いただきたいと思います。 浜本先生、 工学系の 人々と医学系の人々がコミュニケーションを取る うえで課題に感じてきたところや工夫してきたと ころについてコメントいただければと思います。 浜本 エンドポイントをクリアにすることが重要 だと思います。 かつ、 それが医療側にとっても情 報工学系の方々にとっても Win-Win になるテー マ設定がないと、 成り立たないと思います。 単に プロジェクトがいいとか、 環境が整っているだけ だとなかなかうまくいかない。 成功確率も含め て、 最初から緻密に計画を立てることが重要だと 思うんですよね。  モチベーションを最優先にしたいところではあ るのですが、 いくら双方にモチベーションがあっ たとしても、 もし達成できないことがあった場 合、だんだん下がってしまう。 ですから、 具体的 に達成可能かどうか、 公的研究費がどれく らい取 れて、 企業がどれくらい出資してくれて、 その結 果どれく らいのベネフィ ットが出るのかといったと ころを、 最初の段階で緻密に計算しておくことで 持続できるという事実はあると思うんです。  エンドポイントがはっきりしていれば、 さまざま なトラブルを克服できます。 企業としても、 いろ いろと苦労があっても、 最終的に社会実装によっ て報われるわけですからね。 冷めた意見で申し 訳ないですが、 夢物語であってはいけないと思う んです。 単に患者さんが大事だからこうしよう、 だけではなかなかうまくいかない。 先生方も、 た だでさえ診療も忙しいなか、 崇高な理念ばかり アピールされても難しいところがある。 単に理想 論ではなくて、 地に足をつけたプラクティカルな 戦略が重要になると私は思っています。 「ビジネスになるか、 臨床応用できるかわからないけれど、 とりあえず研究し てみまし ょ う、 ということもある」 (藤原氏) 亀田 やはり目的設定とKPI (Key Performance Indicator) も合わせて最初の段階からしっかりす り合わせしていくことが大事ということなんです ね。 これを受けて藤原先生はいかがでし ょ うか? 藤原 浜本先生のおっしゃる通りだと思います。 私もベンチャー企業の役員をやっているのでわか りますが、 最終的に利益につながるのか、 あるい は承認が取れるのかというところは大事ですよ ね。 そういう部分は最初に計画を立てておかない と途中で齟齬が生まれてしまう。 その結果、 誰か がやる気を無く してしまうと、 プロジェクト自体が 止まってしまうことになる。  一方で、 最初期の段階では、 ビジネスになる か、 臨床応用できるかわからないけれど、 とりあ えず研究してみましょ う、 ということもあると思い ます。 医療側には、 クリニカルクエスチョンという べきものがあって、 それを解決したいという思い がある。 一方工学側は、 人によってさまざまでは DLLAB Healthcare Day 2021 14
  • 15. 「自分たちの活動の “見える化” について、 行政の皆さんはかなり関心を持っています」 (山下氏) 亀田 山下先生は行政との連携という分野が強 みだと思うのですが、 浜本先生がおっしゃってい た KPI や目的を擦り合わせるという観点で言う と、 行政とつきあっていて意識するところはあり ますか? 山下 行政としては、 自分たちのやってきた活動 に、 本当に効果があるのか、 これからどのように 手を打てばいいのかということがほとんどわから ないんですね。 「ただやっているだけ」 みたいなと ころがある。 保健師の方がイベント屋さんみたい になってしまって、 そうなるとどんどん疲弊してし まいますから、 自分たちの活動の“見える化”につ いて、 行政の皆さんはかなり関心を持っています。  医療についても、 ひと手間入れることで便利に なるという工学的な発想が、 現場で受け入れられ ないことがよくあるんです。 現場でどういうフロー があるかというのは医療でも保健でも同じなのだ と思います。 ですから私は、 最終的になにをエビ デンスとして出していくのか、 それがどんなふう に活用できるかというところは意識しながらいつ も行政と話をしています。 亀田 エビデンスをいかにつくるかというのも重 要ですね。 行政にとってもやっていることの説明 責任を果たすことになります。 藤原先生や浜田 先生のご意見のなかで、 データが鍵だというお 話もあったと思います。 今後エコシステムをつく る上で、 データをいかに取得して活用するかとい う観点があって、 すなわち、 ある程度共通化され たデータのプラットフォームをつくって活用して いくという方法がひとつあるかと思うのですが、 一方で目的にかなったようなデータを用意しなけ ればなかなか真の問題解決にはならないという 発想もあるかと思います。 そのあたりについてな にかご意見があれば。 あると思いますが、 私の場合は人が触ったことが ないデータに触れるかどうかというところが結構あ りまして。 データサイエンティ ストのなかにはそうい う人も結構いると思うんですよね。 「この先生と一 緒にやると、 結果がでるかどうかは別として、 こん な面白いデータに触れるんだ、 面白いこと、 新し いことができるんだ」 ということはあると思います。  ただそれは最初期の段階であって、 長続きする ものではないので、 途中から実際にビジネスや臨 床を見据えた設計というステップが入ってくるの だと思います。 それは大きなお金を動かす段階か もしれませんし、 企業が絡んでく る段階かもしれま せんが、 そういうふたつの段階があるのかな、 と 思っています。 亀田 企業でも研究部門がありますし、 工学系 の大学の部門もあると思いますが、 そういうとこ ろにアプローチするときに、 はじめは興味から始 まってもいいのではないか、 というところでしょ う か。 藤原 大学としては最終的には論文にしないと いけないとは思いますが、 最初はそれでもいい と思います。 企業に関しては、 それなりに利益や 事業への貢献について言われますから、 ある程 度 「こういう形で御社事業とのシナジーがありま す」 といったストーリーを描いてあげないと話が しにくいかもしれません。 私としては、 最初は大 学と一度話をしてみるのがよいのではないかと 思います。 DLLAB Healthcare Day 2021 15
  • 16. 「データの利活用をきちんとしなければいけないという 議論がちょ うど始まりつつあるところ」 (高江氏) 浜本 非常に重要かつ難しい問題だと思います。 まずエコシステム的な観点では、 私たちは今 NCC (国立がん研究センター) 内で、 AI が自動 的にデータを集めるシステムを開発しておりまし て、 最終的に臨床医が判断するだけという、 かな り効率的なシステムができています。 そういう意 味ではデータ自体の収集については今後ドラス ティ ックに変わっていく面もあると思います。 ただ、 そのなかで気をつけなければいけないこと は、 ドメインシフトの問題。 施設によってプロトコー ルも違えば固定方法も染色方法も違うために、 分析結果にかなりの誤差が出てしまいます。 厚生 労働省と AMED のプロジェクトでも問題提起が なされていて、 これは慎重に判断すべき問題だと 思います。  私としては、 「標準化とはなんであるか」 という 原点に立ち戻って、 まずは世界最大規模の癌に 関する情報があるというアドバンテージを持って いる NCC 内できちっとしたプラットフォームをつ くる。 そのうえで、 できることとできないことを冷 静に判断しなければいけない。 単純な問題では ないという認識です。 藤原 私は 2 種類のデータがあると思っていて、 ひとつは共通基盤となるようなデータセット。 もう ひとつはそれぞれの疾患に集中的に集められた データ。 画像であれば、 共通のデータセットの場 合は健常者のいろいろな部位の画像が、 特定の 疾患に関しては、 その疾患の患者さんの病変を 集めたものが出てくると思います。 このふたつが ないと絶対にダメで、 特定の疾患のものだけ集 めても、 健常者側のデータがないと識別モデル はできませんし、 逆も成り立ちません。  ですから、 難しいと思うのは、 病院の場合は主 に患者さんのデータは取れるのですが、 健常者 のデータは取れない。 そこをどうやって集めるか は行政との絡みになると思うのですが、 そういう ことができるプラットフォームや基盤を整備して いただかないと進まないのかな、 と思います。  それから、 40 歳をすぎると、 誰しもなにかしら の持病があるわけです。 そういう方たちにとって の健常がどういうことなのかは、 わからない。 画 像なら病変がないということでいいと思うのです が、 たとえば我々が扱っている脳波や心電図の データにはだいたいなにか混ざってくるので、 表 は健常に見えていても、 データを見たら不整脈が あったみたいなことがよくある。 そういったところ の定義自体も考えないと、 いいデータセットはで きないのかな、 と思います。 亀田 高江さん、 いかにエコシステムをつく って いくかという部分で、 行政としてなにか支援など 考えているところはあるのでし ょ うか? 高江 行政としての支援、 個別の研究費でいろ いろとやってきていますが、 全体のデータの利活 用をきちんとしなければいけないという議論がち ょ うど始まりつつあるところです。 内閣官房の健 康医療戦略室を事務局として、 データ利活用に 関する協議会が立ち上がっています。 そこでは、 まずは AMED で取得された各種さまざまなデー タを、 民間も含めて利活用するプラットフォーム をつく るといった検討をしています。  これまで、 研究者の方にとっては、 自分が取っ てきたデータが全てでしたが、 現在、 AMED や 国が使った研究費で集めてきたデータを、 民間も 含めてきちんとアクセスできる環境づくりをして いくための議論が始まっています。 DLLAB Healthcare Day 2021 16
  • 17. 「医行為かどうかは、厚労省から出ている指針では すべて網羅されていないので、 最終的には現場判断になってしまう」 (藤原氏) 亀田 話題を変えて、 レギュレーションの複雑さ などについて、 課題と感じるところやこうやって 乗り越えたという経験があれば、 ご発言ください。 藤原 レギュレーションという意味では、 一番大 きいのが臨床研究法ですよね。 書き方もあいまい で、 なにが本当に規制されているのかよくわから ない。 最終的に医行為であるところが大きく効い てくるのだと思うのですが、 では私たちがやって いるような、 体の表面の電位を測る電極を貼ると いう行為は医行為なのか。 侵襲ではないけれど、 もしかしたら皮膚に痕を残すかもしれないと考え ると、 これは微妙なラインなんです。 医行為かど うかは、 厚労省から出ている指針ではすべて網羅 されていないので、 最終的には現場判断になって しまう。 今のところは、 倫理に詳しい方にお聞きし て判断してもらっているのですが、 その手間をな んとか減らしたいとは思っていますし、 ダメという 判断の場合は諦めざるを得ないのが現状です。 そこで止まっていたら研究が進まなくなってしまう ので。 亀田 レギュレーションに関して、 どこにアクセス すればいいのかは大事だと思うのですが、 高江 さんからアドバイスなどはありますか? 高江 藤原先生からご指摘のあった臨床研究法 に関して言いますと、 たく さん事例があるため、 なかなかきちんとした形ですべてを示せないんで すね。 逆にあまりガチガチに明確化してしまうと、 今度はポジティブリスト化してしまって、 倫理審査 委員会がそれ以外のものは全部認めないとなっ てしまう懸念もあります。 私たちとしても匙加減が 難しいと思っています。 ただ、 臨床研究法に関し てはさまざまな批判をいただいておりまして、 見 直しのための審議会を開催したところです。 議論 や意見募集などもあると思いますので、 そちらに ご意見をいただければと思います。  現場で動かしていくときには、 最終的には倫理 審査委員会が個別で判断する建て付けになって いますので、 あまりにおかしなもの以外は、 研究 者のコミュニティのなかで相談や乗り切り方を考 えていただくのがよいかもしれません。 スタンフ ォード大学の池野先生が、 医工連携や医療機器 開発は、 “Know How”ではなくて“Know Who” だとよくおっしゃっていますが、 まさにそういった ネットワークで、 誰に聞けばいいのかを判断して いただければと。  経産省や厚労省も含めて、 クラスターごとに医 療機器開発をやっている方のコミュニティがたく さんあるでしょ うし、 相談を受けるポータルサイト などもあります。 そのなかで一番使いやすいとこ ろを使っていただくのがよいかと思います。 「一方的に批判するのではなく、 自分たちも一緒につく りあげていく体制が必要」 (浜本氏) 亀田 浜本先生と山下先生、 今のお話も含めて、 学会でそういうリソースや今後の推進について考 えていることがあればお聞かせください。 浜本 先ほどからさまざまなレギュレーションの 議論がありますが、 法律をつくる弁護士の先生と お話しをしていても、 現場側があまり発信しない DLLAB Healthcare Day 2021 17
  • 18. 「声を上げなければいけないし、 いかにその声を 拾い上げて発信しながら進めるかが重要」 (亀田氏) 亀田 個人情報保護という観点では、 今まさに市 町村の個人情報保護条例と独立行政法人と民間 の企業を一緒にしようという動きが起きていると 聞いています。 行政としてもしっかり働きかけをし てくれているんだなということは私も感じていた ところです。 行政側の思いもぜひ聞いておきた いのですが、 高江さんからなにかコメントをいた だけますか。 高江 行政側としては、 「研究者の皆さまには、 いろいろと役に立つ研究に邁進していただき、 あ りがとうございます」 というのが正式なコメントで す。 個人的なコメントとしては、 医工連携の難し さというのは、 30 年、 40 年前、 それこそ人工心 臓の開発をしていた頃からの課題で、 医学系、 工 学系、 それぞれ皆さんが考えていることも使って いる言語も違うなかで、 オープンなところで話し てもなかなか言葉が通じない。 そんな経験を経 て、 近年皆さまがいろいろなところで連携の場を 作り出してくださっている。 そういった場所で Seeds と Needs がきちんとマッチングできて、 かつそれを実用化するための施策をパッケージ 化した形で私たちから示していくのがよいのかな、 と思っています。 ただ、 医療機器やソフトウェア系の場合、 医薬品 と違って個別の背景が多種多様です。 行政として も違う角度でアプローチしなければいけないと思っ ています。 あとはスピード感ですね。 特にこの分 野の場合は承認申請してから数ヶ月で過去のモ デルになってしまうこともあるという話を聞いて いますので、 そういった点もどうにかしていかな ければいけない。 これが個人的な意見です。 亀田 皆さんのご意見を聞いていて、 やはりコ ミュニケーションが非常に重要なのだなと感じま した。 浜本先生がおっしゃったとおり声を上げな ければいけないし、 いかにその声を拾い上げて 発信しながら進めるかが重要だと思います。  難しい問題ですから、 今日 1 日で解決できるわ けではありませんが、 やはり、 ひとつは取り組む 姿勢。 そして医工間、 また行政との、 共通の目的 設定やコミュニケーションの大事さ。 また、 学会 のようなプラットフォームをしっかり使っていくこ と。 これらのさまざまな示唆を得られたディスカッ ションだったと思います。 皆さま、 ありがとうござ いました。 というのがひとつ大きな問題点なのかな、 と感じ ています。 省庁の方々も法律の専門家の方々も 忙しいですから、 受け身になっていてはダメだと いうことではないでし ょ うか。  私の教室からも厚労省に出向してそういう作業 をしている方もいますし、 学会主導でガイドライン をつく って、 それをもって省庁の方々ともお話しを しています。 実務も臨床も忙しいですが、 それを 言い訳にせずこちらから積極的に働きかけてい く。 一方的に批判するのではなく、 自分たちも一 緒につく りあげていく体制が必要なのではないか と思います。 山下 私たちが行政と組むうえでは、 大学の倫 理審査もそうですし、 行政の個人情報審議会など を通すのがひとつの大事なフローになります。 倫 理審査はどうすればいいのか、 実験系はどうやっ て組めばいいのか悩まれる中小企業も多いです よね。 IT ヘルスケア学会でも相談に乗りますし、 日本生活支援工学会で倫理審査を行っています から、 申請書の指導から倫理審査まで、 学会をひ とつの受け皿にしていただければと思います。 DLLAB Healthcare Day 2021 18
  • 19. 先端技術がもたらすよりよいヘルスケアのかたち 昨今の技術革新に伴い、 臨床現場でも深層学習技術をはじめとする AI 技術やロボティ クス、 センサ ーといった IoT 技術、 HoloLens 等の Mixed Reality 技術への期待が高まっています。 その状況下 において Microsoft では、 国が掲げる医療サービスの生産性向上や、 先端技術の積極活用、 保険医 療データの整備 ・ 流通といった注力分野にアラインしながら取組を進めています。 特にこれからますま す社会問題となってくる超高齢化社会が生み出す課題に取り組んでいます。 また、 高齢者の暮らし、 要介護者の暮らし、 そしてその方々に関わる医療従事者や介護事業者の皆さまの働き方改革を含め て、 多くのことを実現できるよう、 データを軸に患者さまや医療従事者にフィードバックしていくための 取り組みを進めています。 たとえば物体認識の分野では、 実は動画、 静止画ともに、 限られたデータ セットにおいては、 画面のなかにあるものを AI が人間の目と同等レベルで識別 ・ 認識する技術は大き く進歩しています。 こうした技術を医療に応用することで、 経験を積んだ医療者の暗黙知を見える化し て、 研修医の教育や事前のシミュレーションによる予測などを実現することで、 最終的には医療サービ スの質の向上に寄与できると考えています。 また、 世界規模でのセキュリティ対策や、 学習済みの汎 用的な AI 技術を提供することで、 パートナー企業さまは、 より医療に特化したソリューション開発に専 念することができます。 また医療者にと っては、 高い医療サービスを提供するためのデータの見える化 やシミュレーションが実現することで、 患者さまと向き合う時間を増やしていただく といった、 働き方改 革への貢献も可能と考えています。 ソリューション企業 人の一生に寄り添う Microsoft の取り組み 日本マイクロソフト株式会社 清水 教弘 氏 人の一生に寄り添うMicrosoft の取り組み 医療・製薬営業統括本部 事業開発担当部長 DLLAB Healthcare Day 2021 19
  • 20. Microsoft では、 Microsoft Research という、 約 8000 名のリサーチャー、 エンジニアが所属する、 世界最大規模のリサーチ部門を保有しています。 その活動にはヘルスケアに関する取り組みも多く含 まれており、 InnerEye と呼ばれる医療画像識別のプロジェクトや、 Empower MD と呼ばれる医師 の言語に関する自然言語処理のプロジェクトなど、 今後臨床の現場で必要とされる技術要素の開発 が進んでいます。 また米国では、 医療画像の識別プロジェクトで開発した AI を用いて、 糖尿病網膜 症の診断に関する医療機器として販売を行っている事例もあります。 一方、 AI 開発にはまだたくさん の課題があります。 たとえば学習データの偏りによる AI の品質の偏りや、 透明性の確保の問題が挙 げられます。 Microsoft では、 よりよい世界を実現するために、 AI 開発に関する倫理基準を設けて、 信頼できる AI の開発に取り組んでいます。 もちろん医療業界には、 Microsoft だけではなく、 Google や AWS といった競合企業も参入しています。 AI の大きなムーブメントを起こしていくため にも、 視野を広げて手を取り合い、 ともにモメンタムをつく っていきたいと考えています。 そして、 ひと りでも多くの患者さまが、 よりよい医療サービスを受けられ、 予防や介護領域で QOL を向上できる社 会を実現するために、 医療機関さまならびにヘルスケアサービスを展開される多くのパートナー企 業さまを、 引き続き多方面にわたってご支援してまいります。 多くのパートナー企業と、 大きなムーブメントを起こす DLLAB Healthcare Day 2021 20
  • 21. 「ことば」 を AI で解析し、 医療や福祉の現場をサポートする FRONTEO のライフサイエンス AI 事業は、 「KIBIT」 と 「Concept Encoder」 という 2 つの AI を 軸に、医療の向上やライフサイエンス分野の技術革新に貢献することを目的としています。いま承 認を受けている AI 医療機器は画像に関するものが多いと思いますが、当社の AI 医療機器は 「言 語解析」 がテーマです。言語解析というと、辞書やシソーラスが必要になると考える方も多いと思 いますが、当社の AI エンジンはそのような作業は不要です。導入したその日からすぐに解析可能 なのが大きな特徴となります。当社では現在、虐待予兆検知 AI の実証実験や会話型認知症診断 支援 AI の開発を行なっています。現場での検証を経て、 ベテランの知見がないために虐待の予兆 を見逃してしまったり、専門医にかかれなかったことで認知症の診断が遅れたりといった事態を防 ぐ効果が実証されつつある状況です。当社の強みである言語解析を武器に、専門家の皆さまを支 援できる国産 AI を少しでも多くお届けできればと考えています。 株式会社 FRONTEO 取締役 社長室長 兼 ライフサイエンス AI 事業本部長 山本 麻理 氏 参入障壁を乗り越えるために AI 人材に求められることとは 試薬の開発やデータ分析を行なっている Cellspect 株式会社では、 AI 画像処理により、細胞診の判 断支援を行うシステムを開発し、判定結果の提示と判定根拠となる箇所を可視化することで、検査士 の作業量を削減することを目指しています。 また、AI を用いた創薬支援事業を行なっている株式会社 biomy では、 コンパニオン診断において、 AI による多面的な解析を行うことで、 より正確な投薬基準 をつくれるのではないか、 という研究を行っています。現在、従来のビジネスニーズに対して、AI がで きることが増えてきており、AI のトレンドが 「すごい !」 から 「どう使うか?」 に移ってきていると私たち は考えています。今後のポイントは、AI ができることとビジネスニーズの重なる領域をいかに見つけ 出すか。 つまり、 AI 人材にとっては、AI に関する知識やノウハウだけではなく、 ビジネスニーズの理 解が求められます。医療業界のカルチャーや働き方を理解し、医療を一次情報として理解できる人材 になろうとすること。 その意識が、参入障壁を乗り越えるカギになるのではないでしょ うか。 Cellspect 株式会社 / 株式会社 biomy AI Lab 部長 / 代表取締役社長 小西 哲平 氏 DLLAB Healthcare Day 2021 21
  • 22. Intel AI in Healthcare 成功事例に見る AI との向き合い方 当社は近年、 CPU を始めとするハードウェア製品、および、 ソフトウェア製品の強化のみならず、お客 さまの AI 導入やそれを用いたビジネス課題の解決支援など、 AI を戦略の中心に置いて事業活動を展 開しています。 AI を効果的に活用できているお客さまに共通しているのが、 最初から明確な課題を定 義している点と、 高い AI リテラシーを発揮されている点、 そして最終的に AI による効率化を実現でき ている点です。 今後我々が AIと上手につき合っていくためには、 この 「課題ファースト」 「AIリテラシー」 「効率化」 というキーワードがポイントになるのではないでしょ うか。 AI はひとつの課題解決ツールと認 識して、 自分たちはなにに困っていて、 どんな手段が必要で、 どんな解決方法を導けるのかを明瞭に することが大切だと思います。 AI という技術は高効率化のための格好のトリガーとなり得ます。 国境や 業界の垣根を超えたコラボレーションによる 「未来の DX」 を見据える当社では、 課題のヒアリングから 実装支援、 導入支援までを総合的に支援しておりますので、 どうぞ気軽にご相談ください。 インテル株式会社 APJ データセンターグループ ・ セールス AI テクニカル ・ ソリューション ・ スペシャリスト 大内山 浩 氏 AI の力で適切な医療へのアクセスと 医療従事者の働き方改革に貢献する 現在、 医療従事者の働き方改革は喫緊の課題となっており、 医療の I T化も求められています。 また、 新型 コロナウイルス感染症 (COVID-19) の流行に伴い、 受診動線の確保や診療時間の短縮といった課題も生 じています。 当社が開発した 「AI 問診ユビー」 は、 自宅等での事前問診により、 症状チェ ックや適切な医療 機関等の案内、 そして医療機関における症状に応じた振り分けや記録文章の自動生成等を行うことができ ます。 ユビーの導入によって、 患者さまは適切な医療を適切なタイ ミングで受けられ、 医療関係者は感染症 リスクの低減と同時に業務を効率化できます。 外来の問診時間を三分の一に短縮できたというデータを得 ることもできました。 ニューノーマル時代における感染症対策や業務効率化に貢献できるシステムとして、 現在、 全国で 300 超の医療機関に導入されています。 医療の形は地域によってもさまざまです。 当社は、 各地域における患者さまの適切な医療への誘導、 かかりつけの先生方のプライマリケア支援、 そして医療 機関間の情報の連携といった分野でも、 技術の力で下支えしてまいります。 Ubie 株式会社 共同代表取締役 医師 阿部 吉倫 氏 DLLAB Healthcare Day 2021 22
  • 23. 企業から見た 参入障壁の乗り越え方 ソリューション企業 パネルディスカッション DLLAB Healthcare Day 2021 モデレーター 亀田 義人 氏 阿部 吉倫 氏 山本 麻理 氏 清水 教弘 氏 大内山 浩 氏 清水 由香 氏 小西 哲平 氏 パネラー 千葉大学医学部附属病院 Ubie株式会社 株式会社FRONTEO 日本マイクロソフト株式会社 インテル株式会社 インテル株式会社 Cellspect株式会社/株式会社biomy 1 2 3 4 5 6 7 1 2 5 3 6 4 7 DLLAB Healthcare Day 2021 23
  • 24. ドメイン知識とチームづく りの重要性 亀田 それでは始めたいと思います。 企業の立 場で見ると、 医療業界は参入のハードルが高い という意見が多いのですが、 皆さんそれぞれの 立場で、 どのように感じていらっしゃるかを教えて いただけますか?マイクロソフトの清水さん、 い かがでし ょ う。 清水 (MS)  私たちとしては、 多くのパートナー 企業の皆さまが、 AI を安心 ・ 安全に実装していた だくためのクラウドプラットフォームという開発の 土台となる部分をご用意して、 医療に特化した部 分はパートナー企業の皆さまに色づけしていただ くスタンスをとっています。 ですから、 臨床の現 場で活躍されている医療者の皆さまへの情報提 供やトレーニング、 パートナー企業さまとのエコ システムの構築などを通して、 医療機関さまのデ ジタルトランスフォーメーションの下支えになるよ うな事業を進めていくことが私たちの責務だと 思っています。 亀田 他の皆さんはいかがでし ょ う。 医療に参入 された際に感じた障壁やそれを乗り越えたご経 験についてお聞かせいただけますか? 山本 当社では、 医療分野で実業に耐えられる かどうかがテーマだと考えていました。 その障壁 を乗り越えるための解決策は 「組織」 だと判断し、 開発担当チームをメディカル系出身者中心に変 更したことが、 事業を加速できた要因になったと 思っています。 エキスパートを揃えることで、 知見 が蓄えられたわけです。  それに加えて、 医療機器の承認プロセスにお ける当局対応、 コミュニケーションの部分ですね。 国としても AI 医療機器に関する経験が少なく、 手探りで進む状況だったのですが、 幸いデジタ ルの普及促進という流れの後押しもあり、 私たち が思っていたよりレスポンスが早くて、 プロセス をスムーズに進めていただくことができました。 小西 私たちもドメインの知識が重要だと思って いまして、 医療や製薬の専門家を内部に入れて いますし、私自身も知見を吸収していければと 考えています。 IT 畑の人間からすると、 時間軸の ハードルの高さは感じますね。 IT の場合、 1~2 年かけてサービスをローンチするのが普通だと思 いますが、 臨床の現場で使おうとすると、 5 年以 上は覚悟しなければいけない。 特にスタートアッ プがそこに挑もうとするには、 いろいろと戦略を 立てていかなければいけないところはあると思い ます。 実用化のための UX デザインとアジャイル開発 亀田 自社の体力や人材を含めて考えなければ いけないということですね。 インテルの清水さん、 いかがですか? 清水 (インテル)  当社はグローバル企業という ご評価をいただいているからか、 医療のソリュー ションを持つ医療機器メーカーさまやベンダーさ まから、 日本市場に参入したいというご相談を受 けることは多いです。 その流れのなかで、 他国と 比べて、 医療機関の先生方のなかにコンサバティ ブな方が多い印象はありますね。 ですから、 長期 DLLAB Healthcare Day 2021 24
  • 25. 開発サイクルを回すための戦略 的な視野を持って、 ステップを踏みながら参入す ることが大事なのかな、 と思います。 亀田 阿部先生はドメイン知識の塊だと思うので すが、 逆にテクノロジー側の協力を得るにあたっ て感じた障壁や、 どのようにチームづくりをした かなど、 コメントをいただけますか? 阿部 当社はもともと私と共同創業者のエンジニ ア、 彼の先輩や知り合いとでチーミングしたので、 実装に関してはとてもスムーズでした。 ただ、 当 社が扱っているのは業務支援サービスですから、 医師だけでなく看護師、 事務員の方々も使うツー ルとして、 そこに多数存在する変数をどのように デザインに落とし込むかといった点に課題を抱え ていました。 そこで 1 年目は足踏みしてしまった のですが、 チームにユーザー体験の UX デザイ ナーを入れたところ、 課題を解決することができ たんです。 ですから、 今後医療業界にサービスを 展開していくのであれば、 デザインは外せない要 素だと思います。 亀田 チームのなかに、 コンサルタント的な視点 を入れるのは課題解決のひとつの方法かもしれ ませんね。 阿部 はい。 ユーザーのフィードバックをいただ かなくては現場にフィ ットするものにはならない ので、 コンサル業界出身の方は親和性が高いと 思います。 当社で活躍している UX デザイナーや ビジネスデベロップメントも、 コンサル業界出身 のメンバーが多いですね。 亀田 なるほど。 やはり調整型の人材が入ってい かないといけないということですね。 AI を役立て るためには目的設定が大事という意見も多いの ですが、 いかがですか? 大内山 当社の、 東京デザインテクノロジーセン ター専門学校さまの事例が参考になるかもしれま せん。 もともとドメインの知識やスキルがそれほ ど高くなかった方々が、 具体的な期間と成果物の イメージをチーム内で共有しながら進めることで、 たった 2 週間で一定の水準を満たすシステムを つく りあげることができたという事例です。  このプロジェクトが成功した要因は 「できあが るものの品質にこだわらず、 とにかく実際に動か せるものをつくろう」 という意識の共有だったと思 います。 ひとつやり遂げることで開発者の自信に もつながりますし、 成果物を利用したフィードバッ クを得ることで、 次によりよいものをつく り出すた めの糧になるわけです。 このような 「アジャイル 開発」 は、 重要なキーワードになってく るのではな いでし ょ うか。 亀田 いまアジャイルというワードが出ましたが、 開発したサービスをどれく らいの段階でリリース するのかをお聞きしたいと思います。 というのも、 アカデミアベースで考えると、 研究費をシーズに してサービスをつくり上げて、 それを回してある 程度収益を挙げ、 再投資して品質を高めていく。 そういった拡大再生産のサイクルが非常に重要 だと思うんです。 阿部 当社の開発した問診 AI は、 最初は問診 を箇条書きのテキストにする程度の機能でローン チしました。 その段階で、 カルテの記入に時間が かかるという課題ははっきりしていたのですが、 私たちのエンジニアリングでその課題を解決でき るか、 まだわからない状態でした。 ですから、 ま ずはミニマムの機能要件でクリニックの先生方に 使っていただき、 その段階では課金制にしません DLLAB Healthcare Day 2021 25
  • 26. 協業やリクルーティングでより強いチームをつくる 亀田 マイクロソフトさんやインテルさんは AI の プラットフォームを持っているわけですが、 そうし た既存のツールを使って事業化している事例は あるのでし ょ うか? 清水 (MS)  実態としては、 既存の技術要素を 組み合わせるだけですぐに事業化するのは難し いと思います。 技術として実現できる領域がある 一方、 医療の世界では、 国内でのガイドラインや 制度の面にどう準拠していくのかといったことに 関しても、 多くの議論が必要と考えています。 た とえば、 AI を実装したソリューションをパートナ ー企業さまと開発したとしても、 当然、 臨床の現 場に導入するためには、 医療機器としての認証 を取るプロセスが必要です。 もちろん、 技術的に でした。 いわゆるモニターのような形ですね。  その後、 使っていただいた先生方やスタッフの 方々のフィードバックから、 医師の業務効率化を追 求するなら同時に受付の業務効率化も必要なこと がわかり、 そこから患者さまの入力しやすさの重 要性が見えてきたことで、 その方向にシステムを ブラッシュアップすることができました。 そこでは じめて、 料金をいただく フローに切り替えました。 亀田 貴重なお話ありがとうございます。 一方、 FRONTEO さんや Cellspect さんでは、 はじめ に技術力を高めてからサービスをリリースしてい る印象があるのですが、 実際はどうなのですか? 山本 FRONTEO にはリーガルテック、 ビジネス インテリジェンス、 そしてライフサイエンスという事 業の 3 本柱があり、 事業化まで最も時間がかかっ たのは、 やはりライフサイエンスでした。 先ほども 小西さんのお話にありましたが、 研究開発期間が 他の事業と比べて長いことが大きな理由です。 当 社では 3 つめのセグメンテーションで、 会社とし ての体力が比較的あったからこそ投資できた部分 は大きいと思っていて、 もしスタートアップだった ら厳しかったかもしれません。  一方で、 世の中の流れとして、 製薬メーカーが 使っている大手の AI の切り替えタイミングがここ 1 年に集中したことで、 創薬研究分野が伸びてい ます。 このよ うに、 ひとつのき っかけがあると、 事業 としても一気に進むという感覚があります。 先ほど 阿部さんもおっしゃっていましたが、 当社でもここ 数ヶ月の間に、 UI や UX を工夫することで、 ソフト ウェアやアプリケーションの使い勝手が向上する ことを実感しており、 これは商品自体を育てる意識 が根づいたという意味では、 とてもよいビジネスの き っかけになったのではないかと感じています。 小西 Cellspect では子宮頸がん細胞診 AI を 開発しているのですが、 これをサービスにするう えで苦労したのは、 やはり法規制ですね。 今は、 いきなり日本でローンチするのではなく、 まず東 南アジア市場に参入して、 現地で日系の病院を 建てるときに一緒に日本でも導入していただくと いったスタンスをとっています。 病理画像の解析 などは AI 開発に比較的時間もかかりますから、 短期的な体力をつけるために受託も併用するな ど、 研究開発に対して投資できる体制をつく って いくことも大事だと思います。 亀田 皆さんの話を聞いていると、 Ubieさんのよ うにスタートアップ系でニーズをすでに把握してい て、 それを解決したうえで質を高めていく という方 法と、 FRONTEOさんや Cellspectさんのように、 チームを新たにつく ったり海外から展開したりして ハードルを乗り越える方法があるよ うですね。 DLLAB Healthcare Day 2021 26
  • 27. 実現できても、 製品化できるかどうかとは別の軸 で考えるべきだと思いますし、 当社としては、 パー トナー企業さまへの細やかな情報提供や、 ときに は米国本社のエンジニアや法務部門のリソース を活用して、 パートナー企業さまの製品化につい てのご支援を実施していく ことで、 お客さまのニー ズに対応していきたいと思っています。 清水 (インテル)  当社はもともと PC やサーバー の CPU をつくっていう会社ですので、 当社だけ で医療機器の開発はできず、 パートナーさまとの 協業が基本になります。 アメリカでは、 画像診断 装置やソフトウェア系のツールを用いて FDA を 通過している事例もありますし、 医療機関の皆さ まからデータをいただいて、 患者さまの予後予測 や医療従事者の効果的な配置などをサポートす る活動も行っています。 こうした事例を日本の企 業や政府の皆さまにご紹介して、 協業という形で お手伝いできればと考えています。 亀田 先ほどドメイン知識を持っている人を集め てチーミングするのが大事という話がありました が、 リクルートについてコメントいただける方は いらっしゃいますか? 山本 当社では、 ここ 1 年でかなり組織を強化し たのですが、 ホームページ上でチームメンバーの 経歴やコメントを公開したんです。 すると、 一定 のファーマメディカル出身者が揃っていたことも あって、 「この人がいるなら入社したい」 と、 リファ ラルに近い応募が増えました。 阿部 当社でもメンバー自身が積極的に経歴公 開や発言をするようにしています。 今日の私のよ うにイベントに参加して話す機会を多く設けること で、 興味を持ったメンバーが集まってくれる。 実際 に、 当社ではリファラル採用が 75% を占めてい ます。 亀田 なるほど。 小西さん、 ご自身で医学系の博 士号まで取得したということでしたが、 自身で医 療系のコミュニティに飛び込むことは、 やはり新 しいチャンネルを開くのに役立ちましたか? 小西 そうですね。 医療業界で知り合った先生方 に協力していただくといった仲間づくりには日々 取り組んでいます。 そこから新しいアイディ アも出 てきますし、 医療業界には AI に興味のある方も たくさんいますから、 連携も生まれます。 あとは、 学会で発表を聞いて興味をもってくれた方にリ ファラルのような形で協力してもらうケースも多 いですね。 亀田 確かに、 こうした対談や学会の機会を利用 するのはとてもいい取り組みですね。 インフラや プラットフォームを提供しているマイクロソフトさ んでは、 パートナー企業同士を引き合わせるよう なこともやっているのですか? 清水 (MS)  はい。 実際にパートナー企業同士の マッチングや、 AI 研究を進めていらっしゃる医療 機関や大学との連携も行っています。 また、 医療 ではないですが、 健康という文脈で、 医療機関と リテール企業の連携を行うことで 「生活動線のな かでいかに健康に貢献できるか」 といった、 医療 業界ならではの裾野の広さを視野に入れた活動 のお手伝いもしています。 清水 (インテル)  当社でも、 ハードウェアメーカー とソフトウェアメーカーのマッチングをはじめ、 そ れぞれ得意なパーツを持っているベンダーさまの 技術や製品を医療機関側のアイディアと融合させ て、 3 社、 4 社でソリューションを一緒につく り上 げて世の中に出していく活動をしています。 今日 集まった皆さまとも、 ぜひムーブメントを起こせれ ばと思っています。 亀田 まさに私も、 自分で解決できないものがあっ ても、 チームをつく ったりドメイン知識を持つ人た ちとつながったりすることで、 課題を解決できたと いう経験が多々あります。 ここにお集まりの皆さま やその周辺の皆さまが、 これをきっかけに一緒に チームづくりをしていただけたら、 面白いことに なるのではないかと思います。 今日は大変実りの 多いパネルディスカッションになりました。 皆さ ま、 ありがと うございました。 DLLAB Healthcare Day 2021 27
  • 28. Deep Learning Lab リテール、 ヘルスケアといったさまざまなインダスト リーにおける AI( 人工知能 )、 ML( 機械学習 ) の社会実装の推進 を目的として 2017 年に設立。 医療従事者、 IT 事業者、 ヘルスケア事業者、 データサイエンティ スト、 IT エンジニアとい った各方面のステイクホルダーへの情報共有や、 複数企業同士での AI プロジェクト実証実験を中心に活動している。 ML (機械学習) Machine Learning の略。 AI を実現するための技術の一種で、 人間が行う学習プロセスと同様にコンピュータに情報 を与え、 ものごとやルールを理解させるための仕組み。 データと正解を与えて学習させる 「教師あり学習」 、 データだけ を与えてグループ化させる 「教師なし学習」 、 よい結果に報酬を与えることで最適な方法を導き出させる 「強化学習」 に 大別される。 DL (深層学習) Deep Learning の略。 ML を発展させた、 AI の要素技術のひとつ。 人間の力なしに機械が自動的にデータから特徴 を抽出するディープニューラルネットワーク (DNN) を用いた学習。 ML はデータの特徴を開発者が指示するのに対し て、 DL はデータの特徴自体をコンピュータが見分け、 自動的に学習していく。 アノテーション AI の 「教師あり学習」 において、 機械学習のモデルに学習させるための教師データを作成すること。 アノテーションの 役割は、 データに意味づけや紐づけを行い、 互いに組み合わせること。 アノテーションの実施によって、 効率的に画像 やテキスト、 音声などの抽出や分析作業を行えるようになる。 KPI (重要業績評価指標) Key Performance Indicator の略。 目標を達成するうえで、 達成度合いを計測したり監視したりするための定量的な 指標のこと。 最終的な目標のことは KGI (Key Goal Indicator) と呼ばれ、 KGI を達成するための指標をつく ることを、 「KPI を設定する」 と言う。 薬機法 医薬品や医薬機器等の品質と有効性および安全性を確保する法律。 保健衛生上の危害の発生および拡大の防止、 指 定薬物の規制、 医薬品、 医療機器および再生医療等製品の研究開発の促進を目的として、 製造、 販売、 広告などにつ いて細かく定められている。 医薬部外品や化粧品の定義や健康食品の規制などにも活用される。 ヘルスケア業界へ参 入、 投資を行う場合には必ず把握しておくべき法律であるといえる。 PMDA (独立行政法人 医薬品医療機器総合機構) Pharmaceuticals and Medical Devices Agency の略。 医薬品の副作用や生物由来製品を介した感染等による健 康被害に対して、 迅速な救済を図り (健康被害救済) 、 医薬品や医療機器などの品質、 有効性および安全性について、 治験前から承認までを一貫した体制で指導 ・ 審査し (承認審査) 、 市販後における安全性に関する情報の収集、 分析、 提供を行う (安全対策) ことを通じて、 国民保健の向上に貢献することを目的として設立された法人。 FDA (アメリカ食品医薬品局) Food and Drug Administration の略。 米国保健福祉省配下の政府機関。 食品や医薬品、 医療機器などの許可や違 反品の取り締まりなどを行う。 医療機器を米国市場で販売するためには、 FDA への施設の登録と機器目録の登録が要 求される。 また、 海外から米国に医療機器を輸出する場合も、 FDA への登録、 届出または承認を取得する必要がある。 AMED (国立研究開発法人 日本医療研究開発機構) Japan Agency for Medical Research and Development の略。 医療分野における基礎から実用化までの研究開 発が切れ目なく行われ、 その成果が円滑に実用化されるよう、 大学や研究機関などが行う研究を支援し、 研究開発や そのための環境の整備に取り組む機関。 6 つの統合プロジェクトを定め、 プログラムディレクター (PD) の下で関係府 省の事業を連携させ、 基礎から実用化まで一元的に推進する。 用 語 解 説 DLLAB Healthcare Day 2021 28
  • 29. 日本マイクロソフト株式会社 〒108-0075 東京都港区港南 2-16-3 品川グランドセントラルタワー DLLAB Healthcare Day 2021 ※ 記載されている、 会社名、 製品名、 ロゴ等は、 各社の登録商標または商標です。 ※ 製品の仕様は、 予告なく変更することがあります。 予めご了承ください。 ※ 使用している画像はイメージです。 ※ 記載の内容は、 2021 年 5 月現在のものです。