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デジタル事業環境でのイノベーション

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エコシステムを形成するコンポーネント間の微妙な関係性を探索

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デジタル事業環境でのイノベーション

  1. 1. デジタル事業環境でのイノベーション 高橋 浩
  2. 2. 問題意識 • 技術変化が加速し、エコシステムが常態化して いる。 • また、複数産業を跨いだ一体化サービスも増加 している。 • これらは社会の複雑化を生じさせている。 • このような新たなビジネス環境に対して、既存経 営学はどのような知見を提供しているだろう か? 2
  3. 3. 話の流れ 3 • 技術変化が加速し、業界主導企業が大きく変化した 産業に半導体産業がある。 • この変化の背景には社会の複雑化や組織変化の要 因も指摘されている。 • このような半導体産業界の分析を、取引コスト理論 にリソースベース理論や進化経済学を組み合わせた 研究がある。 • 典型的2論文の紹介を通して、新たなビジネス環境 での新たな論点を探索する。
  4. 4. 検討の枠組み 4 • 半導体産業の業態は複雑化しており、エコシステム形 成が常態化している。 • 最近の半導体産業の盛衰は、最適なエコシステム形 成を巡っての挑戦/実験であった側面がある。 (半導体産業におけるイノベーションの”異なる源“は次ペー ジ) • 2論文は半導体産業の、半導体製造産業(Intel、 東芝など)(論文①)、半導体製造装置産業 (ASML,東京エレクトロンなど)(論文②)に焦点を あてている。 • エコシステムを形成するコンポーネント間の微妙な関 係性に着目して欲しい。
  5. 5. 5 半導体産業におけるイノベーションの“異なる源” Rahul Kapoor , Patia J. McGrath, “Unmasking the interplay between technology evolution and R&D collaboration: Evidence from the global semiconductor manufacturing industry, 1990–2010 より EDA (electronic design automation)ベンダー レジスト供給業者 東京応化工業 リソグラフィー装置供給 業者(ASML,ニコン) マスク供給業者 その他の装置供給業者 (1) (2) (3) (4) (5) 参考
  6. 6. 6 取引コスト経済 学(Williamson 1975, 1985) 知識ベース・ビュー(e.g., Nelson and Winter 1982, Kogut and Zander 1992, Teece et al. 1997) 取引コスト経済学 の比較論理を知識 ベース・ビューへ拡 張した理論 (Nickerson and Zenger 2004) 企業が作るもの vs 企業 が知るもの:技術変化 に直面した際,企業の製 品と知識境界は どのよ うに競争優位に影響を 与えるか(Kapoor and Adner 2012) イノベーション·エコシス テムにおける価値創造: 技術的相互依存の構造 が新技術世代で企業パ フォーマンスに如何なる 影響を与えるか(Adner and Kapoor 2010) これか らの (技術 変化が 加速す る)産 業への 適応可 能性 2論文の位置づけ 基本理論 2理論の合体 特定産業への適応 これからの可能性 半導体装置産業(リソグラフィー装置) 半導体製造産業(DRAM) ① ②
  7. 7. 企業が作るもの vs 企業が知るもの - 技術変化に直面した際、企業の製品と知識境界は どのように競争優位に影響を与えるか - R. Kapoor R. Adner 7 ①
  8. 8. 分析対象:1974-2005年のDRAM業界 • この期間、異世代DRAM製品が12回遷移 • 12世代DRAM製品で競合した36企業を分析 8
  9. 9. DRAM産業におけるコンポーネント技術 ① リソグラフィー装置 ② マスク ③ レジスト • 3コンポーネント間 では「 構造化され ていない技術的対 話」が発生する。 マスクは「 構造化されていない技 術的対話」が行われる橋 9
  10. 10. 前提条件 1. 垂直統合は、イノベーション·プロセスに跨る 知識蓄積の機会を提供するが、大規模な設 備投資と技術能力の広範なセットを要求す る。 2. アウトソーシング*は、コア機能に集中したり、 より広範なサプライヤー基盤を活用したり、 設備投資を削減することを可能にするが、学 習と適応性を妨げる危険性がある。 • 急速な技術変化を特徴とする産業では、2者 間のトレードオフは、生産と投資のより高い不 確実性の下で行われねばならない。 10 *:知識統合を伴う一形態
  11. 11. 仮説 仮説2(H2): 非統合型企業の外部コンポーネ ント知識は新世代製品の市場投入時間性能 を向上させる。 11 アウトソーシングと関係する「知識統合」に関わる仮説 仮説1(H1): 垂直統合型企業は非統合型企業よりも早期に新世代製品を市場 に投入できる利点がある。 仮説3(H3): 新世代製品が、コンポーネント変化起因よりもアーキテクチャ 変化起因の場合は、垂直統合型企業は非統合型企業よりもより大きい市 場投入時間の利点を持つ。
  12. 12. 近接印刷手法から投影印刷手法へ 12世代のDRAM製品世代遷移に見られる2つの変化要因 1 2 3 4 12 コ ン ポ ー ネ ン ト 起 因 8 回 ア ー キ テ ク チ ャ 起 因 4 回
  13. 13. • マスク製造をアウトソースする企業の商品化 (市場投入時期)は、製品世代がコンポーネ ント変化起因時は、垂直統合型企業と比べて 1.36倍遅い。 – この比率は、製品世代がアーキテクチャ変化起 因時は1.89倍に拡大する。 • 平均的に、垂直統合型企業はコンポーネント 変化起因の商品化ではアウトソース企業より 2.37四半期早い。 – この比率は、アーキテクチャー起因の商品化で は5.85四半期早い。 13 定量分析結果の一例
  14. 14. 発見された特筆すべき結果 企業の外部コンポーネント知識は、 (レジストはアウトソースするが、マス クは自分で生産する)部分統合型 企業の市場投入性能には影響を与 えないが、マスク、レジスト両方をアウ トソースする企業の市場投入性能を 向上させているように見える。 14
  15. 15. 何故、両部分とも統合しない企業が、部分的に統 合する企業よりも、外部コンポーネントの知識か らより多くの利点を得ることができるのだろうか? 『クリティカルな技術をアウトソースする企業 は、技術を所有している企業よりも、供給業 者の能力を開発するより多くのインセンティブ を持っているかもしれない』 15
  16. 16. “特筆すべき結果”を推測させる インタビュー記事 • 内部に独自のマスク部門を持たない企業は、 新技術開発期間に、マスク供給業者、レジス ト供給業者、ツール供給業者間のバランスを とる行動を実行する。 • 一方、内部マスク部門を持つ企業は、マスク 開発により多くウェイトを置き、異なる要素間 のバランス確保にあまり注意を払わない傾向 がある。 16
  17. 17. • 垂直統合 vs アウトソーシングの選択のようなガ バナンスの問題は、企業が解決しようとしている 問題の複雑性に依存する。 • 本研究で見られた『知識統合』型アウトソーシン グ(ファブレス/ファウンドリー形態)は、変化のス ピードアップに対応する垂直統合の一形態である と見做せる。 • この現象は、製品製造から製品設計を分離する ことで特徴づけられる業種(アパレル、建設業、 他)との類似性を想起させる。 17 本研究結果からの示唆
  18. 18. 18 イノベーション·エコシステムにおける価値創造: 技術的相互依存の構造が新技術世代で企業パフォーマンスに如何なる影響を与えるか R. Adner R. Kapoor ②
  19. 19. 19 分析対象:1962-2005年の半導体リソグラフィー業界 • この期間、9回のエコシステム変更を経験 • エコシステムの変化の度合いは様々(0~15) レジスト マスク レンズ 光源
  20. 20. 20 コンポーネントと補完品(1) 光源 マスク レンズ レジストが塗布された半導体ウェーハー コンポー ネント 補完品
  21. 21. 21 半導体企業 光源 レンズ リソグラフィー企業 マスク企業 レジスト企業 製造側の統合 消費側の統合 コンポーネントと補完品(2) コンポーネント 補完品
  22. 22. 22 補完品の課題 低い 高い コンポー ネントの 課題 低い エリア1: 内部的課題のみ 最初のプレーヤーが成功する。 先行者優位は標準レベル エリア3: 内部的課題 +消費に関する外部的制約 準備は急ぐが、待つのが適当 先行者優位は減少する。 高い エリア2: 内部的課題 +製造に関する外部的制約 先行者は更に優位になる。 エリア4: 内部的課題 +製造に関する外部的制約 +消費に関する外部的制約 先行者優位はどの問題が最初に解決する かによる。 イノベーション課題の評価
  23. 23. 23 フォロワーの新世代製品投入が年単位で遅れているにも関わらず 市場シェアが減少していない。若干、シェア上昇すらみられる。 フォロワーの新世代製品投入遅れ(年) リ ー ダ ー と 比 較 し た シ ェ ア 減 少 率 ( % ) コンポーネント課題が低く 補完品の課題も低い コンポーネント課題が高く 補完品の課題が低い コンポーネント課題が低く 補完品の課題が高い 主な結果
  24. 24. 24 焦点企業のリーダーシップ はあまり有益ではない。 遅れてきた参入者に 対して少し不利な立場 になることもある。 焦点企業は フォロワーに 対して優位性 増大 焦点企業は更 に大きな競争 優位性を獲得 補完品の課題 低い 高い コンポー ネントの 課題 低い エリア1: 内部的課題のみ 最初のプレーヤーが成功する。 先行者優位は標準レベル エリア3: 内部的課題 +消費に関する外部的制約 準備は急ぐが、待つのが適当 先行者優位は減少する。 高い エリア2: 内部的課題 +製造に関する外部的制約 先行者は更に優位になる。 エリア4: 内部的課題 +製造に関する外部的制約 +消費に関する外部的制約 先行者優位はどの問題が最初に解決する かによる。
  25. 25. • エコシステムの構成要素を(焦点企業と顧客企業 の視点から)コンポーネントと補完品に分類できる 場合がある。 • このような場合、補完品の課題解決に細心の注 意を払う必要がある。 (例:新光源に対応するリソグラフィー装置を完成させても、新 光源対応のレジストが完成していないような場合) • このような現象の解決は、エコシステムを構成す るパートナーとの戦略的契約締結や戦略的M&A などを想起させる。 25 本研究結果からの示唆
  26. 26. 新たな論点の例 • 問題の複雑性とガバナンス様式間には一定の 対応関係が存在し、その選択は、企業が解決し ようとしている問題の複雑性に依存する。 • 垂直統合の有効性は依然として存在するが、設 備投資が急激に陳腐化する業界では、この有効 性は悪化する。 • “知識統合”型アウトソーシングは変化の加速化 に対応する新たな形態の一つである。 • 焦点企業の競争優位性が顧客企業の補完品統 合によって決定されるとの視点は、エコシステム が常態化している最近のビジネス環境分析に重 要な示唆を提供する。 26
  27. 27. 応用分野は多様 • IT業界 クラウド基盤が普及したら 人工知能が進化したら ウェアラブルデバイスが普及したら クラウドソーシングが普及したら • 自動車業界 自動運転車が普及したら CO2削減基準が一段と厳しくなったら • 医療製薬業界 遺伝子検査が容易化したら • 製造業 3Dプリンターが普及したら 3Dコンテンツが商材になったら IoTが普及したら 27

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