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変革の遷移経路

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第4次産業革命が叫ばれDigital Transformationが言われる昨今だが、どのような形態で変革が社会に浸透して行くかについての情報発信が不足しているような気がしていた。どのように変革が社会に浸透して行くかは、過去の大きな変化の時代を見ても、「変革の力学」は技術面以外の側面も大きかった。特にこれからの変化のスピードは速いので、変化の構造や力学をもっと明確にしておく必要性が高いのではないか? こんな風に思っていたら、たまたまMLP(Multi Level Perspective)理論が目に留まった。根っこは進化経済学と技術遷移の橋渡しを試みた理論だが、現状のビジネス環境への良い適合性を持っているように感じられる。そこで、関連論文を読んで、その論文の枠組みで最近のビジネス動向(第4次産業革命)も若干論じてみた。

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変革の遷移経路

  1. 1. 変革の遷移経路 B-frontier研究所 高橋 浩 - イノベーションはどのようにして社会に普及して行くか - [スリランカ シギリア・ロック]
  2. 2. 問題意識 • 第4次産業革命が叫ばれDigital Transformationが言 われる昨今である。 • しかし、どのような形態で変革が浸透して行くかにつ いての情報は不足しているのではないだろうか? • 嘗ても大きな変革の時代はあった。 – 例:馬車から自動車へ。汚水垂れ流し環境から下水道シ ステム導入へ • このような大きな変化の時代の「変革の力学」は、技 術面以外の側面も大きかった。 • そこで、想定される変化の構造をもっと明確にする 必要があるのではないだろうか? • そうでないと、これからの変化は速いだけに、思わ ぬ混乱に突入する危険があるような気がする。 2
  3. 3. 目次 1. MLP(Multi Level Perspective)の概要 2. MLPに基づく社会技術遷移経路の類型 3. 環境問題へのMLPの適応 4. シェアリングエコノミーへのMLPの適応 5. 第4次産業革命に向けた示唆 3 MLP理論を元に考えてみる
  4. 4. MLP理論とは? • “社会的および技術的変化への洞察”を 提示する進化経済学と技術遷移の橋渡 しを試みた理論 • Frank W. Geels氏(マンチェスター大学ビ ジネススクール教授)などを中心に構築 されて来た。 • 導入的情報は下記に紹介されている。 http://projects.exeter.ac.uk/igov/wp- content/uploads/2012/12/DOWNLOAD-Multi-Level-Perspectives.pdf • Frank W. Geels氏による環境問題に適用 した講演(youtube)などもある。 https://www.youtube.com/watch?v=78GGhZEyWLI 4 1. MLP(Multi level perspective)の概要
  5. 5. • MLPではニッチ・イノベーション、社会技術レ ジーム、社会技術景観を区別する。 ・・・Rip and Kemp, 1998; Geels, 2002 ニッチ・イノベーションは根本的新奇性が出現す るミクロレベルを形成する。 社会技術レジームはNelson and Winter(1982) の技術レジームの拡張版で、広範な社会集団 コミュニティとその活動に対応する。 社会技術景観は、ニッチやレジーム当事者の 直接的影響を超えた(マクロ経済、深い文化 的パターン、マクロ政治的発展などの)外生的 環境を形成する。 5 Frank W. Geels , Johan Schot, “Typology of sociotechnical transition pathways”, Research Policy 36 (2007) 399–417
  6. 6. MLPの遷移パターンは3つある 1. 学習プロセス、価格/性能改善、強力なグ ループからの支援を通じた内部的勢力増強 によるニッチ・イノベーション 2. ニッチ・イノベーションの機会の窓創成によ るレジーム不安定化(社会技術レジーム) 3. レジームの圧力創成による景観レベルの変 化(社会技術景観) 加えて、社会技術レジームと社会技術景観 の発展によってより広範に影響を受けること を示したニッチ・レベルに向けての矢印(選択 圧力) 6
  7. 7. MLPにおけるアクティビティの構造 社会技術 レジーム (メソレベル) ニッチ・ イノベーション (ミクロレベル) 社会技術景観 (マクロレベル) 市場、顧 客の嗜好 景観開発は斬新機会への 窓を創造し既得領域にプ レッシャーをかける 新領域が景観 に影響を与える 社会技術レジームは「動的安定」にあり、 異なる次元で進行中のプロセスがある 科学 文化 産業 政策 技術 新設定は「機会の窓」を利用して突破する。 調整は、社会技術レジームで発生する。 要素はドミナントデザインで整列し安定 している。内部的駆動力が増大する。 (期待とネットワークを介して) ニッチに外部からの影響が発生 活動主体の小規模ネットワークが、期待とビジョンに基づいて、新 規性をサポートする。学習プロセスが複数次元で発生し(共同作 業)、異なる要素間の結合努力がシームレスに発生する。 時間Fig. 1. Multi-level perspective on transitions (adapted from Geels, 2002, p. 1263)より
  8. 8. • 選択圧力の例は・・ – 経済的圧力(競争、税金、手数料、規制、・・) – 広範な政治的、社会的、経済的な社会技術景観 開発(例えば、人口動態の変化、消費文化の上 昇、グローバリゼーションの新自由主義モデル) など • 下位レベルを操作する方法は様々ある。 • 組織理論では「個人、組織サブシステム、組織、 組織人口、組織分野、社会、世界システム」な どの組織レベルを区別する。 • その中で、社会技術レジームの遷移は“組織” レベルに位置付けられる。 8
  9. 9. ニッチ・イノベーションと社会技術レジーム • 両者は規模と安定性は異なるが類似の構造を 持つ。 社会技術レジームはコミュニティが大きく安定 ニッチ・イノベーションはコミュニティが小さく不安定 • 両方とも組織(相互作用するグループのコミュニ ティ)の性質を持っている。 • 両方とも行動を調整する特定のルールを共有し ている。 社会技術レジームはルールが安定しており明確に表 現済み ニッチ・イノベーションはルールが不安定であり「作成 途上」 9 2. MLPに基づく社会技術遷移経路の類型
  10. 10. ニッチ・イノベーションと 社会技術レジームの比較と移行性 • ニッチ・イノベーションと社会技術レジームの重 要な違いは、制約を課す影響が後者がはる かに大きく強いということである。 • ニッチ・イノベーションは、ソーシャル・ネット ワークが大きく成長し、ルールがより安定して 制約的になり、エージェンシーとの関係が逆 転する時に社会技術レジームに変わる。 10
  11. 11. 一方、社会技術景観とは • 他の2レベルとは異なる種類の構造である。 • 2レベルは社会学的構造を通じて機能するが、 社会技術景観は行動に異なった影響を与え る。 • 社会技術景観は決定しないが、他よりもより 簡単な行動を取る構造的「力の勾配」を提供 する。 • 社会技術景観はその意味では比較的静的で、 生物学的進化における土壌条件、河川、湖 沼、山脈に匹敵する。 11
  12. 12. 相互作用のタイミング • 特に重要なのは、ニッチ・イノベーションの 状況と社会技術レジームに対する景観圧 力のタイミングの関係である。 ニッチ・イノベーションがまだ十分に発達して いないときに景観圧力が発生すると、遷移経 路は完全に開発された時以上に異なってくる。 但し、ニッチ・イノベーションが「完全に開発さ れた」かどうかは完全には分からない。 12
  13. 13. 相互作用の性質 – 景観開発強化は、レジームに安定効果をもたらすが遷移 の駆動力とはならない。 – 破壊的な景観開発はレジームに圧力をかけ、変化のため の衝動を作り出す。 ① ニッチ・イノベーションは既存レジームを置き 換えることを目指す時、レジームと競争関係 になる。 ② ニッチ・イノベーションはパフォーマンス向上の ため既存レジームに能力強化アドオンとして 採用される時、共生関係を持つ。 ⇒この2基準の組合せを利用して4つの遷移経 路を定義できる。 13
  14. 14. 変換 • ニッチ・イノベーションがまだ十分発達してい ない時期に、中程度の景観圧力(「破壊的変 化」)がある場合、レジーム事業者は開発経 路とイノベーション活動の方向を修正すること によって対応する。 14 • 中程度の景観圧力は、破壊的な景観変化の 早い段階で発生する。 • ニッチ・イノベーションは十分に開発されてい ないため、レジームに景観圧力を利用するこ とができない。 遷移経路1
  15. 15. 15 レジーム知識との「距離」がそれほど大きくない場合、レジーム事業者は外部知識を取り込む。 共生的ニッチ・イノベーションはレジームを強化し、基本アーキテクチャを混乱させない。 一例は、汚水ダメから下水道システムへのオランダの衛生移行 下水道システムは破壊的ではなかった (煉瓦、パイプ、水流、ポンプは既に存在)。下水 道管形状、下水道斜面、流速、土壌条件などが 追加知識 時間 桶収集システムの1892年の漫画
  16. 16. 再構成 • ニッチで開発された共生的イノベーションは、 当初はローカルな問題を解決するためにレ ジームで採択される。 • その後、レジームの基本アーキテクチャにお ける更なる調整を引き起こす。 16 • 採択された新奇性が古い要素と新しい要素の新 結合を生み出し更なる調整につながる。 • これは、技術変更やユーザーの慣習、認識の変 化につながる。 • 時間経過とともに景観圧力の影響を受けてレ ジーム変更が起きる。 遷移経路2
  17. 17. 17 レジームの基本アーキテクチャに大きな変化が起きる 複数の技術(農業、病 院、小売業など)の相 互作用を通じて機能 する分散型社会技術 システムに特に関連し ている。 一例は、伝統的な工場から量産工場への米国の遷移
  18. 18. 18 19世紀の工場の労働環境(シャフト、ベルトで構成されている) 機械がラインシャフトに固定されており、配置の問題、摩擦や非柔軟性によるエ ネルギー損失があった。 電気モーターによるユニット駆動工作機械の登場で柔軟な配置や空間の有効 活用が可能になり、新しい工場レイアウトの機会が生まれた。
  19. 19. 置換 • ニッチ・イノベーションが十分に発達した瞬間 に、景観圧力(「特別ショック」「雪崩的変化」 「破壊的変化」)が大きければ、後者が既存レ ジームを破壊し置き換える。 19 • 根本的イノベーションが発生しているがレジームが安 定しているので立ち往生している。 • レジーム当事者は漸進的イノベーションで解決できると 考えている。 • 従って、ニッチ・イノベーションにほとんど注意を払わない。 • 景観圧力がなければ再生プロセスに留まる。 • 「特別ショック」、「雪崩的変化」「破壊的変化」が 加わると技術的代替経路になる。 遷移経路3
  20. 20. 20しばしば現職企業の崩壊につながる! 歴史的事例は帆船が蒸気船に置換(英国) スクリュープロペラ改良、鉄製船への シフト、石炭効率の向上、ほか 帆船 1840年代後半欧州から米国に大量移 民発生(アイルランド・ポテト飢饉ほか)。ス エズ運河開通で蒸気船有利化など 特別ショック 蒸気船関連ニッチ・イノベーション
  21. 21. 21 帆船 vs 蒸気船 Frank W. Geels, “Technological transitions as evolutionary reconfiguration processes: a multi-level perspective and a case-study”, Research Policy 31 (2002) 1257–1274 The Thomas Lawson, 1902-1907 蒸気船の登場にも関わら ず、帆船の大型化や高速 クリッパー船の開発は進 められていた。
  22. 22. 整列解除と再整列 • 景観変化が極めて大きく突然の場合、レジーム 事業者への信仰が失われるかもしれない。これ がレジームの整列解除と腐敗を招く。 • ニッチ・イノベーションが十分に発達していない 場合、明確な代替案は存在しない。複数ニッチ・ イノベーション出現の余地があり、最終的には特 定イノベーションが支配的になり新しい再整列が 発生する。 22 • レジームは重大な内部問題、崩壊、侵食、整 列解除を経験する。 • 比喩的に言えば、レジームの「空洞化」につ ながる。 遷移経路4
  23. 23. 23 一例は、馬車から自動車への米国での遷移 しかし、T-Ford(1908)は、 さらなる改善とプロセス・イ ノベーションの明確な指針 を提供するドミナント・デザ インを確立した。 馬車 市電は馬車会社によっても支 援され一時急速に広がった。 市電 自動車 自転車
  24. 24. 24 4事例のまとめ 汚水垂れ流し ⇒下水道シス テム(オラン ダ) ・1850年代、医師から感染症と汚染水 の関連が指摘 ・1870年代~80年代工業化で環境悪化 ・1890年代、清潔さを求め衛生運動へ ・1893年初めてハーグ市に下水道シス テムが導入 下水道システムは技術的 には破壊的ではない。 既存知識にアドオンした共 生的ニッチ・イノベーション による変換 伝統的工場⇒ 量産工場(米 国) ・既存工場は機械がラインシャフトに固定さ れていたため、配置、柔軟性に問題 ・電気モーターの登場でユニット駆動電動機。 機械の柔軟配置、スペースの有効利用が 可能に。 一つの画期的イノベーショ ンで駆動されているのでは なく、複数融合。最終的に は基本アーキテクチャ変更 帆船⇒蒸気船 (英国) ・1850~60年代、帆船は大型高速化 ・蒸気船は存在していたがニッチ市場 ・蒸気船拡散加速事件が次々に発生 ・1870~90年代航海競争で帆船代替 ニッチ市場で新技術発生。 しかし、帆船メーカーは蒸気 に移行できず 馬車⇒自動車 (米国) ・19世紀後半「雪崩変化」で馬ベース都 市交通に多様な問題発生(馬糞尿他) ・市電が登場。1890年代には自動車も ・1908年T-Fordがドミナント・モデルを確立 ・1920年代、市電と自動車の競争激化 1890年代には多数の新型 が登場し共存。市電がドミナ ント。それを自動車が代替。 変換 整列解除と再構成 置換 再構成
  25. 25. 遷移の予想パターン • 景観圧力が「破壊的な変化」の形を取る場合、 遷移経路のシーケンスは、変換で始まり、そ れから再構成につながり、そしておそらく置換 または整列解除と再整列に続く可能性がある。 25 • 当初レジーム当事者は景観変化が緩やかだと認識す る。 • 景観圧力が高まり問題が悪化すると、共生的ニッチ・イ ノベーションを組み込み、更には抜本的ニッチ・イノ ベーションの発展を促す。 • しかし、レジーム問題が深刻化すると、現職事業者た ちへの信仰が失われ始める。 例示:気候変動は輸送やエネルギーレジームに一連 の遷移を引き起こす破壊的変化になるかもしれない。
  26. 26. 26 遷移の経路 主要当事者 アクションのタイプ キーワード レジーム当 事者と外部 グループ(社 会運動) 部外者が批判。 現職当事者が レジーム規則を調整(目標、指 針、原則、検索規則などを) 外圧、制度的権力闘争、 交渉、レジーム規則の 調整 レジーム当 事者とサプラ イヤー レジーム当事者は新規サプライ ヤーによって開発されたコン ポーネント革新を採用。 新旧サ プライヤー間の競争 経済的および機能的理 由で、累積的コンポーネ ントを変更。 新しい組み 合わせ、解釈の変更、 新実施規定で継続 現職企業 vs 新企業 新規参入者は既存レジーム技 術と競合する新奇性を開発 既存企業と新企業間の 市場競争と権力闘争 新ニッチ・イ ノベーター 深い構造変化はレジームに強 い圧力をかける。現職者は信仰 と正当性を失う。複数の新奇性 の出現が続く。新規参入者は、 資源、注意喚起、正当性を競う。 最終的に一つの新奇性が勝ち 残りレジーム再構築につながる。 侵食と崩壊、複数の新 奇性、長引く不確実性と 解釈の変化、新しい勝 者登場と再度の安定 4遷移経路のまとめ 変換 整列解除 と再構成 置換 再構成
  27. 27. • Rogersのイノベーション普及論などに比較し て、3レベル間相互作用のタイミングと性質か ら抽出した「変革の4類型」は過去の典型事 例との良好な総合的マッチング性が有る。 • 特に上からの景観圧力と下からの「機会の 窓」を利用した突破のせめぎ合いによる類型 化は現状のビジネス環境へ適合している。 • ただ、4類型を選択する基準が曖昧で、分類 した後の示唆・指針が不充分な印象がある。 • 分析対象のダイナミック性の可視化には有効 27 ぶっちゃけ、MLP理論をざっくり謂うと
  28. 28. 電力システム再構築のイノベーション 再生可能エネルギー:太陽光、風力、バイオ パワー 新規参入者と(分散型)ビジネスモデル:コ ミュニティエネルギー、市民生産者、農家 レジーム技術の改善:CCS、シェールガス 電力貯蔵(バッテリー)、バックアップ容量、能 力取引市場 グリッド拡張、スーパーグリッド、より大きな柔 軟性と双方向フローを備えたスマートグリッド スマートメーター、需要対応料金、ピークシフ ト、新エネルギーサービス 28 3.環境問題へのMLPの適応 by F.W.Geels氏プレゼン Frank W. Geels, “Reconceptualising the co-evolution of firms-in-industries and their environments: Developing an inter-disciplinary TripleEmbeddedness Framework”, Research Policy 43 (2014) 261– 277 と ”Incumbent firms in green growth and system innovation” (by Frank Geels in slideshare) より
  29. 29. 輸送システム再構成のイノベーション 代替電源を搭載した車:BEV、HEV、FCV 新しい燃料または充電インフラ 新しいビジネスモデル:カーシェアリング、 カープール、Uber スマートチケットとインターモーダル輸送シス テム ICT:動的交通管理、自動運転車 列車、トラム(市電)、バス、サイクリングへの モーダルシフト 29
  30. 30. 知識ギャップと優先事項 1) 問題と潜在的解決策のため既存企業を理解す る。 ジレンマとグリーン再指向の不確実性を理 解する。 2) 企業を多次元として理解する。 イノベーション戦 略は幅広い企業戦略によって形成されている。 どのように/何時、企業は実際に(「実験を超え て」)新技術に取り組むか? 3) 「ICT、ナノテク、バイオテクノロジー、先進素材」 のような単独の技術に集中してはいけない。複 数のイノベーションがどのように特定システム/ セクターを再構成できるかを分析する必要があ る。 30
  31. 31. グリーン再配向プロセスは緩慢 1) 抵抗:フレーミング化と政治戦略(「あまりにも難しく、コストがか かりすぎ、問題が不明確」) 2) ヘッジ:a)抵抗を続ける、b)代替案を探求し積極的約束や談話で 補完する。 3) 多様化:a)既存の資産を活用する、b)新市場を開拓する/ポジ ションを賭ける/先行者利得を確保する。 4) 再編:経済戦略を変える、使命を見直す、生産拡大を図る(規模 の経済) 決定的プロセスはない(「動けなくなったり、遅くなったりす るかもしれない」) 核となる駆動力は: 1) 問題への世間一般の関心の高まり(しかし減少する可能性もあ る) 2) 政策を強化する(しかし、弱めるかもしれない) 3) 市場の需要の具体化(再方向付けのために重要) 31
  32. 32. 多次元応答戦略が必要 • 経済的ポジショニング戦略: サプライチェーン 管理、マーケティング、価格設定 • イノベーション戦略: ナレッジマネジメント、R&Dコラ ボレーション、製品開発 • フレーミング戦略: 広報、広告、情報キャンペーン、 評判管理 • 企業の政治戦略: ロビー活動、財政的インセンティ ブ、情報戦略、対決戦略 32
  33. 33. 企業に対する2つの環境からの選択圧力がある: 1) 社会政治環境:評判、合法性 2) 経済環境:資源、利益、競争力 33Fig. 1. Triple Embeddedness Framework of industries (the industry regime is represented with dotted lines to emphasize that they are a different kind of context than the two external environments). 産業レジーム 社会政治環境経済環境
  34. 34. 現職企業のグリーン再指向は難しい • サンク投資、ミルクアセットを保護する(移行を遅 らせる) • 戦略的な方向転換はリスクが高い(しばしば失 敗する) • 不確実な市場:消費者の需要、気まぐれな政策 慣性力とロックインを克服するには、企業に対す る外部からの圧力が必要である。 • 市場/消費者 • 政策立案者 • 市民社会、社会運動 34
  35. 35. ボトムアップ新規参入者への期待, しかし・ • スキルの欠如 • 金融へのアクセスの制限 • 人口の少数部分の表示 • 主流と比較して過激過ぎ • スケールアップの困難 現職企業の役割を担い続けられる代替的経路 1) レジーム変換: • [段階的改善] • 現職企業の急進的イノベーションへの転換 2) レジーム再構成: • 現職者と新規参入者の提携 • イノベーションが既存のシステムに適用され、アーキテク チャが変化(スマートグリッド、複合輸送、改修など) 35
  36. 36. シェアリングエコノミー: 持続可能性への道かあるいは新自由主義的資本主義の悪夢のような形か? • AirbnbやUberのシリコンバレー成功物語は活 気に満ちたシェアリングエコノミー話を媒介 • シェアリングエコノミーは持続可能性への潜 在的経路から新自由主義の悪夢に至るまで 矛盾した多数の経路に枠付け • これらの枠組みは全て確立された社会技術 的および経済的構造(レジーム)を分散化し 破壊するという共通のビジョン(ニッチ・イノベー ション)を共有 36 5.シェアリングエコノミーへのMLPの適応 by C.Martin論文より Chris J. Martin, “The sharing economy:A pathway to sustainability or a nightmarish form of neoliberal capitalism?”, Ecological Economics, 121 (2016) 149–159
  37. 37. シェアリングエコノミーは・・・ ①経済的機会、 ②消費のより持続可能な形態、 ③分散化され公平で持続可能な経済への経路 ・・・ポジティブ要因、および ④無秩序な市場の創出、 ⑤新自由主義パラダイムの再強化、 ⑥イノベーションの支離滅裂な領域 ・・・ネガティブ要因 に識別/分解できる。 37
  38. 38. 38 民泊 ライドシェア 雇用市場リソース共有・循環プラットフォーム レジーム ニッチ 基本的枠組み シェアリングエコノミーのニッチとそれと整合するレジーム 生産と消費 廃棄物 旅行 移動 雇用
  39. 39. 39 ①経済的機会 ②消費のより持続可能な形態 ③分散化され公平で持続 可能な経済への経路 新自由主義、環境劣化、気候変動、不平等の拡大 ⑤新自由主義パラダイム の再強化 シェアリングエコノミー強化をフレーミングするMLP図式 生産と消費 廃棄物 旅行 移動 雇用 ニッチ・イノベーショ ンがシェアリングエ コノミーに向けてレ ジーム/景観に変 換する機会 レジーム・アク ターがレジー ムにシエリング エコノミーを統 合する機会
  40. 40. 40 ④無秩序な市場の創出 ⑤新自由主義パラダイム の再強化 ⑥イノベーションの 支離滅裂な領域 シェアリングエコノミーへの抵抗と批判をフレーミングするMLP図式 ポジティブな影響とネガティブな影響が拮抗している状況か? 生産と消費 廃棄物 旅行 移動 雇用 ニッチ・アクターが シェアリングエコノ ミーの発展を批判 しているところ レジーム・アク ターがシエリン グエコノミー・ ニッチの開発 に抵抗してい るところ
  41. 41. • 第4次産業革命も次のようなシーケンスを踏 む可能性があるのではないか? • その際、第3次産業革命で良い成果を挙げら れなかった日本が相対的に大きな障害に遭 遇する可能性がある。 • 単に個別ニッチ・イノベーションに目を奪われ るのでなく、レジーム・レベルの取組みへの配慮 と戦略が必要なのではないか? 41 5. 第4次産業革命に向けた示唆 変換 再構成 置換 整列解除と 再構成
  42. 42. 42 MLPによる第4次産業革命のアクティビティ推測 社会技術 レジーム (メソレベル) ニッチ・ イノベーション (ミクロレベル) 社会技術景観 (マクロレベル) 市場、顧 客の嗜好 科学 文化 産業 政策 技術 時間 ニッチに外部からの影響が発生 少子高齢化、低成長、保護主義、格差拡大、・・ 旅行 ライドシェア スマートファ クトリー スマートグ リッド IoT Big Data AI クラウド モバイル アナリティックスら のデジタル技術 第4次産業革命
  43. 43. 43 リソース共有・循環 旅行(民泊:Airbnb) 車・ライドシェア(Uber) 雇用市場 スマートファクトリー スマートリテール スマートグリッド スマートインフラストラクチャ スマートハイウェイ(自動運転) スマートシティ スマートホーム(エンターテインメント) スマートホスピタル(ヘルスケア) 第4次産業革命を構成する各分野の遷移経路(試案?) 変換 再構成 置換 整列解除と再構成 整列解除と再構成 整列解除と再構成 整列解除と再構成 置換 置換 置換 整列解除と再構成 置換 変換 再構成 置換 変換 再構成 置換 変換 再構成 置換 変換 再構成 置換 変換 再構成 置換 整列解除と再構成 置換 シェアリングエコノミー
  44. 44. 知識ギャップと優先事項 1) 問題と潜在的解決策のため既存企業を理解す る。 ジレンマと第4次産業革命指向の不確実性を 理解する。 2) 企業を多次元として理解する。 イノベーション戦 略は幅広い企業戦略によって形成されている。 どのように/何時、企業は実際に(「実験を超え て」)IoT他の新技術に取り組むか? 3) 「ICT、IoT、BD、AI、クラウド」のような単独な技 術に集中してはいけない。複数のイノベーション がどのように特定システム/セクターを再構成で きるかを分析する必要がある。 44 「第4次産業革命」をF.W.Geels氏プレゼンに代替的に挿入①
  45. 45. 第4次産業革命も全体としては緩慢かもしれない 1) 抵抗:フレーミング化と政治戦略(「あまりにも難 しく、コストがかかりすぎ、問題が不明確」) 2) ヘッジ:a)抵抗を続ける、b)代替案を探求し積 極的約束や談話で補完する。 3) 多様化:a)既存の資産を活用する、b)新市場を 開拓する/ポジションを賭ける/先行者利得を確 保する。 4) 再編:経済戦略を変える、使命を見直す、生産 拡大を図る(規模の経済) 決定的プロセスはない(「動けなくなった り、遅くなったりするかもしれない」) 45 「第4次産業革命」をF.W.Geels氏プレゼンに代替的に挿入②
  46. 46. 現職企業の抜本的組織改革は難しい • サンク投資、ミルクアセットを保護する(移行を遅 らせる) • 戦略的な方向転換はリスクが高い(しばしば失 敗する) • 不確実な市場:消費者の需要、気まぐれな政策 慣性力とロックインを克服するには、企業に対す る外部からの圧力が必要である。 • 市場/消費者 • 政策立案者 46 「第4次産業革命」をF.W.Geels氏プレゼンに代替的に挿入③
  47. 47. 新規ベンチャー企業への期待, しかし・ • スキルの欠如 • 金融へのアクセスの制限 • 主流と比較して過激過ぎ • スケールアップの困難 現職企業の役割を担い続けられる代替的経路 1) レジーム変換: • [段階的改善] • 現職企業の急進的イノベーションへの転換 2) レジーム再構成: • 現職者と新規参入者の提携 • イノベーションが既存のシステムに適用され、アーキテク チャが変化 そして、変化のスピードが速いので、更には置換 や整列解除と再構成へ 47 「第4次産業革命」をF.W.Geels氏プレゼンに代替的に挿入④
  48. 48. 結局、第4次産業革命は・・ 既存技術へのアドオンでは済まないので全体 としては変換ではないであろう。 画期的な複数イノベーションに基づいているの で、再構成的性格は保有するだろう。しかし、こ れには留まらない分野も多いと思われる。 現在の安定に安住していると変化対応に出遅 れ置換に巻き込まれる危険性がある。 もっとも可能性がありそうなのは整列解除と再 整列の混乱に投げ込まれることだろうか?最終 的ドミナント成立までに時間を要すると思われ るのでこの間を生き抜く戦略が求められる。 48
  49. 49. 第4次産業革命取組みへの示唆 レジーム・アクター(改革責任者)の視点で・・ 単独技術ベースのニッチ・イノベーションにあまり 囚われない。 レジームに対する景観圧力とニッチ・イノベー ションの成熟度の関係、および導入時期のタイミ ング、性質(競争的か、共生的か)を把握する。 既存レジームから新規レジームへの遷移が発生 しそうな場合、遷移経路類型を推定し適切な対 応を企画する。 遷移経路は各国の産業、政治、科学、文化で異 なるので、米国、ドイツ他の情報に過度に依存 せず過度なベンチマーキングにも捕らわれない。 注意深い観察で独自の最適経路を発見する。 49
  50. 50. ぶっちゃけ、現状をざっくり謂うと • 今話題の技術はほどほど完成度が高いもの もあるが、それらを組み合わせてマネタイズす ることではまだまだ未完成 • そして、成功した場合は「破壊的な変化」が発 生することは証明済み~Uber,Airbnbなど • 低成長、少子高齢化、環境劣化、など景観圧 力増大の中で変革への期待は増幅中 複数のニッチ・イノベーション出現の余地 がある状況。そして、整列解除と再整列 による破壊的変化を想定して抜かりない 準備をすべき状況か 50

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