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IIJmio meeting 28 MVNOの音声通話料金が安くなるって本当?指定設備卸の適正性検証とは何か
- 1. © 2020 Internet Initiative Japan Inc. ©Internet Initiative Japan Inc. 1
2020/10/10
佐々木 太志
IIJmio meeting 28
MVNOの音声通話料金が安くなるって本当?
- 「指定設備卸の適正性検証」とは何か
- 2. © 2020 Internet Initiative Japan Inc. ©Internet Initiative Japan Inc.
おさらい〜MVNOとは
MVNOは、携帯電話事業者(MNO)の設置する設備の貸し出しを受け、それ
に付加価値をつけて、独自の携帯電話サービスとして提供するビジネス
モデル
設備の貸し出しに当たっては、その対価として網使用料をMNOに対して支
払っている
網使用料が高額だと、MVNOのビジネスモデルが成り立たず、市場競争が
起きなくなってしまうため、MNOが貸し出す際の網使用料の一部は電気通
信事業法で規律されている
利用者 MVNO MNO(ドコモ/KDDI)
通信料金 接続料
無線ネットワーク携帯電話サービス
規律されているもの 規律されていないもの
• データ通信の接続料
• データ通信専用SIMの月額基本料
• SIMカードの提供料金
• 等
• 音声通話料金
• 音声通話機能付きSIMの月額基本料
• 国際ローミング
• 等
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MNOとMVNO間の契約の種別(1)
MVNOとMNOの契約には、次の2種類が存在する
• 卸電気通信役務(電気通信事業法第29条第1項10)
• 事業者間接続(電気通信事業法第32条)
後者は、MNOとMVNOのネットワークを接続する場合のみ成立する
• 前者は、MNOとMVNOのネットワークの接続の有無に関わらない
出所:総務省「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」
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MNOとMVNO間の契約の種別(2)
卸電気通信役務
MNOから見ると、MVNOが契約者となる(ように見える)
MVNOは、そのSIM(を含めた回線契約の全て)に自社のサービスを加え、
利用者に再提供する
• SIMカードの又貸しのイメージ
MNOとMVNO間のネットワークの接続はあってもなくてもよい
出所:総務省「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」
この「サーバ等」は付加価値をつけるた
めのもの。ない場合もあるが、その場合
はMNOの提供条件そのままのサービ
スをMVNOが提供することに
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MNOとMVNO間の契約の種別(3)
事業者間接続
MNOの提供区間(無線区間〜ゲートウェイ)のサービスはMNOが利用者に
提供し、POIと呼ばれる責任分界点より先におけるサービスはMVNOが利
用者に提供する
• ただし、MNOは利用者の個人情報は持たず(名無しの契約)、利用者はMVNOを介
して申し込みをすることになる
MNOとMVNO間のネットワーク接続は必須
出所:総務省「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」
この「サーバ等」は存在しなくては
ならない。
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MNOとMVNO間の契約の種別(4)
6
どう違うのか(まとめ)
事業者関接続 卸電気通信役務
根拠となる法律 • 電気通信事業法第32条
• 同第34条
• 同第35条
• 電気通信事業法第29条第1項
10(用語の定義のみ)
• 同第35条第3項〜第10項
• 同第38条の2
規律 接続応諾義務があり、加えて、ドコモ、
KDDI、ソフトバンク、UQ、WCP等
(いわゆる「二種指定事業者」)には
• 接続約款の総務大臣への届出義務
• 接続約款以外での接続の禁止
• 接続料の算定は省令で規定
が課せられている
基本的には事業者間での民間ベー
スの協議による。協議が不調の場
合は事業法第35条(接続に関す
る命令等)を一部準用して、総務
大臣は協議の再開を命令したり、
裁定(契約条件を決定)をしたり
することができる
適用可能な役務 事業者間の電気的接続が存在する必要
あり。具体的にはデータ通信
事業者間の電気的接続は不要であ
り、様々な役務に適用可能
MVNOにおける
ケース
• データ通信の接続料
• データ通信専用SIMの月額基本料
• SIMカードの提供料金
• 音声通話料金
• 音声通話機能付きSIMの月額
基本料
• 国際ローミング
データ通信は「卸電気通信役務」で利用する
ことも可能だが、その提供条件は接続で
決められた条件を準用
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もう少し広い視野で見たときの「事業者間接続」
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もともと、「事業者間接続」はMVNOのための制度ではない
• 電電公社が民営化し、電話業務が他の電話会社にも開放されたときに、NTTが事
業者間接続を拒む(電電公社時代に独占していた利用者の回線に電話がかからな
いようにする)ことが許されれば、新電話会社が市場参入できない
• そのため、一定程度のシェアを持つ事業者に対して、電話網の接続を義務付け
(接続応諾義務)、その接続料金を規律する制度が登場⇨事業者間接続
二種指定事業者に課された開放義務
• ドコモ、KDDI、ソフトバンク、UQ、WCP等の二種指定事業者に課された「法定機
能」は、総務省令(第二種指定電気通信設備接続料規則)で定められている
区分 内容
音声伝送交換機能 音声通話に関する事業者間接続
データ伝送交換機能 MVNO向けデータ通信
番号ポータビリティ転送機能 MNPで他社に転出した電話番号への通話について、現
在契約中の他社への転送を行う事業者間接続
ショートメッセージ伝送交換機能 国内携帯電話事業者間でのSMSに関する事業者間接続
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接続を利用して提供しているMVNOの音声通話サービス
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どのように接続を使っているのか
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NTTドコモ/KDDI
音声交換機
中継電話会社
音声交換機
相手先電話会社
音声交換機
事業者間接続 事業者間接続
電話をかける人
(IIJmioユーザ)
電話を受ける人
事業者間接続
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普通に電話をかけた場合
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呼の流れ
• NTTドコモの交換機は、相手先電話番号を調べて、どの電話会社の交換機を呼び
出せばいいかを判断し、事業者間接続を使って電話を繋げる
• その際、相手がMNPしていれば番号をもともと提供していた電話会社がMNP転送
機能(これも事業者間接続)を使って呼を転送する
お金の流れ(タイプDの場合)
• IIJmioユーザ → IIJ → NTTドコモ → 相手先電話会社
NTTドコモ/KDDI
音声交換機
中継電話会社
音声交換機
相手先電話会社
音声交換機
事業者間接続 事業者間接続
事業者間接続
電話を受ける人電話をかける人
(IIJmioユーザ)
30秒あたり20円
(通話料)
30秒あたり14円
(卸料金)
相手先電話会社
の接続料
- 11. © 2020 Internet Initiative Japan Inc. ©Internet Initiative Japan Inc.
呼の流れ
• NTTドコモの交換機は、プレフィックス番号(アプリが相手先電話番号の先頭に
つける番号、みおふぉんダイアルでは「0037691」)を見て、中継電話会社の交
換機に事業者間接続を使って呼を電話を繋げる
• 中継電話会社は、相手先電話番号を調べて、事業者間接続を使って電話を繋げる
お金の流れ(タイプDの場合)
• IIJmioユーザ → IIJ → 中継電話会社 → NTTドコモ/相手先電話会社
みおふぉんダイアルアプリで電話をかけた場合
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NTTドコモ/KDDI
音声交換機
中継電話会社
音声交換機
相手先電話会社
音声交換機
事業者間接続 事業者間接続
事業者間接続
電話を受ける人電話をかける人
(IIJmioユーザ)
30秒あたり10円
(通話料)
30秒あたり?円
(卸料金)
NTTドコモおよび
相手先電話会社
の接続料
- 12. © 2020 Internet Initiative Japan Inc. ©Internet Initiative Japan Inc.
なぜみおふぉんダイアルは安く提供できているのか?
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ドコモ/KDDI設備から直接相手先電話会社の交換機に繋ぐ場合に支払う
卸料金(タイプDの場合30秒14円、タイプAは非開示)より、中継電話会
社がIIJに請求する料金の方が安いから
• すみません、具体的な金額は企業秘密です…
ドコモの卸料金(30秒14円)は、2014年のみおふぉん(音声通話機能付
きSIM)の提供開始から全く変わっていない
ドコモが相手先電話会社に支払う事業者間接続の料金は、年々下がって
いる
このギャップが昨今、問題となっている
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音声接続料の推移
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(前述の通り)3MNOの音声接続料の計算方法は総務省令により規定され、
その条件は届出の義務がある
2002年からの3MNOの音声接続料の推移
出所:総務省「接続料の算定等に関する研究会」第30回の参考資料より引用
30秒あたりに換算すると、ドコモ1.2円、
KDDI1.68円、ソフトバンク1.71円
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接続と卸の代替性
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接続と卸の代替性
• 仮に、MNOのMVNO向け音声卸料金が下がらないとしても、中継電話事業者向け接
続料金は下がっているので、中継電話事業者からMVNOへの卸料金は低減が見込め
る→MVNOの利用者向け料金も下げられる
• IIJmioでは、これまで、通話定額オプションの拡充という形で中継電話事業者からの値
下げ分を利用者に還元
• このように、接続料金が厳しく規律された事業者間接続をベースとした役務(み
おふぉんダイアル)が、卸電気通信役務で提供される役務の代わりに使うことが
できる場合、卸電気通信役務の提供条件は厳しく規律しないことで問題ない
• 「揉めたときだけ紛争処理」で良い
• このような関係を接続と卸の「代替性」と呼ぶ
みおふぉんダイアルはMNOが提供する電話サービスを代替できるか?
• 総務省の研究会(接続料の算定等に関する研究会)では、MVNO委員会の提出した
意見を踏まえ、「代替性」を現時点では否定
• その理由として、専用アプリを使わなくてはいけない(もしくは手動でプレ
フィックス番号を付けないと利用できない)ことが、利用者にとって不便である
ことが挙げられた
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プレフィックス自動付与機能
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プレフィックス自動付与機能
• 「接続料の算定等に関する研究会」の席上、NTTドコモが提案した新機能
• これまで、利用者(もしくは利用者の端末上のアプリが)プレフィックス番号を
付与することで初めて利用可能だったみおふぉんダイアル(中継電話)を、音声
交換機で自動的にプレフィックス番号を付与することで利用できるようにする仕
組み
• これにより、利用者はアプリを使うことなくみおふぉんダイアルの恩恵を受けら
れるようになる
• NTTドコモとしても、この機能提供により「代替性」が認められれば、音声卸料
金の規律を免れる(かもしれない)
• その後、KDDI、ソフトバンクも相次いでプレフィックス自動付与機能の提供の方
針を表明
代替性再評価
• まだ、現時点ではプレフィックス自動付与機能は提供されていないことから、現
時点では研究会の結論は変わらず、「代替性」なしの判断のまま
• 今後、実際に提供が始まった時点で、代替性の再評価を行うことになる
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呼の流れ
• NTTドコモの交換機は、MVNOの回線からの電話の発信の場合、中継電話会社の交
換機に事業者間接続を使って呼を繋げる
• その際、プレフィックス番号を付与するアプリ等は使う必要がなく、電話アプリ
で電話をするだけで自動的に中継電話会社が選択される仕組み
• 中継電話会社は、相手先電話番号を調べて、事業者間接続を使って電話を繋げる
お金の流れ(タイプDの場合)
• 通常の中継電話の場合と同じ
プレフィックス自動付与機能が実現した場合
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NTTドコモ/KDDI
音声交換機
中継電話会社
音声交換機
相手先電話会社
音声交換機
事業者間接続 事業者間接続
事業者間接続
電話を受ける人電話をかける人
(IIJmioユーザ)
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「代替性」なしの場合の検証
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重点的な検証
• 2020年9月に取りまとめられた「接続料の算定等に関する研究会」第4次報告書
では、「代替性」なしとされた音声卸料金については、以下の検証を行うことと
されている
• 目的:料金水準の適正性確保
• 実施方法:卸料金が、MNOの適正な原価に適正な利潤を加えたものを下回っていることを、
MNOによるデータ(算定根拠)を元に、総務省が検証する
• 結果が不当であった場合は、卸料金の水準に関し、不当な競争を引き起こすものではない
ことに関する論拠をMNOに求め、その論拠が不当であった場合は業務改善命令
検証は実際に行われるのか?
• 「プレフィックス自動付与機能」の提供開始時期に依存する?
• 提供が遅くなれば、その間「代替性」は認められず、検証に進むことになる
- 18. © 2020 Internet Initiative Japan Inc. ©Internet Initiative Japan Inc.
で、結局、IIJmioの音声料金は安くなるの?
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まだ具体的に決まってません…
プレフィックス自動付与機能が実現すれば、これまで「つい普通の電話
アプリでかけちゃった」ことによる倍額料金の請求や、通話定額オプ
ションの適用対象外となることはなくなるので、その分は確実に安くな
ります
接続料金の低減を踏まえ、中継電話会社等とも引き続き協議をさせてい
ただき、その卸提供条件の見直し(および利用者料金の低廉化)につい
て努めていきます
昨今の総務省の研究会報告書を元に、MVNOによる完全定額プラン等につ
いて実現可能性を指摘するメディア報道等ありますが、背伸びすること
なく利用者のニーズを踏まえて検討していきます
- 19. © 2020 Internet Initiative Japan Inc. ©Internet Initiative Japan Inc.
(参考)某MVNOが求めた総務大臣裁定(2020年6月)
経緯
• ドコモに対し音声卸の条件の変更等の申入れを行ってきたが、協議が調わないと
して、総務大臣に対し2019年11月に裁定を求めたもの
裁定を求めた事項
• 音声通話サービスを能率的な経営の下における適正な原価に、適正な利潤を加え
た金額を基本とする料金で音声卸料金の設定すること
⇨認められる
• 卸電気通信役務の料金は、適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないこと。裁定後
6ヶ月以内にドコモに料金設定を義務付け
• ただし、研究会の議論により「代替性あり」と判断された場合は、片方の当事者(つまり
ドコモ)は3ヶ月前の予告の後、最大1年の猶予を持って今回の裁定に基づく音声卸の提供
を終了できる
• ドコモが自社のエンドユーザーに対し提供している「かけ放題オプション」「5
分通話無料オプション」などの通話定額サービスを同じく適正な原価に適正な利
潤を加えた金額を基本とする料金で卸提供すること
⇨認められず