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情報に関する能力の比較検討
―「高等教育のための情報リテラシー基準」の拡張に向けて―
京都大学大学院教育学研究科 高等教育開発論講座
博士後期課程 飯尾 健
6月1日 大学教育学会第41回大会 (玉川大学)
1
発表内容
背景と目的
方法
結果と考察
まとめ
今後の課題
2
背景と目的
3
https://www.kulib.kyoto-
u.ac.jp/support/12303
http://www.kulib.kyoto-
u.ac.jp/yoshidasouthlib/ne
ws/2019/index.html
本発表における
「学術情報リテラシー」
教育の一例
学術情報リテラシー
=図書や論文等の学術情報を
探索・評価・活用する能力
ICT活用能力としての
「情報リテラシー」と区別
背景と目的
大学における学術情報リテラシー教育の重要性
4
生涯学習者となるための
能力
アクティブラーニングの導入
=調査や外化の機会の増加に対応
背景と目的
学術情報リテラシー教育の主な担い手=大学図書館
5
主な方法
初年次教育内での実施正課授業外での講習会 正課授業の開講
背景と目的
学術情報リテラシー教育の課題
体系的な教育ができていない(根本, 2017)
図書館が有するリソースの使い方を教えるにとどまる (茂出木, 2014)
開催はしているが学生に浸透はしていない(飯尾, 2017b)
6
学術情報リテラシーの理論的基盤と学生の情報利用・学習の実態との乖離
背景と目的
7
「高等教育のための情報リテラシー基準」(国立大学図書館協会, 2015)
学術情報リテラシー教育を実施するための能力基準 (期待される学習成果のリスト)
一連のプロセスをステップに分割
各ステップごとに学習成果を設定
「活用体系表」
学習成果を3つのレベルに振分
背景と目的
「高等教育のための情報リテラシー基準」の課題
図書館の利用法から発展=現在の情報環境に対応しきれていない
8
内容が保証された図書・論文から
玉石混淆のオンライン情報へ
レポート・論文に加え
SNS等を利用した多様な情報発信方法
学術情報リテラシー教育の理論的基盤自体が問われているのではないか?
背景と目的
海外では、情報環境の発展に対応した新しい能力基準が策定されている
ACRL
(Association of College & Research Libraries; 2015)
「高等教育のための情報リテラシーの枠組み」
UNESCO (2013)
「メディア情報リテラシーの国際的評価枠組み」
9
これらを参考に、「高等教育のための情報リテラシー基準」を
見直すことができないか?
背景と目的
ACRL「高等教育のための情報リテラシーの枠組み」
10
「メタリテラシー」
(Mackey & Jacobson, 2014)
概念の採用
調査研究・知識創造・発信を通じた
学術共同体への参画・情報サイクルへの
寄与を促す
背景と目的
UNESCO「メディア情報リテラシーの国際的評価枠組み」
11
デジタル社会における様々な
リテラシー概念を調和・統合
(坂本, 2014)
メディアを通じた対話・
コミュニケーションによる
民主的社会を目指す
背景と目的
日本の大学教育・大学図書館の状況を考えると、直接の流用は難しい
12
ACRL (2015) UNESCO (2013)
課題
(一部)
高等教育の外の文脈に言及
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あくまで評価枠組み
日本の大学教育の文脈にどう落とし
込むかは不明確
これらを参考にした
「高等教育のための情報リテラシー基準」の拡張が必要(飯尾, 2019)
背景と目的
「拡張」とは
現在の「高等教育のための情報リテラシー基準」を活かしつつ、
現代の情報環境に適応できるように
理論的な補強・修正や内容の補足を行うこと
13
背景と目的
14
「高等教育のための情報リテラシー基準」の拡張に向けて、
ACRL (2015)・UNESCO (2013)がどのような能力を重視しているかを
把握するため3者の学習成果の比較を行う
方法
15
1. カテゴリー分け 2. 割合の算出 3. 能力基準間の比較
飯尾 (2017a) にもとづき、
記述された学習成果を
カテゴリーに分ける
カテゴリーごとに
含まれる学習成果の数/全学習成果
の割合を算出
カテゴリーごとに3つの
能力基準を比較
「高等教育のための
情報リテラシー基準」
ACRL(2015)
UNESCO(2013)
結果
全ての学習成果を10のカテゴリーに分類
16
総記
述数
課題の
認識
情報
探索
情報の
評価
情報の
管理
比較・
総合・
判断
情報の
活用と
成果物の
創造
情報活用の
省察・修正
情報発信・
コミュニ
ケーション
情報倫理
高等教育のための
情報リテラシー基準
20 15% 40% 5% 5% 10% 5% 5% 10% 15%
ACRL (2015) 83 6% 36% 19% 1% 5% 10% 1% 16% 14%
UNESCO (2013) 113 7% 18% 27% 10% 5% 12% 4% 14% 11%
ACRL(2015), UNESCO(2013)>「高等教育のための情報リテラシー基準」
結果と考察
ACRL(2015)・UNESCO(2013)で重視されている観点
17
1. 情報の評価
批判的思考を用いて情報の内容を
読み解くことをより強調
例:「既存のオーソリティを保証する
観念に疑問を持ち、様々な異なる
考えや世界観の価値を認める」
(ACRL, 2015)
ネット上の玉石混淆の情報を読み解く必要性から
結果と考察
ACRL(2015)・UNESCO(2013)で重視されている観点
18
2.情報の活用と成果物の創造
デジタル環境で多様な形式の
情報・知識を創造する
例:「新しい知識を様々なフォーマット
で創造し美しく提示するための
様々なツールを利用する」
(UNESCO, 2013)
コンテンツ作成の容易さ・知識創造の重要性から
結果と考察
ACRL(2015)・UNESCO(2013)で重視されている観点
19
3.発信・コミュニケーション
情報発信を通じた(学術/市民)共同体
への参画・寄与を視野に入れる
例:「ローカルなオンラインコミュニティ、ガイドのある
議論、学部生向けの学術雑誌、学会での口頭発表/
ポスター発表といった適切なレベルで学術的な会話に
寄与する」(ACRL, 2015)
「様々な手段やツールを通して社会的・公共的な活動に
関わる」(UNESCO, 2013)
情報の発信の容易さ→情報の氾濫・相互のミスコミュニケーション
まとめ
ACRL(2015)やUNESCO(2013)で強調されていた点
情報の評価
情報の活用と成果物の創造
発信・コミュニケーション
幅広いメディアへの対応の結果、重要となったもの
今後の「拡張」に向けて、まずこれらのカテゴリーをどのように
反映させればよいか検討する
20
今後の課題
学習成果の量的な比較
◦ 量的な比較の過程で重要な部分が見落とされた可能性
◦ 学習成果の数にも差
今後は質的な比較も求められる
21
参考文献
ACRL (2015). Framework for information literacy for higher education. (http://www.ala.org/acrl/standards/ilframework)
飯尾健 (2017a)「大学生における学術情報リテラシーの習得傾向について : 潜在ランク理論を用いた段階的評価の試み」『大学
教育学会誌』39(1), 91-100.
飯尾健(2017b)「学術情報リテラシーの習得に影響を及ぼす学習経験の検討―質問紙調査の結果から―」『日本教育工学会第33
回全国大会講演論文集』999-1000.
飯尾健 (2019)「大学教育における情報リテラシーの能力基準に関する検討: 国立大学図書館協会『高等教育のための情報リテラ
シー基準』の拡張に向けて」『京都大学大学院教育学研究科紀要』65, 415-427.
国立大学図書館協会 (2015) 『高等教育のための情報リテラシー基準』(http://www.janul.jp/j/projects/sftl/sftl201503b.pdf)
Mackey, T. P., & Jacobson, T. E. (2014). Metaliteracy: Reinventing information literacy to empower learners. American Library
Association.
茂出木理子 (2014)「学習支援としての情報リテラシー教育: これまでとこれから」『大学図書館研究』100, 53-64.
根本彰 (2017)『情報リテラシーのための図書館 : 日本の教育制度と図書館の改革』みすず書房.
坂本旬 (2014)『メディア情報教育学 : 異文化対話のリテラシー』法政大学出版局.
UNESCO (2013). Global media and information literacy assessment framework: Country readiness and competencies.
(https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000224655)
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大学教育学会2019発表スライド

Editor's Notes

  1. それでは、発表を始めさせていただきます。京都大学の飯尾です。今日は「情報に関する能力の比較検討」ということで、主に皆さまとは少し違った視点での「情報リテラシー」について発表したいと思います。
  2. 本日の発表内容はこのようになっております。
  3. まず、本発表において検討しようとする「学術情報リテラシー」とは、このように大学図書館が行っているような、図書や論文等の学術情報の探索から始まりそれらを評価し、レポート等に活用するための能力を指します。この能力は主に図書館情報学の分野で研究・発展してきたものですが、一般的に「情報リテラシー」というとICT活用能力となってしまうので、「学術」とつけて差異を強調しています。
  4. 大学において、学術情報リテラシーの教育を行う理由として、以下の2つがあります。 1つ目が、これからの情報社会・知識基盤社会で求められる、絶えず知識をアップデートできる生涯学習者となる能力の基盤として学術情報リテラシーが考えられるため。 もう1つが、大学教育においてアクティブラーニングが導入され、調査や外化の機会が増加することに対応して、これらを円滑に進めて大学での学習成果を達成するためです。
  5. 先ほども申し上げたように、学術情報リテラシー教育の担い手は、主に大学図書館となっています。 その方法として、ここにあるように正課授業外での講習会、正課授業の開講、初年次教育内での実施が主に挙げられます。
  6. しかし、大学図書館による学術情報リテラシー教育の課題として、これらのようなことが挙げられています。初年次教育にとどまり、学士課程を通じた体系的な教育ができていない、内容も図書館が有するOPACなどの情報リソースの使い方を教えるにとどまっている、また、開催はしているが学生にはあまり浸透していないなどです。 これらの原因の一つとして私が考えているのが、学術情報リテラシーの理論的基盤と学生の情報利用や学習の実態と乖離していることです。すなわち、学術情報リテラシーの源流の部分に問題があるのではないか、と私は考えております。
  7. 学術情報リテラシー教育の理論的基盤として、学術情報リテラシー教育を行うための能力基準、すなわち期待される学習成果のリストである国立大学図書館協会が策定した「高等教育のための情報リテラシー基準」があります。 この基準は、情報を扱う一連のプロセスを6つのステップに分け、各ステップごとに学習成果を設定しています。これらは、主に図書館情報学の中で発展してきた情報探索行動の研究成果に基づいています。 また、それらの学習成果を「基礎・応用・発展」の3レベルに分けた「活用体系表」が作られているということが特徴的です。これらの学習成果は、大学図書館で行う講習会や授業の目標設定や、評価用のルーブリックの開発に役立てられることが期待されています。いわば、学術情報リテラシーの理論的基盤となっていると言えます。
  8. しかし、この「高等教育のための情報リテラシー基準」は、もともと図書館の利用法から発展してきたため、学術情報の中心が図書館を飛び出している現在の情報環境に対応しきれていない側面があります。 主なものもとして、扱う資料も、出版というプロセスを経ることで内容がある程度保障された図書・論文から玉石混淆のオンライン情報に中心が移っていますし、探索した情報の活用方法もレポートや論文に加え、現在ではSNS等を利用した多様な情報発信の方法があります。これでは、学術情報リテラシーの意義である生涯学習者の育成とか、調査や外化を通じた学習成果の達成ということは、難しいのではないかと言えます。このように、現在、学術情報リテラシー教育の源流となる理論的基盤自体が問われているのではないか、と言えます。 ここまで5分(1スライド1分未満)
  9. 一方で海外では、情報環境の発展に対応した新しい能力基準が策定されています。 その例として、アメリカの大学・研究図書館協会、略してACRLが策定した「高等教育のための情報リテラシーの枠組み」、またUNESCOが策定した「メディア情報リテラシーの国際的評価枠組み」があります。これらの能力基準は、先に挙げたような情報環境の発展に対応できるよう、その理論的基盤自体から問い直しているものです。 私の問題意識としては、これらを参考に、「高等教育のための情報リテラシー基準」を見直すことで、先に挙げた課題を解決できないかというものです。
  10. これらの能力基準のそれぞれについて、ご説明したいと思います。ACRLの「高等教育のための情報リテラシーの枠組み」の特徴として、「メタリテラシー」という概念を理論的基盤とすることで、様々なメディアに対応しようとしていることが挙げられます。すなわち、メディアリテラシーやICT活用能力としての情報リテラシーといったものを統合したメタリテラシーという概念を基盤に据えていて、そのような面から近年の情報環境をカバーしようとしています。また、この枠組みの特徴として、高等教育における調査研究・知識創造・発信を通じて、所属する学術共同体への参画や、情報のサイクルに寄与することを促そうとしていることが挙げられます。そのようにして、学生を調査研究という真正の学習の中に導こうというのが、この枠組みの特徴です。
  11. 一方でUNESCOの「メディア情報リテラシーの国際的評価枠組み」では、「メディア情報リテラシー」という、様々なリテラシー概念を調和・統合した新しい概念を打ち出すことでさまざまなメディアに対応しようとしています。その中でもとくにメディアリテラシーと学術情報リテラシーの流れが強く、メディアリテラシーの批判的思考やメディアの活用といった側面と、学術情報リテラシーの情報探索と言った側面が合わさったような能力像が打ち出されています。 そのような能力であるメディア情報リテラシーの目的として、メディアを通じたコミュニケーションを促し、ひいては民主的な社会の構築を目指すということがあります。そのために、いわゆるヘイトスピーチとか、フェイクニュースといった最近問題となっている課題についても、メディア情報リテラシーの文脈で様々な取り組みがなされています。
  12. これらの能力基準はどれも素晴らしいのですが、日本の大学教育や大学図書館の置かれた状況を考えると、これらを直接流用する形で「高等教育のための情報リテラシー基準」を見直すことは難しいのかなと考えられます。なぜかと言うと、ACRLでは主に高等教育の内側を対象としていて、卒業した後の高等教育の外の文脈について言及していませんし、UNESCOのメディア情報リテラシーの文書はあくまで評価枠組みであり、また高等教育を焦点としていないからです。 そこで、私はあくまでもこれらの能力基準を参考にして、「高等教育のための情報リテラシー基準」を拡張していくことが必要と考えます。
  13. ここでいう拡張とは、現在の「高等教育のための情報リテラシー基準」を活かしつつ、現代の情報環境に適応できるよう理論的な補強・修正や内容の補足を行うことと考えております。つまり、先に挙げた2つの能力基準を参考に、「高等教育のための情報リテラシー基準」をアップデートして、それでもって大学図書館における学術情報リテラシー教育もアップデートしようと試みるということです。
  14. そこで本発表では、「高等教育のための情報リテラシー基準」の拡張に向けて、まずは、ACRL(2015)とUNESCO(2013)がどのような能力を重視しているかを把握すること、すなわち「高等教育のための情報リテラシー基準」にはなくてACRL(2015)とUNESCO(2013)にあるものを明らかにすることを目的に、「高等教育のための情報リテラシー基準」およびACRL(2015)、UNESCO(2013)の3者に記述されている学習成果を比較したいと思います。 ここまで11分(1スライド1分)
  15. 方法としては、このようになります。 まず、3つの能力基準に書かれた学習成果をカテゴリーに分けます。その際のカテゴリーは飯尾(2017a)を参考にします。 続いて、それぞれのカテゴリーに分かれた学習成果の数を全ての学習成果で割り、割合を算出します。 これを全てのカテゴリーと3つの能力基準で行い、各カテゴリーにおいて「高等教育のための情報リテラシー基準」とACRL(2015)およびUNESCO(2013)と割合を比較します。
  16. その結果、学習成果は10のカテゴリーに分かれました。 また、「高等教育のための情報リテラシー基準」よりもACRLとUNESCOが上回ったカテゴリー、すなわち後者でより強調されているカテゴリーとして、「情報の評価」「情報の活用と成果物の創造」「情報発信・コミュニケーション」の3つのカテゴリーが挙げられます。これらについて、内容を紹介したいと思います。
  17. ACRLやUNESCOにおいて、まず情報の評価については、批判的思考を用いて情報の内容を読み解くことが強調されています。これは、扱うメディアが広がったことにより、玉石混淆の情報を、しっかり中身まで見て確認するという必要が出てきたためであると考えられます。
  18. 続いて情報の活用と成果物の創造では、デジタル環境で多様な形式の情報・知識を創造することが重視されていました。これは、近年のSNSの発展により、どんな人でも容易に情報や知識、コンテンツを作るようになってきたことと関連していますし、また社会構造も、そういった知識創造が重要な役割を占めるようになったことの表れであると考えられます。
  19. さらに発信・コミュニケーションにおいては、単に情報を伝えるだけでなく、情報発信を通じた共同体への参画・寄与までが焦点に入れられていることがわかりました。これは、ACRLやUNESCOが能力基準の策定の際に考えられていた理念が表に出たものと考えられますが、そのさらに背後には、情報の発信が容易になったことによる、質の低い情報の氾濫や、相互対立もあると考えられます。
  20. 以上の点については、幅広いメディアへの対応の結果としてこのように強調されたものだと考えられます。 したがって、まずはこれらのカテゴリーについて、今後の拡張に向けて検討する必要があると考えられます。
  21. 本研究の課題として、学習成果を量的に比較したことで、その過程で重要な部分が見落とされてしまった可能性があります。 また、それぞれの能力基準の学習成果の数にも差があります。 よって、今後はさらに質的な比較を行っていくことも求められます。
  22. 発表は以上となります。ありがとうございました。 15分(1スライド1分未満)