診療所における薬剤師活用の意義と可能性 20190929

在宅療養⽀援診療所薬剤師連絡会シンポジウム
S p e c i a l o p e n d i s c u s s i o n
診療所における薬剤師活⽤の意義と可能性
遠⽮純⼀郎
医療法⼈社団プラタナス
桜新町アーバンクリニック
2019.9.29

Sakura Shinmachi Urban Clinic Copyright © Platanus All Rights Reserved.
桜新町アーバンクリニック在宅医療部
n 住所︓東京都世⽥⾕区 2009年開設
n 在宅医療部︓医師 10名（常勤6名）、看護師 14名、薬剤師１名
作業療法⼠2名、管理栄養⼠3名、MSW1名、ケアマネ2名
n 患者数 420名（施設100名）看取り数 120名/年
n 新規患者の 40％は末期がん、その平均在宅療養⽇数は 67⽇間
往診には看護師が同⾏
診療内容と看護介護を結びつ
け、家族や連携先と共有する
多職種によるチームワーク
を最⼤化するごちゃまぜで
フラットな組織⽂化

⾼度化する在宅医療に求められること
• 医療ニーズの⾼い在宅患者↑
• 院内グループ診療体制の強化
• 地域連携のICT化
• ⾼度な地域連携によるタスクシフト
3
在宅診療所のチーム医療強化を図るべく、
2013年2⽉院内薬剤師を雇⽤

在宅療養支援診療所の院内薬剤師として
n 写真をはりつける
院内薬剤師の役割を⾒い出すべく、
とにかく往診同⾏を続けてみた

院内薬剤師が⼊って変化したこと（院内業務）
• 薬の専⾨家がいることで、処⽅の相談ができる
• 初回往診での処⽅履歴や残薬の確認から解放された
• 処⽅箋の事前チェックにより、疑義紹介が減少
• 院内使⽤薬剤の管理・発注の⼀元化
• 「緩和ケア⽤セット処⽅」など薬物治療の統⼀化
• 薬局薬剤師の顔が⾒えるようになり、連携がスムーズに
• ⿇薬やポンプなどの医療機器の発注が楽になり、
導⼊しやすくなった
• 新薬や薬物治療のトピックスの勉強会を開催

⼊職当時の状況
1. 残薬確認・配薬を医師、看護師が実施
2. 訪問服薬指導導⼊割合︓１７％
連携している訪問薬局数︓３ヶ所
3. 地域の薬局の在宅対応⼒は︖
2013年2⽉院内薬剤師⼊職
在宅医療参画薬局の育成・拡⼤と
疲弊しない地域づくりが急務
6

院内薬剤師による診療現場からの情報提供、薬薬連携
7
初回往診︓
• 全処⽅薬把握、残薬、服薬管理状況確認
• かかりつけ薬局への連絡、訪問薬局の選定
定期往診︓
• 処⽅箋からだけでは推察できない情報の追加提供
• 訪問時の変化等の共有
• ポリファーマシーへの対策
• 薬局薬剤師同時訪問の
セッティングなど
退院前カンファレンス︓
• 担当薬局への参加の呼びかけ

服薬状況レポート︓新患訪問
○⼭○男 79歳 M
上⾏結腸癌術後、多発肝転移、腹膜播種、がん性疼痛
経緯︓
H19/11 上⾏結腸癌に対し⼿術施⾏。肝メタ。H22/12, H23/3にも⼿術
施⾏。化学療法を⾏なっていたが、肝機能障害悪化により中⽌。H24秋ごろ
1ヶ⽉ほどTS-1内服。副作⽤（腎機能悪化、胃痛等）により中⽌、以降ケ
モは中⽌。
同時期、帯状疱疹を発症。桜新町ペインクリニックでフォロー。
H25/5 腹腔内動脈周囲の再発巣認め癌性疼痛としてオピオイド開始。今
後を考え訪問診療を希望、開始となった。
服薬状況︓ ご本⼈管理。ヒート調剤。
オキシコンチン（5）定期服⽤で⽇中の疼痛管理は良好だが、夜間痛くなる
のを不安に感じオキノームを予防的に2-3回ほど飲まれている。⾃⼰調節し、オ
キシコンチン2錠2×でも⽇中の痛みは特に感じなかったとのこと。今回より朝1
錠、⼣2錠に変更となる。薬に関しては知識もお持ちであり、体調が良くなると
減量するなどご⾃⾝で調節して飲んでしまうことも多々あったとのことで、特にオ
キシコンチンは定時に飲むように指導されている。
薬の数が多いことについて、薬が体に与える悪さについて⼼配されている。現在
飲んでいる薬は今のところ必要なので、服薬を続けていただき、今後様⼦を⾒
て増減を検討すると医師より説明あり。
オピオイド内服しており、排便コントロール必要。便秘気味とのこと。プルゼニド2
錠2×朝寝る前での処⽅あり。
本⽇より1⽇1回寝る前2錠へ変更となる。効果がない場合は増量もしくは変
更検討。吐き気や傾眠傾向などは聞かれず。
⾷欲不振は顕著で、フルーツくらいしか⾷べられないとのこと。
今回プレドニン開始し、また⽢いものもお好きとのことでエンシュアもお出しした。
今後の経過を観察。
8
薬局︓ ○○薬局。訪問服薬指導
他院からの処⽅︓ 特になし
併⽤禁忌薬等︓ 特になし
副作⽤歴︓ TS-1で腎機能悪化。胃痛
＜2013年●⽉●⽇現在の投薬状況＞
定期処⽅全てヒート調剤
◎◎病院外科退院処⽅ 21⽇分
オキシコンチン(5) 4錠2×⇒3錠×2 朝1⼣2 /残68錠
オキノーム(5) 痛い時 /残75包
カロナール(200) 6錠3× /残119錠
ノバミン(5) 3錠3× /残68錠
タケプロンOD(15) 1錠1× 朝⾷後 /残19錠
◎◎病院泌尿器科退院処⽅ 56⽇分
ウブレチド(5) 0.5錠1×⼣⾷後 /残21回分
ハルナールD(0.2) 1錠1×朝⾷後 /残24錠
ラックビー微粒N 3g3× /残29P
新規処⽅︓⾷欲不振に
エンシュア・リキッド 1⽇1-2本 7本
プレドニン(5) 2錠1×朝⾷後 7⽇分
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初回往診医師遠⽮(主)、看護師尾⼭、薬剤師⼤須賀
相談員染野
以上⼤須賀悠⼦
残薬管理
これまでの病歴
薬歴、副作⽤歴
新規処⽅の経緯
副作⽤等注意喚起
禁忌、副作⽤管理
薬識、受け⼊れチェック
薬局、薬受取⽅法
処⽅以外の⼿持ち薬の整理
服薬コンプライアンス

地域の薬局が在宅医療に踏み出すうえでの課題
n 外来調剤業務の多忙さ、⼈員不⾜
n 経営上の効率
n 在宅訪問業務に対応できる経験や臨床能⼒の不⾜
• これらを学ぶ場や機会が乏しい
• 参⼊するきっかけがつかめない
• 患者や介護の状態を評価・判断する能⼒
• 地域の多職種との連携、情報共有

往診同⾏業務から⾒えてきたもの役割
10
地域医療チームに参画する薬局薬剤師に求められる役割
l 初回訪問時の服薬履歴や残薬状況の把握
l 患者の状態や介護状況に合わせた処⽅提案や調剤
l スムーズな在宅移⾏のための退院前カンファレンス参加
l 処⽅適正化⽀援、ポリファーマシーの是正
l 患家への医薬品・衛⽣材料の供給、24時間対応
l 医療⽤⿇薬の管理や破棄

往診同⾏業務から⾒えてきたものコンピテンシー
11
地域医療チームに参画する薬局薬剤師が備えるべきこと
l 相応の臨床知識 + 診療報酬や介護保険、地域の情報
l コミュニケーション能⼒
l 対医師だけでなく、訪看、ケアマネ、ヘルパー、家族らとの
連携や情報共有
l がん・⾮がん共に最終末期が多い
⇒ 必要なのはスピード感とʻ⼈が亡くなるʼことへの知識
家族やケア提供者への適切な⽀援と協業により、
安⼼できる療養環境を薬剤師も⼀緒に構築できる

地域薬剤師の在宅医療参画⽀援
12
1．連携薬局とのチームワークをさらに⾼める
⇒ 連携薬局の往診同⾏受け⼊れ
• 病状把握や担当医の処⽅意図などを共有
• 院内スタッフとの役割の相互理解
• 患者への薬剤師を含めたチーム医療の意識付け
2．未経験の薬局薬剤師の在宅参画へのハードルを下げる
⇒ 在宅未経験の薬局薬剤師への⽀援
• 在宅療養における服薬⽀援ニーズの理解を深める
• 患者宅での薬剤師介⼊の必要性を体験
• 情報共有システムの参加

地域薬局による訪問薬剤管理指導が増加
0
50
100
150
200
2013.2 2013.1 2014.2
全
患
者
数
訪問あり
訪問なし
13
69.1%17.5%
2013.2 院内薬剤師の介⼊開始
院外薬局による
訪問薬剤管理指導あり
訪問なし

地域には様々な規模や体制の薬局があり、
在宅対応⼒に応じたケースの割り振りを考える
院内薬剤師による持続可能な地域の訪問薬局の育成
14
がん、中⼼静脈栄養
医療依存度⾼
⿇薬や無菌調剤
認知症
慢性期疾患⼩児
在宅診療所地域薬局間にも相互のホスピタリティを
• 疲弊しない、させないために相互援助が必要
• 医療機関として地域と共に成⻑していく関係性

地域リソースの⾒える化
15
訪問薬局のリソースマップを製作
• ⼀軒⼀軒実際に薬局に訪問し
各薬局の実際の在宅訪問の
稼動状況やそこにかける思いを
調査
• 世⽥⾕区︓打診した約80薬局
中60店舗は在宅に関与
• うち約半数が新規受⼊も可能
• 新規受⼊が難しい理由︓
⼈員不⾜

訪問薬剤師同⼠の連携プロジェクトの発⾜
• 地域の在宅対応⼒強化
⿇薬、24時間体制の必要性増⼤
薬局間で協業⽀援しあえる信頼関係
• 医師への適切な処⽅提案
⼗分な情報共有から⽣まれる提案型の
処⽅⽀援（世⽥⾕版CDTM）
• 他職種の薬剤管理業務の負担軽減
服薬⽀援や疑義照会の⽅法模索
地域の薬局間の機能分化や協働により、
持続可能な服薬⽀援やレベルアップを考える
Sakurashinmachi Home Care
Pharmacist Partnership
16
地域薬局間の
横の連携

診療所薬剤師の成果
• 処⽅・服薬⽀援のニーズ抽出
• 在宅での薬物治療の⽀援
• 薬局薬剤師の訪問活動を拡⼤
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院内外の在宅チーム医療の強化

Contact：
jtoya Junichiro Toya
医療法⼈社団プラタナス
桜新町アーバンクリニック
遠⽮純⼀郎
Junichirotoya@sakura-urban.jp

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