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遠隔診療スターターガイド
2017年9月11日
お茶の水内科院長五十嵐健祐
情弱医師向け業者に騙されないためのシェア歓迎!
遠隔診療は無料で出来る!
・「遠隔診療は無料で出来る!」、この事実をより多くの人に知ってほし
くてこのスライドを作りました。
・近年、遠隔診療システム業者が乱立し、法外な初期費用、月額契約料、
年間契約などでトラブルや被害が多発しています。
・遠隔診療システムは無料で構築可能です。本スライドでは、その具体的
な手順、やり方、実際の運用など、幅広く説明します。
・遠隔診療の適正使用、よくある質問、今後の展望などについて、私見も
含みながら解説します。
遠隔診療の3要素
(1)
コミュニケーショ
ンツール
(2)
診療と
カルテ記載
(3)
診療点数と
医療費支払い
遠隔診療においても診療の原則は対面診療と何ら変わりません。
(1)対面診療では対面によって診療を行います。遠隔診療では様々なコ
ミュニケーションツールを用いて診療を行います。特別なシステムを契約
する必要はありません。
(2)遠隔診療においても診療と記録の原則は変わりません。ただ、遠隔
診療に向いているもの、向いてないものがあることがわかって来ました。
(3)医療費の支払いに関しても対面診療と同様です。ただし、遠隔診療
では算定不可な診療点数、算定可能な診療点数があります。
(1)コミュニケーションツール
コミュニケーションツールは、無料のもので必要十分です。
2017年7月14日、厚生労働省から遠隔診療に対して新しい通知「医政発
0714第4号」が発出されました。
参考→https://ochanomizunaika.com/2017-0720
通知によると、電話、テレビ電話に加えて、電子メール、ソーシャルネッ
トワーキングサービス等も「遠隔診療に用いるツール」として明記されま
した。それまでは多くの人が遠隔診療はテレビ電話でなければならないと
勝手に思い込んでいたのですが、そうでないことが明確化されたのです。
これには多くの業界関係者が驚きました。
(1)コミュニケーションツール
ここではコミュニケーションツールの一つとしてアピアーイン
(appear.in)の使い方を説明します。アピアーインの特徴は、
・アカウント登録が不要
・URLを送るだけでテレビ電話がスタート
・スマートフォンまたはPCは必須
で、非常に簡潔です。慣れてしまうと他のツールに戻れません。
※2017年9月現在日本語版はありません。が、特に問題ありません。
百聞は一見にしかず、実際に触ってみることを強くオススメします。
(1)コミュニケーションツール
・まずアピアーインのサイトにアクセスします。
→https://appear.in
・「create new room」というところがあるので、URLを決めます。
患者さんごとに固有、非公開なものが望ましいでしょう。例えば
「https://appear.in/医院名-患者ID-非公開の認証パスワード」
ダミーURL例:https://appear.in/ochanai-00001-********
セキュリティは緩いものの、利便性を重視し、診察室ライクなもの
ダミーURL例:https://appear.in/ochanai-room1
・これで準備は完成です。上記で作成したURLを患者さんに送り、テレビ
電話の通話を開始しましょう。
本当にたったこれだけです。また、「医政発0714第4号」では、電話でも
メールでもOKと明記されています。ツールの条件は「本人確認が出来るこ
と」かつ「直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する
有用な情報が得られること」の二つです。
いずれにせよ、謎の高額な遠隔診療システムの契約は必要ありません。
(2)診療とカルテ記載
原則的に対面診療と何ら変わりません。ただし、お茶の水内科の遠隔診療
の診療経験からのわかったことは、
・初診や急性期はやはり遠隔診療では難しい。
・再診でも病状が安定していない場合、毎回不安や悩み、相談事がある場
合も難しい。
・病状が安定していても、医師と対面することに何らかの価値を感じてい
る場合は遠隔診療に切り替えないほうがいい。
・対面診療で特に不都合がない、何も困っていない場合も今のままでよい。
→無理矢理に遠隔診療にする必要もないということを学びました。
(2)診療とカルテ記載
逆に、遠隔診療のよい適応は、
・病状の非常に安定した慢性疾患で、いつも同じ処方内容で、処方内容が
少なくとも一年以上大きく変わっていない、かつ、
・医師と対面することに特別価値を感じていないで、通院の負担を軽減出
来ないか、本人が困っている場合、かつ
・対面診療との適切な組み合せへの理解、例えば病状が変化したり、年に
一回は採血に来院するように等、を十分に理解している場合、
→遠隔診療という選択肢をサジェストすると、非常に喜ばれます。
勿論、個々の症例によって、ケースバイケースであり、ここに遠隔診療の
経験値の蓄積の重要性があると私は考えています。
(2)診療とカルテ記載
具体的には、コントロール良好な高血圧症、脂質異常症、糖尿病、
高尿酸血症、鉄欠乏性貧血、通年性のアレルギー疾患、
アドヒアランス良好な気管支喘息、原則的に生涯継続が不可欠な薬、
緊急時対応等の含む疾病理解が良好な抗血小板療法、抗凝固療法、
何年もDO処方の漢方、などは経験的に上手く行っています。
※抗不安薬、睡眠薬等の向精神薬は安全性の観点からお茶の水内科では
遠隔診療の対象外としています。
(2)診療とカルテ記載
・カルテ記載は対面診療と同様に行います。
・遠隔診療のテレビ電話の通話を記録しておく必要は特に言われていませ
ん。それは、対面診療において診察室でのやり取りを特に録画しておかな
くてよいのと同じです。
・しばしば遠隔診療の責任の所在は?という謎の質問が出ますが、遠隔診
療であっても対面診療であっても何ら違いなく、最後の責任者は主治医で
す。逆にそれ以外に責任を取れる人が地球上にいないと思います。
・私見ですが、対面診療で患者とトラブルを起こしやすい医師やコミュニ
ケーション能力に難がある医師は、遠隔診療に手を出すのは辞めておいた
ほうが無難です。まずは対面診療のスキルを確かなものにしましょう。
(3)診療点数と医療費支払い
医療費の支払いの仕方は以下の3種類あります。
・次回来院時払い:近日中に来院する予定がある場合、その際に支払って
もらいます。
・オンライン決済:ペイパル等、オンラインで決済が完了、大変便利です。
・銀行振込:銀行振込でも全く問題はありません。
お茶の水内科においては、オンライン決済ユーザーがダントツに多く、次
に次回来院時払い、稀に銀行振込を好む方もいます。
(3)診療点数と医療費支払い
診療点数の計算はやや複雑です。診療報酬点数表の算定要件をしっかりと
確認しましょう。知識経験豊富な医療事務さんに任せましょう。
・遠隔診療で算定不可の点数
初診料(282点)、外来診療料(73点)、外来管理加算(52点)、特定疾
患指導管理料(225点)、在宅時医学総合管理料、在宅自己注射指導管理
料、など、◯◯指導料、◯◯管理料と付くのものは基本的に算定出来ない
ものと考えたほうがよいでしょう。
※「外来診療料」を算定する「200床以上の病院」は、2017年9月現在、
そもそも保険適応で遠隔診療が出来ません。
・遠隔診療で算定可能な点数
電話等再診料(72点)、夜間・早朝等加算(50点)、処方せん料(68
点)、一般名処方加算(3点、他)、時間外対応加算(3点、他)、明細書
発行体制等加算(1点)、など
※不明点、曖昧な点は管轄の厚生局に問い合わせましょう。
(3)診療点数と医療費支払い
様々なオンライン決済ツールがありますが、ここではペイパルを紹介しま
す。ペイパルの特徴は、
・オンライン決済で最も一般的なツール
・使い方が初めての人でもわかりやすい
・実績豊富、安全性に定評あり
→https://www.paypal.com/jp/webapps/mpp/merchant/how-to-
signup-business
まずはビジネスアカウントを開設する必要があります。これも、百聞は一
見にしかず、実際にいじってみるのが一番早道です。
※前述のように、銀行振込、次回来院時払いでも何の問題もありません。
まとめ
(1)
コミュニケーショ
ンツール
=アピアーイン
(2)
診療と
カルテ記載
=経験値
(3)
診療点数と
医療費支払い
=ペイパル
以上、アピアーイン、経験値、ペイパル、全て無料のツールで遠隔診療は
始められることがおわかりいただけたでしょうか。
もう遠隔診療は全く怖くありません。これで情弱医師向け業者に騙される
心配もありません。
明日からの遠隔診療ライフに少しでもご参考になれば幸いです。
極論を言えば
(1)
コミュニケーショ
ンツール
(2)
診療と
カルテ記載
(3)
診療点数と
医療費支払い
極論を言えば、アピアーイン、ペイパルでさえもマストではありません。
なぜなら、 「医政発0714第4号」の通知において、電話でもメールでもよ
いと明記されており、また、医療費支払いは、銀行振込や次回来院時払い
でも特に問題がないからです。
ただ、アピアーイン等の優れたコミュニケーションツール、ペイパル等の
利便性の高いオンライン決済ツールは、知っておいて損はないものなので、
このたびご紹介しました。
いずれにせよ、遠隔診療は無料で始められる、この事実をより多くの人に
知ってほしくてこのスライドを作りました。
コンタクト
五十嵐健祐(いがらしけんすけ)
お茶の水内科院長
https://www.fb.com/igakeso
igarashi@ochanomizunaika.com
https://ochanomizunaika.com/
1985年生まれ、循環器内科医、心血管疾患の一次予防、二次予防がライフ
ワーク、平日日中、通院困難な社会人の心血管危険因子の予防、管理、治
療のため、2014年、東京都千代田区にお茶の水内科開設、2015年、遠隔
診療事務連絡後にいち早く遠隔診療を取り組み、2017年9月現在200名以
上の患者さんに対し遠隔診療を実施している。また、5つのヘルスケアアプ
リを開発、デジタルハリウッド大学校医兼特任准教授として、デジタルヘ
ルスラボを運営、デジタルヘルスをテーマに研究、勉強会、学会を積極的
に企画、情報発信、趣味はちょっとキニナル情報をたれながすこと。
→https://www.facebook.com/groups/chokitare

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