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●Amebaのデータ分析関連もろもろ
その前はシステムエンジニア(前職SIer)、フロントエンドエンジニア(CA)
学生時代の専門は 複雑系・人工生命。博士(情報科学)
●Twitter: @mtknnktm
●秋葉原ラボ: https://www.cyberagent.co.jp/techinfo/labo/research_list/
●著書/活動
論文: M. Takano, K. Wada, and I. Fukuda,
"Reciprocal Altruism-based Cooperation in a Social Network Game",
New Generation Computing, 3, 2016.
論文: M. Takano, K. Wada, and I. Fukuda,
"Environmentally Driven Migration in a Social Network Game",
Scientific Reports, 5, 12481; doi: 10.1038/srep12481 (2015).
翻訳: "RとRubyによるデータ解析入門", オライリー・ジャパン
2
11. 11
例えば: ユーザ数を増やすには?(ソシャゲの例)
ロジスティック回帰
logit(継続(1) or Not(0)) =
β1 攻撃回数 + β2 発言数 + β3 レベル + …
という式で説明できるように βx を求める分析モデル。
● 例えば、β2 が正であれば、発言数は継続に効き、負であれば離脱しやすく
なることを表す。
○ 発言回数が1回増えると継続確率は β2 倍(オッズ比)という意味
● 分析結果の使い方
○ 目標ユーザ数 N から逆算して、目標継続確率を求める
○ その目標継続確率を実現できる発言数を目標発言数とする
○ その目標発言数に向けた施策を検討
(UIの改善、コミュニケーションが必要なイベントなど)
21. 進化ゲーム理論の例 タカハトゲーム
• タカ派のポイント
– 対ハト
– 対タカ
• ハト派のポイント
– 対ハト
– 対タカ
0.5pt
タカ派が多い時
ハト派の子孫が増加
ハト派が多い時
• タカ派のポイント
– 対ハト
– 対タカ
8.7pt
• ハト派のポイント
– 対ハト
– 対タカタカ派の子孫が増加
22. 進化ゲーム理論の例 タカハトゲーム
• タカ派のポイント
– 対ハト
– 対タカ
• ハト派のポイント
– 対ハト
– 対タカ
0.5pt
タカ派が多い時
ハト派の子孫が増加
ハト派が多い時
• タカ派のポイント
– 対ハト
– 対タカ
8.7pt
• ハト派のポイント
– 対ハト
– 対タカタカ派の子孫が増加
最終的にタカ派とハト派のポイントが
釣り合いの取れる個体数比率に収束し共存
23. 進化ゲーム理論の前提(近似 現実を簡略化してる所)
• 利得は 次元の連続的な数値
– 利得 残せる子孫の期待値
• 集団を構成する個体数は非常に多く、各個体の出会い
はランダム
– 個体数について微分可能
– 各戦略の利得は期待値で評価可能
– → 増減を微分方程式で解析(平均場近似)
• 初期値は推定できないので、主に十分な時間が経った
後について分析
– 平衡点に達する 周期的に変動する カオス的な挙動
など
35. 囚人のジレンマにおける進化ゲーム理論的解析
• 協調者のポイント
– 対協調者
– 対裏切り者
• 裏切り者のポイント
– 対協調者
– 対裏切り者
4.6pt
協調者が多い時
裏切り者の子孫が増加
裏切り者が多い時
• 協調者のポイント
– 対協調者
– 対裏切り者
• 裏切り者のポイント
– 対協調者
– 対裏切り者
1.4pt
裏切り者の子孫が増加
※ ゲームでは協調者と裏切り者は
共存するが、基本的な問題点は同じ
どのような条件でも最終的には
裏切り者のみに
57. 57
まとめ
● 協調行動
○ ゲームにいい影響をもたらす
● 協調行動を促進するには
○ 協調ユーザと非協調ユーザが分離すること、
○ 協調ユーザがよりよい環境を求めてグループを移動
できること
が重要だということがわかった
● マルチレベル選択と移住だけでは説明できない現象も存
在(互恵的利他主義?)
63. どのようにして互恵関係は構築されたのか?
> 0
> 0
< 0
協力されるほど コミュニケーションされるほど、協調しやすい
→ 協調相手を選別して(非協調者を避けて)、
相互に協調したりコミュニケーションとるなどの相互作用によって構築
分析結果
※ 一般化線形回帰モデル(負の二項分布)と一般化線形混合モデル( 分布)の を比較し小さい方を採用
目的変数:
プレイヤー から への
協調回数
プレイヤー j から i へ
の協調回数 プレイヤー i から j 、j から i への
コミュニケーション回数
プレイヤー i・j の所属ギルドの
アクティブメンバー数
自分→他者の協力回数に対する
他者→自分の協力回数と相互のコミュニケーションの頻度の影響を分析
一般化線形混合モデル(Poisson分布)※詳細
64. まとめ 互恵関係の構築 シグナリングとしての解釈
• 協力行動
– 相手に利益を与え、自分にはコストがかかる
信頼性の高いシグナル ́
• あいさつ(対象ゲームのコミュニケーション機能)
– 相手にも自分にも利益もコストもほとんどない
信頼性の低いシグナル
「自分はあなたにとって協調者です」というシグナルを相互に送っていたこと
で、安定的な互恵的な協調関係を構築
信頼性の高いシグナルが成立していたにもかかわらず、
信頼性の低いシグナルも成立
→ このような低コスト低信頼性のシグナルは、ヒト・霊長類などで観測され
社会関係の構築に重要であることが示唆(視線、うわさ話、毛づくろいなど)
など
66. 66
まとめ - サービスを良くするための分析として
● ソーシャル系Webサービスで起こっている現象を既存の社会科学
研究の中に位置づけ
○ 特にソーシャルゲームと進化ゲーム理論の類似性に着目し、
ソーシャルゲームの協調行動について分析
● 研究から得られた示唆と施策の方針
○ ポイント
■ 不公平感の解消
■ 初対面でのケア
■ 仲の良い関係の促進
70. 70
まとめ - ヒトや社会を理解する科学として
● ヒトの社会的行動の研究は実社会でデータが取りにくい
○ 制限された環境での行動実験、
○ シンプルな数理モデルでの研究が多い
● ソーシャル系Webサービスは、そういった環境よりも
○ ずっと自由な環境でヒトが振る舞っている
○ 秒単位の行動データが蓄積されている
→ 定量的に評価できてなかった仮説の検証
→ これまで見過ごされてきた新たな要因の発見