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顧客向け勉強会資料「カーボン・プライシングと再生可能エネルギー政策の現状と課題」

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株式会社メンバーズ 顧客向け勉強会の資料を公開します。
京都大学大学院で環境経済学の研究に取組む諸富徹教授による講演「カーボン・プライシングと再生可能エネルギー政策の現状と課題~日本が導入すべき方策と企業が取り組むべきこと~」を公開しています。

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顧客向け勉強会資料「カーボン・プライシングと再生可能エネルギー政策の現状と課題」

  1. 1. カーボン・プライシングと再生可能 エネルギー政策の現状と課題 ~日本が導入すべき方策と企業が取り組むべきこと~ 2020年12月9日(水)、17:00~18:00 オンライン 京都大学大学院地球環境学堂/経済学研究科 諸富 徹
  2. 2. パリ協定後の日本の課題は何か
  3. 3. パリ協定の主要ポイント • 目標 1)「2度未満」目標 パリ協定全体の目的として、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2度未満に抑えることが掲げら れ、とくに1.5度以内に抑える必要性に言及がなされた。 2)長期目標 今世紀後半に、世界全体の温室効果ガス排出量を、生態系が吸収できる範囲に収めるという目標が掲げ られた。これは、人間活動による温室効果ガスの排出量を、実質的にゼロにしなければならないことを意 味する。 • パリ協定の仕組み 1)5年ごとの目標の見直し 各国は、2020年以降、5年ごとに目標を見直し・提出しなければならない。 2)より高い目標の設定 5年ごとの目標の提出の際には、各国は、それまでの目標よりも高い目標を掲げなければならない。 3)検証の仕組み 各国の削減目標に向けた取り組みは、定期的に計測・報告し、かつ国際的な検証を受けることになった。
  4. 4. 日本の気候変動政策の現状 環境省「低炭素ビジョン小委員会」での議論を通じ て明らかになってきたこと
  5. 5. 日本が先駆的な温暖化対策に取り組 む必要がないとされた3つの理由 【1】日本はすでに、世界最高水準の排出削減技術をもっている 【2】日本は石油ショック以来、省エネに取り組んで今や、「乾いた雑巾」だ 【3】日本の限界排出削減費用は世界最高水準/さらなる温暖化対策は成 長にマイナス
  6. 6. 【1】本当に「最高水準の技術」か? • たしかに、1990年代前半までは、世界でも最 高水準の技術だったかもしれない • しかし、90年代後半以降、日本のエネルギー 生産性は停滞、その間、主要国が生産性を 一貫して高め、次々と日本を抜き去ったことを どう考えるか • もはや最高水準といえないのではないか。あ るいは削減技術としては最高でも、それが付 加価値の創出に結びついていない可能性
  7. 7. 【2】本当に「乾いた雑巾」か [出所]LCS(2014),4頁,図1
  8. 8. [出所]LCS(2014),4頁,図2
  9. 9. 温暖化対策は成長にマイナスか?
  10. 10. OECD諸国が対象 OECD諸国のうちで、人口500万人以上の国で、かつ、日本より一人当たり GDPが高い国 (出所)OECD (2016) Effective Carbon Rates Pricing CO2 through Taxes and Emissions Trading Systems, IEA (2016) CO2 emissions from fuel combustion 2016 IEA, World Energy Balances 2016 より作成 (注)日本のGDPは、平成28年12月に内閣府によって基準改定された数値を用いている。 (注)グラフの平均実効炭素価格とは、OECDの部門別に出された実効炭素価格を各 国の部門別排出量で加重平均して、一国平均の実効炭素価格を求めたもの。  「スイス、ノルウェー、スウェーデンは、水力発電が豊富なために炭 素生産性が高い」との指摘があるが、スイスのエネルギー生産性は OECD諸国で最も高い(我が国の約2.5倍)。またノルウェーも OECD諸国で第4位のエネルギー生産性を誇る。  スウェーデンについては、1991年の炭素税導入以来、バイオマスを 中心に水力以外の再エネの供給量が3倍に増加し、一次エネルギー供 給に占める割合が20%を占めるに至っている(水力は10%程度)。 結果として、90年代から炭素生産性は2倍以上(自国通貨実質GDP ベース)に上昇した。  また、風力発電の比率が高いデンマークは、エネルギー生産性につい ても、スイスに次いでOECD内で2位(我が国の約2倍)。 実効炭素価格と炭素生産性 左図において、ドイツ、英国、オラ ンダについては、「我が国より実効炭 素価格が高いにもかかわらず炭素生産 性が我が国と同程度しかない」との指 摘が可能である。左図の対象である 2012年は、年平均1ドル79.8円との 歴史的な円高であり、我が国の炭素生 産性は現在より相当高めに表示されて いる。 2014年(1ドル106円)では、ド イツ、英国、オランダとも我が国より 炭素生産性が高く、かつ、エネルギー 生産性も高い。(右図) 独英蘭の各国は、95年時点では我が国の半分程度の 炭素生産性しかなかったが、2000年代以降改善を続 け我が国を追い抜いた。 • 実効炭素価格が高い国は、炭素生産性が高い傾向にある(左図)。 ※実効炭素価格(Effective Carbon Rates): OECDは、炭素税、排出量取引制度、エネルギー課税を合計した炭素価格を「実効炭素価格」として、2012年4月現 在における各国の比較・評価を行っている。なお、我が国の温対税(炭素価格289円/CO2トン)は導入前で含まれていない。 • なお、我が国の炭素生産性や一人当たり排出量はグラフ上の近似曲線付近にあり、実効炭素 価格に含まれない既存制度による暗示的な炭素価格が他国の制度に比べて特に削減に寄与 している、すなわち、グラフ全体の趨勢から乖離して、他国と同レベルの実効炭素価格であり ながら、他国より特に高い炭素生産性を示して十分に長期大幅削減に近づいている位置を 占めているという現象は確認できない。 高 い ほ ど 効 率 的 y=0.086x+1.003 (5.47) R2=0.47 y=0.105x+1.132 (3.87) R2=0.48( の国を対象)
  11. 11. (出所)OECD (2016) Effective Carbon Rates Pricing CO2 through Taxes and Emissions Trading Systems, OECD Statistics より作成 (注)日本のGDP統計の2008基準への対応は、2016年12月になされたため、現時点のOECD統計には反映されていない。その ため、日本の総資本形成及び知的財産生産物形成は、2012年段階で総額で17兆円程度少なく見積もられていると考えられる。 • 実効炭素価格が高い国は一人当たりの総資本形成(GDPに計上されるいわゆるフローの投資額) が停滞している現象は観察されず、多い国も存在する(左図)。 • また、実効炭素価格と、一人当たりの総資本形成のうちの知的財産生産物形成(※)との間で正の 相関が観察される(右図:因果関係を示しているものではない)。カーボンプライシングが、イノ ベーションを促進するとの指摘(G7富山大臣会合コミュニケなど)と矛盾する現象ではないと考 えられる。 ※ 国連のGDP計算の基準であるSNA2008より導入された概念(Intellectual Property Products)。いわゆる「無形資産」のうち、コンピューター・ソフト ウェア、娯楽、文芸、芸術作品の原本等に加え、SNA1993では中間消費とされていた「研究開発」を含む資産項目。近年、この「無形資産」への投資がイ ノベーションを促進するものとして注目されている(平成28年版労働経済白書など)。 (注)グラフの平均実効炭素価格とは、OECDの部門別に出された実効炭素価格 を各国の部門別排出量で加重平均して、一国平均の実効炭素価格を求めたもの。 実効炭素価格と投資・高付加価値化との関係 y=0.024x+0.30 (3.79) R2=0.31 y=0.018x+1.248 (2.3) R2=0.27( の国を対象) y=0.076x+3.384 (2.57) R2=0.17 y=0.027x+8.509 (0.61) R2=0.03( の国を対象) 実効炭素価格 が高い国は、総 資本形成が低い 傾向になる現象 は観察されない OECD諸国のうちデー タがある国が対象 OECD諸国のうちで、 人口500万人以上の国 で、かつ、日本より一 人当たりGDPが高い 国
  12. 12. 大量排出業種のパフォーマンスを見る
  13. 13. 炭素生産性とGHG大量排出業種 • 財務省「法人企業統計」各年度版の「業種別 ,規模別資産・負債・純資産及び損益表」、環 境省「温室効果ガス排出量算定・報告・公表 制度」各年度版、GIO 温室効果ガスインベン トリオフィス「温室効果ガスインベントリ」各年 度版データより、GHG大量排出11業種の各 年度「炭素生産性」と「総資本営業利益率 (ROA)」を計算
  14. 14. CO2大量排出上位11業種における炭 素生産性の推移(単位:万円/t-CO2) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 鉄鋼業 化学工業 窯業・土石製品製造業 石油・石炭製品製造業 パルプ・紙・紙加工品製造業 輸送用機械器具製造業 食料品製造業 非鉄金属製造業 繊維工業 金属製品製造業 電気機械器具製造業 製造業全体平均
  15. 15. GHGインベントリ掲載産業の炭素生産性推移【 1990-2015/電気・熱配分前/機械産業除く】
  16. 16. CO2大量排出上位11業種における炭素生産性 と総資本営業利益率(ROA)の関係(2014年) 鉄鋼業 化学工業 窯業・土石製品製造業 石油・石炭製品製造業 パルプ・紙・紙加工品製造業 輸送用機械器具製造業 食料品製造業 非鉄金属製造業 繊維工業 金属製品製造業 電気機械 器具製造業 製造業全体平均 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 0 20 40 60 80 100 120 総 資 本 営 業 利 益 率 炭素生産性 (% (億円/t-CO2)
  17. 17. CO2大量排出上位11業種の総資本 営業利益率の推移(単位:%)
  18. 18. 図 カーボンプライシング導入による収益率の変化 [出所]Weizsäcker (1990)邦訳版,180 頁,図 41 を加筆修正. 3 エネルギー・環境税の導入  による収益や損失 2 1  現在の収益水準 0 エネルギー・ 汚染集約性 -1 労働力移動 収 益
  19. 19. 集中電源(原発・火力)に依存しない、 ナローパスを進んでいくことは可能か
  20. 20. (1)ドイツの現状
  21. 21. 一次エネルギー生産性 GDP 最終エネルギー生産性 一次エネルギー消費 温室効果ガス排出
  22. 22. (2)イギリスの現状
  23. 23. 既に既存電源よりも安価な再エネ
  24. 24. 英独の共通点 • 経済成長と温室効果ガス排出の切り離し(デカッ プリング)に成功 • 石炭火力発電の抑制が大きな課題 • 「カーボンプライシング(EU ETS,気候変動税, ドイツ環境税制改革)」の活用 • 原発依存度の段階的逓減、再エネ依存度の増 大、その基幹電源化(➤経済的合理性) • 「集中型電力システム」から「分散型電力システ ム」への移行 • ナローパスを進んでいくことは不可能ではない (➤経済影響を最小化することは重要)
  25. 25. カーボンプライシングの現状
  26. 26. カーボンプライシングの効果は?
  27. 27. 国際比較でみた日本のカーボンプラ イシング
  28. 28. イギリスおよびドイツにおける環境税 制改革の経済的影響
  29. 29. 1.イギリス[環境税+排出権取引+ 協定] ➤イギリスにおける気候変動税[Climate Change Levy: CCL]の導入(2001年 4月 1日 ~) [税率] *LPG 0.07ペンス/kwh *ガスおよび石炭 0.15ペンス/kwh *電力 0.43ペンス/kwh
  30. 30. 1.イギリス[環境税+排出権取引+ 協定] ➤税収中立的な環境税制改革 税収は、社会保険料(National Insurance Contributions: NICs)の雇用者負担分の12.2%を 0.3%分引き下げること、 そして、エネルギー効率性改善投資に対する補助金として産 業に還付される。 ➤エネルギー集約型産業の国際競争力に対する配慮 いわゆるエネルギー集約型産業に属し、政府の基準を満た すようなエネルギー効率性改善に関する協定を政府と結ぶ 企業は、気候変動税の税率が80%割り引かれる。 ➤「気候変動税」、「気候変動協定(CCA)」、「排出権取引制度 (UK ETS)」という3つの政策手段のポリシー・ミックスとなって いる。
  31. 31. 2.ドイツにおける環境税制改革( Ökologische Steuerreform) 2.1.ドイツ環境税制改革の内容 (1)1999年の「環境税制改革の導入に関する法律」 (Gesetz zum Einstieg in die ökologische Steuerreform)の成立 ➤鉱油税の引き上げ(ガソリンは 6ペニヒ[3.07セント] /㍑、暖房用油は4ペニヒ[2.05セント]/㍑、天然ガ スは0.32ペニヒ[0.164セント]/kWhの引き上げ)。 ➤電力税の導入(2ペニヒ[2.05セント]/kWh) ➤ただし、石炭と暖房用重油は非課税 ➤減免税規定
  32. 32. 2.ドイツにおける環境税制改革( Ökologische Steuerreform) 2.2.2000年の「環境税制改革の継続」に関する法律 (Gesetz zur Fortführung der Ӧkologischen Steuerreform)の成立 ➤2000年から2003年にかけて4段階に分けて環境 課税を段階的に強化 2.3.2003年の「環境税制改革の更なる発展」に関す る法律(Gesetz zur Fortentwicklung der Ӧkologischen Steuerreform)の成立 ➤環境政策上望ましくない租税特別措置の整理縮 小と、鉱油税の税率引き上げを目的として成立
  33. 33. 1999 2000 2001 2002 2003 石炭(ct/kg) - - - - - ガソリン(ct/㍑) 3.07 3.07 3.07 3.07 3.07 暖房用軽油(ct/ ㍑) 2.05 - - - - 暖房用重油 (ct/kg) - 0.26 - - 0.71 天然ガス (ct/kWh) 0.164 - - - 0.202 液化ガス(ct/kg) - - - - 2.23 電力(ct/kWh) 1.02 0.26 0.26 0.26 0.26 表1 環境税制改革による税率引き上げの推移(単位:ユーロセント[ct])
  34. 34. 2.ドイツにおける環境税制改革( Ökologische Steuerreform) 2.4.税収の取り扱い~社会保険料の段階的引下げ~ 税収はほとんど全て、社会保険料の雇用者および被雇用 者負担分の引下げに用いられる。 年 税収規模 社会保険料引下げ率 1999 43億ユーロ 0.6 % 2000 88億ユーロ 1.0 % 2001 118億ユーロ 1.3 % 2002 146億ユーロ 1.5 % 2003 188億ユーロ 1.7 %
  35. 35. 1.英国環境税制改革の評価② (Cambridge Econometrics 2005)
  36. 36. PANTA RHEI モデル -3.00-2.85-2.81-2.49-2.25-1.80-0.78CO2排出 0.490.560.640.550.340.430.58雇用 -0.100.020.100.090.030.120.24GDP LEAN モデル -2.21-2.35-2.30-1.94-1.52-1.10-0.42CO2排出 0.510.470.420.340.310.230.10雇用 -0.54-0.61-0.56-0.48-0.33-0.24-0.13GDP 2010200520032002200120001999 表 主要指標に対する環境税制改革の効果(参照シナリオからの乖離:%)
  37. 37. まとめ ➤税収中立的な環境税制改革であれば、経済成長や 雇用に大きなマイナスの影響を与えることなく環境 税を導入し、温室効果ガス排出の削減を行うことは 可能。 ➤エネルギー集約的かつ労働集約的でない産業の負 担軽減措置も必要。しかし、それは協定制度の下で 排出削減へ向けた努力とセットで提供されるべき。 ➤税と協定のポリシー・ミックスでは、「アナウンスメン ト効果」や「知覚効果」についても検証すべき。
  38. 38. 日本はどのようにしていくべきか
  39. 39. ポリシー・ミックスの全体像(1)
  40. 40. ポリシー・ミックスの全体像(2) N-ETS • 産業・電力セクターの大口排出者に対しては 、国の全国レベルでの排出量取引制度(直接 排出)を導入 ➤石炭火力のコントロール手段が必要 • 電力供給高度化法との関係をどうするか。小 売事業者に対する規制と、発電事業者に対 する規制は別だと考えるか ➤電力セクターだけの市場をつくるのではなく、電 力・産業両部門を包含する大きな排出量取引市場 を創出するほうが望ましい
  41. 41. ポリシー・ミックスの全体像(3) L-ETS • 東京都、埼玉県に続いて、他の都道府県でも、 排出量取引制度導入が望ましい • N-ETSで裾切りされる対象者や、エネルギーの 需要側に焦点をあてた政策手段として活用。 • すでに多くの都道府県が、「計画書制度」を導入 済みなので、これを基盤とすれば、排出量取引 制度(L-ETS)への移行は可能 • N-ETSとは、直接排出の規制と間接排出の規制 、という形で役割分担
  42. 42. ポリシー・ミックスの全体像(4) Carbon Tax (CT) • 炭素税は、現在の石油石炭税上乗せの炭素比 例税の形を継承。今後は、その税率を段階的に 引き上げていくことが重要 • 消費税でインボイスが導入されれば、炭素税も インボイスの仕組みを使うことになる。 • インボイスで、下記の2つの措置が実行可能に 1)排出量取引制度の対象事業者は、炭素税を低税 率で課税 2)輸出品に対して、炭素税を還付する
  43. 43. 温暖化対策税 • 2010年12月16日に税制改正大綱で閣議決 定、2012年10月1日施行 • 温室効果ガスの排出に比例し、化石燃料に 課税。税収はすべて、地球温暖化対策に充 てられる • 温室効果ガス排出削減のための政策手段で あると同時に、その対策財源の調達を目的と した、二重の目的をもった税
  44. 44. 石油石炭税と、その他の化石燃料課税 課税対象 上流 課税標準 天然 ガス 石油・石油製品 石炭 電力 税目 石油石炭税 下流 課税標準 天然 ガス ガソ リン 軽油 LPG 灯油 重油 ジェ ット 燃料 石炭 電力 税目 ガソ リン 税* 軽油 引取 税 石油 ガス 税 航空 機燃 料税 電源開発 促進税 は現行税制の下で課税されている課税対象を示す。 *「ガソリン税」とは、揮発油(=ガソリン)に課税ベースを置く「揮発油税」と「地方道路税」を総称する名称である。
  45. 45. ポリシー・ミックスの全体像(5) Environmental Tax Reform (ETR) • 2050年80%削減に向けて、炭素税率の水準は十分イン センティブ効果をもつ水準に引き上げていくべき • 他方、それがマクロ経済や産業の国際競争力に与える影 響については考慮が必要 • 環境税収を社会保険料引き下げや家計への還付等で相 殺する「環境税制改革」を実施し、税収中立的な設計とす ることで、副作用を抑えながら環境税率を引き上げること が可能に • 産業の国際競争力への懸念については、税収中立的な 環境税制改革、排出量取引制度対象産業への税率割引 の適用で対処可能。 • それでもカーボンリーケージの恐れがある場合には、前ス ライドのように、国境調整(つまり、インボイスに記載された 炭素税額を還付する措置)を行うことを検討することになる
  46. 46. 結論 • 結局、これまでカーボンプライシングが経済に悪 影響を与えた事例は見つからず • 逆に、カーボンプライシングの導入した国におい て、炭素生産性の上昇、より高い経済成長が観 察される • もちろん、制度設計のあり方が重要 • 英独においては、「集中型」から「分散型」電力シ ステムへの移行が進行中、「分散型」電力セクタ ーが新しい付加価値と雇用創出の担い手に • 結果として、経済成長/雇用の増大と、集中型 電源(原発、火力)からの脱却は両立可能とみる のが正しいのではないか
  47. 47. 企業は何をなすべきか • 2050年を目指して高い目標を掲げる(「RE100」、「 気候中立」) • 気候変動問題への寄与を通じて利潤を上げていく ビジネスモデルとは何か? • 再エネ比率の引き上げ、省エネの強化など企業とし て現時点で可能な対策(社内CPを含む)を実行する • 中長期的に投資の中身、事業構造をどのように変 えていくか? • 企業だけでなく、産業界全体、あるいは政府と協力 して推進すべきことは何か?
  48. 48. 参考
  49. 49. 「脱炭素化/エネルギー転換」はむし ろ、経済成長をもたらす可能性
  50. 50. 画期的な報告書 • OECD、IEA(国際エネルギー機関)、IRENA(国 際再生可能エネルギー機関)が共同でエネルギ ー転換に向けた報告書を公表(OECD/IEA and IRENA 2017) • 産業革命以来の全球気温上昇を66%の確率で 2℃未満に抑えるシナリオを採択 • 必要とされる政策(➤エネルギー効率性の顕著 な引き上げと再エネ大量導入) 1)化石燃料への補助金の段階的廃止 2)炭素価格の大幅な引き上げ($190/CO2-tへ) 3)エネルギー市場の改革 4)低炭素化および省エネへ向けた厳格な規制の実施
  51. 51. エネルギー転換は必須 • 2050年までに、世界総発電量の95%が非化石電源 へ(➤現在は同1/3) • 再エネ比は、同23%から70%(2050年)へ • 太陽光と風力の主力化(➤2050年に同35%、再エネ のうち半分へ) • 原発は、同11%から17%(2050年)へ • 火力発電は2035年までに半減、2050年までに80% 以上減少 • CCS付きでない石炭火力発電は早期に退場 • 効率的な石炭火力も2040年までに完全に廃止 ➤現時点で建設中の石炭火力を最後に新規投資は停止 ➤2020年代にはガス火力が伸張、その後、再エネで代替
  52. 52. 66% 2℃シナリオにおけるグローバ ルな電源構成の予測 【出所】 OECD/IEA and IRENA (2017), p.75, Figure 2.12.
  53. 53. むしろ経済成長を促進 【IEAモデルによる経済推計】 • 「エネルギー転換シナリオ」は、「成り行きシナリオ」に比して 、2050年時点で0.8%分、成長率を高める ➤エネルギー転換の投資刺激効果、カーボンプライシングの収入還付効果が経済 を刺激 • 雇用はむしろ増加 ➤化石燃料関連産業では最大の産出量減少 ➤資本財産業、サービス産業、バイオエネルギー関連産業で、最大の産出量増加 ➤エネルギー産業全体では、2050年までに約600万人の追加雇用 【OECDモデルによる経済推計】 • OECDシナリオは、50%確率で産業革命以来の全球気温上 昇を2℃以内に抑制(OECD 2017) • 長期的にG20平均経済成長率を2.8%分引き上げる(「純成 長効果」)
  54. 54. 全球平均気温2℃上昇目標を実現する場 合の経済成長への影響 (G20平均,現行政策延長シナリオとの比較) 【出所】 OECD (2017), p.8, Figure 1.
  55. 55. なぜ再生可能エネルギーは主力電源 となるのか~その経済性
  56. 56. 再エネ発電コストの劇的な低下 【出所】 IREANA(2018),
  57. 57. 調整電源を含めてもコスト優位性 【出所】 Deutsch, Krampe, Peter & Rosser (2014), p.18, Fig.7.
  58. 58. 九州電力の太陽光発電出力抑制をど う考えるか ~日本の再エネ政策と電力システム改革~
  59. 59. 図 9-1 日本の総発電量に占める再生可能エネルギーおよび原子力発電比率の推移 [出所]資源エネルギー庁の電力調査統計より ISEP 作成.
  60. 60. 相対的に割高な日本の再エネ
  61. 61. 再生可能エネルギー固定価格買取制 度(FIT)のもたらした成果と課題 • 一種の幼稚産業保護政策 • 再エネ発電事業者の投資意欲を掻き立 てる仕組みとしては成功 • 再エネ拡大に大きく貢献 • 他方で、(1)費用膨張問題と(2)系統接続 問題が浮上
  62. 62. 日本の電力システムが直面する課題 ~九州電力における出力抑制問題から~
  63. 63. 九電管内で何が起きたのか • 九州電力は10月13、14日、翌週の10月20日、21日と、2週連続計4回の太陽光 発電出力抑制を実施 • 九州の太陽光導入量は着実に増えており、電力需要が減少する一方、太陽光発 電量が伸び、電力需要を超える電力供給が行われる可能性の高い春と秋の休 日の好天時に出力制御が常態化する可能性が高まっている • 出力抑制を避けるために、どのようなことが行われてきたのか ➤①揚水発電による再エネ電力の吸収、②火力発電所の出力抑制、③電力の広 域融通、④バイオマスの出力制御 • しかし、原子力、水力、地熱発電は出力抑制の対象外(再エネに優先して送電す る権利が付与されている~ここは欧州と異なる点) • 背景に、九州で玄海原発を含む原発の再稼働が進み、現在4基が稼働中。これ らから発電される電力が増えれば増えるほど、供給の柔軟性が失われる(出力抑 制できない電源が増える)。供給能力の柔軟な変化によって再エネ受け入れ余地 が従って減少したという事情も、今回の出力抑制発動の背景にある。 • 他方、九州電力としては、法制上義務付けられた手順に従って、やるべきことは すべてやった上で、やむをえざる「最終手段」として太陽光発電の出力抑制に訴 えた。電力広域的推進機関(OCCTO)も肯定的評価を与えている。だが、議論す べき論点は多数ある。
  64. 64. 検討すべき論点 • なぜ再エネが優先的に抑制対象になるか? ➤原子力、水力、地熱発電も含めて長期固定電源の出力抑制について検討の余 地はないのか ➤しかし、九電管内だけでの需給調整には限界。広域での調整を常態化 させるべき • 連系線を介した電力融通は十分だったか ➤かつて13万キロワットだった関門連系線の120万キロワットにまで増大 し てきた。九電としては着実に連系線利用を増やしてきた ➤連系線の必要容量について検証し、投資計画を策定する必要 ➤東日本、西日本に分けて、それぞれを1つのエリアと考えた広域調整を 本格的に行う必要性がある。そのためにグリッドが混雑しているのであれ ば、それを解消する系統増強投資が必要
  65. 65. 検討すべき論点(続き) • そもそも、市場メカニズム活用の話がま ったく出てこない ➤九電で余剰電力→電力価格下落→電力市場で売却(本州に送 電)→本州の高コスト発電が出力を下げる/停止→日本全体で電 力コストの低減に寄与 ➤市場メカニズムを効かせることで、自動的に広域調整が働くよう にすべき ➤価格が下がれば、電力需要も伸びるはず ➤蓄電池や水素の話が出ているが、中長期的にはあり得ても、コス ト的に現時点では見合わない、最後の手段。優先順位はあくまで も系統での余剰電力の吸収であり、それが国民負担の最小化に つながる(「広域メリットオーダー」)
  66. 66. 「市場分断」が起きていた • こうしたメカニズムが働いていたかを検証するには、日本 卸電力取引所(JEPX)の取引価格データをチェックすれば よい ➤もし「Yes」なら、九電管内と本州の取引価格は均一のはず ➤出力抑制の行われた2018年10月20日、午後4時~4時半の時間帯にお ける九電管内の取引価格は6.43円/kWh、本州の中国電力、四国電力、 関西電力管内の取引価格はすべて10.94円/kWhと、両者は大きく開い ていた ➤他方、本州三社の管内における取引価格はつねに均一だった • 通常の日は、九電管内の取引価格が本州三社の取引価 格と基本的に一致 • 【結論】両エリアの取引価格を一致させるメカニズムは働 いていなかった(「市場分断」)
  67. 67. 得られた教訓[1] • 再エネ給電ルールの再設計の必要性 ~再エネを優先に 1)ドイツの優先給電ルール 2)日本の優先給電ルールとの違い 3)メリットオーダー(最小費用ルール) • 広域電力融通の大幅拡大を 1)広域メリットオーダーの導入を 2)周波数が同一の東日本/西日本全体で需給バランス の調整を
  68. 68. 得られた教訓[2] • 系統利用ルールにおいて、電力市 場の価格シグナル活用を 1)連系線利用における間接オークションの適用は評価 2)地内系統への間接オークション適用を • 電力系統ボトルネック解消へ向けた 計画的投資を 1)北本連系、関門連系など、再エネ増加にともなってボ トルネックが発生している連系線を増強すべき 2)再エネ拡張計画(特に洋上風力)に合わせて計画的に 系統増強投資を実行すべき
  69. 69. 競争条件の均等化/新規参入の促進 送電部門 既存電源既存電源 既存電源 新規電源 (再エネ) 配電部門 配電部門 配電部門 配電部門 電力需要家
  70. 70. メリットオーダーとは何か
  71. 71. 再エネ大量導入上の最大の課題とし ての系統容量問題
  72. 72. 京都大学再エネ講座による分析対象 となった線路の電気的・地理的配置 京都大学「再生可能エネルギー経済学 講座」安田陽・山家公雄両教授 作成
  73. 73. 十和田幹線の時系列データ (2016年9月1日~2017年8月31日) 京都大学「再生可能エネルギー経済学 講座」安田陽・山家公雄両教授 作成
  74. 74. 主要幹線の空容量および利用率比較 (2016年9月1日~2017年8月31日) 京都大学「再生可能エネルギー経済学 講座」安田陽・山家公雄両教授 作成
  75. 75. 再エネ大量導入のために系統運用 の柔軟性を高める ~蓄電池よりも安価なオプション~
  76. 76. 「残余需要」の考え方 [出所]Federal Ministry for Economic Affairs and Energy (2014), p.15, Figure 2.
  77. 77. 変動性/柔軟性/ネガティブ・プライス(1) [出所]Graichen , P. et al. (2018) p.39
  78. 78. 変動性/柔軟性/ネガティブ・プライス(2) [出所]Graichen , P. et al. (2018) p.53
  79. 79. 変動性/柔軟性/ネガティブ・プライス(3) [出所]Graichen , P. et al. (2018) p.54
  80. 80. 『資本主義の新しい形』岩波書店, 2020年1月刊行 • 第1章 変貌しつつある資本主義 • 第2章 資本主義の進化としての 「非物質主義的転回」 • 第3章 製造業のサービス産業化 と日本の将来 • 第4章 資本主義・不平等・経済 成長 • 終章 社会的投資国家への転換 をどのように進めるべきか
  81. 81. 諸富徹編(2015)『電力システム改革と 再生可能エネルギー』日本評論社 序 章 電力システム改革と分散型電力システム 諸富 徹 第1部 分散型電力システムのデザインと技術的課題 第1章 電力システムの計画経済型から市場経済型への移行 のための技術と制度設計 阿部力也 第2章 再エネ大量導入時代の送電網のあり方:ベースロード 電源は21世紀にふさわしいか? 安田 陽 第3章 分散型電源大量導入の技術的問題と対策 近藤潤次 第2部 分散型電力システムにおける市場設計の諸課題 第4章 ドイツにおけるキャパシティー・メカニズムの制度設計: StrategicReserveとCapacity Marketを中心に 東 愛子 第5章 欧米における容量市場の制度設計の課題 服部 徹 第6章 電力系統の再構築とその費用負担原理 諸富 徹 第7章 電力システム改革は電力業のパフォーマンスを改善するか 南部鶴彦 終 章 要約と結論、そして今後の研究へ向けての展望 諸富 徹
  82. 82. 諸富徹編(2019)『入門 再生可能エネル ギーと電力システム改革』日本評論社 序章 再生可能エネルギーと電力システム改革 第1章 電力市場の仕組み―北欧の電力市場 Nord Poolを例に 第2章 柔軟な電力市場の構築―デンマークと ドイツの電力市場制度の比較分析 第3章 電力市場に分散型電力と柔軟性を 供給するVPP(バーチャル発電所) 第4章 EUにおける電力市場の統合と連系線 の活用 第5章 送電線空容量問題の深層 第6章 欧米の電力システム改革からの示唆 第7章 電力系統安定化のための自律的消費 電力制御 第8章 風力・太陽光発電大量導入による電力 需給バランス、2030年シナリオ
  83. 83. 参考文献 • 環境省中央環境審議会「低炭素ビジョン小委員会」資料. • 環境省「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」取りまとめ参考資料集. • 資源エネルギー庁(2017a),『平成27年度(2015年度)エネルギー需給実績』(確 報). • 資源エネルギー庁(2017b),『平成27 年度エネルギー消費統計結果概要』. • 東京都税制調査会(2018),「環境関連税制に関する分科会報告」(概要版). • 独立行政法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センター(LCS)(2014),『東日 本大震災後における消費電力の変化』低炭素社会実現に向けた政策立案のた めの提案書. • 諸富徹(2000)『環境税の理論と実際』有斐閣 • 諸富徹・鮎川ゆりか(2007)『脱炭素社会と排出量取引‐国内排出量取引を中心 としたポリシー・ミックス』日本評論社 • 諸富徹・浅野耕太・森晶寿(2008)『環境経済学講義』有斐閣 • 諸富徹・浅岡美恵(2010)『低炭素経済への道』岩波新書 • 諸富徹編著(2010)『脱炭素社会とポリシーミックス』日本評論社 • Umweltbundesamt (2017), Entwicklung der spezifischen Kohlendioxid- Emissionen des deutschen Strommix in den Jahren 1990-2016. • Committee on Climate Change (2017), Meeting Carbon Budgets: Closing the Policy Gap, 2017 Report to Parliament. • Bundesministerium für Umwelt, Naturschutz, Bau und Reaktorsicherheit (2017), Fakten, Trends und Impulse deutscher Klimapolitik.

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