第20回北海道の図書館職員を中心とした有志による自主的な勉強会(仮)「劇的BeforeAfter!?理子さまのプレゼン道場」 2016年09月08日(木)
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第 20 回北海道の図書館職員を中心とした有志による自主的な勉強会(仮)
2016 年 09 月 08 日(木)
「劇的 BeforeAfter!?理子さまのプレゼン道場」
東京外国語大学 茂出木理子 modeki_riko@tufs.ac.jp
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1. 話題提供 (20 分)
2. デモプレゼンター(8 分×4 名+各プレゼンへのコメント)
3. 「話題提供」プレゼンで使ったテクニックについて
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■本日の Take-home message
何のために、私たちはプレゼンをするのか?
何のために、私たちはプレゼンの技量を磨きたいのか?
昨夜遅く、世話人の方からメールをいただき、「プレゼンテーションについて悩んでいる
こと」という事前アンケートを拝見しました。多くの方が「緊張して、上手に話せない」
ことを悩みとして回答されていました。確かにそのとおりでしょう。誰だって人前に出れ
ば緊張しますよね。経験が少なければなおさらでしょう。
でも、よく考えてみてください。
では、プレゼンの時に緊張せずに、自分が言いたいことを言い切れたら、それであなたの
プレゼンは成功ですか?
あなたがプレゼンでやりたかったことは、自分が上手に話せて「今日の私はよくやった!」
と満足に浸ることですか?
違いますよね?
私も「緊張しない方法」なんていう低レベルなことをお話するために、わざわざここ札幌
まで来たつもりはありません。
今日はもっと大事なこと、すなわち「何のために、私たちはプレゼンをするのか?」「何
のために、私たちはプレゼンの技量を磨きたいのか?」ということを、一緒に考えたいと
思って、ここに立っています。
■BeforeAfter! 事例のご紹介「東京外大石山夕記さん 国大図協総会の発表までの道」
今日は『劇的 BeforeAfter!?理子さまのプレゼン道場』という素敵なタイトルをつけてい
ただきました。このあと、4 人のプレゼンターの方のプレゼンに即興でコメントするという
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大胆な試みを行います。
まずは、私が職場(東京外国語大学図書館)でのプレゼン指導でどのようなコメントをし
ているのかの実際をご覧いただきます。
本番発表までの課内リハーサルは、こんな感じでした。
2016 年 5 月 27 日(発表まで 3 週間) 課内リハーサル 1 回目
2016 年 6 月 9 日(発表まで 1 週間)課内リハーサル 2 回目
2016 年 6 月 17 日 本番発表
2016 年 7 月 15 日 1 か月後の振り返り
課内でのリハーサル(要するにダメ出し)を 2 回もすることに驚かれるかもしれませんが、
実はいちばんのポイントは、1 か月後の振り返りです。これがないと、どんな貴重な経験も、
有益なコメントも身につかないです。
お配りしたパワーポイント(PPT)は、今年の国立大学図書館協会の総会で、石山夕記さ
んが海外派遣報告のプレゼンをした時のものです。
さて、どっちのパワーポイント PPT が Before でどっちが After でしょうか?
Before の PPT だって、十分に綺麗だし、大きな欠損はありません。もちろん、After の方
が、1 枚のスライドに主張は1つとか、字の大きさの配分とか良くなっていることは確かで
すが、そんなことは大したことではありません。
2 度の課内リハーサルで指摘した、もっとも大事なことは、「何のために誰に向けて今回
プレゼンするのか?」「何をメッセージとして、あなたは(石山さん自身が)伝えたいのか?」
「そのメッセージは一言で言うなら何?」の問いかけでした。
そのほかに、課内リハーサルで指摘したことは、次のような内容です。
(1) プレゼンの TPO を意識すること
Time に関して:
持ち時間が 8 分弱で 4 つのことを述べるのは所詮無理。
詰め込みすぎ。全部は言えない。諦めろ。
何がなんでもこれだけは言わせて!ということのみに絞れ。
Place/Occasion に関して:
国大図協総会というオフィシャルで、かつ大勢の館長・管理職がいる場。
慣れてないのに下手な受け狙いなんてやめとけ。
会場座席配置を想定し、聴衆から見やすい資料になっている?
(2) 全体の印象と構成について
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綺麗にはまとまっていたけど、残るものが少ない「流しそうめん」のような印象
がある。
それで、あなたの「Take-home message」は結局何?
1 か月後の振り返りでは、結局、プレゼンとスライドの構成は、学術論文の基本である
IMRAD 形式(Introduction, Materials and methods, Results, and Discussion)に沿った
ものになっていたのではないか?という問いかけを行いました。
そして、本人の気づきは、次のとおりです。
実際に人前で話してみると、1スライドに言いたいことは1つにすること、言葉
よりも視覚に訴える、という 2 点の効果を強く感じた。
そのためには、何よりも自分の頭の中が整理できてないといけない。(できている
つもりだったけど、いざ「一言で何?」と聞かれて答えられなかったってことは、
整理できてなかったことに気がついた。)
■理子さまの私論
何のために、私たちはプレゼンをするのか?
何のために、私たちはプレゼンの技量を磨きたいのか?
何のために…、それは、
主張したいことがあるから。
その主張が現状改善のために意味があると思うから。
そして、技量を磨きたいのは…
他人の時間を無駄にしないため。
プレゼンした相手が「言っていることは理解できた。で、だから何?」で終わっ
てしまったら「他人の時間を無駄にしてしまった」ことになる。
だから、ストレートにメッセージが伝わるために精進したい。
これは、突き詰めれば、究極「プレゼンが不要」になることを目指しているとも言えます。
「伝わるプレゼンをすることで信頼される人材になる」ということと、「信頼される人材
になれば時間をかけたプレゼンは不要になる」は、同じことのように思います。
■最後に
プレゼンのいちばんの問題は、あなたが緊張してあがってしまって、上手に話せなかった
ことではありません。
どうしても伝えたいと思っていたメッセージが、相手に伝わらなかったことです。
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そして、何よりスライド依存症から脱出したい。
(5) 短い一文でしゃべる。「ひらがな」でしゃべる。難しい言葉は使わない。易しい言葉を
選んでも「弱気な言葉」は使わない。言い切るときは言い切る。
(6) 印象的で独特で、かつビジュアルがイメージしやすい用語・例えを使う。
「流しそうめんのようなプレゼン」
「神社でのお願いも一言で言い切れないと神さまですら聞いてくれない」
(7) 参加者が共感しやすい具体的かつ身近なストーリーで話す。
石山夕記、国大図協総会でのプレゼン発表までの道
(8) サイモン・シネックの「ゴールデンサークル」を使用した。
「何のために」「Why」を最初に、「何をするかは」「What」は最後に語れ。
(9) 動作
直立不動ではなかったはず。だけど、あまりせわしく動かないようにした。
今回は 20 分の短いプレゼンなので使いませんでしたが、40 分以上の持ち時間があるとき
は、「前に話した内容を一度振り返ってから、新しい内容を話す」という構成を意識して使
っています。
私はこれを「伏線の回収」と呼んでいます。
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参考文献
■平田オリザ『わかりあえないことから:コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代
新書 277)2012 年
p.25 しかし、そういった「伝える技術」をどれだけ教え込もうとしたところで、「伝えた
い」という気持ちが子どもの側にないのなら、その技術は定着していかない。では、そ
の「伝えたい」という気持ちはどこから来るのだろう。私は、それは「伝わらない」と
いう経験からしかこないのではないかと思う.
p. 146 パリには世界中から芸術家が集まってくる。その中で私に仕事の依頼が来るのは、
私が彼らの持っていないものを持っていて、しかもそれを彼らの文脈で説明できるから
だろう。
■TED の代表者 Chris Anderson 氏が語る、素晴らしいプレゼンに不可欠な要素