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JBA緊急セミナー
Libraコインの登場とステーブル
コイン規制(ドラフト)
創・佐藤法律事務所
弁護士 斎藤 創
2019年6月24日
1
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2
自己紹介
弁護士/NY州弁護士 斎藤 創
1999年4月 西村あさひ法律事務所(証券化、デリバティブ等)
2013年夏 ビットコインに仕事で出会う
2015年4月 独立して現事務所を設立(仮想通貨・ブロック
チェーン・FinTechなどを専門)
(その他の経歴)
東京大学法学部卒、NY大学ロースクール卒、NYのローファーム
勤務、日本ブロックチェーン協会顧問弁護士、FinTech協会キャ
ピタルマーツ分科会事務局、三菱地所物流リート投資法人監督
役員等
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3
Ⅰ LIBRA仕組み
• 詳細は福島さんの発表
• 基本的には「リザーブ」を裏付けとし
たIOU型ステーブルコイン
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4
Ⅰ LIBRA仕組み -発行方法-
① 投資トークンの販売による発行
– 投資家トークンを私募で投資家に販売
– 支払われた金額がリザーブに当てられ、同額のLibraコイン発行
– 同Libraコインは投資家トークン保有者への配布ではなく各種運
営(ユーザー、販売者、開発者による採用を促すための支払い)に
使用
② ユーザーによるリザーブへの拠出
– ユーザーが新 Libra コインを受取るためには、Libraコインと等
価の法定通貨を供出し、リザーブに移行
– ただ、ユーザーはリザーブとは直接やりとりしない
– 効率性の観点から、協会に認定された再販業者のみが法定通貨
と Libra をリザーブに出し入れ可能(日本のETFと同様?)
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5
Ⅰ LIBRA仕組み -リザーブ運用-
• リザーブが裏付は低リスク資産(中央銀行
が発行する通貨や公債等)に分散投資
• 投資からお利子収入はLibraエコシステム
の発展のための運営資金等に利用
• 運営資金等が充足された後の利益はLibra
投資トークンへの配当となる(低利なので
かなり後)
• なお、Libraコインのユーザーはリザーブ
からの利益を受け取らない
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6
Ⅰ LIBRA仕組み -償還-
• 認定再販売業者は、Libraコインをリザー
ブに対して持ち込み、同額の法定通貨を受
け取れる。
• 同額とあるが、この同額の計算方法は詳細
は不明。裏付資産の時価を計算してその割
合で計算か
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7
Ⅰ LIBRA仕組み –売買-
• ユーザーは仮想通貨取引所等でLibraを売
買可能
• 取引所による売買+発行+償却で様々な
アービトラージ取引がされることにより
Libraコインがリザーブの市場価格と近く
なるよう
→ 全体的に株式ETFに近い仕組みという印象
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8
II ステーブルコインの規制
• ステーブルコインだから何々法の適用があ
る、何々法の適用がない、という議論は正
確性を欠く
• ステーブルコインにも様々な方式があり、
また具体的仕組が日本法上どうなるか一点
一点分析する必要性
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9
II ステーブルコインの例
① IOUモデル
– 発行体がトークン保有者に対してトークンを一定の
金額で償還することを約するモデル
– 通常、フィアットか別の実在資産により完全に裏付
けられる
– 例:TrueUSD、USD Tether、JPY ZEN、Libra
等?
② オンチェーン担保モデル
– 複雑なスマートコントラクト、異なる種類のトークン、オ
ラクル、外部アクターなどを使用し、コインの安定性を確
保するモデル
– 例:MakerDAO
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10
II ステーブルコインの例(続)
③ 通貨発行益モデル
– 貨幣数量説に基づいて発行されるコイン。トーク
ンの価格を基準通貨や他の基準値と比較して安定
させるために、トークンの供給を需給に応じて継
続的に調整する
– 例:Basis
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11
Ⅲ 仮想通貨法
• 仮想通貨の定義
①電磁的な財産的価値 + ②電磁的に移転可能
+ ③(a)不特定多数に対して使用可能又は(b)不
特定多数間で他の仮想通貨と交換可能ー ④通貨
建資産=⑤仮想通貨
• ステーブルコイン規制の関係では通貨建資
産かが大事
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12
Ⅲ 仮想通貨法
• 通貨建資産の定義
通貨建資産=本邦通貨若しくは外国通貨で表示され、
又は本邦通貨若しくは外国通貨で債務の履行、払戻
しその他これらに準ずるものが行われる資産
→ 例えば、True USDやUSD Tetherは、発行体が
1USD=1コインでの償還を約束している筈で通貨建資
産に該当と思われる
→ 他方、日本のZENは、取引所で1円=1ZENでの購
入オファーを出すことを約束しているだけなので、定
義上、通貨建資産に該当しなと考えられるよう
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13
Ⅲ 仮想通貨法
• LIBRAは
– 通貨バスケットであり特定の通貨にリンクしていない
– 認定再販売業者が償還を請求する際はリザーブの価値
(裏側にある通貨、ボンドなどの価値)の時価を踏まえ
て償還がなされるのではと思われること
から通貨建資産には該当しないのでは?
→ 仮想通貨に該当する
• 但し性質をより詳しくチェックする必要は
ある。また異なった考えも有り得る
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14
Ⅲ 仮想通貨法
• 仮想通貨に該当する場合、日本居住者に対する販
売には仮想通貨交換業の登録とコインの金融庁の
届出(実質は承認)が必要
• 新規取扱には相当の工数が必要。自主規制を踏ま
え取引所のチェック、自主規制団体のチェック、
金融庁のチェック
• 日本ではZENが仮想通貨として2017年から取引所
で取扱い
• しかし、2018年1月のコインチェック事件以降、
新規コインは一件も認められていない(今後は可能
性あり)
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15
Ⅳ 為替取引(銀行法・資金決済法)
• 通貨建資産となるステーブルコインについ
ては為替取引該当性を要検討
• 為替取引 = 遠隔地の者の間で直接現金を
移転させる方法(例えば現金輸送車)以外で、
委託を受けて資金を移動させること(銀行
振込など)
• 1回100万円を超える為替取引 = 銀行法
• 1回100万円以下の為替取引 = 資金移動
業
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16
Ⅳ 為替取引の規制
発行体
• 日本で銀行免許か資金移動業を取得?
– いわゆる銀行コインの発行は為替取引とされても問題
ない
– 他方、海外の発行体が銀行免許を取ることは通常は非
現実的
– 資金移動業であれば難易度は低いが、ステーブルコイ
ンで1回100万円の制限をどう確保するのかの問題、
未使用額全額の供託が要求される等の問題(グローバ
ルの場合には?)
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17
Ⅳ 為替取引の規制
取引所
• 為替取引型のステーブルコインを単に販売
すること自体は仮想通貨交換業でもなく、
為替取引でもないはず
• ただ、日本での銀行業違反のコインを取扱
うことは非現実的
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18
Ⅳ 為替取引の規制
取引所(続)
• 銀行が発行した為替取引型ステーブルコインを販
売することは他業としてOK?
• 為替取引型ステーブルコインを、顧客Aから預か
り、それを顧客Bアカウントへ移動させることは
取引所が為替取引を行っているとされそう
• なお、仮想通貨法の文言上は、仮想通貨と為替取
引型ステーブルコインを交換する行為は仮想通貨
交換業に該当しない筈だが、実際上は交換業に準
じて取扱うことになろう
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19
Ⅴ 前払式支払い手段の規制
• 可能性としては、ステーブルコインが前払式
支払手段として発行されることも考えられる
• 前払式支払手段 = ①金額又は数量の記録
+ ②それに応じた対価の支払い + ③発
行体又は発行体の加盟店で商品購入等に使用
可能
• 前払式支払手段は、何らかの商品購入のため
に発行されるものであり資金移動ではない
• 但し、資金移動ではないとするために「償還」
が原則として認められない等の制限
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20
Ⅴ 前払式支払い手段の規制
発行体
• 日本で第三者型前払式支払手段の登録
• 償還が不可等の問題があり、現在発行され
ている多くのステーブルコインとは異なる
使用感
• 未使用残高の半分を供託しないといけない
(グローバルの場合には?)
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21
Ⅴ 前払式支払い手段の規制
取引所
• 既に登録された前払式支払手段型のステーブ
ルコインを販売すること自体は他業として可
能では
• 個客間の移動でもあくまで前払式支払手段の
移動であり、為替取引には該当しない可能
性?
• 前払式支払手段型ステーブルコインと仮想通
貨の交換は、仮想通貨の売買に準じて考え
る?(SUICAで仮想通貨を購入する場合)
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22
Ⅵ 金商法
ファンド規制
• ①出資者が金銭を出資、②事業を営む、③収益の配当又
は出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる
権利
→ 集団投資スキームとして規制
• 議論としては、Libraトークンは通貨バスケット及び公
債に投資して、公債の価格変動や通貨の変動の利益を得
るファンドであり、有価証券であるという考えもありう
る?
• 但し、投資先の公債の利子は事業に使用され、残余は投
資家トークンの保有者へ行く
• 個人的には、為替の変動リスクのみであればファンドで
はないと考えて良いのではと思われるが、要議論
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23
Ⅶ まとめ
• ステーブルトークンの中にも各種種
類
– Libraトークン・ZEN・MakerDAO、Basis →
仮想通貨?
– USD Tether・TrueUSD → 為替取引?
• 一つ一つ分析する必要性
• 日本で出すには仮想通貨となるほう
がやりやすそう
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24
留保事項
• 本稿の内容は、関係当局の確認を経たもので
はなく、法令上、合理的に考えられる議論を
記載したものにすぎません。
• 本稿に記載の見解は、当職の現状の見解に過
ぎず、当職の見解に変更が生じる可能性があ
ります。
• 本稿は一般的な情報提供であり、具体的な法
的助言ではありません。具体的な案件につい
ては、当該案件の個別状況に応じ、日本法ま
たは他国法弁護士の適切な助言を求めて頂く
必要があります。

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  • 1. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. JBA緊急セミナー Libraコインの登場とステーブル コイン規制(ドラフト) 創・佐藤法律事務所 弁護士 斎藤 創 2019年6月24日 1
  • 2. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 2 自己紹介 弁護士/NY州弁護士 斎藤 創 1999年4月 西村あさひ法律事務所(証券化、デリバティブ等) 2013年夏 ビットコインに仕事で出会う 2015年4月 独立して現事務所を設立(仮想通貨・ブロック チェーン・FinTechなどを専門) (その他の経歴) 東京大学法学部卒、NY大学ロースクール卒、NYのローファーム 勤務、日本ブロックチェーン協会顧問弁護士、FinTech協会キャ ピタルマーツ分科会事務局、三菱地所物流リート投資法人監督 役員等
  • 3. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 3 Ⅰ LIBRA仕組み • 詳細は福島さんの発表 • 基本的には「リザーブ」を裏付けとし たIOU型ステーブルコイン
  • 4. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 4 Ⅰ LIBRA仕組み -発行方法- ① 投資トークンの販売による発行 – 投資家トークンを私募で投資家に販売 – 支払われた金額がリザーブに当てられ、同額のLibraコイン発行 – 同Libraコインは投資家トークン保有者への配布ではなく各種運 営(ユーザー、販売者、開発者による採用を促すための支払い)に 使用 ② ユーザーによるリザーブへの拠出 – ユーザーが新 Libra コインを受取るためには、Libraコインと等 価の法定通貨を供出し、リザーブに移行 – ただ、ユーザーはリザーブとは直接やりとりしない – 効率性の観点から、協会に認定された再販業者のみが法定通貨 と Libra をリザーブに出し入れ可能(日本のETFと同様?)
  • 5. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 5 Ⅰ LIBRA仕組み -リザーブ運用- • リザーブが裏付は低リスク資産(中央銀行 が発行する通貨や公債等)に分散投資 • 投資からお利子収入はLibraエコシステム の発展のための運営資金等に利用 • 運営資金等が充足された後の利益はLibra 投資トークンへの配当となる(低利なので かなり後) • なお、Libraコインのユーザーはリザーブ からの利益を受け取らない
  • 6. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 6 Ⅰ LIBRA仕組み -償還- • 認定再販売業者は、Libraコインをリザー ブに対して持ち込み、同額の法定通貨を受 け取れる。 • 同額とあるが、この同額の計算方法は詳細 は不明。裏付資産の時価を計算してその割 合で計算か
  • 7. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 7 Ⅰ LIBRA仕組み –売買- • ユーザーは仮想通貨取引所等でLibraを売 買可能 • 取引所による売買+発行+償却で様々な アービトラージ取引がされることにより Libraコインがリザーブの市場価格と近く なるよう → 全体的に株式ETFに近い仕組みという印象
  • 8. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 8 II ステーブルコインの規制 • ステーブルコインだから何々法の適用があ る、何々法の適用がない、という議論は正 確性を欠く • ステーブルコインにも様々な方式があり、 また具体的仕組が日本法上どうなるか一点 一点分析する必要性
  • 9. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 9 II ステーブルコインの例 ① IOUモデル – 発行体がトークン保有者に対してトークンを一定の 金額で償還することを約するモデル – 通常、フィアットか別の実在資産により完全に裏付 けられる – 例:TrueUSD、USD Tether、JPY ZEN、Libra 等? ② オンチェーン担保モデル – 複雑なスマートコントラクト、異なる種類のトークン、オ ラクル、外部アクターなどを使用し、コインの安定性を確 保するモデル – 例:MakerDAO
  • 10. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 10 II ステーブルコインの例(続) ③ 通貨発行益モデル – 貨幣数量説に基づいて発行されるコイン。トーク ンの価格を基準通貨や他の基準値と比較して安定 させるために、トークンの供給を需給に応じて継 続的に調整する – 例:Basis
  • 11. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 11 Ⅲ 仮想通貨法 • 仮想通貨の定義 ①電磁的な財産的価値 + ②電磁的に移転可能 + ③(a)不特定多数に対して使用可能又は(b)不 特定多数間で他の仮想通貨と交換可能ー ④通貨 建資産=⑤仮想通貨 • ステーブルコイン規制の関係では通貨建資 産かが大事
  • 12. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 12 Ⅲ 仮想通貨法 • 通貨建資産の定義 通貨建資産=本邦通貨若しくは外国通貨で表示され、 又は本邦通貨若しくは外国通貨で債務の履行、払戻 しその他これらに準ずるものが行われる資産 → 例えば、True USDやUSD Tetherは、発行体が 1USD=1コインでの償還を約束している筈で通貨建資 産に該当と思われる → 他方、日本のZENは、取引所で1円=1ZENでの購 入オファーを出すことを約束しているだけなので、定 義上、通貨建資産に該当しなと考えられるよう
  • 13. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 13 Ⅲ 仮想通貨法 • LIBRAは – 通貨バスケットであり特定の通貨にリンクしていない – 認定再販売業者が償還を請求する際はリザーブの価値 (裏側にある通貨、ボンドなどの価値)の時価を踏まえ て償還がなされるのではと思われること から通貨建資産には該当しないのでは? → 仮想通貨に該当する • 但し性質をより詳しくチェックする必要は ある。また異なった考えも有り得る
  • 14. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 14 Ⅲ 仮想通貨法 • 仮想通貨に該当する場合、日本居住者に対する販 売には仮想通貨交換業の登録とコインの金融庁の 届出(実質は承認)が必要 • 新規取扱には相当の工数が必要。自主規制を踏ま え取引所のチェック、自主規制団体のチェック、 金融庁のチェック • 日本ではZENが仮想通貨として2017年から取引所 で取扱い • しかし、2018年1月のコインチェック事件以降、 新規コインは一件も認められていない(今後は可能 性あり)
  • 15. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 15 Ⅳ 為替取引(銀行法・資金決済法) • 通貨建資産となるステーブルコインについ ては為替取引該当性を要検討 • 為替取引 = 遠隔地の者の間で直接現金を 移転させる方法(例えば現金輸送車)以外で、 委託を受けて資金を移動させること(銀行 振込など) • 1回100万円を超える為替取引 = 銀行法 • 1回100万円以下の為替取引 = 資金移動 業
  • 16. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 16 Ⅳ 為替取引の規制 発行体 • 日本で銀行免許か資金移動業を取得? – いわゆる銀行コインの発行は為替取引とされても問題 ない – 他方、海外の発行体が銀行免許を取ることは通常は非 現実的 – 資金移動業であれば難易度は低いが、ステーブルコイ ンで1回100万円の制限をどう確保するのかの問題、 未使用額全額の供託が要求される等の問題(グローバ ルの場合には?)
  • 17. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 17 Ⅳ 為替取引の規制 取引所 • 為替取引型のステーブルコインを単に販売 すること自体は仮想通貨交換業でもなく、 為替取引でもないはず • ただ、日本での銀行業違反のコインを取扱 うことは非現実的
  • 18. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 18 Ⅳ 為替取引の規制 取引所(続) • 銀行が発行した為替取引型ステーブルコインを販 売することは他業としてOK? • 為替取引型ステーブルコインを、顧客Aから預か り、それを顧客Bアカウントへ移動させることは 取引所が為替取引を行っているとされそう • なお、仮想通貨法の文言上は、仮想通貨と為替取 引型ステーブルコインを交換する行為は仮想通貨 交換業に該当しない筈だが、実際上は交換業に準 じて取扱うことになろう
  • 19. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 19 Ⅴ 前払式支払い手段の規制 • 可能性としては、ステーブルコインが前払式 支払手段として発行されることも考えられる • 前払式支払手段 = ①金額又は数量の記録 + ②それに応じた対価の支払い + ③発 行体又は発行体の加盟店で商品購入等に使用 可能 • 前払式支払手段は、何らかの商品購入のため に発行されるものであり資金移動ではない • 但し、資金移動ではないとするために「償還」 が原則として認められない等の制限
  • 20. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 20 Ⅴ 前払式支払い手段の規制 発行体 • 日本で第三者型前払式支払手段の登録 • 償還が不可等の問題があり、現在発行され ている多くのステーブルコインとは異なる 使用感 • 未使用残高の半分を供託しないといけない (グローバルの場合には?)
  • 21. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 21 Ⅴ 前払式支払い手段の規制 取引所 • 既に登録された前払式支払手段型のステーブ ルコインを販売すること自体は他業として可 能では • 個客間の移動でもあくまで前払式支払手段の 移動であり、為替取引には該当しない可能 性? • 前払式支払手段型ステーブルコインと仮想通 貨の交換は、仮想通貨の売買に準じて考え る?(SUICAで仮想通貨を購入する場合)
  • 22. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 22 Ⅵ 金商法 ファンド規制 • ①出資者が金銭を出資、②事業を営む、③収益の配当又 は出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる 権利 → 集団投資スキームとして規制 • 議論としては、Libraトークンは通貨バスケット及び公 債に投資して、公債の価格変動や通貨の変動の利益を得 るファンドであり、有価証券であるという考えもありう る? • 但し、投資先の公債の利子は事業に使用され、残余は投 資家トークンの保有者へ行く • 個人的には、為替の変動リスクのみであればファンドで はないと考えて良いのではと思われるが、要議論
  • 23. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 23 Ⅶ まとめ • ステーブルトークンの中にも各種種 類 – Libraトークン・ZEN・MakerDAO、Basis → 仮想通貨? – USD Tether・TrueUSD → 為替取引? • 一つ一つ分析する必要性 • 日本で出すには仮想通貨となるほう がやりやすそう
  • 24. Copyright © SO & SATO Law Offices All Rights Reserved. 24 留保事項 • 本稿の内容は、関係当局の確認を経たもので はなく、法令上、合理的に考えられる議論を 記載したものにすぎません。 • 本稿に記載の見解は、当職の現状の見解に過 ぎず、当職の見解に変更が生じる可能性があ ります。 • 本稿は一般的な情報提供であり、具体的な法 的助言ではありません。具体的な案件につい ては、当該案件の個別状況に応じ、日本法ま たは他国法弁護士の適切な助言を求めて頂く 必要があります。