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20180810 クリエイティブ・コモンズから考えるアーカイブ、シェア、リーガル・コミュニケーション
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Tomoaki Watanabe
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デジタル・アーカイブの利用許諾・利用条件などの伝達(リーガル・コミュニケーション)の工夫のしどころを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスから探る、など
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20180810 クリエイティブ・コモンズから考えるアーカイブ、シェア、リーガル・コミュニケーション
1.
クリエイティブ・コモンズから 考えるアーカイブ、シェア、 リーガル・コミュニケーション 渡辺智暁 コモンスフィア/オープンナレッジジャパン/慶應義塾大学/ GLOCOM デジタルアーカイブサロン 2018.08.10.於:科学技術館(東京)
2.
自己紹介とお断り ・ICT政策と情報社会の研究者 ・オープン化 従来よりも多く・多様な主体がxに関われるようになる ・百科事典の編纂、画像・動画コンテンツの制作、ボカロ音楽、デー タ利用、モノづくり… ・法曹資格者ではありません ・クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの母体であるNPO法人コモン スフィアの理事長 ・発表・発言内容は所属・関連組織の公式見解などではありません
3.
アーカイブについて気になっていること A. 再利用されることでこそ大きな価値が出るのでは? B. デジタル・アーカイブは作れば、利用されるのか? C.
オープン化にメリットがあるのでは? D. 利用者にどのように利用制約・条件を伝えるかは大きな課題 のひとつ(リーガル・コミュニケーション)
4.
A. 再利用されることで価値が出る 顕著な例 ・鳥獣戯画 ・初音ミク ・ウィキペディア ・大崎一番太郎
5.
A. 再利用 ・閲覧と理解・学習だけではない ・キュレーション、リミックスに使う 使うことで、より深くわかるようになる ・文化は消費するだけでなく作るもの ・アマチュアの活躍の場が広く開かれている →優れたプロが輩出される、プロの作り出す商業文化も盛り上がる、と いうパターンもある (同人誌と商業誌、アマチュアスポーツとプロスポーツ、等) ・デジタル技術とネットワークは、キュレーション、リミックスやシェア を簡単にしている
6.
B. デジタル・アーカイブは作れば、利用 されるのか? ・オープンデータの経験 ・オープン化に対して積極派も懐疑派もいる中でどうするか? ・大量のデータをオープン化すれば「自分が使いたいデータもあるかも」と多くの人 に思ってもらいやすい。→利用も増える ・無理なくオープン化できるところから進め、優れた利用例が増えてから賛同者が拡 がるのでよい、という考え方もあった。 ・需要の高いデータを重点的にオープン化+データ点数を多くすることも重視した。 ・イベント開催・参加による認知・利用後押し ・利用事例収集による説得材料整備 ・オープン化のリクエストを受付、利用希望者とデータ保持者の対話の場も設置 →すべてのデータがすぐに使われたわけではなかった。
7.
B. デジタル・アーカイブは作れば、利用 されるのか? • オープン教材・学習資料の経験 •
英語圏であれば大手レポジトリには5~10万点の登録 • 検索が容易ではない、品質にムラ、目的適合性(小学校中学年向けに 明治維新を説明したいのか、大学受験生向けなのか)、加工に不向き なPDFフォーマットの場合も、… →利用は個人の教員レベルでは浸透しにくい。 • メタデータ標準化と検索エンジン向けの提案化、AIによる品質判定、 オーサリングツール側からの対応、… →多様な対応
8.
B. 利用されるのか? ・ボトルネック解消 「xさえあれば…」と考えている人が多いボトルネック要素xをオープ ン化する →利用は生じやすい。 ・利用のしやすさが多きく左右する面も ・料金 ・ファイルフォーマット ・利用条件、ライセンスなど ・認知度 ・検索を通じた到達の容易さ →オープン化だけでは他の条件まで克服できない
9.
C. オープン化にメリットがあるのでは? • ICTは、コピーや改変やシェアを容易にした。 →これまでより広い範囲の人が、利用可能になった •
従来よりは、オープン化にメリットがある
10.
Flickr • FlickrにはCCライセンスのついた(=再利用可能な)画像が1.9 億点程度、Wikimedia Commonsには4000万点程度 •
こうした画像は広告・メディア業界でかなり利用されていることが伺 われる。 • 優れた画像を転載する素材集サイトや検索エンジンも複数存在 • Flickr の”Commons” <http:flickr.com/commons>はアーカイ ブが画像をアップロード、広くコメントやタグ付けを呼び掛け るもの • Galaxy ZooのようなCitizen Science系のプロジェクトとも通底すると ころがある
11.
鳥獣戯画 • 鳥獣戯画を利用した作品の中にも、アマチュアやボランティア が作っているであろうものもある。 • http://www.nicozon.net/watch/sm29725872 •
http://www.nicovideo.jp/tag/MMD鳥獣戯画 • https://gigamaker.jimdo.com/ • https://twitter.com/hashtag/鳥獣戯画制作キット • http://www.chojugiga.com/
12.
D. 利用者にどのように利用制約・条件を 伝えるかは大きな課題のひとつ • 専門家向けに書かれた法律の条文 •
著作物の制作・流通をめぐる営利事業を想定した制度 • 広範な表現の利用を原則禁止にする設計 • 誤解もある。 • 非営利だったら自由に使ってもよい • コピーはNGだが、模写はOK • 利用を促進するにはどうすればいいか? →リーガル・コミュニケーションの課題
13.
アーカイブ資料の主な利用制約・条件 • ライセンス(権利者として) • ライツステートメント(解説者として) •
利用規約(サイト等の運営者として) クリエイティブ・コモンズは主にライセンス、一部ステートメン トを扱っている。 ※以下、ライセンスを題材に議論
14.
ライセンスを読んで理解することの困難 • オンラインでソフトウェアを購入した人の内、ライセンスを確 認したのは1000人に1-2人程度 (Bakos,
Marotta-Wurgler, and Trossen, 2014) • プライバシーポリシーを人々がきちんと読んだら膨大な時間が かかり、経済的なコストは85兆円/年 (McDonald and Cranor, 2008) ・そもそも見出しをクリックもしないでシェアすることも、フェ イクニュースの流布の一因かも…?(Botのせいなどもある)
15.
ライセンスの種類をめぐるトレードオフ ライセンスの種類が多いと… ○著作者は自分の望みどおりのライセンスが含まれている可能性 が高い ×著作者は選ぶのが大変 ×利用者はライセンスを読んで理解するのが大変(作品ごとに別 のライセンスを読まなければならない!) ×利用者は互いに組み合わせが可能でない作品が増える(「コモ ンズ」の分断)
16.
トレードオフ ライセンスの種類が少ないと… ○わかりやすい ×要望にあうライセンスがないために、著作者はライセンスを使 わない(コモンズが育ちにくい) ○異なる作品が同一ライセンス下にある可能性が高く、互いに組 み合わせやすい
17.
ライセンスのデザイン上の工夫 ・名称を固有名詞に:同じ条件の作品は同じだとわかる 「この作品も、あの作品と同じクリエイティブ・コモンズ表示・ 非営利ライセンスで提供されている。」 ・内容を名称に反映、ライセンス群を体系的にデザイン、命名規 則に従う 「この作品は、クリエイティブ・コモンズ表示ライセンスで提供 されているから、非営利利用に限られていないようだ」
18.
ライセンスの構成要素 4つの基本要素 BY 表示 Attribution NC
非営利 NonCommercial SA 継承 ShareAlike ND 改変禁止 NonDerivs これにバージョン名、準拠法コードを足すと、ライセンスの名前にな る。 例) クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 4.0 国際 Creative Commons BY-NC 3.0 US
19.
更なる工夫 ・略称でもライセンスの特徴を表現 ・略称に対応したURLをライセンス別に用意 ・アイコンの組み合わせで要点を表示 ・コモンズ証で要点を記述 一目見て「あのライセンスだ」と分かる部分を増やす。
20.
21.
ライセンスの使いやすさ・わかりやすさ ※アマチュアのクリエイターは、顧問弁護士や法務部に頼れるわ けではない。 ※ライセンスのついたコンテンツを利用する人も同様の場合が多 い。 ・FAQを用意する
22.
技術的な工夫 ※「人間にわかりやすく、法律的に厳密に、機械的に処理しやす い」ライセンスをめざす ・ライセンスに関するメタデータを定義、付与を奨励。(コード の自動生成ツールも用意) →検索エンジン等でも扱いやすくなる (例:Googleの詳細検索オプション)
23.
ライセンス本文に関わる工夫 • ライセンスの文面を読みやすく • ライセンスの文面をモジュール化、その組み合わせで異なるラ イセンスを構成する •
→CC BY-SAライセンスを読んだ人は、CC BYライセンスを見 ても馴染みがある部分が多い、など
24.
工夫のまとめ • 読まなくてもわかることを増やす(名称、略称、URL、アイコ ン、サマリーページ、FAQ、機械判読性) • 読む負担も減らす(本文の書き方)
25.
更なる工夫 ・ライセンスがたくさんあると、著作者は何を選べばいいかわか らない。(読み比べるのも面倒) →ライセンス選択用のツールをサイト上で提供
26.
ライセンスをとりまく制度 ・サポート体制(基本的な質問に回答、依頼に応じた解説) ・内容の更新(技術、利用動向などの変化に対応) ※初期バージョンにはエラーも存在すると考えておくのが無難 ※パブコメ、ワークショップ、ソーシャルメディアなどを通じた フィードバック収集 ※問い合わせが多い点、要望が多い点について改訂に盛り込むか どうかを検討
27.
アーカイブ関連とCC • 政府系の報告書ではしばしば推奨されてきた • 日本のオープンデータでは、政府標準利用規約を採用した上で、 その下にあるデータはCC
BY 4.0 国際ライセンスによっても利 用できるとした。(ライセンスの互換性確保)
28.
アーカイブ関連とCC • Europeanaは約半数がCCライセンスの下に提供されている* • オープンデータはCC
BYがデファクト・グローバル・スタンダード • ウィキペディアやその姉妹プロジェクトは原則CC BY-SAを採用 (4-5000万点)** • YouTubeもCCライセンスで動画を提供できるようにサポート。(4- 5000万点)*** *Europeana の検索から ** https://github.com/wikimedia-research/Contributors-State-of- the-Commons *** https://stateof.creativecommons.org/data-notes-and-sources- 2017/
29.
残されている課題 著作権以外の権利 • CCライセンスは著作権とそれに関連する若干の権利のみを扱う →ライセンスだけでは伝えられない部分がある。 • 利用者から見ると、「肖像権の都合によりこの人物写真は使えない」というのも利用の 制約 権利者不明状況の扱い •
不明のまま提供することの孕む問題 • 解明コストの高さ 権利のないところに導入されるライセンス • 「著作権者」ではないが、クレジット表示をして欲しい • (アーカイブなど) • 「お願い」ベースで済ますことが適当だろう • 「著作権者」ではないが、写真の撮影や利用を禁止したい • (文化財所有者など)
30.
本資料のライセンス ・この資料はCC BY 4.0
国際 (creativecommons.org/licenses/by/4.0/)で提供され ています。 ・著作者名:渡辺智暁 なお、著作権表示、無保証を参照する表示はありません。 「本パブリック・ライセンスを参照する表示」にあたるのは上の一文だけです。 そこで、この資料を利用して別の資料を作成した場合などには、たとえば、以下 のような表示をすればよいことになります。(それに加えて、合理的に実施可能 な場合にはこの資料のURLを記載します。) 「この資料の一部は、渡辺智暁による資料を改変の上利用しています。 利用した資料のライセンスを参照する表示:『この資料はCC BY 4.0 国際 (creativecommons.org/licenses/by/4.0/)で提供されています。』
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