More Related Content Similar to Cc license evolution Similar to Cc license evolution (7) More from Tomoaki Watanabe More from Tomoaki Watanabe (20) Cc license evolution1. オープン・ライセンスの互換
性と
イノベーションをめぐる課題
渡辺智暁
2012.8.19.
CC Japan ライセンス勉強会
5. ライセンスをやたらと変更して
はいけない。
・互換性が損なわれる。
→変更前後のライセンス間のコンテンツの組み合わせが煩雑または
不可能になる。(特に CC ライセンスの場合。 BY-SA は OK )
→「コモンズ」の分断
・ライセンスの種類(バージョン)が増えると、利用者にとっては学
習コストが上昇する。(たくさんのライセンスを知る必要が出てく
る。)
→コンテンツをオープン化しても利用が起こりにくくなる。
・ライセンスは CC という組織のためにあるのではなく、利用者(ライ
センサー、ライセンシー)のためにある。「やたらと」変更しては
いけない。
6. ライセンスは変化する必要があ
る。
・技術などの環境が変わる
・現行バージョンに不具合が見つかる
・ライセンスの利用者層が変わる
・ライセンスの利用者、コンテンツの利用者もみんな模
索・学習している
・もっとわかりやすい、もっと厳密な書き方がある
・他
7. ライセンスは多過ぎても少な過
ぎてもダメ。
・多過ぎると、コンテンツの利用者がたく
さんのライセンスを読んで、理解する必
要がある。
(共通ライセンスが全く存在しない、テイ
ラーメードの世界が極端な例)
コモンズは分断され、リミックスは困難
・不可能になる。
・少な過ぎると、クリエイター・権利者の
要望に応えるライセンスがない可能性が
ある。
8. 汎用ツールは、専用ツールより
使いづらい。
・ CC は世界中で使えるツール(たろうとしている
)
・ CC はどのような作品にも使える 音楽、文学、
絵画、写真、映画、… (ソフトウェアは非推奨
)
・様々なコミュニティ、プラットフォームを横断
する汎用ツールたろうとしている
→ どのコミュニティも、自分たちにとっての最適
を追及すると独自ライセンスに至る。
→ どのクリエイターも、自分にとっての最適を追
求すると独自ライセンスに至る。
11. CC とステークホルダー
・グローバルな推計では、ライセンス利用件数の
成長は鈍化しつつあるとの説がある。
→ 先発国では、すでに届くべき人には届き、使わ
れているのではないか、とも考えられる。
・この層の要望が固定化し、 CC ライセンスの変化
も鈍ることは、よいことか ?
・より広い層/別の層に訴求するライセンスが構
想しうるか ?
→ 既存の利用者層との対話からは必ずしも答えが
見えてこないかも。
13. CC ライセンスのバージョン
ver. リリース時 主な変更点
期
1.0 2002.12. (最初のリリース)
2.0 2004.05 2-1.BY 要素がないライセンスを廃止
(Glenn) 2-2.URL をクレジット表示の一部に
2-3. 音楽と映像の同期は改変にあたると明記
2-4. 音楽作品のロイヤルティの扱いに関する規定
2-5.BY-SA 間 , BY-NC-SA 間の互換性確立(管轄の扱い)
2-6. 保証の提供を廃止
2.5 2005.06 (Mia) 2.5-1. クレジットを Wiki 、スポンサー等の主体にも付与
可能に
3.0 2007.02 (Mia) 3-1. クレジット付与は支持表明のように使えない事を明
記
3-2. ( Parallel Distribution 条項の議論→不採用)
3-3.GFDL との互換性確立準備
3-4. 国際化:人格権の扱いを明記
3-5. 国際化:音楽作品のロイヤルティの扱い
4.0 2012.10-12* 4-1. クレジットなどの条件簡素化 ?
14. CC ライセンスのバージョン
ver 分類 分類 主な変更点
.
1.0 (最初のリリース)
2.0 採用者 廃止 2-1.BY 要素がないライセンスを廃止
採用者 加除 2-2.URL をクレジット表示の一部に
明記 2-3. 音楽と映像の同期は改変にあたると明記
明記 2-4. 音楽作品のロイヤルティの扱いを明記
加除 2-5.BY-SA 間 , BY-NC-SA 間の互換性確立(管轄の扱い)
採用者 加除 2-6. 保証の提供を廃止
2.5 採・利 加除 2.5-1. クレジットを Wiki 、スポンサー等の主体にも付与可
能に
3.0 採用者 明記 3-1. クレジット付与は支持表明のように使えない事を明記
採・利 加除 3-2. ( Parallel Distribution 条項の議論→不採用)
採・利 加除 3-3.GFDL との互換性確立準備条項
内発 明記 3-4. 国際化:人格権の扱いを明記
内発 明記 3-5. 国際化:音楽作品の法定ロイヤルティの扱い
4.0 採用者 加除 4-1. (クレジットなどの条件簡素化 ? )
内発 廃止 4-2. (管轄別ライセンス廃止 ? )
15. CC ライセンスのバージョン(補
遺)
2.1 - 移植の際のミスを修正する為のも
の。
(スペイン、オーストラリア、日本)
3.01 ー 未完に終わる。文言修正が主だ
が、データベース権の議論もある。
( 2007.10- )
3.5 - 未完に終わる。 GFDL との互換性
、メディアの埋め込みの扱いなど。
( 2007.12- )
16. 資料
• CC ライセンスの過去のバージョン更新に
ついての情報は、
http://wiki.creativecommons.org/License_Versi
ons
• 4.0 は現在開発中。詳細は
http://wiki.creativecommons.org/4.0 に
• CC のブログやメーリングリストには更に
詳細な議論、途中のドラフトなどもある
。
17. 2-1.BY 要素がないライセンスを
廃止
CC のコアライセンスは、現在 6 種
CC-BY
CC-BY-NC CC-BY-ND CC-BY-SA
CC-BY-NC-ND CC-BY-NC-SA
( CC-BY-ND-SA は論理的に矛盾を孕む為、
不在)
当初、 CC ライセンス ver.1.0 では BY を含
まない
ライセンスも 5 種類あった。
→ 利用率が総計 2-3% と著しく低いため、廃
18. ver. 1.0 ライセンス体系
BY 表示 NC 非営利 ND 同一 SA 条件継
承
CC BY O
CC BY NC O O
CC BY ND O O
CC BY SA O O
CC BY NC ND O O O
CC BY NC SA O O O
CC NC O
CC ND O
CC SA O
CC NC ND O O
CC NC SA O O
下半分は 2.0 で廃止された。
19. 2-2 . URL をクレジット要素の
一部に
・作品に関連した URL (厳密には URL を含む URI )を、ク
レジットの一部として表示する義務。
a) 特定されている場合、かつ、
b) URL にあるリソースが作品の著作権表示かライセンス情
報を含んでいる場合
※ 作品の著作者やライセンスに関係のない URL は、クレ
ジットとして表示する必要はない。
→スパムなどへの対策
ハイパーリンクを要求していない = オフラインでも URL 表
示の義務はある。
他、参考: http://creativecommons.org/weblog/entry/3636
21. 2-3. 音楽と映像の同期
・ CC ライセンスでは、二次的著作物(派生
作品、翻案物)の作成・利用と、現作品
の複製・利用とで、従うべき条件が異
なってくる。
例: ND 要素のついているライセンスは、そ
もそも二次的著作物の利用は許諾されて
いない。
例: BY ライセンスでは、複製の場合はライ
センス・ノーティスをそのまま継承する
必要があるが、二次的著作物については
23. 2-5.BY-SA 間 , BY-NC-SA 間の
互換性
・ BY-SA 2.0 JP と BY-SA 2.0 Generic などの
間に互換性を持たせた
例: BY-SA 2.0 Generic の派生作品を、 BY-SA
2.1 JP でリリースしてよい。
派生作品は、バージョンが同じか、後のラ
イセンスで提供可能。管轄の異なるもの
でも OK 。
ただし、原作品のライセンスは、 BY-SA 2.0
のまま、といった形になるため、作品は
複数ライセンスに制約されるキメラ状態
24. 2-5.BY-SA 間 , BY-NC-SA 間の
互換性
・当初は世界中で CC の移植需要があることを想定してい
なかったと思われる。
a) Warsaw 世界会議での発言(最初の CC iSummit への海外
からの出席者に驚愕した)
b) ver. 1.0 のライセンスは、管轄がついていないが、米国
法を強く意識した書きぶり。ベルヌ条約の語法ベースに
なったのは 3.0 から。 (“Nomenclature (for unported
licenses)” の節 @
http://wiki.creativecommons.org/License_Versions )
バージョ 非移植版名 二次的著作物の呼 米国版
ン 称
1.0 なし Derivative Works( 米 ) なし
2.0 Generic Derivative Works( 米 ) なし
3.0 Unported Adaptation ( ベルヌ ) あり
25. 2-5.BY-SA 間 , BY-NC-SA 間の
互換性
・ CC-BY-SA 2.0 Generic -> CC-BY-SA 3.0 Unported や
・ CC-BY-SA 2.0 Generic -> CC-BY-SA 2.0 JP
といった形で原作品と違うライセンスを二次的
著作物につけることができるようになった。
※ 二次的著作物全体をそのライセンスの下におけ
るわけではなく、元の作品にある創作的表現の
部分は、元の作品のライセンスのままにとどま
る。
26. 2.6 保証の提供を廃止
・バージョン 1.0 では、作品の利用に必要な権利をきちんと処理する
合理的な努力を払った、という保証がついていた。
・第三者のプライバシー侵害、名誉毀損、著作権侵害などにもなって
いないという保証があった。
・ 2.0 以降は無保証に。
※CC やフリーカルチャーのサポーターからの批判。(無償利用を許諾
しているのに何故保証まで提供しなければならないのか ? 匿名の
著作者・ライセンサーからの保証は意味があるのか ? ブロガーな
どはこれを知らずに使っているだろうが、それでよいのか、 など
)
※ 保証が欲しければ有料で提供する、というモデルがありうるという
着想が決めてとなり、保証は廃止。
27. 2.5-1. クレジットを Wiki 、スポ
ンサーなどの主体にも付与可能
に
・これまでは著作者にクレジット付与
・それだと、ウィキペディアのようなプロ
ジェクトではクレジットが長大になる。
( 100 名以上の著者がいる場合もあるた
め)
→ 著作者にも、それ以外の対象にも、クレ
ジット付与を義務付けられるようになっ
た。
(義務付けるのは、ライセンサー)
28. 2.5.-1
・当初 CC-BY Wiki という実験的なライセンスをリリース。
これは CC-BY と内容は同じだが、分ランディングを変え
た、と説明。
・ウィキへの Attribution を可能に。
・ウィキ 「又は」 著作者 へのクレジット付与、という相
互排他的なクレジット付与対象の選択が Wiki ライセン
スの内容だった。→ 2.5 では、両方への Attribution も可
能に。
・オープンアクセス(学術論文などをオープンライセンス
つきで無償公開するような運動)の界隈でも、クレジッ
ト付与対象として著作者ではなくジャーナルや資金助成
を行った団体を指定できる必要があった。→ 2.5 で対応
30. 3-2.Parallel Distribution 条項
・ DRM の発達・普及 ( PS2 等)
・ DRM の回避の違法化
→CC ライセンスに Parallel Distribution 条項を入れる
べきか ?
・具体的に困っているという例が乏しかった
・ DRM は廃れるという予想があった
・ Debian があまりこの点にこだわらない様子も見せ
た
→ その後も DRM は普及し、日本のデジタル放送にも
適用されている。(いわゆるダビング 10 )
→4.0 では Parallel Distribution 条項の再論に
31. 3-3.GFDL との互換性準備
GFDL と CC-BY-SA はライセンスとして類似しているが、
GFDL の文書( e.g. ウィキペディア)と CC-BY-SA の画
像を組み合わせてよいかは不明。
( FSF スタッフが否定的にコメントしたことも)
ウィキメディア財団からのよびかけ
( CC ライセンスへの乗換え希望者も)
→CC 側の対応として他のライセンスとの互換性確立の手
続きを制定した。
(結局互換性確立は実現されていない / ウィキメディ
ア・プロジェクトのライセンスの「乗換え」もできな
かった)
32. 3-4. 国際化:人格権の扱いを明
記
・日本でいう同一性保持権と名誉声望権の
扱いが問題。
・基本的に名誉声望権は保持。
・ライセンスの許諾内容( = 改変行為)上
必要な分は、法律上可能な限り、破棄ま
たは不行使の約束を行う。
34. 3-5. 国際化:音楽作品のロイヤ
ルティの扱い
権利管理団体によるロイヤルティ徴収:
・自主的な契約に基づく国(米国)
→ライセンスの許諾範囲内の利用については徴
収権を放棄
・法的に定められている国 – 権利を放棄可能な国
とそうでない国がある
→許諾範囲内の利用に対する徴収権は、
放棄できる分については、放棄。
放棄出来ない場合は、権利は保持。
35. 3-5
2.0 で導入した条項を、各国・管轄地に移植
する際に変更した。
それを再統合したのが 3.0 の当該条項
人格権をめぐる明記と、似たパターンにな
っている。
※4.0 の段階で登場した、移植自体をなくす
という案も、 3.0 で国際化の作業がかなり
進んだからではないか。
40. CC ライセンスのバージョン
ver 分類 分類 主な変更案
.
1.0 (最初のリリース)
2.0 採用者 廃止 2-1.BY 要素がないライセンスを廃止
採用者 加除 2-2.URL をクレジット表示の一部に
明記 2-3. 音楽と映像の同期は改変にあたると明記
明記 2-4. 音楽作品のロイヤルティの扱いを明記
加除 2-5.BY-SA 間 , BY-NC-SA 間の互換性確立(管轄の扱い)
採用者 加除 2-6. 保証の提供を廃止
2.5 採・利 加除 2.5-1. クレジットを Wiki 、スポンサー等の主体にも付与可
能に
3.0 採用者 明記 3-1. クレジット付与は支持表明のように使えない事を明記
採・利 加除 3-2. ( Parallel Distribution 条項の議論→不採用)
採・利 加除 3-3.GFDL との互換性確立準備条項
内発 明記 3-4. 国際化:人格権の扱いを明記
内発 明記 3-5. 国際化:音楽作品の法定ロイヤルティの扱い
4.0 採用者 加除 4-1. (クレジットなどの条件簡素化 ? )
内発 廃止 4-2. (管轄別ライセンス廃止 ? )
41. 補足: CC ライセンスの廃止例
・ Sampling
・ DevNations
・ BY 要素のついていないライセンス群
( 2.0 )
・ NC ライセンス廃止案( 4.0 )
42. 廃止された個別 CC ライセンス
・ DevNations :途上国地域に限定した CC-
BY
→ オープンアクセスの隆盛に鑑みて、地域
限定ライセンスは不適当と判断、廃止
・ Sampling :リミックス利用のみの許諾
→FSF などから CC のライセンスに共通の中
核的「自由」が存在しないことに批判が
あったことに対応。全ライセンスで非商
用の複製は OK, というベースラインを設定
した。
43. 「 CC は無節操」説
・商業利用や改変を禁止するライセンスを
サポートしている。
・逆に、「改変しなければ利用できない」
という Sampling ライセンスも提供してい
た。
・「 CC ライセンスで提供されています」と
いうロゴは、そうすると、「何かに使え
ます」という以上の意味を持たない。
・オープン化の推進者から見ると、かなり
無節操で危険なアプローチともとれる。
44. オープン性の定義
Definition of Free Cultural Works (Wikimedia 系 )
http://freedomdefined.org/Definition
使用、研究、複製と配布、改変とその配布
(クレジット付与、条件継承、ソースコード提供、オー
プンフォーマット利用、 DRM 等による制約をしない
こと、の義務付けは OK )
※CC は、 2008.4. “CC Attribution-ShareAlike Intent” でこの定義に準拠する意志を表明して
いる。 2007 年 12 月にウィキメディア・コミュニティから出た提案によるもの。
(http://creativecommons.org/weblog/entry/8186 )
Open Definition (OKF 系 )
http://opendefinition.org/
利用・再利用・再配布
(クレジット付与、条件継承、の義務付けは OK )
45. オープン性の定義
The Free Software Definition (FSF)
http://www.gnu.org/philosophy/free-sw
プログラムの使用、研究、複製物の配布、改変物の配布
(条件継承、改変の場合の作品名の変更 * 、改変の場合
の著者名など変更、配布する場合の特定の配布方法の
採用、の義務付けは OK )
* プログラム名の改変が他プログラムからの呼び出しに差し支える場
合は、作品名変更を義務付けるのは NG
他の定義・解説例
http://opensource.org/docs/definition.html (OSI)
http://www.debian.org/social_contract#guidelines (debian)
54. 考えどころ 2: 合意の実態
・ CC ライセンスの利用者は、著作権につい
てよくわかっていない人かも知れない。
・ CC ライセンスの利用者は、ライセンスを
しっかり読まずに済ませたい人かも知れ
ない。
→ 表面的な印象が誤解、トラブルにならな
いようにする必要がある。
= 広く共有されている概念だけを使って
ライセンスを組み立てる、など。
56. 例:「権利者/ライセンシー」
問題
・「権利者/ライセンシー」問題
誰がライセンシーで、誰が権利者か ?
ライセンスで許諾の対象とされている権利
は誰の、どの権利か ?
楽曲の場合は、作詞・作曲・レコード製作
者の権利など全て許諾されているべきか ?
(この点の誤解は、権利侵害につながりや
すい)→どういう設定にしておけば、回避
しやすいか ?
58. 考えどころ 3
・コモンズの保守や拡大をどの程度重視す
るか ?
- 改変をするたびに、作品のタイトルを変
更するように義務付けるか ? (GFDL)
- DRM を禁止するか ?
- Viral 条項を設定するか。どの程度強くす
るか。( Collection への波及など)
59. 本発表資料のライセンス
この発表資料を 2 種類のライセンスで提供し、利用者が選べる
ようにするために、利用許諾に関する注意書きを以下に記し
ます。
・ この発表資料は、 CC-BY 2.1 JP
(http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ ) でライセンス
されています。
・ この発表資料は、 CC-BY-SA 2.1 JP
(http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.1/jp/ ) でライセン
スされています。
参考までに、本作品のタイトルは「オープン・ライセンスの互
換性とイノベーションをめぐる課題」で、原著作者は渡辺智
暁です。本作品に係る著作権表示はなく、許諾者が本作品に
添付するよう指定した URI もありません。