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Wikipedia science ai_online_discussion
- 2. 簡単な自己紹介
• 社会科学者:情報社会論・情報通信政策
• 「オープン化」は大きな興味のひとつ
• ネットワークインフラのオープン化(回線開放政策、ネット中立性)
• ソフトウェア開発のオープン化(オープンソース)
• 政策決定プロセスのオープン化(マルチステークホルダープロセス)
• ガバナンスのオープン化(ボランティアの自治によるサイト運営)
• データ利用のオープン化(オープンデータ)
• 教育のオープン化(提供者・受益者の制約緩和)
• モノづくり分野のオープン化(製造設備・手段の廉価化・普及)
• 異質な者の排除や排外主義とロボットやAI
• etc.
- 7. ウィキペディア vs ネット言論
• ウィキペディアは案外正しい
• ネットの言論にはかなりひどいものもある
• 「ネットの自浄作用」は働かない?
• ならば言論の自由を制限するような政策を政府が打つことも正当化さ
れる?
• 「ウィキペディアの自浄作用」は働いている?
- 8. ウィキペディアの「自浄作用」?
• 投稿される内容は相対的に問題が少ない?
• 歪曲、虚偽、不当な価値判断…など
• 比較は難しいが、量として「少ない」わけではない。
• アクティブな参加者には、ウィキペディアの方針や目的におおむね共
感している人が多い、ぐらいは言えるだろう
• ウィキペディアは「集約」するメディアである。
• いろいろな人が好きなことを書いていればよい、わけではない
• 記事としての一貫性が(読者のために)求められる
• 「棲み分け」や「分断」は自然発生しづらい
• 特定の記事の内容をめぐり、あるいは記載順序などを巡り、争いが起
こりやすい構造とも言える
- 19. 査読の弱点(抄)
• 捏造には弱い
• 発見される場合でも時間がかかる
• 隠ぺいにはもっと弱い
• 意外なパターンの発見、強い効果は評価されやすく、「あると思っ
たパターンが見つからなかった」報告は評価が低い
• (いわゆる出版バイアス。そもそも研究者側も出版しようと試みもしない傾
向も。)
• 強い効果は他の目的の研究をしている際に、偶然見つかることがあ
るが、本来の目的とはズレていることもあり、小規模データを元に
報告される。→大規模データで再現しようとするとできないことが
多い。= 偶然の産物でしかないものが評価され、広まってしまう
- 25. (従来の)科学 vs AI・ビッグデータ
データ駆動型の知の称賛派
• 「既存の科学の手法は古い」
• 網羅性の高い/悉皆データを分析するので、代表性やバイアスにつ
いて気にする必要がない
• 因果関係の探求は不要で、相関関係だけがわかればよい
データ駆動型の知への懐疑派
• 理論なき経験則の蓄積
• 膨大なデータ解析は人間にも理解不可能・細部に注目すると不可
解・非合理的な判定も含まれる
- 26. 実は従来型の科学研究にも類似の問題
• Randomized Controlled Trials(ランダム化比較試験)
• 医薬品の承認課程でも非常に重要な役割を担っている手法
• 「証拠に基づく医学」を推奨するムーブメントでも重視される手法
• 問題が盛りだくさん
• 実際には高額・長期間・大規模で再現が極めて困難
• 得られるのは、異なる条件下での被験者の反応の違いのみで、「因果
関係についての知見なき経験則」が生み出されることが多い
• 限定された種類の被験者だけを対象に選定するため、医薬品を必要と
する患者さん全般にあてはまるかどうかが不明
• 研究資金を提供する製薬会社に不都合な結果の隠ぺいも起こる
• 等々
- 35. 更に考えたことのメモ(3)
• 何故再現性が低い研究が多いか?
• 制度や関係者の動機面に起因するところもあると思う(前述)
• それとは別に対象の複雑さに起因するところもあると思う。
• あるパターンの生気を左右する要因が多数あり、それらを簡単には列挙でき
ないような、そういうパターンを研究している場合には、ある条件下で観察
されたパターンを再現しようにも、どういう条件下で再現できるのかも容易
に解明できない。
• 再現性も低くなるし、小さな、個別論文単位の研究の蓄積を通じてその複雑
さに呼応する理論・モデルを作れるかは、保証の限りではないだろう。
• 社会を扱う社会科学、人体を扱う医学などはこの問題に直面しやすい
• 特定少数の変数に着目すれば幅広い範囲の事象が予測・説明できる、という度合いが
低い。
→科学の制度改革や社会的条件・環境の改善だけでは解決しない面が残るのでは?
- 36. 本資料のライセンス
• この資料はCC BY 4.0 国際 (creativecommons.org/licenses/by/4.0/)で提
供されています
• 著作者名:渡辺智暁
• なお、ライセンス本文中に言及がある「著作権表示」、「無保証を参照す
る表示」にあたるものはありません。 「本パブリック・ライセンスを参
照する表示」にあたるのは上の一文だけです
• そこで、この資料を利用して別の資料を作成した場合などには、たとえば、
以下のような表示をすればよいことになります。(それに加えて、合理的
に実施可能な場合にはこの資料のURLを記載します。):
「この資料の一部は、渡辺智暁による資料を改変の上利用しています。
利用した資料のライセンスを参照する表示:『この資料はCC BY 4.0 国際
(creativecommons.org/licenses/by/4.0/)で提供されています。』」