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行動活性化療法の理論と実際 うつ病に対する歴史ある最新の心理療法-
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Yusuke Shudo
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2015年8月に行われた犬山病院認知行動療法研究会で用いた講演のスライドです(事例部分は除く)
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行動活性化療法の理論と実際 うつ病に対する歴史ある最新の心理療法-
1.
⾏動活性化療法の理論と実際 ーうつ病に対する歴史ある最新の⼼理療法ー 中京⼤学⼼理学部 ⾸藤祐介 (現所属:広島国際⼤学)
2.
• ⾏動活性化療法の紹介 • エビデンスの紹介 •
⾏動活性化療法の理論 • ⾏動活性化療法の技法 • 事例の紹介 発表内容
3.
⾏動活性化療法の紹介 うつ病の⼼理療法 ⾏動療法誕⽣の初期からある伝統的技法 新世代の認知⾏動療法 “健康的な活動(価値や⽬標に沿った活動)”を活性化 することを⽬的とする
4.
エビデンスから特徴をみる ⾏動活性化療法の特徴 • 重いうつ病に効果的 • 効果が出やすい •
うつ病に有効
5.
⾏動活性化療法の効果 効果量(Cohenʼsd) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 認 知 ⾏ 動 療 法 セ ル フ マ ネ ジ メ ン ト 問 題 解 決 療 法 対 ⼈ 関 係 療 法 ⽀ 持 的 療 法 短 期 ⼒ 動 的 精 神 療 法 ⾏ 動 活 性 化 療 法 d=0.8 効果⼤ d=0.5 効果中 d=0.2 効果⼩ ⾏動活性化療法の効果 (統制群との⽐較) (Cuijpers et al.(2011)をグラフ化)
6.
⾏動活性化療法の効果 重症者(HRSD ≧ 20) に対する効果BDIScores 5 12 19 26 33 40 開始時
8週後 16週後 認知療法 ⾏動活性化 薬物療法 (Dimidjian et al., 2006)
7.
⾏動活性化療法の効果 重症者における反応率 治療反応率(BDIによる) 0 20 40 60 80 100 薬物療法 認知療法 ⾏動活性化 寛解 反応 42%
40% 52% 49% 76% 48% (Dimidjian et al., 2006)
8.
⾏動活性化療法の理論
9.
⾏動の基礎 ⾏動の形 どのように⾏動するのか? • 涙を流して • ⼿を当てながら 形態 ⾏動の意味 何のために⾏動するのか? •
お腹が痛いので • お菓⼦を買ってもらうため 機能 ・⾏動の2つの次元
10.
⾏動の基礎 ❖ Aさんはカッターナイフで腕を傷つけました ❖ Bさんはカッターナイフで腕を傷つけました •
⼤学受験のことをぐるぐると考えて落ち込んでいます • カッターナイフで腕を傷つけました • ⾎を⾒ているうちに考えが⽌まり気持ちがすっきりしました • Bさんの両親は不仲で,今⽇も激しい夫婦喧嘩をし ています • カッターナイフで腕を傷つけました • 「なにやってるの!」「やめなさい!」と両親は夫婦喧 嘩を中断して,Bさんの⼿当てをし始めます
11.
意味を理解するための分析(機能分析) ⾏動の基礎 ・⾏動の前後を理解することで意味がわかる どんな⾏動を したか? ⾏動 ⾏動した結果, 何が起きた? ⾏動の後(結果) ⾏動の前に 何が起きた? きっかけは? ⾏動の前(きっかけ)
12.
⾏動の基礎 ・Aさん 腕を切る ⾏動 考えが⽌まる 落ち込みなし ⾏動の後(結果) ⽌まらない考え 落ち込みあり ⾏動の前(きっかけ) ・Bさん 腕を切る ⾏動 両親の夫婦喧嘩 なし ⾏動の後(結果) 両親の夫婦喧嘩 あり ⾏動の前(きっかけ)
13.
⾏動の基礎 なぜ問題⾏動は⽣じ,良い⾏動は⽣じないのか? どんな⾏動を したか? ⾏動 ⾏動した結果, 何が起きた? ⾏動の後(結果) ⾏動の前に 何が起きた? きっかけは? ⾏動の前(きっかけ) ⾏動と結果の関係が重要!
14.
⾏動が続く/続かない理由 ⾏動の基礎 ⾏動 ⾏動の後(結果) ⾏動するようになる ⾏動が続く ⾏動しないようになる ⾏動が続かない ⾏動しないようになる ⾏動が続かない 強 化 弱 化 消 去 ⾏動した つごうの良い 結果 なんの結果も ⽣じない つごうの悪い 結果
15.
うつ病の⾏動理論 • うつ病の⾏動理論 健康的な⾏動に“つごうの悪い結果” “結果が⽣じない” 抑うつ的な⾏動に“つごうの良い結果” が与えられる環境がうつ病を引き起こす
16.
うつ病の⾏動理論 健康な⼈が⾏う普通の⾏動 ・仕事に⾏く,学校に⾏く,仕事の相談をする, ⻭を磨く,顔を洗う,TVをみる,会話をする 健康的な⾏動 etc. うつ病では, 健康的な⾏動 を⾏えなくなる
17.
うつ病の⾏動理論 健康的な⾏動の減少を引き起こす環境 健康的⾏動が消去・弱化される環境では ・その⾏動を⾏わなくなる ・憂うつな気分が⽣じる ⾏動の基礎から考えると, 健康的な⾏動をしても良い結果が⽣じない(消去) 健康的な⾏動をすると悪い結果が⽣じる(弱化) 環境でうつ病になる
18.
うつ病の⾏動理論 健康的な⾏動の減少を引き起こす環境 ⾏動をしても良い結果が⽣じない(消去) ⾏動をすると悪い結果が⽣じる(弱化) ・仕事をしてもしても終わらない ・家事を頑張っても誰からも評価されない ・どのように良い仕事をしても叱責される ・学校に⾏くといじめられる
19.
うつ病の⾏動理論 うつ病の⼈が⾏う典型的な⾏動 ・部屋に引きこもる,⼈を避ける,否定的な発 ⾔を繰り返す,ぼんやりと時間を過ごす,⾃ 殺について考える 抑うつ的な⾏動 etc. うつ病では, 抑うつ的な⾏動 を⾏うようになってしまう
20.
うつ病の⾏動理論 抑うつ的な⾏動の増加を引き起こす環境 行動の基礎から考えると, 抑うつ的な⾏動をすることで 嫌悪事態を避けることができる(強化) 抑うつ的⾏動/回避が過剰に優位になると ・健康的な⾏動のレパートリーが縮⼩ ・価値や⽬標に沿った⾏動の消失 →抑うつ的な⾏動には「回避」の意味がある場合がある 環境でうつ病になる
21.
うつ病の⾏動理論 抑うつ的な⾏動(回避)の増加 ⾏動をすることで 嫌悪事態を避けることができる(強化) ・叱責を避けるために上司を避ける ・家事をする代わりにぼんやりTVを⾒続ける 回避それ⾃体は ⽣きるために必要なプロセスだが・・・
22.
うつ病の⾏動理論 抑うつ的な⾏動(回避)の増加 回避⾏動の問題 1)コントロール不能になる 2)回避⾏動の範囲が拡⼤する ・⾏かなければならないとわかっていても職場に⾏けない ・しなければならないとわかっていても家事ができない ・上司を避ける→同僚を避ける→職場を避ける→ 職場近くを避ける→外出を避ける→家族を避ける・・・ ▶健康的な⾏動を⾏う余地がなくなる
23.
うつ病の⾏動理論 では,⾏動活性化療法では何を⽬指すのか? • 様々な援助によって 健康的な⾏動を増やし 抑うつ的な⾏動(回避)を減らす 健康的な⾏動が増えると ・抑うつ気分が⽣じない(達成感等) ・価値や⽬標に沿った⾏動が維持される
24.
⾏動活性化療法の技法
25.
⾏動活性化療法の技法 うつ病や治療に関する説明(⼼理教育) 活動記録票(アセスメント) 導⼊までのテクニック “よい”活動を増やす テクニック ⽬標設定 活動スケジュール スキルトレーニング など “まずい”活動を減らす テクニック TRACモデルの使⽤ TRAPモデルの使⽤ 反すうへの対処 環境調整 など
26.
気分と活動の関係 ⼼理教育 気分 活動 (inside-out) (outside-in) 内から外の活動 外から内の活動
27.
⼼理教育 内から外の活動 外から内の活動 気分に従った⾏動 気分を変える活動 ・おち込んだので引きこもる ・イライラするので物に当たる ・不安なのであれこれ考える ・散歩に⾏ったらすっきりした ・深呼吸したら落ち着いた ・実際やってみたらホッとした その気分が維持される
気分が変わる 減らすべきターゲット 増やすべきターゲット inside-out outside-in
28.
アセスメント 活動記録票によるアセスメント ⽉ ⽕ ⽔
⽊ ⾦ 6:00- 起床 (70) 7:00- 起床 (90) 朝⾷ (60) 起床 (60) 8:00- 朝⾷ (80) 起床 (80) ⼊浴(40) 起床 (80) 朝⾷ (50) 9:00- 横になる(90) 横になる (90) 外出準備 (40) 横になる (90) 散歩 (50) 10:00- 横になる(90) 横になる (90) 移動 (40) 横になる (90) 掃除 (50) 11:00- 散歩 (50) 横になる (90) 友⼈と⾷事(30) TV (80) 買い物 (40) 12:00- 昼⾷ (40) 昼⾷ (50) 友⼈と⾷事(20) 昼⾷ (70) 料理 (30) 13:00- TV (40) TV (40) 友⼈と⾷事(30) TV (60) 洗濯 (30) 活動内容(抑うつ気分) 0 -抑うつ気分なし 100-最も落ち込んでいる
29.
健康な活動を増やす 「⽬標・価値」とそれに沿った活動 ⻑期的な⽬標 復職する 家族を旅⾏に 連れていく 中期的な⽬標 図書館で1⽇過ごす 1時間のウォーキング 家族と会話をする 今できる活動 毎⽇10分の散歩 毎⽇8ページの読書 家族に「おはよう」 と毎⽇⾔う とても できる気がしない これなら できる気がする!
30.
健康な活動を増やす 活動を構造化しスケジュール化する ⽇付 7時 起床 23時 就寝 3⾷ ⾷べる 散歩 10分 読書 8P 妻に 挨拶 ⽇記 気分 3/1
◯ ◯ ◯ × × × 横になってばかりの1⽇ 80 3/2 ◯ ◯ ◯ ◯ × ◯ 特になし 60 3/3 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ マイペースに活動できた 50 3/4 ◯ × ◯ ◯ × ◯ 友⼈と⼣⾷を⾷べた 80 3/5 × ◯ × × × ◯ 昨⽇の疲れか,朝起きられなかった 90 3/6 ◯ ◯ ◯ ◯ × ◯ 気分は良くないが散歩は⾏った。 70 0 -抑うつ気分なし 100-最も落ち込んでいる 活動スケジュール
31.
抑うつ的⾏動/回避を減らす 1.“まずい⾏動”をしていることに気がつく 2.“まずい⾏動”のきっかけや結果に気がつく 3.“まずい⾏動”に代わる活動を試す 4.新しい活動が良い結果であれば,それを続ける 抑うつ的⾏動を健康的な⾏動に変える
32.
抑うつ的⾏動/回避を減らす TRAPに気がつくプロセス Trigger (きっかけ) 朝起きた時に 憂うつな気分 Response (反応) Consequence (結果) 仕事を無断⽋勤 きっかけ 反応 回避パターン
結果 同僚にミスを指摘 された 恥ずかしい 「なんてダメ⼈間だ」 くよくよと考える 同僚を避ける 仕事に⾏きづらく ⽋勤してしまう Avoidance Pattern (回避パターン) ⼆度寝する
33.
抑うつ的⾏動/回避を減らす TRACに戻るプロセス Trigger (きっかけ) 朝起きた時に 憂うつな気分 Response (反応) Consequence (結果) 気分がすっきり 仕事に⾏ける きっかけ 反応 代わりの対処
結果 同僚にミスを指摘 された 恥ずかしい 「なんてダメ⼈間だ」 家族に愚痴を 聞いてもらう 気分がラクになる Alternative-Coping (代わりの対処) シャワーを浴びる
34.
実践報告
35.
⾏動活性化療法を⽤いた事例 実践から得られた知⾒ • ⽐較的早く効果が⽣じ始める • 活動レパートリーの広がりとともに抑うつが改善 •
治療効果が⻑期間維持される • 復職⽀援にも有効 • 今後の課題 「いつ」導⼊するのか? 他の精神疾患に伴う抑うつにも有効か?
36.
実施の際のポイント
37.
⾏動活性化療法のポイント • 導⼊のタイミング • 説明だけで終わらない •
スモールステップを意識する • ⾏動を計画する • 気分以外の結果に⽬を向ける
38.
⾏動活性化療法のポイント 導⼊のタイミング 時期 ポイント 導⼊前 消耗・疲労がひどい場合は服薬や休養を優先する 休養も計画的に取ると良い 初期 基本的な⽣活習慣を再確⽴する 単純な健康的⾏動を増やす 中期 その⼈の⽬標や価値を明らかにする ⽬標や価値に関係する活動を増やす 後期 その⼈の問題を明らかにする 問題に関連する回避⾏動への対策を練る
39.
⾏動活性化療法のポイント 導⼊のタイミング ー休養のための指針例ー ・スケジュールを調整し、1週間予定を⼊れないようにする ・家族や同居⼈に休養を取ることを伝え、協⼒をお願いする ・休養を取る部屋を決めTVやPC、本や雑誌等の不要な物を移動する ・ベッド/布団に⼊り、原則はその中で過ごす ・部屋の外に出るのは⾷事、トイレ、⼊浴等最低限の活動のみ ・TV、PC、ラジオ、ゲーム、携帯電話、⾳楽、本、雑誌等は禁⽌ ・バランスのよい⾷事を取り、服薬は指⽰を守る ・睡眠は取れても取れなくてもよいと思う(睡眠にこだわらない)
40.
ご清聴 ありがとうございました
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