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地域経済に対する自治体財政の影響に関する研究

長野県飯田下伊那地区を事例とした地域経済の計量分析。特に域際収支の中の財政移転収支(財政収支+年金収支)に注目した分析を行っている。

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地域経済に対する自治体財政の影響に関する研究

  1. 1. 地域経済に対する自治体財政の 影響に関する研究 ―長野県飯田下伊那地区を事例に― 第12回京都から発信する政策研究交流大会 立命館大学政策科学研究科博士前期課程1回生 江成穣 1
  2. 2. 目次 1. 研究背景 2. 先行研究 3. 研究目的・意義 4. 研究方法 5. 飯田下伊那地区の概要 6. 飯田下伊那地区の財政移転収支 7. シミュレーションー年金収支中心 8. 現状考察と課題整理 9. 今後の研究課題 2
  3. 3. 研究背景-1 高齢化・人口減少の進展 地方の経済的衰退・東京一極集中 地方における地域経済の自治体財政依存 地域経済の規模縮小の可能性 3
  4. 4. 研究背景-2 自治体財政が地域経済の中で行う活動 ◦ 公共事業などの事業:財・サービスの需要 ◦ インフラなどの維持管理:サービスの供給 ◦ 公務員の雇用:雇用創出 自治体財政と地域経済は、様々な側面で深く 関わっていると考えられる 4
  5. 5. 先行研究-1 地域経済と自治体財政の関係性 岡田知弘『地域づくりの経済学入門』自治体 研究社、2005年 ◦ 基礎自治体の財政支出は、過疎 自治体ほど量的にも、質的にも 大きな役割を果たしている 地方の地域経済における自治体 財政の重要性を指摘 5 出典:京都府市町村民経済計算及び市町村別普通会計より筆者作成
  6. 6. 先行研究-2 本田豊・中澤純治『東日本大震災からの地域 経済復興』ミネルヴァ書房、2016年 公的資金の雇用創出効果を分析(産業連関分析) ◦ 政府一般消費支出:公務、教育・研究部門など ◦ 市内総固定資本形成(公的):建設部門 で大きな雇用効果を発揮している →雇用の面でも地域経済に大きな影響 6
  7. 7. 先行研究-3 中村良平『まちづくり構造改革』日本加除出版、 2014年 ◦ 地方のまちの消費は年金収入に依存 ◦ 収入に占める年金の割合は都市規模と比例 一圓光彌「社会保障による地域間再分配」 2007年の島根県を分析 ◦ 国民年金と厚生年金の給付費は2,820億円 ◦ 年金給付費は第1次産業の生産額の6倍近く 年金は地域経済を支える大きな力として機能 7
  8. 8. 先行研究-4 学問的課題 1. 財政と地域経済:相関関係は明らか、年金経済の重要性 2. 具体的分析不足:相関関係の内容は不明 ◦ 地域経済・財政研究:個別政策の検討に留まる 3. 方法論の未確立 ◦ 地域経済における自治体財政の正確に捉える 分析フレームの必要性 計量分析による具体的検討の必要性大 8
  9. 9. 研究目的・意義 研究目的 自治体財政及び年金が地域経済に対してどの ような影響を持っているかを具体的に明らか にすること 研究意義 地域経済のリスクを具体的に捉え、バック キャスティングによる政策立案を可能にする こと 9
  10. 10. 研究方法 計量分析 ◦ 地域経済の量的分析が中心 ◦ 特に自治体財政・年金の域際収支に注目 参与調査 ◦ 地域経済の実態把握のために実施 ◦ 2016年8月20日~9月21日 ◦ 飯田市役所産業経済部産業振興課 ◦ ミクロな視点の獲得 10
  11. 11. 研究の流れ 1. 飯田下伊那地区の「経済自立度」分析 2. 地域経済の現状把握 3. 財政転移収支の把握 ◦ 資本収支+所得収支+財・サービス収支+財政移転収支=0 ◦ 財政移転収支:公的資金(税金、交付税、補助金、 年金、保険料)の地域外とのやりとりと定義する 4. 人口推移による財政シミュレーション 11
  12. 12. 飯田下伊那地区の概要 長野県南部、飯田市を中心とした14市町村 人口:16.1万人(うち飯田市10.2万人) 高齢化率:32.4% 未合併の小規模自治体多数 地域経済の地域内完結性 “経済自立度”を用いた地域経済の 現状把握 12 参考資料:平成27年国勢調査 出典:長野県HP http://www.pref.nagano.lg.jp/shimochi/shimochi-shokan/kanko/kankojoho/index3.html
  13. 13. 飯田下伊那地区の概要-2 地域経済活性化プログラムでのKPI設定 ◦ 経済自立度をKPIとして活用 ◦ 他自治体に先駆けてKPIとPDCAによる政策改善 手法を実践 産業構造 13 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 飯伊地域 下伊那郡 飯田市 産業大分類別事業所売上高(百万円) 農林漁業 鉱業・採石業等 建設業 製造業 電気・ガス・水道業 情報通信業 運輸・郵便業 卸売・小売業 金融・保険業 不動産業業等 学術研究業等 宿泊・飲食業 生活関連サービス業 教育・学習業 医療・福祉 複合サービス事業 その他サービス業 0% 20% 40% 60% 80% 100% 飯伊地域 下伊那郡 飯田市 長野県 産業大分類別事業所売上比率 農林漁業 鉱業・採石業等 建設業 製造業 電気・ガス・水道業 情報通信業 運輸・郵便業 卸売・小売業 金融・保険業 不動産業業等 学術研究業等 宿泊・飲食業 生活関連サービス業 教育・学習業 医療・福祉 複合サービス事業 その他サービス業
  14. 14. 経済自立度について 飯田下伊那地区独自の経済指標 2001年から算出開始、KPIとしての活用 計算式:経済自立度 % = 地域産業からの波及所得総額 地域全体の必要所得額 × 100 分母:1人あたり実収入額全国平均×総人口 分子:「地域産業からの波及所得」と「公共業務から の波及所得」に分類し、「地域産業からの波及所得」 のみを対象として分析 →指標としての不完全性も存在 14 出典:飯田市地域経済活性化プログラム2016より筆者作成 46.2% 41.6% 43.5% 45.4% 47.8% 51.4% 54.9% 52.6% 42.2% 47.7% 45.7% 47.2% 47.6% 30.0% 35.0% 40.0% 45.0% 50.0% 55.0% 60.0% 経済自立度飯田下伊那地区の経済自立度推移
  15. 15. 分析フレーム 15 住民 地域内循環 行政 国・県 年金機構 補助金・交付金 国税・県税 年金保険料 年金収支 年金給付額 飯田下伊那地区 財政移転収支+地域内循環+波及効果 =公共業務からの波及所得 財政収支
  16. 16. 飯田下伊那地区経済の現状 2013年経済自立度:47.6% 1人あたり実収入額全国平均:213.1万円 飯田下伊那地区総人口:16.6万人 地域全体の必要所得額:約3,550億円 地域産業からの波及所得総額:約1,690億円 不足分:約1,860億円 →公共業務からの波及所得で補てん 16
  17. 17. 住民 地域内循環 353億円 行政 財政移転収支-1 17 国・県 年金機構 補助金・交付金 522億円 国税・県税 426億円 +96億円 +542億円 年金保険料 254億円 年金給付額 796億円 飯田下伊那地区 約1,000億円+波及効果 不足分1,860億円の補てん
  18. 18. 財政移転収支-2 財政移転収支:+638億円 地域内循環:353億円 地域経済内での波及効果約1.85倍 18 波及所得の発生 不足分を補てん 869億円 1,690 542 96 353 869地域経済の構造(億円) 0% 50% 100% 地域全体の必要所得額3,550億円 地域産業からの波及所得 年金収支 税・交付金収支 地域内循環 波及効果
  19. 19. 財政移転収支-3 年金収支:+542億円(必要所得額の15.3%) 地域経済の中核的役割 人口減少は確定的 バックキャスティング・将来予測の必要性大 19
  20. 20. シミュレーション-人口推移 コーホート分析によって算出 減少傾向が顕著、高齢者数も減少傾向 高齢化率は40%強で高止まり 20 24,444 21,657 19,564 17,619 15,761 14,004 12,702 11,543 10,502 9,418 8,492 91,227 87,254 80,328 74,300 68,591 62,761 55,759 49,814 45,164 41,427 37,800 50,926 52,286 52,284 50,481 48,115 45,716 44,259 41,931 38,790 35,281 31,856 30.6% 32.4% 34.4% 35.5% 36.3% 37.3% 39.3% 40.6% 41.1% 41.0% 40.8% 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% 45.0% 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 2013年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年 2045年 2050年 2055年 2060年 飯伊地域人口推移 年少者人口 生産年齢人口 高齢者人口 高齢化率
  21. 21. シミュレーション-年金収支推移 2020年まで:年金額は横ばい、収支は増加 以降:年金額・収支共に減少傾向 2060年:年金額-320億円、収支-200億円 21 79,553,664 81,675,332 75,162,115 69,138,143 60,595,828 49,763,075 25,429,971 22,391,684 19,120,185 15,543,140 12,589,573 10,536,828 54,123,693 59,283,648 56,041,930 53,595,002 48,006,255 39,226,246 0 10,000,000 20,000,000 30,000,000 40,000,000 50,000,000 60,000,000 70,000,000 80,000,000 90,000,000 2013年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年 2045年 2050年 2055年 2060年 飯伊地域年金収支予想 推定年金額(千円) 推定保険料額(千円) 年金収支(千円)
  22. 22. 考察-1 飯田下伊那地区の自治体財政依存度は高い ◦ 直接依存:993億円(必要所得の28.0%) ◦ 間接依存:867億円(必要所得の24.4%) 特に年金収支が大幅なプラスで、ここに依存 高齢者人口の減少が予想される ◦ 年金額:-320億円、年金収支:-200億円 波及効果:-370億円(現在の必要所得の10%) 22
  23. 23. 考察-2 地域経済は自治体財政、特に年金に依存 ◦ 高齢者人口は減少傾向 →2025年以降は年金収支悪化 ◦ 現在の必要所得額の10%が減少 その他の要素も人口減少・政策的要素で縮小 ◦ 地方交付税交付金 ◦ 地域内循環資金(地方税・自治体歳出) など 対応策(産業振興政策)の必要性 財政移転収支中心の分析フレーム構築に成功 23
  24. 24. 今後の研究課題 人口減少に対応した政策・評価指標の検討 ◦ 必要所得額に応じた目標設定 ◦ 目標に対応した産業振興政策 ◦ より正確な将来予測の手法 分析の精緻化 ◦ 分析フレームの理論化 ◦ 飯田下伊那地区産業連関表の作成 地域経済分析手法の理論的整理 24
  25. 25. 参考文献・資料 1. 入谷貴夫『地域と雇用をつくる産業連関分析入門』自治体研究社、2012年 2. 岡田知弘『地域づくりの経済学入門』自治体研究社、2005年 3. 岡田知弘・川瀬光義・鈴木誠・富樫幸一『国際化時代の地域経済学入門〔第3版〕』有斐閣、2007年 4. 重森曉・植田和弘『Basic地方財政論』有斐閣、2013年 5. 諏訪園健司編著『図説 日本の税制(平成23年度版)』財経詳報社、2011年 6. 中村良平『まちづくり構造改革―地域経済構造をデザインする』日本加除出版株式会社、2014年 7. 橋本雄一編『三訂版 GISと地理空間情報―ArcGIS10.2とダウンロードデータの活用』古今書院、2014年 8. 本田豊・中澤純治『東日本大震災からの地域経済復興』ミネルヴァ書房、2016年 9. 牧野光朗編著『円卓の地域主義』宣伝会議、2016年 10.飯沼健子「飯田・下伊那における地域規模と地域振興」『専修大学社会科学研究所月報』第611・612号、98~109頁、2014年 11.一圓光彌「社会保障による地域間再分配」『生活経済研究』第30巻、生活経済学会、37~41頁、2009年 12.金子愛・樋上龍矢「飯田市における機械金属工業による企業間ネットワークの構築」『地域研究年報』第35号、63~77頁、筑波 大学人文地理学・地誌学研究会、2013年 13.平岡和久「都道府県際収支と財政移転収支」『社会科学論集』第72号、高知短期大学、155頁、1997年 14.宮嵜晃臣「飯田市経済の現状と地域経済活性化政策」『専修大学社会科学研究所月報』第611・612号、2014年 25
  26. 26. 参考文献・資料 15. 飯田市「飯田市版総合戦略」2016年 16. 飯田市「第5次飯田市基本構想後期基本計画」2012年 17. 飯田市「地域経済活性化プログラム2016」2016年 18. 飯田市「人と人 人と自然を結ぶ山都 結」2015年 19. 茨城県「茨城県常住人口調査結果報告書」2014年 20. 京都府「平成25年度きょうとの市町村民経済計算」2016年 21. 京都府「京都府統計書」2014年 22. 群馬県「群馬県移動人口調査結果」2014年 23. 厚生労働省「平成25年度厚生年金保険・国民年金事業年報」2015年 24. 国税庁「平成25年国税統計年報」2015年 25. 総務省「市町村税課税状況等の調」2014年 26. 総務省「平成28年度版情報通信白書」2016年 27. 総務省統計局「平成12年国勢調査」2001年 28. 総務省統計局「平成17年国勢調査」2006年 26
  27. 27. 参考文献・資料 29. 総務省統計局「平成22年国勢調査」2011年 30. 総務省統計局「平成24年経済センサス―活動調査」2014年 31. 総務省統計局「平成25年家計調査」2013年 32. 総務省統計局「平成27年国勢調査」2016年 33. 長野県「平成25年度長野県市町村財政概要」2013年 34. 長野県「平成25年長野県財政状況資料集」2014年 35. 長野県「平成25年長野県の人口(毎月人口異動調査結果報告)」2014年 36. 長野県「平成27年度長野県商圏調査報告書」2015年 37. 『日本経済新聞』「地銀、国債残存期間長く、利回り狙い「10年超」保有も、日銀新政策が頼みの綱に」 2016年11月22日、朝 刊、17頁 38. 国税庁HP「統計情報」https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/tokei.htm (最終アクセス日: 2016年11月18日) 39. 財務省HP「公債費の累増」 http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/004.htm (最終アクセス日:2016年10月14日) 40. 埼玉県HP「平成25年埼玉県町(丁)字別人口調査」https://www.pref.saitama.lg.jp/a0206/a009/index.html (最終アクセス日:2016年11月23日) 27
  28. 28. 参考文献・資料 41. 栃木県HP「年齢別人口調査結果(市町別年齢別人口)」 http://www.pref.tochigi.lg.jp/c04/pref/toukei/toukei/popu2.html (最終アクセス日:2016年11月23日) 42. 長野県HP「県税収入の状況」http://www.pref.nagano.lg.jp/zeimu/kurashi/kenze/tokei/kenzeshunyu/index.html (最終アクセス日:2016年11月27日) 43. 長野県HP「長野の10広域」http://www.pref.nagano.lg.jp/10koiki/(最終アクセス日:2016年11月26日) 44. 長野県HP「平成25年度市町村財政状況資料集」 http://www.pref.nagano.lg.jp/shichoson/kensei/shichoson/zaise/shiryo/h25zaise.html#05(最終アクセス日:2016年10月29日) 45. 長野県下伊那地方事務所HP「南信州の観光情報」http://www.pref.nagano.lg.jp/shimochi/shimochi- shokan/kanko/kankojoho/index3.html (最終アクセス日:2016年11月26日) 46. 新潟県HP「新潟県の人口移動 -平成25年新潟県人口移動調査結果報告-」 http://www.pref.niigata.lg.jp/tokei/1356777037460.html (最終アクセス日:2016年11月23日) 47. 松村明監修「バックキャスティング【backcasting】」『goo辞書(提供元・デジタル大辞泉)』 http://dictionary.goo.ne.jp/jn/177274/meaning/m0u/ (最終アクセス日:2016年11月28日) 28

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