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インクルーシブ教育システムの構築に向けたスクールワイドな支援モデルの可能性
- 3. 企画主旨 Response to Intervention (RTI) ・全員を対象としたスクリーニングの実施 ・全員を対象としたユニバーサルな指導 ・段階的に指導・支援を付け足す ・児童生徒の反応を客観的に測定する ・エビデンスに基づいた意思決定
- 5. 企画主旨 Response to Intervention (RTI) ニーズのある児童生徒の支援・指導の決定 教員を支える校内チーム 全児童生徒を対象とした教育の質向上 多様なニーズのある児童生徒を包摂した インクルーシブ教育システム
- 6. 企画主旨 本シンポジウムでは RTI 及び RTI における 行動面のシステムとして確立している Positive Behavior Intervention & Support (PBIS)について、実際の導入事 例と共に日本における導入の可能性について 議論する。
- 7. イリノイ州第15学校区における RTI/PBISの導入 特殊教育学会 自主シンポジウム15 20140920 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 株式会社LITALICO (旧ウイングル） 野口 晃菜
- 9. 1983年 「危機に立つ国家」 1994年 ゴール2000：アメリカ教育法 授業料増加、新しい教科導入、 高校卒業要件の強化 初等中等教育改正法(IASA) 1997年 教育全般 特別教育 スタンダード・学力試験の導入 障害者教育改正法(IDEA) 通常教育カリキュラムへのアクセス 学力試験への参加 2002年 初等中等教育法改正 No Child Left Behind Act （NCLB法） 2004年 読み・算数・理科のスタンダード設置義務、公的報告による説明責任、マイノリ ティの参加、高度の資格を有する教師 障害者教育改正法(IDEA) 通常教育カリキュラムに基づくIEP作成、 基礎教科の免許取得義務 代替スタンダード 2003年 NCLB法規則改正 最重度の知的障害児(1%)に対する代替スタンダードの設置 1990年 障害のあるアメリカ人法(ADA) 合理的配慮
- 10. 10 特別教育の質と成果の保障 「特別教育サービスの質や教育成果の保障が十分ではなかった」 (Eisenman & Ferretti[2010]262) 貧困 移民家庭 全ての子どもが学ぶまで責任をもつ 障害 通常教育カリキュラムへのアクセス スタンダードに基づく試験の実施による教育成果に対する説明責任 「現在はインクルージョンの第3期である。第1期は通常学級に障害のある児 童と資源が『足される』形であり、第2期は通常学級における指導法に焦点を あてた形であり、現在の第3期は障害のある児童生徒の教育内容に焦点を当て た形である。(Wehmeyer, [2006]323) 第1期 インテグレーション 第2期 ユニバーサルデザイン学習 Differentiated-Instruction 第3期 通常教育カリキュラム アクセス
- 13. 障害者教育法（IDEIA,2004) (A) 子どもが特異的学習障害であるかの判断をするとき、 LEA(Local Education Agency)は、子どもが話す・聞く・ 書く・読む・理解する・計算する・推論する力における達 成度と知的能力の間に顕著な差があるかどうかを考慮する ことを必要としない （＝ディスクレパンシーモデルの使用はマストではない） (B)子どもが特異的学習障害であるかを判断するとき自治 体教育局LEA(Local Education Agency)は評価手順の一部 として、科学的、リサーチベースドの介入に子どもが応答 するかどうかで決定するプロセスを使用しても良い （＝RTIを使用しても良い） [20 U.S.C. 1221e-3; 1401(30); 1414(b)(6)]
- 14. 障害者教育法（IDEIA,2004) (5) 30年以上の研究と経験の結果、障害のある児 童生徒への教育は下記の場合より効果的である (F) 科学に基づくリーディングプログラム、 positive behavioral interventions and supports, そして早期介入サービスを提供する ことが、児童生徒の学習面や行動面に関するニ ーズを「障害」とラベルづける必要性を軽減す る。 【20 U.S.C. § 1401(c)(5)(F)】 http://idea.ed.gov/download/statute.html
- 16. RTIを必須にしている州 (2012年3月現在) １ コロラド州 必須 ２ コネチカット州 必須 ３ フロリダ州 必須 ４ アイダホ州 必須 ５ ルイジアナ州 必須 ６ ロードアイランド州 必須 ７ ウェストバージニア州 必須 ８ ウィスコンシン州 必須 ９ ジョージア州 必須（ディスクレパンシーも考慮可） 10 イリノイ州 必須（ディスクレパンシーも考慮可） 11 メイン州 必須（ディスクレパンシーも考慮可） 12 デラウェア州 一部必須（リーディング・算数） 13 ニューメキシコ州 一部必須（K-3) 14 ニューヨーク州 一部必須 (K-4) http://rtinetwork.org/learn/ld/the-legal-dimension-of-rti-part-ii-state-laws-and-guidelines
- 17. RTIを必須にしている州 (2012年3月現在) １ コロラド州 必須 ２ コネチカット州 必須 ３ フロリダ州 必須 ４ アイダホ州 必須 ５ ルイジアナ州 必須 ６ ロードアイランド州 必須 ７ ウェストバージニア州 必須 ８ ウィスコンシン州 必須 ９ ジョージア州 必須（ディスクレパンシーも考慮可） 10 イリノイ州 必須（ディスクレパンシーも考慮可） 11 メイン州 必須（ディスクレパンシーも考慮可） 12 デラウェア州 一部必須（リーディング・算数） 13 ニューメキシコ州 一部必須（K-3) 14 ニューヨーク州 一部必須 (K-4) http://rtinetwork.org/learn/ld/the-legal-dimension-of-rti-part-ii-state-laws-and-guidelines
- 18. イリノイ州 イリノイ州 全米平均 マイノリティ(％) 45.77 45.89 IEPのある児童生徒(%) 13.8 12 貧困層(％) 42.1 47.5 通常学校在籍率（％） 92.36 94.92 １スタッフに対する児童生徒の数 (人） 9.5 7.8 通常試験参加率（算数・読み） （％） 89.23 82.54 National Center on Educational Statistics (2012) Digest of Education Statistics. http://nces.ed.gov/programs/digest/2012menu_tables.asp Data Accountability Center (2011) Individuals with Disabilities Education Act Data. https://www.ideadata.org/default.aspを元に作成.
- 19. イリノイ州 第15学校区 小学校（k-12)： 15校 中学校（7-8)：4校 オルタナティブ学校（幼児期・行動面）：1校 児童生徒数：1,300人 特別教育対象：1601人（12.3%) 英語第2言語習得者：20% 貧困層：34.9% スタッフ数：2,123人 NCLB法 優秀校：9校 イリノイ州 優秀校：６校
- 20. 特別学級通常学級＋特別教育 代替学校 ※行動面 リソース ルーム LD スピーチ 言語 視覚 聴覚 SI P CC MILE ACES 重複 インク ルー ジョン BD ED 場 プ ロ グ ラ ム AI ME 第15学校区特別教育プログラム 早期介入サービス 0-3歳 特別教育プログラム 3-5歳 発達 スクリーニング 移行プログラム 5-6歳
- 22. 教育委員会（LEA) RTI コーディネーター 校長 学年 担任 ESL担当 学校RTIチーム 副校長 スクール サイコロジスト 学校スペシャルサポート チーム（SST) リソースルーム 教師 リーディング スペシャリスト スピーチ セラピスト スクールソー シャルワーカー 1層⇒2層 2層⇒3層 3層⇒特別教育 RTIに関わる校内体制
- 23. RTIのプロセス 学習面：達成度測定において下位 25%(スタンダード・ベーステスト） 行動面：不適切な行動の頻度のデータ が上位25％ RTIミーティングにおいて介入選択 介入・モニタリング （8～12週間） 介入に対して反応がない時 別の介入方法の実施・モニタリング （8～12週間） 問題解決MTG #1 課題分析・介入のつけたし （8～12週間） 問題解決MTG #2 課題分析・介入のつけたし （8～12週間） 問題解決MTG #3 特別教育の対象の可能性 通常学級における質の高い教育活動
- 24. 3つの柱「尊敬し合う、責任を持つ、安全にする」 (Be Respectful, Be Responsible, Be Safe) （第1層） 学校の各場所に、その場所にお ける3つの柱に基づいた適切な 行動・不適切な行動を明記 （例：カフェテリアにおける適 切な行動・不適切な行動） 年度はじめに職員全員で決める。 （一貫した対応） 24 第1層支援（行動面）
- 26. 26 自己モニタリング
- 29. 29
- 31. 州で必須（3－8年生対象） イリノイ州標準テスト ( Illinois Standards Achievement Test) イリノイ州の教育水準に基づく学力試験 読み・数学・理科 年に1回 1％の最重度の知的障害のある 児童生徒については、代替アセスメント 英語能力査定 英語が第二言語である児童生徒対象 D15独自のテスト・測定 CBM (curriculum-based measurement) 幼稚園～2年生 学習発達測定試験 （Measures of Academic Progress） 2-8年生対象。読み・言語・数学 年に3回 知能テスト （Cognitive Abilities Test） 言語・非言語・数量の3分野 2年生、4年生、6年生 州・連邦に試験の結果を報告 一人ひとりのニーズ・特性の把握、 RTIの指標として使用 学習達成度を測る 31
- 32. RTIミーティング 児童氏名 リーディ ング 算数 介入プロ グラム モニター 担当者 A 点数 点数 DI 読みについて月 ２回 B先生 B C D E 32 ・テストデータを元に3層に分ける ・介入計画（Intervention Planning Form)を作る
- 34. 34
- 35. 学習面 介入プログラム 35 エビデンス・ベースな介入プログラム Read180 System 44 Read Naturally Rosetta Stone Direct Instruction In Step など リーディングスペシャリストのプルアウト授 業も受けることができる（Reading First政策） リーディングプログラム：SOAR, SAIL
- 36. 行動面 第3層
- 37. 行動面 特別教育
- 39. RTI/PBISスペシャリストへの聞き取り 39 ■ 良い点 ①担任教師が、子どもができないのを子どものせいにする のではなく、自分の指導を工夫するようになる。 ②「公正」なプロセス。”wait to fail”ではなく、躓いた 時点で介入開始 ■ 課題 ①テストの時間が長い。 ②達成度が高い（学力が高い）学校区とそうでない学校区 で「対象」の差がでる。 ③担任によって第1層支援に差がでる。
- 40. まとめ • スタンダード・ベース改革による説明責任を果 たすためのRTI導入 • 通常教育における第1層支援が前提 – UDL、Differentiated-Instruction、PBIS • 学校全体としてシステマティックに取り組む – RTIミーティング、SSTミーティング等の校内体制 • 主観による判断からデータによる意思決定 – 統一テストの活用
- 42. 日本における インクルーシブ教育システム構築への示唆 • 通常教育＋αとしての特別支援教育から、通常教育と特 別支援教育の融合へ • 通常教育における主観による判断からエビデンスのある 意思決定へ • 特別な＋α人員の配置から、学校全体の校内体制の構築 へ – 管理職のコミットメント・既存の資源の整理・活用 ★通常学級における指導（一層支援）との連続性を踏まえ た研究の必要性 – 行動分析学や特別支援教育と通常教育の教科教育・指導法・学 校経営・学級経営とのコラボレーション – 行動分析学を活用した学校・学級経営のコンサルテーション
- 44. 引用・参考文献 Eisenman, L. T. & Ferretti, R. P.(2010)Changing Conceptions of Special Education. Exceptional Children, 76, 262-264. Jimerson, S.R., burns, M.K., & VanDerHeyden, A.,(2007) Handbook of Response to Intervention : The Science and Practice of Assessment and Intervention. Springer. 野口晃菜・米田宏樹(2012a)米国スタンダード・ベース改革における知的障害のある児童生徒 への通常カリキュラムの適用. 特殊教育学研究, 49(5)445-455. 野口晃菜・米田宏樹(2012b)米国における通常教育カリキュラムへのアクセスを前提とした障 害児教育の展開. 特殊教育学研究, 50(4)413-422. 野口晃菜・米田宏樹（2014) 特別学級・代替学校における障害のある児童生徒の通常教育カリ キュラムへのアクセスの現状と課題ー米国イリノイ主第15学校区を中心にー. 障害科学研究, 38, 117-130. U.S. Department of Education(2001)No Child Left Behind Act of 2001, P.L.107-110. 2002年1月 8日. http://www.ed.gov/policy/elsec/leg/esea 02/. 2014年6月27日閲覧. U.S. Department of Education (2004) Individuals with Disabilities Education Improvement Act of 2004, http://idea.ed.gov/explore/view/p/%2Croot%2Cregs%2C Wehmeyer, M.L., Lattin, D. and Agran, M. (2001) Achieving access to the general curriculum for students with mental retardation: a curriculum decision-making model. Education and Training in Mental Retardation and Developmental Disabilities , 36(4), 327-342. 米田宏樹・野口晃菜・本間貴子(2011) 米国の水準にもとづく教育における特別教育の実際ーイ リノイ州PalatineCCSD15の訪問調査から. SNEジャーナル, 17(1), 52-70.