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第9章 ネットワーク上の他の確率過程
- 2. ADGENDA
•9.1 進化ゲーム
•9.2 ランダム・ウォーク
•9.3 カスケード故障
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- 3. ADGENDA
•9.1 進化ゲーム
•9.2 ランダム・ウォーク
•9.3 カスケード故障
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- 4. 9.1.1 進化ゲームとは
• 囚人のジレンマ:局所最適が全体最適にならない 利得表
相手: C 相手: D
• 利得表において,自分は戦略 D(裏切り)を取ったほうが
有利. 自分: C (3, 3) (0, 5)
• 相手に関しても同様 自分: D (5, 0) (1, 1)
• 利得が (1, 1) になる.
• 全体最適は,(3, 3)
• どのようにすれば相互協力が実現するか → 進化ゲーム
• プレイヤーの行動の基準
• 伝搬:利得が高い誰かの行動を真似る
• 突然変異:レイヤーは気まぐれで行動を変える
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- 5. 9.1.2 ネットワーク上の進化ゲーム
進化ゲームのダイナミクス(p.197 図9.1 参照)
(1) 初期条件(t=0)として,各頂点に C, D を確率 1/2 で割り振る
(2) 各頂点は,隣人のそれぞれと利得表に従ってゲームを行なう
(3) 各頂点について,隣人のそれぞれとゲームを行なって得た利得の合計を,自分の総利得とする
(4) 戦略の更新を行なう.ノード v を無作為に選択し,隣人のうち最も利得の大きい人の戦略をコピー
(5) t = 1 として,ステップ 2~4 を行なう
(6) 以降 t=2, 3, … として続ける.ネットワーク全体での C, D の割合が一定値に落ち着いたら終了.
4
- 6. 9.1.3 空間的互恵性
空間的互恵性 クラスターを作ることで生き残る仕組み
• v1 が死ぬと,必ず D の戦略をコピーする
• v2 が死ぬと,v1 の戦略ではなく v3 の戦略をコピーする
• v3 が死ぬと,v2 の戦略ではなく v4 の戦略をコピーする
• v4 が死ぬと,必ず C の戦略をコピーする
⇒ 結果的に,状態は変化しない
これは,ノードがクラスターをなしていることに起因する
5
- 7. 9.1.4 スケールフリー・ネットワーク上の進化ゲーム
• 次数の大きい頂点(ハブ)と,小さい頂点によって,ゲームの参加の仕方が異なる
• スケールフリー・ネットワーク上では,ハブの方が圧倒的に有利
次数の大きい頂点(ハブ) 次数の小さい頂点
10 90
利得: 1 利得: 1 利得: T 利得: T 利得: 0 利得: 0
C
・・・・ ・・・・・・・・・
D
利得: 10 利得: 2T
戦略が C でも成立する 戦略が D でないと成立しない
(参考)利得表
相手: C 相手: D
自分: C (1, 1) (0, 𝑇)
自分: D (𝑇, 0) (𝜖, 𝜖)
6
- 8. 9.1.5 進化ゲームの固定確率
• 真似のみでゲームが進んだ場合,いずれグラフは
• 全員が C
• 全員が D
のいずれかに収束する
• ここで,全員が C になって終了する確率を,C の固定確率という
• レギュラー・ランダムグラフにおいては,C の固定確率が大きいための条件が知られている
[Ohtsuki, 2006]
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- 9. ADGENDA
•9.1 進化ゲーム
•9.2 ランダム・ウォーク
•9.3 カスケード故障
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- 10. 9.2.1 ネットワーク上のランダムウォーク
• 古典的なネットワーク上のランダムウォークは,数学や物理学などにおいて古くから調べられてい
る
• 今回対象にするランダムウォーク
• 有限ネットワーク
• 単純ランダムウォーク
ネットワーク上での移動は,以下の推移確率行列で表現:
𝐴 𝑖𝑗
𝐵 𝑖𝑗 = 𝑁
𝑙=1 𝐴 𝑖𝑙
ここで,次の制約条件が成立:
𝑁
𝐵 𝑖𝑗 = 1
𝑗=1
ノード 𝑖 上にウォーカーが存在する確率 𝑃𝑗 𝑡 は,マスター方程式で表現
𝑁
𝑃𝑖 𝑡 + 1 = 𝑃𝑗 𝑡 𝐵 𝑗𝑖
𝑗=1
9
- 12. 9.2.2 ページランク
• 枝に方向がある場合のランダムウォーク
• ページランク以前:ネットワークに依存しない方法で決定
• 検索エンジンの重要性
(i) ページと検索後の関連度
(ii) ページとネットワーク上の重要性(ex. 中心性)
• Google は,ページランクを用いて,(ii) の計算を行なっている
ページランクが考えるウェブページの重要性の基準(p. 208, 図9.8)
(1) 多くのページからリンクされるページは重要
(2) 重要なページからリンクされるページは重要
(3) 厳選されたリンクをう受けることは貴重
ページランクの基準(連立一次方程式)
𝑁 𝑁 𝑁
𝐴 𝑗𝑖
𝑥𝑖 = 𝐵 𝑗𝑖 𝑥 𝑗 = 𝑁 𝑥𝑗 , 𝑥𝑖 = 1
𝑙=1 𝐴 𝑗𝑙
𝑗=1 𝑗=1 𝑖=1
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- 13. 9.2.2 ページランク:dangling node への対応
• WWW のネットワークには多くの dangling node(行き止まり)が存在している
• 例)画像からなるページ
• 今までのページランクの定義では,dangling node のいずれかにウォーカーが停滞してしまう
• そこで,ウォーカーの挙動の定義を以下のように修正
(1) 確率 1-q で通常通りランダムウォーク(行き先が存在しない場合は,そこに留まる)
(2) 確率 q で自身を含むランダムなノードにジャンプ
• (2) により,dangling node に対応できる
• 修正した確率遷移行列
𝑞 𝐴 𝑖𝑗
𝑖 がdangling nodeでない場合: 𝐵 𝑖𝑗 = + (1 − 𝑞) 𝑁
𝑁 𝑙=1 𝐴 𝑖𝑙
𝑞
+ 1 − 𝑞 , (𝑖 = 𝑗)
𝑁
𝑖 が dangling node の場合: 𝐵 𝑖𝑗 = 𝑞
, (𝑖 ≠ 𝑗)
𝑁
12
- 14. 9.2.3 HITS
• HITS: Kleinberg によって提案された新しい中心性
オーソリティ度 𝑥 𝑖 とハブ度 𝑦 𝑖
𝑁 𝑁
𝑥𝑖 ∝ 𝐴 𝑗𝑖 𝑦 𝑗 , 𝑦𝑖 ∝ 𝐴 𝑖𝑗 𝑥 𝑗
𝑗=1 𝑗=1
ベクトル表現
𝒙 ∝ 𝐴 𝑇 𝒚, 𝒚 ∝ 𝐴𝒙
以下の更新式で収束計算
𝒙 𝑡+1 = 𝐴𝑇 𝒚 𝑡 , 𝒚 𝑡 + 1 = 𝐴𝒙 𝑡 + 1
以下のように変形可能
𝒙 𝑡 + 1 = 𝐴 𝑇 𝐴𝒙 𝑡 , 𝒚 𝑡 + 1 = 𝐴𝐴 𝑇 𝒚 𝑡
よって, 𝒙∗ = 𝒙 ∞ , 𝒚∗ = 𝒚 ∞ とすると,
𝒙∗ = 𝐴 𝑇 𝐴𝒙∗ , 𝒚∗ = 𝐴𝐴 𝑇 𝒚∗
これは固有方程式なので,𝒙∗ は 𝐴 𝑇 𝐴 の最大固有ベクトル,𝒚∗ は𝐴𝐴 𝑇 の最大固有ベクトルになる
13
- 15. 9.2.4 情報探索
• 6 次の隔たりでは,手紙の転送はランダムではなく,近い人を選んで送られる
• グラフの最短距離が必ず選ばれるわけではない
• どのような方法で人を探しているか明らかにする必要がある
情報探索のルール
• 正方格子を考える
• 𝑟 −𝛼 に比例する確率でショートカットを張る 𝑟 −𝛼 に比例する
• ウォーカーは,ターゲットにより近い場所に動く 確率でリンク形成
平均到達時間 𝑇 の下限は 𝑁 𝛽 に比例
2−𝛼
, (0 ≤ 𝛼 ≤ 2)
3
𝛽= 𝛼−2
, (𝛼 > 2) 𝑟=5
𝛼−1
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- 16. ADGENDA
•9.1 進化ゲーム
•9.2 ランダム・ウォーク
•9.3 カスケード故障
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- 17. 9.3 カスケード故障
• ネットワークの枝には,物量が流れる場合がある
• Ex. 航空網における人,電力網における電気,インターネットでのパケット,道路網での車
• 許容量を超えた物量がノードを通る場合,そのノードは故障することがある
• そうした場合に,他のノードにも負荷がかかり,連鎖的に故障が拡散する場合がある
カスケード故障のダイナミクス
(1) ある頂点 v を除去
(2) v を除去したネットワークにおいて,再度各頂点の媒介中心性を計算
(3) 容量を超えた頂点をすべて除去
(4) 頂点を除去したネットワークにおいて,残った各頂点の媒介中心性を再計算
(5) ステップ 3 とステップ 4 を,容量超過の頂点がなくなるまで繰り返す
• 故障の連鎖の例(p. 222, 表9.2)
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