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ライブラリー・リソース・ガイド
第12号/2015年 夏号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Library Resource Guide
特集
図書館×カフェ
野原海明
司書名鑑 No.8 是住久美子(京都府立図書館)
マガジン航 Pick Up Vol.2
ウィキペディアを通じてわがまちを知る[小林巌生]
特別寄稿 図書館の情報発信に効く!
広報のコツ×取材のツボ
鎌倉幸子、猪谷千香
LRG Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド
第12号/2015年 夏号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
特別寄稿 図書館の情報発信に効く!
広報のコツ×取材のツボ
鎌倉幸子、猪谷千香
マガジン航 Pick Up Vol.2
ウィキペディアを通じてわがまちを知る[小林巌生]
司書名鑑 No.8 是住久美子(京都府立図書館)
特集
図書館×カフェ
野原海明
002 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
巻頭言
今回は第12号です。年4回発行の本誌ですから、今回の第12号で本誌創刊3
周年を迎えます。読者の皆さま、そして本誌を所蔵していただいている図書館の
方々のこれまでのご支援に心から御礼申し上げます。
さて、第12号は、次のような構成になっています。
・特別寄稿「図書館の情報発信に効く! 広報のコツ×取材のツボ」
 (鎌倉幸子・猪谷千香)
・特集「図書館×カフェ」(野原海明)
・マガジン航Pick Up Vol.2「ウィキペディアを通じてわがまちを知る」(小林巌生)
・司書名鑑No.8「是住久美子」(京都府立図書館)
 特別寄稿は、2015年8月24日(月)に東京で開催された「NPOや図書館の情報
発信に効く!広報のコツ×取材のツボ」(日本財団CANPAN・NPOフォーラム)
を誌上で再現したものです。図書館という文脈においては広報と取材においてそ
れぞれ当代一と言える猪谷さん、鎌倉さんの言葉はまなびが多いでしょう。ぜひ、
日常の業務にお役立ていただければと思います。
そして、特集「図書館×カフェ」は編集部が総力をあげて取り組みました。武雄
市図書館が館内でスターバックスの営業を始めたことで、図書館におけるカフェ
はかつてない注目を集めています。しかし、「図書館×カフェ」はなにも武雄市図
書館が嚆矢ではありません。市井のカフェに比べても際立った存在感を放つカ
フェが、図書館の文化のもとで育っています。ぜひ、図書館におけるカフェ文化
の実情をぜひ感じ取っていただければと思います。なお、特集にあたっては、日
本全国の図書館並びにカフェにご協力いただきました。心から御礼申し上げます。
さて、「図書館×カフェ」という特集を組んでおきながらではありますが、一つ
だけ強調しておきたいことがあります。あくまでカフェは図書館の十分条件であ
り、必ずしも必要条件ではありません。畏友である新出さん(白河市立図書館)の
言葉ですが、「『動向』はすぐ陳腐化する」のです。もちろん、陳腐化するからと
いって「動向」を追わなくていいわけでありません。図書館の基本中の基本の役割
は、あくまでも資料の収集・分類・提供・保存にあると私は考えます。この役割
12号 巻頭言
003ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
巻頭言
を果たし続けてこそ、そこに添えられたカフェという存在が光を放つはずです。
本特集を起点にカフェのような空間や機能が図書館に備わっていくことはもちろ
ん願っていますが、カフェがある=よい図書館ではないことも、同時に心にとめ
ていただければ幸いです。
なお、今回の特集では、本誌発行元であるアカデミック・リソース・ガイド株
式会社のパートナースタッフである野原海明が著者デビューしています。司書で
あり、小説家であり、ときどき歌手であり、そして図書館のプランナーである彼
女の文章にもご注目いただけますと幸いです。
前号から始まったマガジン航からの採録は、小林巌生さんによる「ウィキペ
ディアを通じてわがまちを知る」です。このエッセイの初出は、実はアカデミッ
ク・リソース・ガイド株式会社の原点とも言えるメールマガジン ACADEMIC
RESOURCE GUIDE(ARG)に掲載されたものです。それがマガジン航の編集人で
ある仲俣暁生さんの目にとまり、マガジン航に転載されました。
司書名鑑では、「オープンデータ×図書館」といえばこの方という是住久美子さ
ん(京都府立図書館)にご登場いただきました。彼女とは長いつきあいですが、突
如、オープンデータに目覚めて活動を始めたと思うやいなや、ものの数年でこの
分野の第一人者の一人となりました。そんな彼女が、どのような道をたどってい
まに至ったのかがつぶさに語られています。そのストーリーが、一人でも多くの
図書館関係者の未来の一歩を考えるきっかけになればと思います。
さて、来る11月には第17回図書館総合展が横浜で開催されます。本誌並びに
アカデミック・リソース・ガイド株式会社では、32平米で単独出展する予定です。
期間中、私を始め、全スタッフが皆さまをお待ちしています。本誌の特集テーマ
等に関する様々なイベントも実施予定ですので、ぜひブースにお立ち寄りくださ
い。秋の横浜で皆さまにお目にかかるのを楽しみにしています。
なお本号からISBNを付与しています。図書館での図書としての購入にお役立
てください。
編集兼発行人:岡本真
巻 頭 言 [岡本真]…………………………………………………………………………………………… 002
特 別 寄 稿 鎌倉幸子、猪谷千香
      図書館の情報発信に効く!広報のコツ×取材のツボ …………………………… 005
特   集 図書館×カフェ[野原海明]………………………………………………………………… 049
特 集 付 録 図書館カフェの現在[LRG編集部] ………………………………………………………………… 089
      東京カフェムーブメントと図書館カフェ[李明喜] ……………………………………… 127
      「図書館カフェのデザインを考える」おすすめ本[LRG編集部] ………………………………… 136
LRG CONTENTS
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第12号/2015年 夏号
司書名鑑 No.8 是住久美子(京都府立図書館)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
定期購読・バックナンバーのご案内
次号予告
…………………………………………………………… 138
…………………………………………………… 146
……………………………………………………………………………… 150
…………………………………………………………………………………………………………… 159
マガジン航 Pick Up Vol.2 ウィキペディアを通じてわがまちを知る[小林巌生]…………………… 041
いかにリレーションズ(関係)をつくるか[鎌倉幸子]
共感や協力を得るための情報発信へ[猪谷千香]
つながる図書館から、伝える図書館へ[伊達文]
………………………………………… 006
………………………………………… 018
…………………………………………… 037
特別寄稿 鎌倉幸子、猪谷千香
図書館の情報発信に効く!
広報のコツ×取材のツボ
いかにリレーションズ(関係)をつくるか [鎌倉幸子]
共感や協力を得るための情報発信へ [猪谷千香]
つながる図書館から、伝える図書館へ [伊達文]
006 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
猪谷千香(いがや・ちか)
東京生まれ、東京育ち。明治大学大
学院博士前期課程考古学専修修了。
産経新聞で長野支局記者、文化部記
者などを経た後、ドワンゴコンテン
ツでニコニコ動画のニュースを担当。
2013 年 4 月から「ハフィントンポス
ト」日本版でレポーターとして、公共図書館や地方自治な
どについて取材している。著書に『つながる図書館』(ち
くま新書)、『日々、きものに割烹着』(筑摩書房)など。
鎌倉幸子(かまくら・さちこ)
青森県出身。1999年3月、シャンティ
国際ボランティア会に入職。同年4
月より、カンボジアへ赴任し、図書
館事業を担当。2011年1月より広報
課・課長。東日本大震災発生後、岩
手事務所を立ち上げ、津波で被害を
受けた陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町で「いわて
を走る移動図書館プロジェクト」を実施。著書に『走れ!
移動図書館 - 本でよりそう復興支援』(筑摩書房)がある。
「シャンティ国際ボランティア会」で広報を担当している鎌倉です。私はもとも
とシャンティのカンボジア事務所に入りまして、現地の小学校に図書室をつくる
という学校図書館の仕事に携わっていたんです。2007年に帰国して幾つかの部
署を経たのち、2011年に広報課に異動したのですが、同じ年に震災が起きたので、
被災地支援として「走れ!移動図書館」という移動図書館のプロジェクトの立ち上
げをしながら広報の活動を平行して行いました。
さて、広報活動のなかで私が最もこだわっているのは「言葉」です。なぜなら言
葉は、タダだからです。どんな組織でも、ある事業の予算が足りなくなったとき
に、最初に削られがちなのか広報ですが、そういう厳しい状況を一歩抜けていく
ためには、常に「伝わる言葉を、どのように生み出していくか」ということを考え
ることに尽きると思っています。
いかにリレーションズ(関係)をつくるか  鎌倉幸子
広報のト広報のコツ!
図書館の情報発信に効く!
広報のコツ × 取材のツボ
相手の心を動かし、行動を促す言葉とは? 『走れ!移動図書館』の鎌倉幸子さん、『つな
がる図書館』の猪谷千香さんが、広報、取材の基本的な考え方から、ソーシャル時代の情報
発信まで、明日からすぐに使えるノウハウを徹底伝授!
007ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
広報とはそもそも何でしょう。広報と聞くと売りこむこととか、広告を出すこ
ととか、テレビCMに出たり、新聞記事になったりといった、いろいろなイメー
ジがあるかと思いますが、広報というのはPublic Relationsですので、いかにリ
レーションズ(関係)をつくるかということにつきると私は思っています。関係を
持ってもらうような雰囲気をつくっていくところまでやらないと、本来の広報活
動ではないんですね。
「日本パブリックリレーションズ協会」(パブリック・リレーションズ“PR”を
扱う企業“PR会社”などにより構成された公益法人。元経済産業省所管)が、広報
の定義をしています。「企業、行政、学校、NPO等あらゆる組織体が、その組織
を取り巻く多様な人々(現代ではその組織と何らかの関係がある人々をステーク
ホルダーと呼ぶ)との間に、継続的な“信頼関係”を築いていくための考え方と行
動の在り方である」(『広報・PR概論』同協会編、2010年)。
広報の基本は、どのように信頼関係を築いていくか――どういう情報を出し、
どういう情報の受け取り方をされたら、その人に私たちのことを信頼してもらえ
るかということを考え、実行していくことなんですね。
鎌倉幸子さんによるレクチャー風景 写真提供=日本財団CANPANプロジェクト
008 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
Twitterで呟きました、Facebookで投稿しましたというのもいいのですが、そ
れだけで信頼を得て、継続的な関係を築いているのか、そのことを常に頭の片隅
で考えながら、私は広報の仕事をしています。では、どのように信頼関係なり、
継続的な関係なりを築いていくかは、自分軸で考えていいと思います。どういう
相手なら信頼できるか、どういう話し方をされたら安心してコミュニケーション
をとれるか、それを自分軸で考えていくと、発信する時に「この文章でいいのだ
ろうか」ということに気付くと思うので、「自分はどんな人を信頼するのか」を考
えることがまず基本形だと思います。
認定ファンドレイザー(社会の課題を解決するために、活動資金を集める専門
家)になるための資格試験のテキストに、ACTIONフレーム というものがあります。
これは、共感メッセージをつくっていくためのコミュニケーション戦略です。ま
ずACTIONのAがAttention。どのようにして目を引くキャッチコピーをつくるか、
いかに注目を浴びる言葉をつくるか、相手が気にかける「なにか」を仕掛けること
です。
ACTIONのCはChange。もし自分がそこに関わったら、社会や自分はどう変
わるのか――その変化を見せること。Changeを見せていくということです。T
はTrustで、信頼です。その情報を、どうやったら信頼してもらえるか。普段、
ACTIONフレームワーク
コミュニ
ケーション
戦略
Imagination
認定ファンドレイザー必修研修テキスト
(日本ファンドレイジング協会)
Change
Trust
Imagination
Only One
Network
009ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
私たちもネットなどを見ていて、嘘っぽいなと感じることがありますよね。そこ
はやはり自分軸で考えてみると、何かしら理由が見つかるはずです。どうやった
らTrustまでいくかということを考えます。
次がI、Imaginationで、想像させるということです。たとえば募金がこれだけ
集まれば、「100万人」の子どもたちに私たちの活動が届きます、という数字を書
いて見せるのもImaginationかもしれませんが、その活動によって子どもたちの
生活がどう変わるのかをストーリーとして伝えていくことで、そうなったらいい
なあという想像力をかき立てることもできます。これはTrustにも関わってきま
すね。
OはOnly Oneです。多くのプレスリリースがそうだと思いますが、「あなただ
け」「ここだけ」というところに、人は目がいくんですね。Only Oneの強みを表
現します。
NのNetworkは、横の広がりを見せるということです。ひとりでがんばってい
る人よりも、社会全体をみんなで変える人だという、「つながりや広がり」を見せ
ると、人は応援したくなるんですね。ACTIONフレームについては本誌第4号の
「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」に詳しく書いていますので、ぜ
ひ見ていただければと思います。
人が動きたくなる言葉とは?
よく図書館やNPOの方から、ソーシャルメディアについて聞かれます。「図書
館でどうやってFacebookを使ったらいいですか、Twitterはどうすればいいです
か」といった質問です。でもソーシャルメディアというのは、ただFacebookを
やること、たんにTwitterをやることではなく、これも定義があるんです。
ソーシャルブランドクリエーターのオガワカズヒロさんが出された本には、
ソーシャルメディアの定義を「インターネットを通して世界中に広がる“社会的
な会話”」(『ソーシャルメディアマーケティング』ソフトバンククリエイティブ、
2010年)と書いています。
つまり「Facebookを書きました」で終わりだと会話になっていない。コメント
が一気につけば驚くこともあるかもしれないですが、「いいね!」が押されたり、
交流が生まれたりというコミュニケーションが生まれるところまでいかないと、
010 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
実はソーシャルメディアが活用されている状態に達していません。
では、思わず相手がコミュニケーションをとりたくなるようにするには、どう
したらいいのでしょうか。4つの理念が日本パブリックリレーションズ協会から
挙げられています(前掲書、2010年)。まず「事実に基づいた、正しい情報を提供
する」。さきほどのACTIONフレームのTrustにも関係するのですが、事実ではな
いことを言うと、人はどこかで嘘くささを感じて、コミュニケーションを閉ざし
ます。次に「ツーウェイ・コミュニケーションを確保する」。これはパブリックリ
レーションズに関係しますが、どうやったら返答したくなるか、いかに両方向の
コミュニケーションを作り出せるかというところも考えないといけません。3番
目に、「人間的アプローチを基本とする」。人間味あふれるイマジネーションに働
きかけるようなものが基本となって、最後に4番目「公共の利益と一致させる」と
いうことで、社会のためになるかを意識することが挙げられています。犯罪はし
てはいけません。
人が動きたくなる言葉を考える際に、私がこだわっているのは「誰に伝えるの
か」、「伝えたい相手に伝わる言葉を選ぶ」ということです。これはすべてに関係
すると思います。Trust、信頼関係にも関係しますし、リレーションズ、この人
と話したくない、関係したくないという雰囲気になってしまったら、その時点で
広報の定義は成り立ちません。本当に伝わる言葉を選んで、その人の心に染み渡
るようにどうしたらいいかということを私は常に考えています。
「伝わる言葉とは相手の心を動かし、行動をうながす言葉」であるという定義
4つの理念
1. 事実に基づいた正しい情報を提供する
2. ツーウェイ・コミュニケーションを確保する
3.「人間的アプローチ」を基本とする
4.「公共の利益」と一致させる
『広報・PR概論』 (日本パブリックリレーションズ協会編、2010年)
011ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
が『「売り言葉」と「買い言葉」心を動かすコピーの発想』(岡本欣也、NHK 出版、
2013年)という本にがあります。その言葉を聞いた人に、心に染み渡るものが
あってはじめてツーウェイ・コミュニケーションが生まれるわけです。「図書館
に来てください」とただ言っても人は来ない、来ようと思わないなら、その言葉
は伝わっていない、そこに染み渡るものがないということです。
ではこれからベーシックな広報の話をするために、私が関わった3つの事例を
紹介します。こちらからの発信からコミュニケーションが生まれたり、アクショ
ンを頂いたりして、リレーションズが生まれている事例ばかりですので、どうい
う言葉でそれが生まれたのか、一緒に考えていただければと思います。
3日で目標額達成!プロジェクト名に施した匠の技
被災地支援プロジェクトの事例から
まず一つ目の事例は、READYFOR? というクラウドファンディングを使った「陸
前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」です。
このプロジェクトでは、シャンティが取り組んでいた陸前高田市にある仮設住
宅の中に図書室の建設に際して、その図書室に入れる本棚と本を購入するための
資金をクラウドファンディングで募ったのですが、目標額の200万円を3日間で
達成し、しかも応募期日の最後の日まで、募金してくださる方が止まらず、40
日間で最終的に824万5000円という、目標額の4倍近い金額を集めることがで
きました。
この時に工夫したのが、まずプロジェクト名です。「どこで、いまどんな状況で、
このプロジェクトが成功したら、そこがどんな状況になるのか」をひと言で言い
たかった。そこで、陸前高田市の(どこで)、空っぽの図書館を(あ、今空っぽな
んだ)、本でいっぱいにしようプロジェクト(自分が協力したら、本でいっぱいに
なるらしい)と、プロジェクト名に全てのストーリーを入れました。
「空っぽ」が「いっぱい」という対極の言葉をプロジェクト名に入れたのは、『大
改造!!劇的ビフォーアフター』というテレビ番組名をヒントにしました。ご存知
の方も多いかと思いますが、この番組は、ボロボロの家に匠が来て、リフォーム
して見違えるような家になるという番組なのですが、こういうBefore&Afterを見
012 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
るのが好きな人というのは結構、多いんですね。
プロジェクト名がとても大事なのは、たくさんの人に広めてもらうためです。
たとえばこのプロジェクトをTwitterのタイムラインで知って、応援したい、み
んなにも知らせてあげたいと思った人が、ツイートボタンをクリックしたときに、
リツイート画面に引用されたプロジェクト名からその内容が想像できなかったら、
リツイートする人は、そのプロジェクトの説明を打ち込まないといけません。そ
れが時間がかかったり、手間になったら、結局リツイートされないということが
起こり得ます。ですから、応援してあげたいと思ってくれる人のために、ストレ
スフリーな環境をつくることが必要です。
タイトルが上手くいけば、見ただけで内容がわかります。「陸前高田市の空っ
ぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト(吉田晃子)」、カッコ内は挑戦
者で、弊社のSVA岩手事務所図書館事業の担当スタッフですが、リツイート画面
ではその名前のあとにプロジェクトのURLが記載されるので、そのサイトに飛べ
ることが分かります。こうすればぐっと拡散が起こりやすくなりますね。
次に工夫したのが、「話しかけられたら、無視しない」です。ツーウェイ・コ
ミュニケーションなので、コメントが入ったら必ず返事をして反応するというこ
とを心がけました。READYFOR? のサイトには、挑戦中のプロジェクトを応援す
るコメントが書き込めるのですが、そのコメント覧にコメントがついたら必ず返
013ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
答しました。好きな本や思い出のストーリーを書きこんでくださる方もいて、そ
れがどれもすごくいい話で、読んでいて何回も泣きました。私だけ感動するので
はもったいないと思って、その本の版元のTwitterにこういう方がいますよとそ
のURLをお知らせしたら、出版社の人からありがとうと感謝されて、仲良くなっ
たりもしました。
それからこのプロジェクトでは、BUZZ(口コミ)で学んだことがあるんです。
このプロジェクトがクラウドファンディング3日目にして目標額を達成した要因
の一つに、ある漫画家の方が私たちのプロジェクトを知ってTwitterで呟いてく
ださったということがあります。こういうプロジェクトがあるからみんなで応援
しようと呟いてくださって、その方のファンの方々が賛同してくださって、一気
に支援の輪が広がったんですね。インフルエンサーの応援は強いです。
それから思いがけないところですと、クラウドファンディングに挑戦した吉田
に、「吉田さんを、吉田が応援しようぜ!」と、勝手に吉田さんコミュニティーが
盛り上がって、支援者に吉田、吉田、吉田と……。こういうバズり方もあるのか
と思いました。いろんな切り口があるんですね、漫画家という切り口だったり、
吉田という切り口だったり。でも気がついたのは、それだけ拡散されていたから
で、そこまで拡散されていなければ、推測だけで終わっていたかもしれません。
行動を促す流れをコピーに! 企業との連携したプロジェクトの事例から
2番目の事例は、新古本を中心とした流通チェーン「ブックオフ」と提携したプ
ロジェクトです。
シャンティはブックオフと提携して「ボランティア宅配便」を行っていて、これ
はシャンティに寄付して頂いた本をブックオフに運んで、社会貢献としてその査
定金額に10%上乗せした分を、シャンティへの募金にしてもらうという「本で寄
付するプロジェクト」の一環なのですが、競合がたくさんいまして、ブックオフ
と提携している他のNPOが他にも28団体おられるんです。
ブックオフだけでなく、別の新古書店の「バリューブックス」とでも同じような
仕組みがあってここは39 団体もいます。どの団体も「本をください、本をくださ
い」と言っている。トータル数十団体もいるなかから、一歩抜け出すために特異
性をだすにはどうしたらよいか。そう思って生み出したのが「あなたの過去引き
014 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
取ります」というプロジェクトです。
4月末にプレスリリースを打ったのですが、これは6月のジューンブライドに
あわせたんです。たとえば結婚する前に、実家やアパートに置いているものを片
付けて引っ越さないといけないはず。「大切な人生の転機、部屋をすっきり片付
けてからジューンブライドを迎えてください」というような、少し冗談めいた感
じでリリースを書きました。「実家に置いていて、親に開けてほしくない箱があ
りませんか」といった感じです。
シャンティは国際協力の団体なので、募金の目的が「世界の子どもの教育支援」
ということはもちろん伝えているのですが、同時に日本にもたくさん悩みを抱え
ている人はいます。たとえば、部屋を片付けたいといった悩みです。そういう
ちょっとした悩みを解決しながら、世界のためにも役立つという流れになればい
いなと思ったんです。社会問題の解決だけでなく、自分の問題も解決できたら嬉
しいだろうと。それから「あなたの過去を引き取ります」と、思わずドキッとして、
つっこみたくなる言葉を工夫しました。
結果的にいろいろな媒体に載りまして、Yahoo!にも取り上げていただきまし
たし、Facebookやブログで投稿したら、「gooニュース」や「マイナビウエディン
グ」などが勝手に拡散をしてくれました。リリースを出して取り上げられただけ
ではなく、そこでまたBUZZが起こるということもありました。
特にマイナビウエディング「『あなたの過去を引き取ります!』ジューンブライ
事例② あなたの過去引き取ります
・工夫したこと①
社会課題の解決だけじゃなく、自分の問題も
解決できちゃうと嬉しいよね
・工夫したこと②
思わずつっこみたくなる言葉
・工夫したこと③
13.5文字を目指す
015ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
ドの季節を前に、地球に優しいプロジェクトスタート!」とタイトルをつけてく
ださり、内容も校正してくださったので、私はその記事を見ながら、こういう言
い回しだといけるのか、来年使わせてもらおうと参考にしました。どこかのメ
ディアに取り上げられる際、そのメディアで校正、校閲をしてもらえてしまうと
いうこともプラスだと思います。ちなみに私がプレスリリースの書き方を習って
いたときに、「Yahoo!トピックス」や「Googleニュース」で、長い文字数のタイト
ル記事のものはあまり取り上げられないと教わりました。目指すは13.5文字と
言われて、13.5文字にどう入れるかということを常に意識しながらやっています。
思わず参加したくなる仕掛けづくり DIYの出版キャペーンの事例から
最後の事例が、拙著『走れ!移動図書館』の出版キャンペーンです。このキャン
ペーンは、Facebookだけで告知したのですが、目を引くようなイベント名にし
たいと思い、「『走れ!移動図書館』販売イベント、紀伊國屋書店を封鎖せよ」と名
付けました。これはたんに私が織田裕二が好きで、『踊る大捜査線』が大好きで、
『レインボーブリッジを封鎖せよ!』も好きだったというだけで、こういうキャン
ペーン名になりましたが、ここで工夫したことは「封鎖せよ」という、思わずつっ
こみたくなる言葉です。
キャンペーンの内容としては、販売日に新宿の紀伊國屋書店で本を買ってくだ
さった方に、書店の近くの銀座ルノアールという喫茶店の会議室に来ていただき、
そこで待っている私が「ありがとうございます!」と言うだけというものだったの
ですが、それでもみんななんだろう………と興味をもってくだったようで、100
人ぐらいが参加してくれたかと思います。
キャンペーン名の副題に「東京以外の方は地元の書店を使おうキャンペーン」と
したのは、東京に来なくても楽しめるイベントにしたかったからです。東京にあ
る団体だと、報告会やイベントが東京だけになりがちですが、そうすると地方の
人は「シャンティは結局東京しか向いていない」と言って、立ち去ってしまうこと
もなきにしもあらずなので、「東京に行かなくても、地元の本屋さんで『走れ!移
動図書館』を買って、それは参加ということにしましょう」ということでやりま
した。Amazonキャンペーンでもよかったのですが、やはり本屋に行ってほしい、
本があるところに身を置いてほしいということがありましたし、それは図書館に
016 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
も行ってほしいということにもつながります。
ちなみにFacebookの告知では、「本を買った人は、写真を撮って、『確保だ!』
とつぶやいてください」とお願いしたのですが、みなさん、「確保だ」「確保しま
した」「配本遅れた、地方だから」と自由につぶやいてくれて、それを見た周りの
方が、面白そうなことが起こっているぞということで、Facebook上に私がいな
くても自然と会話が生まれていました。嬉しかったのが、本屋さんに20年ぐら
い行っていなかったけど、このイベントがあったから足を運んでみたといった方
もいて、こういうことがあると、本を手に取るムーブメントのようなものを起こ
せたのではと思います。それから最後にデジタル・イン、アナログ・アウトと言
いまして、デジタルでは私もFacebookなどで発信していますけど、やはり最後
は人と直接会う、デジタルで入ってきてもアナログ、リアルにお会いして最後ま
でだと私は思っています。
以上、3つの事例をお話してきましたが、広報の相手は絶対に「他人」です。国
際協力の場でも専門用語を使いがちなんですが、自分がわかっていても、他人に
017ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
はわからないということは色々な場で多々ありますよね。私はたとえ知り合いと
話していても、この人は他人かもしれないと思って、どういう言葉を使えばわ
かってもらえるかということを常に考えています。冒頭でもお話したように、広
報とはパブリックリレーションズ、つまり関係づくりなので、どういう言葉を言
えばわかってもらえて、望ましい関係をつくりあげることができるのか、それを
原点として忘れなければよいのではないかと思います。
018 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
記者、媒体の目にとまるためのノウハウ
・ニュースバリューはどこにあるか
猪谷千香です。私は新聞記者のあと、ネットメディア「ニコニコ動画」のニュー
スサイトを担当する編集に転職をしまして、現在はインターネット新聞「ハフィ
ントンポスト」で記者をしています。
さて、2014年に出版した『つながる図書館』は、個人的な活動として出しました。
同じ発売日に、鎌倉さんも『走れ!移動図書館』を出版されたのですが、お互いが
本を出すことを知らなかったんです。結果的に筑摩書房から図書館の本が2冊同
時に出版されることになって、そのことが図書館に対するムーブメントになった
のはすごくよかったです。2冊同時ということが重要で、1年ずれていたら、ま
た違った結果になったのではないかと思います。
単体ではなく2つ、3つ、4つと事象が増えていくことで、ニュースバリュー
というのは上がるんですね。そこは非常に大事で、1つの図書館、1つのNPOで
やっているイベントでなくても、他の図書館や他の地域と連携することでニュー
スになりやすくなります。「村上春樹の図書館イベントを、大阪と東京でやりま
す」といった小さなつながりでもよいので、同時というだけで価値が上がるわけ
です。
さて、記者がニュースバリュー、つまり「時間やコストをかけてそれを記事に
した結果、人に読んでもらえるか」をどこで判断するかというと、まず事実を
ベースにきちんと勝負できる内容であることが必須です。そこは絶対譲れないラ
インですね。ただ、一概にどことも言えなくて、あるリリースがいいか悪いかは、
メディアによって判断が違ってくると思います。たとえば新聞であれば、一番好
きそうなのは「全国で初めて」といったフレーズで、リリースに「全国で初の事例
です」と書けば、媒体からの問い合わせは来やすくなると思います。一方、ネッ
トメディアですと、たとえばクリックされやすい、キャッチーなものといった視
点が重要だったりします。
このように、メディアによってニュース価値というのはそれぞれ違います。で
すから自分がそのニュースをどこに出したいか、そのメディアを通じてどこの読
共感や協力を得るための情報発信へ  猪谷千香
広報のトボ !取材のツボ!
019ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
者に届けたいかというところまで見通して、そのメディアに適した戦略を打つと
いうのが一番かと思います。
とはいえ基本的に押さえておきたいのは5W1H、「誰が、いつ、どこで、何を
したか、どうしてそれをしたのか、どのようにしたのか」ということを答えられ
るようにしておくということです。リリース自体に盛りこんでおくと、ぱっと見
てわかります。
・ビジュアル要素もカギ!
それから最近のニュースでは、テキストだけではなく、動画や写真も記事の構
成要素として非常に大事です。ですからテキストだけではなくて、ビジュアルも
用意してください。その方がニュースになる確率が上がります。特にネットメ
ディアはビジュアル勝負の面もあって、写真1枚でもニュースになったりします。
ですから、ニュースに取り上げてほしいと思ったら、同時に画像素材を用意
しておくとよいです。TwitterやFacebookを使っているのであれば、embedと
いって動画や写真をニュースサイトやブログに埋め込むことができます。これが
すごく大事です。特にネットメディアは、1分1秒を争っていたりするので、な
猪谷千香さんによるレクチャー 写真提供=日本財団CANPANプロジェクト
020 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
るべく早く素材がほしい。「送ってください」「ここからダウンロードしてくださ
い」という手間なく、リンクを貼って「ここをembedしてください」と言えば、メ
ディア側で全て行うことができます。
とはいえ相反するようですが、メディアとしてはネットで簡単には見られない
ような動画や写真もほしかったりします。「うちのサイトのニュースをクリック
してくれれば、普通では見られないような動画がありますよ」といったニュース
バリューを、メディアとしては高めたいわけです。ですので、そういう目線でプ
レス用に多めに用意していただけると、とてもありがたいです。
また新聞とネットメディアでは、適した写真もおそらく違います。新聞の場合、
ニュース価値をどこで見るかというと段数で見ます。今は変わっているところも
あるかもしれませんが、新聞の1面は15段で構成されている場合が多いのですが、
1段の写真は使いません。最低でも1段半。全国面レベルだったら、できれば縦
写真で使いたい。紙面的にすごく映えるからです。
新聞を開いたとき、まず目につくのが大きな見出しと写真のあるトップ記事で
す。次に目がいく真ん中辺りを「へそ」と呼びます。ここのビジュアルも大切です。
トップ記事というのは事件、事故のような、硬派な大きいニュースを扱いますが、
今日、ここに来てくださっている図書館やNPOの方が記事を書いてほしい場合、
大きな事件、事故よりは、もう少しやわらかい話題が多いと思いますので、もし
・そこにニュース価値はあるか?
(ただし、ニュース価値はメディアによって違う)
・記事を構成するのは、「5W1H」
(Who、What、When、Where、Why、How)
・テキストだけではなく、動画や写真も重要な要素
・取材対象にも優先順位がある
(面白い人、若い人、ビジュアルにインパクト)
・リリースのタイミングも案外、重要
(大事件や選挙にぶつかると扱いが小さくなる)
取材「基本のキ」
021ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
新聞に写真を提供する場合があったら、縦写真も用意しておくと、使われる率が
高くなるかもしれないです。これはちょっとしたコツですね。
・だれに話させるか
それから、メディアとしては「取材対象」がとても大事です。私も取材で図書館
に行きますけれども、館長さんがだいたい出てきて説明をしてくださるのですが、
行政から出向いてきた方だったりすると、間違いは仰らないけど、面白いことも
言わない……そうすると、非常に文章にしにくかったりします。それよりは現場
の若い人が対応してくださると、記事の扱いが変わる場合があります。
ビジュアルインパクトもすごく大事です。最近、私が取材してハフィントンポ
ストで取り上げた、神楽坂にある「かもめブックス」という書店店主の方は30代
の男性なのですけれども、わりと恰幅が良く、葉加瀬太郎さんのようなもじゃも
じゃ頭、眼鏡で蝶ネクタイをされているんです。もうこれだけで映えるんですね。
彼が本棚の前で立っている写真だけで、読者にクリックさせたくなる力がありま
す。
かもめブックスをとりあげたどのニュースを見ても、そのスタイルを崩してい
ないので、彼はプロデュース力が高いのだろうと思います。こういう場合、非常
に雰囲気のいい記事になります。ですから、若い女性でないといけないというわ
けでも、イケメンでないといけないというわけでもなくて、その取材の場に合う
方、きちんと答えていただける方がよいです。
それから、案外見落としがちなのが、リリースのタイミングです。事件や事故
はいつなんどき起きるか予測できませんから仕方ないですが、あらかじめ選挙だ
とか、地方紙だったら高校野球県大会決勝のようなイベントごとがある日は、リ
リースを避けたほうがいいでしょう。トップの記事は絶対これになるし、紙面が
これで埋め尽くされるはずです。リリースを出すときは、その日にニュースにな
りそうな大きなイベントが自分の地域にないか、ざっと調べてみるのも重要です。
022 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
図書館から世論を喚起し、動かすために
今日はせっかくなので悪い話もしてみようと思います。「アンネの日記破損事
件」です。この問題は、私が最初に記事で書きました。どういうふうにこの事件
を見つけたかというと、2014年の2月に静岡県の図書館関係者の方が、「都内の
図書館で『アンネの日記』が破られている事件が頻発しているのに、まったく表に
出てこない」といった感じでツイートをされていました。ネットの方はソースを
求める傾向が強いのですが、このツイートに関して言うと、ソース不明というこ
とで叩かれていました。そんなにたくさん『アンネの日記』が破損されているので
あれば、もう記事になっているはずだと。
私は気になりつつ、これがもし本当だったとしたら取材して記事にすべきだけ
ど、記事にしたら模倣犯が出るのではないかという心配もしました。でも、もし
事実だとしたら大変な社会問題になるし、ましてや『アンネの日記』ですから、下
手をすると国際問題にも発展するだろうと。
なかなか慎重にならざるをえないところがありましたが、同じ月の20日の朝
から、23区内の図書館に片っ端から電話をしました。TRCが運営している図書
館でもかなりの被害があって、TRC社内で情報交換がされていたことがわかりま
した。23区の区立央館図書館長でつくる特別区図書館長会では、実はだいたい
の被害状況を把握していましたが、図書館長会は何もせず、放置していた。それ
もあって静岡県の方の告発ツイートにつながっていくわけです。結局、片っ端
から電話しながら被害冊数を合計したのですけれども、なかには他の館で被害が
出ていることを承知の上で「うちの被害は少ないから、被害届は出していない」と
いった館もありました。図書館間では情報は共有されていたのですが、単一の犯
人だったら別の館でも被害が出るかもしれませんし、早く警察に届けて広範囲な
捜査に情報提供しないといけないのに、本当にのんびりしているんです。
「責任者がいないので何も言えません」という取材拒否のようなところもあり、
非常に対応が悪くて、驚きました。
図書館がこういう取材を受けることに慣れていないということももちろんあっ
たと思うのですが、図書館が何も手をうたないうちに、どういうことが起きたか
というと、サイモン・ウィーゼンタール・センターという、アメリカのユダヤ人
の人権団体が声明を出しました。ユダヤ人の人権に関するニュースを世界レベル
023ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
・日本図書館協会が2月25日、公立図書館における
「アンネの日記」破損事件について(声明)を発表。
アンネの日記事件概要
どのような理由があれ、このような貴重な図書館の蔵書
を破損させることは、市民の読書活動を阻害するもので
あり極めて遺憾なことである。今回の事件について日本
図書館協会は、図書館の所蔵する文化資産が広く市民
に提供されることを願うものとして、非常に残念に思っ
ている。
024 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
でウォッチしていて、ここが動くと「BBC」や「CNN」「ニューヨークタイムズ」など、
海外の主要なメディアが報じていきます。それだけ発言力がある団体です。
声明が出されたのが2014年2月20日で、その翌日には菅官房長官が「極めて
遺憾」という、単なる器物損壊事件としては異例となるコメントを出しています。
日本政府として、そこまで海外からの目を気にしているわけで、これが国際問題
としてどれだけ影響力があったかということがわかります。
ところが日本図書館協会が声明を出したのは2月25日でした。これは遅すぎ
ます。20日の時点で出すべきでした。「こんなことはテロだから許されません、
言論風圧です」ということを、図書館の自由を守るという意味で訴えるべきだっ
たのではないかと思います。
ちなみに、日本図書館協会が出した声明には「市民の読書活動を阻害するもの
であり極めて遺憾なことである」という文言があるのですが、これは国際的な
問題になって騒いでいるところに、そぐわないだろうとも思います。もし悪い
ニュースがあった場合に、どういうことが自分たちに求められているか、対応と
してふさわしいかということを、自分たちの論理ではなくて、周りの状況を見て
決める必要があります。
結局、日本図書館協会が調査も注意喚起もせず、特別区図書館長会も何もし
ない間に、支援の手が広がって、イスラエル大使館から杉並区に300冊も寄贈が
あったり、匿名の方が続々と図書館にアンネ関係の本を下さったりしました。図
書館を応援したいという方もいるわけで、悪いニュースだから封じるというのは
本当によくないことで、むしろ悪いニュースこそ積極的に出していって、自分た
ちはこんなに困っている、こんなことは許されないと、世論を動かすぐらいの発
信力をもっていただけたらと思います。
どうしてそういうことが大事なのかと言うと、NPOであれ図書館であれ、そ
の組織、団体が社会に必要なものであると思ってもらえるかどうか、いまその
境目だからです。昨今メディアというのは、もうマスコミだけではありません。
ネットが普及して、ソーシャルメディアが出てきて、記者をしている私ですら情
報源をたどっていくことが大変なくらい、情報が複雑化しています。ですがそれ
を逆手にとって、マスコミが取り上げなければ、SNSを使うということもできる
はずです。
025ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
SNSをツールにして、共感、協働、対話を生み出す
図書館ですと従来は何か情報発信をしたい場合、掲示板に貼ったり、チラシを
配ったりしてきました。でも、それでは図書館に来てくれる方しか手に取らない
ので、来てくださる層が固定化してしまいます。マスメディアを使うという手も
ありますけれども、必ずしもマスコミが取材をしてくれるとは限らないので、何
をしたらいいかというと、やはりFacebookやTwitterが有効だと思います。
たとえば一例として、国際基督教大学図書館のTwitterアカウントが「『誰も借
りてくれない本フェア』始まりました!」とつぶやいたことがあります。このツ
イートは、私がキャプチャをとった時点で、2万近くRTされていました。大事
なのはやはり写真です。写真に写っている、悲しげな絵文字。一般の方からする
と、大学の、しかも図書館が絵文字を使うという、そのギャップが面白いわけで
す。そうやって2万RTぐらいになると何が起こるかというと、朝日新聞が取材
をしてくれる。そうなると、ますます広い範囲の読者に届いていくという現象が
起こりえます。
他方、ニューヨーク公共図書館が自撮りブースをつくったように、図書館は何
もしなくてもいいという例もあります。これは図書館に来た方が、自分たちで写
真を撮って勝手にFlickrに上げていくというブースで、「ここで自撮りをしてく
ださい、でもFlickrにアップしてください」という場所さえ用意しておけば、来
026 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
館者がどんどんニューヨーク公共図書館の写真をFlickr上に上げていってくれて、
図書館側としては、無料で手間もかからない宣伝になるわけです。ソーシャルメ
ディアの上手い使い方だと思います。
さきほどビジュアルが大事という話をしましたが、これは「ブクログ」という、
読書好きの方が集まっているSNSです。東京外語大学図書館のアカウントは「東
京外国語大学図書館で読める おいしい本フェア」というフェアと連動して、この
SNS上でも展開しました。こういう形でかわいい本棚に、表紙を見せて並んでい
ると、すごく興味を引きやすいと思います。ブクログに取材をして聞いたところ、
図書館のアカウントは160ぐらいあるけれども、ほとんどが大学図書館で、公立
ではあまり使われてないということです。公立の図書館でも新着図書を挙げて
いったり、こんなフェアをやっていますということを、こうしたSNSで上げても
いいと思います。
FacebookやTwitterは、炎上するのが怖いということをよく言われますが、図
書館やNPOが発信しようと思っている情報は、そもそも炎上要素がすごく低い
ので、あまり心配しなくてもよいのではと思います。とはいえ昨今の殺伐とした
ネット界隈で、どこから矢が飛んでくるかわからないのも事実です。
実際、私の母校の明治大学図書館が軽く炎上してしまったことがあります。
ブックツリーといって、クリスマスシーズンに本を積み上げて、ツリーの形に
027ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
ディスプレイしたところを写真に撮ってTwitterに投稿したら、「本を粗末にして
いる」という苦情のメールがきました。Twitterのアカウントにも批判がきて、ど
うしたかというと、公式なアカウントからツイートを削除してお詫びをしたわけ
ですが、お詫びするだけではなく、きちんと説明もされていました。普段、日の
目を見ない本を、目につくディスプレイをすることによって、関心を呼び起こし
たいという意図があったと。広く世界を見ると、ブックツリーというのは海外の
図書館ではそう珍しいことではないので、そこまで神経質にならなくてもよいの
ではと擁護する人が出てきたり、きちんと対話して説明をすることによって、炎
上だけで終わらずに、議論が深まるといったこともありました。もし炎上が怖い、
この発言はどうだろうと思った場合は、どうしてそれをやろうと思ったのかをき
ちんと説明できるようにしておけば、なんら怖いことはないと思います。そして、
何かあったら対話をするということです。
最後に情報発信が必要な理由をあらためて言いますと、今の時代において、共
感や協力を得ることはとても大事だからです。それは物事を動かす力になります。
渋谷に「森の図書室」という深夜まで開いているブックカフェ・バーのような場所
ができたときのことです。実際に植物が生い茂っているわけではなく、森さんと
いう方が運営しているので「森の図書室」という名前なのですが、森という言葉と
028 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
渋谷、図書室という組み合わせの妙が抜群でした。森さんは、この図書室をつく
るための資金調達をクラウドファンディングで募ったんです。お金はそんなに集
まらないだろうと思っていたけれども、クラウドファンディングをすれば広報に
もなるしということで挑戦したところ、当時のクラウドファンディング史上高額
の1,000万円近く集まりました。それくらいインパクトがあったという……広報
の勝利だと思います。それくらい広報は大事なので、ぜひ、明日からできること
を実践していただけたらと思います。
029ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
鎌倉 先日、鳥取県立図書館に行ったのですが、ここは営業のトークが上手です
ね。
猪谷 同館の支援協力課長・小林隆志さんが、非常にパワフルですね。顔も広い
ですし。『つながる図書館』の取材で鳥取県立図書館にうかがった時も、半日ずっ
としゃべってくださいました。よく鳥取県立図書館のことだけで、そんなにも話
すことがあるものだと(笑)。しかもどの話もすごく面白い。自信に満ちあふれて
「うちの図書館はこんなにすごいんですよ、どうですか、すごいでしょう?」とい
う感じが伝わってきて、取材する側としてもテンションが上がりました。情熱で
すね。
鎌倉 小林さんは「半日しゃべり通してみるものだね。『つながる図書館』でばっ
ちり取り上げられたよ」というようなことを仰っていました。この本で取り上げ
られてから、鳥取は取材が入るようになって注目されたそうで、半日しゃべり通
すと何かになるということがわかりました(笑)。
あと、鳥取県立図書館のすごいところは、すべてのメディアを使い倒すという
ことです。たとえばTシャツもそうで、バックプリントにREAD(読む)にかけた
LEAD(リードする)という文字、その下に「本を読もう!鳥取県をリードしよう!
鳥取県立図書館」というメッセージ。スタッフの方々は背中でも語っています。
猪谷 これは、まさに小林さんの背中ですね(P30上)。
鎌倉 はい。歩いているだけで広告塔になる。あのね、背中というのがポイント
なんですよ。フロントだと恥ずかしくなりますが、背中だと自分では見られない
から、どんどん書けます(笑)。
あと、ここは言葉の使い方で上手ですね。「就職支援」の書架を「働く気持ち応
援」としているのとか、寄り添う感じがいいなあと。それから「ゴホン!といえ
ば龍角散」ではないですが、「トラブル解決にはこの1枚」という、トラブルを解
伝わる情報の書き方、届く情報発信とは?
広報のトボ !クロストーク
030 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
エントランスの外にある「トラブル解決にはこの1枚」 コーナー 撮影=鎌倉幸子
READ×LEADの文字がバックプリントされたT シャツを着る鳥取県立図書館の小林隆志さん 撮影=鎌倉幸子
031ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
決するための資料などの情報が載ったチラシコーナーがあります。
猪谷 そう、エントランスを入る前にあるんですよね。だから図書館に入る前に
手にとれるのですが、大量のチラシが一面に置かれていて、気になって足をとめ
ているうちに、いったい私は何をしにここ来たのだろう、本を借りに来たはずな
のにと。
鎌倉 たとえば、なにか病気を抱えている人が、カウンターに来て「こういう病
気に関する本を探していて」と言うのは、居心地が悪いかと思います。でも、エ
ントランス前にこういう情報があれば、自分が困っていることについて書かれた
本がどこにあるのかわかるので、誰かに尋ねることなく本を見つけることができ
ます。ちょっとした気遣いですが、大切なことだと思います。
猪谷 あと、鳥取県立図書館は本のリクエストを受けてから翌日には県内の市
立図書館や、鳥取大学図書館、県立高校の図書室に届くんですよ。それを「翌
日には配送で届きます」と言うのではなくて、小林さんは「鳥取県立図書館は、
Amazonよりも早い」と言うわけです。これ、すごくキャッチーな言い方ですよ
ね。このサービス自体は、他の図書館でもやっていると思いますが、こういうふ
うに言われれば、それが見出しになる。
鎌倉 「鳥取県立図書館はAmazonよりも早い」のように、何かと比較してみる。
「子どもの教育が世界を変える」を信念に掲げる「ルーム・トゥ・リード」という
NGO団体が、世界中で図書館をつくっていますが、「スターバックスの出店ス
ピードをもしのぐ勢いで途上国に図書館を建てている」というふうに言っていま
す。そう言われると、え、すごい!となりますよね。
猪谷 スタバと言えば、鳥取にまだスタバがなかった頃に、鳥取県知事が「スタ
バはないが、スナバ(砂場)はある」と仰っていて、砂場というのは鳥取砂丘のこ
とですけど、これもすごくキャッチーです。ニュースになる、見出しになる言い
方ですね。本当にちょっとした言葉の選び方だったりする部分もあるので、ぜひ
取り入れていただきたいですね。
032 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
鎌倉 言葉を選ぶためには、自分の中にたくさんの引き出しがあったほうが一歩
抜け出せます。伝える仕事にある人は、色々なことにアンテナを張って、日々、
頭のエクササイズ(妄想)をすることが大事だと思います。
危機管理広報の重要性
猪谷 最近見た広報の悪い例で、オリンピックのエンブレムの問題があります。
広報担当者がデザイナーの奥様なのですが、あそこまで炎上してしまうと、第三
者を広報担当者に立てないといけません。でないと、どんな答え方をしても「妻
が猛反論」と書かれてしまいます。そうなると、ニュアンスが違ってきます。「広
報担当者が否定」と、「妻が猛反論」とでは、だいぶ受け取られ方が違いますから。
やはり誰にしゃべらせるかということは、すごく大事です。
鎌倉 やはり危機管理広報というのがすごく鍵になるんですね。たとえばシャン
ティはアフガニスタンに事務所がありますが、アフガニスタンの法人スタッフが
誘拐されたり、事件、事故を起こしてしまうということが、今後絶対に起こらな
いとはいえない。究極の広報は危機管理広報と言われていますが、そのときに一
番大切なのがやはり誰を出すかです。それから何を着るかも重要です。たとえば
男性でしたら、斜めにストライプの入ったレジメンタルストライプのネクタイと
いうのは、ヨーロッパなどでは騎士を表すらしく、戦いますというニュアンスが
あるようで、NGです。ビジュアルを含めてトータルで考える必要があります。
猪谷 さきほど危機管理の話が出ましたが、アルジェリアでテロにあった日揮と
いう企業がありましたね。そこの広報の男性が、すごく落ち着いた方でした。会
社に言われずとも事件が起きてからすぐに会社の近くにホテルをとって、そこか
ら24時間体制で広報をされたそうで、メディアの取材に対して絶対にいやな顔
を見せませんでした。あのときメディアは被害にあった社員の名前を知りたがっ
ていましたが、それを出してしまうとご家族の方に取材攻勢がくるとか、今まさ
に事件に巻き込まれている方々のプライバシーの問題になってしまうので、日揮
は最初、絶対に名前を出さなかった。そういう姿勢を貫かれていました。そして、
その姿勢はメディアから批判はされませんでした。それはやはり彼らの説明がき
033ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
ちんと理にかなっていたということもありますし、きちんとコミュニケーション
をとり、いやな顔をしなかったということが大事なんですね。私、これは男女の
別れ話と一緒だと思っていて、いきなりコミュニケーションを断つと……必ずこ
じれるんですよ。
鎌倉 あああ~そうですねえ……。さきほど猪谷さんのレクチャーでお話にでた
明治大学ブックツリー炎上問題も、「批判されたので、撤去しました」ではなく、
きちんとやった側なりの意図を示して、きちんとやった側なりの意図を示して、
コミュニケーションをとったことがポイントですよね。
私は広報なので、非常時のシミュレーションも行っています。とにかく聞いた
ことをひたすら模造紙に時系列で書いていって、得ていない情報は言わない。誠
実に事実に基づいて伝えつつも、「わかりませんので、もう少し待ってください」
と言うことが大切だと思います。ただ言わないだと、隠していると思われるので、
「午後2時から記者会見をここで開くので、その時に伝えます」というように、い
つ、どこで情報を伝える、という機会をつくる。嘘をついたり、思いこみで言う
のが危ないですね。
猪谷 そういう一番の危機のときに、広報としてきちんと動けるかどうかとい
うことは、おそらく日ごろの鍛錬だと思います。災害と一緒で、平和時の訓練
が大事。平和時にいかにメディアとつき合えているかということが響いてくる。
FacebookもTwitterもそうですし、いかに運営できているかというところだと思
います。
興味の取っ掛かりをつくる
鎌倉 いざプレスリリースを書こうとなったとき、相手は誰か、誰に伝えたいか
ということを、やはり最初に意識する必要があります。「お話会をやりたい」と
なったときに、「お話会をやります」だけでは、誰の心にも響きませんよね。まず
は誰に伝えたいかを考えてみる。たとえば、小さいお子さん連れの2、30代のお
母さんに伝えたいとしましょう。でもそこで終わらずに、さらに考えてみる。そ
の条件にあてはまる人は全員、同じような興味を持って、同じような行動をする
034 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
人だろうか? いや、同じではない可能性が多いにあります。
そこで参考になるのが、雑誌です。雑誌は読んでほしいターゲット層が明確な
ので。悩んだら、伝えたい人が読みそうな雑誌を読み比べて、調べてみるといい
と思います。
たとえば、『すてきな奥さん』(主婦と生活社)という雑誌の2014年2月号の見
出しを見てみましょう。「これは使える!あったかテク&グッズ」「家族と、親せ
きと、年始は美味しい料理を囲もう!み~んなで食べたい”お正月”ごちそうレ
シピ」とあって、「み~んなで」と伸ばすところがおそらくポイントです。そして
一番最後に「達人主婦・あな吉さんと 目標達成シート作りました!」。「あな吉
さん」というのは、私には誰なのかわからないのですが、『すてきな奥さん』の読
者層からしたら、何かしらのカリスマかもしれません。その他にも平仮名、片仮
名、英語のバランスや、どういう記号を使ってるのかということも見て注目して
頂きたいです。
次に、同じくらいの年齢を対象とした『VERY』(光文社)という女性誌。これ
は2014年3月号の見出しで、「この春トライしたい新しいカジュアルはデニム
ONデニム」とデニムにONデニムと英語をカタカナとアルファベットで重ねてく
るわけです。そして働いていた方が多いのか、「関西・美脚投資家」、「関西・美
脚投資家はJETのパンツを選びます♥」と、白ではなく、黒いハートが続きます。
さらにすごいのが「義父母を招く初節句の食卓、いい嫁プレゼンマニュアル」。な
んと食卓でプレゼンまでしないといけない。投資家、プレゼンときたら、アイコ
ンも違ってきます。「VERY読者の寄せ書きに、大先輩・林真理子さんが喝!ママ
だって野心を持っていい!」。『すてきな奥さん』に林真理子さんが出てきたらそ
れだけで炎上するかもしれませんね、「なぜ、あんたに喝を入れられないといけ
ないのか」と(笑)。だからと言って『VERY』にあな吉さん(浅倉ユキ)が出てきたら、
また違う感じになりそうです。『すてきな奥さん』は、平仮名が多い温かい印象で、
『VERY』は英語、片仮名が多いようです。届けたい相手が平仮名系か片仮名系か、
来てほしい人はこういう言葉をしゃべるのではないかということを想像する訓練
をぜひして頂きたいです。
猪谷 ハフィントンポストにも、メールで取材の売り込みをいただくんですけど、
ダメなメール、いいメールがありますね。たとえば、ありがちなダメなメールは
件名がダメです。件名「御サイトさま 記事にしていただきたくプレスリリース
035ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
を送付させていただきます」。この件名だけで絶対に読まないです。クリックし
ないですね。スパムメールかと思いますよ。あなたの銀行口座教えてくさい、何
千万振り込みますみたいな本文が続くんじゃないかと疑います。でも実際、本文
を読んでみると、凄く面白そうなイベントをやっていたりするんですよ。なんで
その内容をタイトルに持ってこない!と。メールの件名一つで開けられるか、開
けられないかが決まる運命の分かれ道なので、そこも手を抜かないで頂きたいで
す。
 最近、けっこう良かったのが、具体的な事例ですけど、件名に「エヴァの綾波
レイがAERAの表紙に」。わかりやすいですよね。クリックします。AERAが「エ
ヴァンゲリオン20年目の論点」という特集をしたんですけど、その特集号の表紙
が綾波レイだと。「AERA」の表紙は、人物の肖像写真を使うっていうのはみんな
知ってるわけじゃないですか。そこにアニメのキャラである綾波レイが登場し
ちゃうのっていう、その新鮮感です。それがクリックの大きなきっかけになるん
ですね。もし硬めの広報さんだったら、「アエラ何号はエヴァンゲリオンの特集
です」だけになっちゃうんですよね。それだと弱い。
 本文も、説明の下にビジュアルが載っていてダウンロードできる状態になって
いたりすると、煩雑なやりとりが必要ないので、記事にしてみようかと検討対象
になりますね。
ターゲット・編集方針をチェック
ファッション雑誌ガイド
http://www.magazine-data.com/
すてきな奥さん
 ・年齢:20代∼30代
 ・系統:家事・生活・節約
 ・紹介:節約術やお料理レシピなど、若い主婦向け情報満載です!
VERY
 ・年齢:30代中心
 ・系統:コンサバ・カジュアル
 ・紹介:私のキレイが家族の幸せ!基盤のある女性は、強く、優しく、美しい。
036 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
ではいよいよワークを始めますが、箇条書きで書いていただけると嬉しいです。
大事なことは、本当に数行でいい。日時や詳しい場所は文章にしなくても、下の
方で箇条書きで書いてあればよくて、いかに読ませるかというテキスト重視で
やってください。あとはうしろにどんどん情報を付加していきます。最初が命で
す。見出しと最初の数行が命だと思います。
鎌倉 一番大事なのは、誰に届けるかということと、タイトルです。猪谷さんが
仰ったように、どうキャッチーかが勝負です。「イベントをやりますので来てく
ださい」では開けずに捨てられるかもしれないので、そのイベントをどうひねる
か、では、脳から汗をかいてください。
本稿は2015年8月24日(月)、日本財団CANPANプロジェクトの主催のもと行われた「日本財団CANPAN・
NPOフォーラム NPOや図書館の情報発信に効く!広報のコツ×取材のツボ~ジャーナリスト猪谷さん&
NPO広報の達人シャンティ鎌倉さんに聞く!~」を本誌用に編集し、収録したものである。
037ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
伝わる情報の書き方、届く情報発信とは?        伊達文
広報のトボ !参加者の声
2015年8月24日、シャンティ国際ボランティア会の鎌倉幸子さんと、ジャー
ナリストの猪谷千香さんによるフォーラム「NPOや図書館の情報発信に効く!広
報のコツ×取材のツボ」を聞いた。聞きながら、そこで語られている内容が、本
誌第10号に収録された梅澤貴典さんによる特別寄稿「ライブラリアンの講演術」
と、同じく第11号に収録された岡本真さんによる特別寄稿「ライブラリーアドボ
カシーの重要性とその実践」と重なっていると感じた。
学術情報リテラシーの名講師である梅澤さんの寄稿は、その巧みな講習の秘訣
を公開したものである。一方、岡本さんの寄稿は、ご自身が主宰する「神奈川の
県立図書館を考える会」を通して行ったアドボカシー活動について書かれたもの
だ。鎌倉さんの広報、猪谷さんの取材、梅澤さんの講演術、岡本さんのアドボカ
シー活動、それぞれのテーマは異なるが、私には、全員が同じことを言っている
と感じられたし、ジャーナリストである猪谷さんは立場が少し違ってくるが、他
のお三方は同じことを実践していると感じた。四名の話に共通する、「図書館を
伝える」という行為について考えてみたい。
大切なのは、相手と一緒に何ができるかという目線
具体的にどこが同じかというと、まず自分が言いたいことを言いっぱなしにす
ることが目的ではなく、相手との関係性をつくっている点である。たとえば梅澤
さんは、図書館の利用について学生たちに話をする際、本の破損を予防するため
に、単に禁止を告げるのではなく、本の魅力を感じてもらえるように導くことで、
利用者自らが資料に敬意をもち、破損しなくなるように働きかけることを薦める。
その他にも、学生たちが自分の授業に耳を傾け集中し 、内容を一回で理解でき
るように、最初から過不足なく情報を伝えるという工夫もしていた。
誰でも、大喜びで誰かの邪魔がしたいわけではない。互いの活動を妨げてしま
うような状況をはじめから出現させないことで、一見逆の立場の人間でも、円満
な関係をつくることができるという好例だ。
038 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
岡本さんも、自分たちの活動をメディアに取り上げてもらえるように、普段か
らメディアと関係を構築することや(メディアリレーション)、行政と敵対せずに
対話の場を設けることなどに努めている。
ここには、相手と一緒に何ができるか、という目線がある。共によりよい未来
を作るために、相手と協力しあうことを考えているし、そのために、相手が動き
やすくなるように行動している。注意し、こちらのルールに従ってもらうよりも、
そのルールが自分たちにとって必要だと認識してもらう方がお互い気持ちがよい
上に、効果としても有効だろう。「神奈川の県立図書館を考える会」が、県側を責
めるより、互いを認めあい、提言をしてきたことや、猪谷さんからお話のあった、
メディアに取り上げられやすいプレスリリースのノウハウも同様である。自分が
言いたいことを言いっぱなしにするのではなく、相手が動きやすくなる情報を用
意すること。そこを押さえることで、一緒によい案やよい記事をつくりやすくな
るのだ。
自分たちの論理からでは、伝わらない
次に共通していたのは、相手に伝わるように、伝えようとしている点である。
相手の目線への意識と言ってもいいだろう。
猪谷さんは「アンネの日記破損事件」に際しての日本図書館協会の対応にふれつ
つ、「どういうことが自分たちに求められているか、対応としてふさわしいかと
いうことを、自分たちの論理ではなくて、周りの状況を見て決める必要がありま
す」というお話をしていたが、たとえば図書館側の人には、本や図書館の必要性
は言わなくてもわかる、広く世の中に共有されているべきだという、空気があり
はしないだろうか。そこでは、相手の論理よりも自分たちの論理が前提になって
いる。
岡本さんは、「神奈川県の図書館集約問題」にふれて、「図書館関係者だけが集
まって『図書館は大切だ』と言ったところで、『それはあなたがたの職場が図書館
だから、そう言うんだろう』と受けとられ、白けられてしまうだけだ」と書かれて
いる。そして「ではどうやって議員を動かすか。それは議員に『これは問題だ』と
認識してもらうしかないのである」と述べている。
同じように考えると、「どうやって図書館に価値を感じない人に図書館に来て
039ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
もらうか?それは、図書館に価値を感じない人に『図書館は必要だ』と認識しても
らうしかない」ということになる。相手の目線に立つことが必要なのだ。
だからこそ鎌倉さん、猪谷さんともに、誰に伝えたいかを考え、その相手に向
けて伝え方を考えることの重要性を話されていた。梅澤さんも、伝える相手がど
ういう人間かを考え、たとえ話を駆使するなどして、相手に伝わる話をされてい
る。岡本さんも、行政に意見を伝えたいときは、ホチキスで留めたパワーポイン
ト資料ではなく、文書を作成するというふうに、行政側の流儀にのっとった伝え
方を実践されている。
ここまでは梅澤さん、岡本さんの話と重ねて聞いていたのだが、当日、意外
だったことが2つある。1つ目は「自分軸で考えていい」という鎌倉さんの言葉
だ。これは、広報の相手は他人だという鎌倉さんの言葉と矛盾しない。「自分だっ
たら」は文字通りの「自分は」ではなく、「自分が相手だったら」ということであり、
猪谷さんの言う「自分たちの論理ではなく」と同じことなのだ。
取材する側である猪谷さんの目線は取材される側にとって貴重だが、自分軸で
徹底的に考えることで出せる答えもある。「他人はどういう内容を信頼するか」と
いう仮定は優れているが、自分が他人ではない以上、推測が入る。それがときに
は、「信頼してほしい」という甘えや願望を生むかもしれない。しかし自分の目線
は、ごまかしがきかない。「自分はこの内容を信頼するか」は、誠実に考えれば答
えが出ることだからである。
この日、有り難かったのは、プレスリリースを出す側、受ける側である鎌倉さ
ん、猪谷さん両方の話が聞けたことである。同じコインを両面から見たことで、
自分の目線が相手の目線になりうることがわかった。広報にとっての「記者はク
リックしてくれるか?」は、「自分が記者だったら、クリックするか?」であり、「記
者はどうしたら取材に来てくれるか?」は、「自分が記者だったら、どういうとこ
ろに取材に行きたいか?」なのだ。
両輪としての広報と活動
もうひとつ意外だったことは、イベント後半、クロストークの中で「情熱」とい
う言葉が出てきたことである。面白い図書館という話題になったとき、『つなが
る図書館』にも登場する鳥取県立図書館支援協力課課長、小林隆志さんのトーク
040 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
広報のコツ × 取材のツボ
がいかに自信と情熱にあふれ、鳥取県立図書館の魅力を伝えているかという話が
出た。役に立つ知識やテクニックをずらりと教わってきたあとで、一瞬肩すかし
をくらったように感じたが、実はこれも、鎌倉さん、梅澤さん、岡本さんが話し
ていることの共通点だ。
梅澤さんは、緊張せず上手く話すためにも、講習の中味を充実させることを薦
めている。そうすれば、伝えたくなるし、自信をもてるからと。つまり、情熱が
生まれるのだ。岡本さんも、自分の存在が、記者にとって「一種のメンターとし
て安心感を持ってもらえるようにお伝えした」と書かれていたが、これも、自分
たちの見識と経験に自信や情熱があってできることである。活動と広報は、当た
り前だが両輪なのだ。
私自身、イベントを主催していて、その内容がどんなにすばらしいかをひたす
ら熱弁して推した結果、「伊達さんが熱烈に書いていたから」という理由で、イベ
ントに参加してもらえたことがある。この記事を読んでいる方も、あまりに熱烈
なPOPや推薦文に心をつかまれて、本などを買ったりしたことはないだろうか。
情熱は、案外伝わる。
自分ではない人間に自分のしていることを伝える努力をし、自分ではない人間
と協力関係を結ぶことが、どれほど大きな成果を生み出すことか。それは、猪谷
さんが最後にお話されたクラウドファンディングによって生まれた「森の図書室」
の事例でもよく分かる。
この日、クロストークのあとで行われたワークはイベントの広報用のものだっ
たが、図書館の広報が目指す先は、図書館自体の価値を伝えること、すなわちラ
イブラリーアドボカシーだろう。つながってきた図書館が「伝わる図書館」になる
ために、本特集が役立つことを願ってやまない。
伊達文(だて・あや)
書店、大学図書館を経て校正者。勤務時間外に、人と人、人と知識や体験が出会う場作りや、調べものを手伝うなどのフ
リーライブラリアン活動を行う。主な企画は、煎茶道など生活型のワークショップ、書店と図書館の違いを両方の勤務経
験者で語り合うなどの対話型の会、女優さんにあえて無機質なもの(例:トリセツ)を読んでもらう朗読会などくすっと笑
えるイベント、文章を書きかえたり音読の仕方を変えたりすることでどれだけ感じ方が変わるか遊ぶなどの芸術体感型イ
ベント。https://note.mu/kotobanoumi
041ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
マガジン航 Pick Up
ぼくがウィキペディアタウンを知ったのは、2012年のことだったと思う。イ
ギリスのモンマス(Monmouth)が世界初のウィキペディアタウンに認定された
というニュースがフェイスブックのタイムラインに流れてきたところ、偶然目に
とまったのだった※1
。
モンマスはイギリスのウェールズ南東に位置する人口9千人弱の小さな田舎町
で、11世紀初頭にノルマン人の軍事拠点として発祥。モンマス城をはじめ千年
近くの歴史を持つ遺産が多く残されているらしい。そんなモンマスで、ある活動
が立ち上がった。文化機関のスタッフや市民によるボランティアグループが名所
旧跡や博物館の所蔵品など街の観光資源になりそうなあれこれについての記事や
写真を次々にウィキペディアにアップロード、そして、ウィキペディアの記事へ
のリンクURLが仕込まれたQRコードを刻印したタイルを町のあちらこちらに掲
出、スマホ等でQRコードを読み込むことで、対応するウィキペディア記事へと
直接誘導できるようにしたというものだった。
この、一風変わった田舎町の観光振興施策だが、ぼくにはこの活動が単なる観
光振興施策ではない、それ以上の価値を秘めていると思えた。そして、日本でも
ウィキペディタウンを開催しようと考えた。これが、日本でのウィキペディアタ
ウンの誕生のきっかけだった。
ウィキペディアを通じてわがまちを知る
1977(昭和52)年 神奈川県生まれ。情報アーキテクト、デザイナー、プロデューサー。大手企業や
自治体等のウェブサイト構築プロジェクトに多数参加。また、地域情報化×ウェブをテーマに活動。
オープンデータにも積極的に取り組んでおり、政府や自治体、公共機関のオープンデータ施策の支援
も行っている。特定非営利活動法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブ副理事長、一般社
団法人オープン&ビッグデータ活用・地域創生推進機構委員
小林巌生(こばやし・いわお)
マガジン航Pick Up Vol.2
042 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
マガジン航 Pick Up
ウィキペディアタウンの企画を練っていた当時、ぼくはウィキペディアの編集
経験をほとんど持っていなかった。そんな状態でウィキペディアを扱うイベント
を開催することが無謀であることはわかっていたので、餅は餅屋ということで
「ウィキペディアの中の人」に相談することにした。
幸い、ぼくの周囲にはそういうことを相談できる仲間がいたので、すぐに東京
ウィキメディアン会の中心人物を紹介してもらうことができた。日
くさかきゅうはち
下九八氏との
出会いだった。
日下九八氏への協力要請は正解で、すぐに、ウィキペディアを編集するなら基
本的な編集ポリシーを知る必要があること、とくに、特筆性といわれる、そのこ
とをウィキペディアに載せる妥当性を客観的に説明できること、ウィキペディア
に記す文章では典拠情報を明確にすること、また、典拠として望ましいものはな
にかなど、いくつかの重要なポイントを指摘されることとなった。一見煩わしく
も思えるようなルールだが、そのルールからはずれると、せっかく書いた記事で
あっても他のユーザーに修正される(修正されること自体は望ましいことだが)、
または、削除すらされることもあるというから大変だ。
改めて思い返してみれば、これまでもウィキペディア上でのトラブルというの
はニュースとして見聞きすることはあった。そんな事態も外から傍観しているぶ
んにはウェブらしい話のネタでしかなかったが、いざ、自分がウィキペディアを
編集する立場になった場合には遠慮したいところだ。そして、自分が企画したイ
ベントに参加してくれた人にはなるべくポジティブな印象を持ち帰ってもらいた
い。そのためには、このウィキペディアのポリシーを知ることが極めて重要であ
るということだ。
ウィキペディアの「誰でも編集に参加できるウェブの百科事典」という触れ込み
はウソではないが、ウィキペディアがここまで維持発展してきた背景にはそれな
りに厳格なルールが存在し、クオリティコントロールがあったということがわ
ウィキペディアのルールを知る
043ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
マガジン航 Pick Up
かったわけだが、一方で、ウィキペディアのコミュニティは、あらたに記事を書
いてくれるユーザーを求めているという事実もある。ぼくも会場で聞いていたの
だが、東大本郷キャンパスで開催された「Wikimedia Conference Japan2013」で
ウィキメディア財団のジェイ・ウォルシュ氏は、キーノートの中でそうした状況
についてデータを基に説明をしていた※2
。
ウィキペディアにちょうど良い項目があったので、ウィキペディア自身から引
用してみよう。
「1日当たりの記事新設数は日本語版設置後順調に伸び続けたが、2007年3
月の469件をピークに減少傾向にあり、2008年5月の1日当たりの記事新設
数はピーク時と比較して49%減の240件にとどまった。2009年1月に一時
300件台を回復したが再び減少に転じ、2008年5月以降は一部240件台もあ
るものの、概ね200件台後半で推移していたが、2010年5月以降は再び減少
傾向に転じ、2011年5月以降はおおむね150件前後で推移している。2012
年8月にはピーク時以降で最小となる131件を記録した。2013年4月現在の
日本語版の記事新設数は143件であり、内部リンク数上位10言語版(英語版、
ドイツ語版、日本語版、スペイン語版、フランス語版、ポーランド語版、イ
タリア語版、ロシア語版、ポルトガル語版、オランダ語版)の中で内部リン
ク数ではドイツ語版に次ぐ! 3位につけているものの、記事新設数では10位
である)出典:「ウィキペディア日本語版」(2015/03/02時点)
典拠を見ると、主に、「ウィキペディア 多言語統計」のデータの解釈であるこ
とがわかるが、たしかに、記事新設数はピーク時よりは低い水準で推移している。
ウィキペディアの価値について多少乱暴な言い方をさせてもらうと、それは、圧
倒的な項目数とピアレビューによる信頼性であると言える。その価値を高めてい
くためにはユーザーの獲得、それも、単なるユーザー利用者ではなく、項目を新
設してくれて、また、間違いを正してくれる、編集者としてのユーザーの獲得が
不可欠なのである。
ウィキペディアタウンの仕掛けでは、まちに暮らす一般の人々を対象とするが、
その多くはウィキペディアを編集することについてはまったくの素人だ。素人ゆ
044 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号
マガジン航 Pick Up
えに前述のような基本的なルールを十分に理解しないまま投稿してくるケースも
でてくるかもしれない。しかし、ウィキペディアタウンはウィキペディアに対し、
コミュニティの裾野を広げ、コンテンツの拡充という面でメリットを提供できる。
さらに、詳しくは後述するが、まちの既存のコミュニティとの連携により見いだ
される新たな価値も提供することができる。
コミュニティのガバナンスという視点からは、コミュニティの拡大とクオリ
ティコントロールの両立という難しい課題もあるだろう。ウィキペディアタウン
の活動をポジティブなものにするために、活動に賛同してくれている「中の人」に
は、企画時からいろいろとトラブル予防的観点でのアドバイスももらっているし、
トラブルに発展しそうな場合にはいわゆる調停役も担ってもらうこともある。
新たに参加するメンバーはこれから書こうとする記事の質を高める努力は惜し
むべきではないとは思うが、萎縮して書き込むことを止める必要もない。
従来からのコミュニティメンバーとウィキペディアタウンをきっかけに新たに
入ってくるメンバーとの関わりの中で、さらにウィキペディアを発展させて行く
良い方法を模索することもぼくらに課された課題の1つなのかもしれない。
ウィキペディアタウンには実に多様な価値があると思うが、ここでは、学びの
機会としての価値に注目してみよう。
ウィキペディアタウンは図書館や博物館といった文化機関、または、まちを舞
台としたインフォーマルな学びのプログラムとして成立している。そして、一言
で「学び」と言っても大きく2つの側面があると思っている。
まず、核となるのはウィキペディアタウンが対象とするテーマについての学び
ということになる。ウィキペディアタウンでは調査対象を地域の歴史的、文化的、
ウィキペディアタウンの価値
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『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』第12号(2015年9月)

  • 1. ライブラリー・リソース・ガイド 第12号/2015年 夏号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 Library Resource Guide 特集 図書館×カフェ 野原海明 司書名鑑 No.8 是住久美子(京都府立図書館) マガジン航 Pick Up Vol.2 ウィキペディアを通じてわがまちを知る[小林巌生] 特別寄稿 図書館の情報発信に効く! 広報のコツ×取材のツボ 鎌倉幸子、猪谷千香
  • 2. LRG Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 第12号/2015年 夏号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 特別寄稿 図書館の情報発信に効く! 広報のコツ×取材のツボ 鎌倉幸子、猪谷千香 マガジン航 Pick Up Vol.2 ウィキペディアを通じてわがまちを知る[小林巌生] 司書名鑑 No.8 是住久美子(京都府立図書館) 特集 図書館×カフェ 野原海明
  • 3. 002 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 巻頭言 今回は第12号です。年4回発行の本誌ですから、今回の第12号で本誌創刊3 周年を迎えます。読者の皆さま、そして本誌を所蔵していただいている図書館の 方々のこれまでのご支援に心から御礼申し上げます。 さて、第12号は、次のような構成になっています。 ・特別寄稿「図書館の情報発信に効く! 広報のコツ×取材のツボ」  (鎌倉幸子・猪谷千香) ・特集「図書館×カフェ」(野原海明) ・マガジン航Pick Up Vol.2「ウィキペディアを通じてわがまちを知る」(小林巌生) ・司書名鑑No.8「是住久美子」(京都府立図書館)  特別寄稿は、2015年8月24日(月)に東京で開催された「NPOや図書館の情報 発信に効く!広報のコツ×取材のツボ」(日本財団CANPAN・NPOフォーラム) を誌上で再現したものです。図書館という文脈においては広報と取材においてそ れぞれ当代一と言える猪谷さん、鎌倉さんの言葉はまなびが多いでしょう。ぜひ、 日常の業務にお役立ていただければと思います。 そして、特集「図書館×カフェ」は編集部が総力をあげて取り組みました。武雄 市図書館が館内でスターバックスの営業を始めたことで、図書館におけるカフェ はかつてない注目を集めています。しかし、「図書館×カフェ」はなにも武雄市図 書館が嚆矢ではありません。市井のカフェに比べても際立った存在感を放つカ フェが、図書館の文化のもとで育っています。ぜひ、図書館におけるカフェ文化 の実情をぜひ感じ取っていただければと思います。なお、特集にあたっては、日 本全国の図書館並びにカフェにご協力いただきました。心から御礼申し上げます。 さて、「図書館×カフェ」という特集を組んでおきながらではありますが、一つ だけ強調しておきたいことがあります。あくまでカフェは図書館の十分条件であ り、必ずしも必要条件ではありません。畏友である新出さん(白河市立図書館)の 言葉ですが、「『動向』はすぐ陳腐化する」のです。もちろん、陳腐化するからと いって「動向」を追わなくていいわけでありません。図書館の基本中の基本の役割 は、あくまでも資料の収集・分類・提供・保存にあると私は考えます。この役割 12号 巻頭言
  • 4. 003ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 巻頭言 を果たし続けてこそ、そこに添えられたカフェという存在が光を放つはずです。 本特集を起点にカフェのような空間や機能が図書館に備わっていくことはもちろ ん願っていますが、カフェがある=よい図書館ではないことも、同時に心にとめ ていただければ幸いです。 なお、今回の特集では、本誌発行元であるアカデミック・リソース・ガイド株 式会社のパートナースタッフである野原海明が著者デビューしています。司書で あり、小説家であり、ときどき歌手であり、そして図書館のプランナーである彼 女の文章にもご注目いただけますと幸いです。 前号から始まったマガジン航からの採録は、小林巌生さんによる「ウィキペ ディアを通じてわがまちを知る」です。このエッセイの初出は、実はアカデミッ ク・リソース・ガイド株式会社の原点とも言えるメールマガジン ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)に掲載されたものです。それがマガジン航の編集人で ある仲俣暁生さんの目にとまり、マガジン航に転載されました。 司書名鑑では、「オープンデータ×図書館」といえばこの方という是住久美子さ ん(京都府立図書館)にご登場いただきました。彼女とは長いつきあいですが、突 如、オープンデータに目覚めて活動を始めたと思うやいなや、ものの数年でこの 分野の第一人者の一人となりました。そんな彼女が、どのような道をたどってい まに至ったのかがつぶさに語られています。そのストーリーが、一人でも多くの 図書館関係者の未来の一歩を考えるきっかけになればと思います。 さて、来る11月には第17回図書館総合展が横浜で開催されます。本誌並びに アカデミック・リソース・ガイド株式会社では、32平米で単独出展する予定です。 期間中、私を始め、全スタッフが皆さまをお待ちしています。本誌の特集テーマ 等に関する様々なイベントも実施予定ですので、ぜひブースにお立ち寄りくださ い。秋の横浜で皆さまにお目にかかるのを楽しみにしています。 なお本号からISBNを付与しています。図書館での図書としての購入にお役立 てください。 編集兼発行人:岡本真
  • 5. 巻 頭 言 [岡本真]…………………………………………………………………………………………… 002 特 別 寄 稿 鎌倉幸子、猪谷千香       図書館の情報発信に効く!広報のコツ×取材のツボ …………………………… 005 特   集 図書館×カフェ[野原海明]………………………………………………………………… 049 特 集 付 録 図書館カフェの現在[LRG編集部] ………………………………………………………………… 089       東京カフェムーブメントと図書館カフェ[李明喜] ……………………………………… 127       「図書館カフェのデザインを考える」おすすめ本[LRG編集部] ………………………………… 136 LRG CONTENTS Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 第12号/2015年 夏号 司書名鑑 No.8 是住久美子(京都府立図書館) アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告 定期購読・バックナンバーのご案内 次号予告 …………………………………………………………… 138 …………………………………………………… 146 ……………………………………………………………………………… 150 …………………………………………………………………………………………………………… 159 マガジン航 Pick Up Vol.2 ウィキペディアを通じてわがまちを知る[小林巌生]…………………… 041 いかにリレーションズ(関係)をつくるか[鎌倉幸子] 共感や協力を得るための情報発信へ[猪谷千香] つながる図書館から、伝える図書館へ[伊達文] ………………………………………… 006 ………………………………………… 018 …………………………………………… 037
  • 7. 006 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 猪谷千香(いがや・ちか) 東京生まれ、東京育ち。明治大学大 学院博士前期課程考古学専修修了。 産経新聞で長野支局記者、文化部記 者などを経た後、ドワンゴコンテン ツでニコニコ動画のニュースを担当。 2013 年 4 月から「ハフィントンポス ト」日本版でレポーターとして、公共図書館や地方自治な どについて取材している。著書に『つながる図書館』(ち くま新書)、『日々、きものに割烹着』(筑摩書房)など。 鎌倉幸子(かまくら・さちこ) 青森県出身。1999年3月、シャンティ 国際ボランティア会に入職。同年4 月より、カンボジアへ赴任し、図書 館事業を担当。2011年1月より広報 課・課長。東日本大震災発生後、岩 手事務所を立ち上げ、津波で被害を 受けた陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町で「いわて を走る移動図書館プロジェクト」を実施。著書に『走れ! 移動図書館 - 本でよりそう復興支援』(筑摩書房)がある。 「シャンティ国際ボランティア会」で広報を担当している鎌倉です。私はもとも とシャンティのカンボジア事務所に入りまして、現地の小学校に図書室をつくる という学校図書館の仕事に携わっていたんです。2007年に帰国して幾つかの部 署を経たのち、2011年に広報課に異動したのですが、同じ年に震災が起きたので、 被災地支援として「走れ!移動図書館」という移動図書館のプロジェクトの立ち上 げをしながら広報の活動を平行して行いました。 さて、広報活動のなかで私が最もこだわっているのは「言葉」です。なぜなら言 葉は、タダだからです。どんな組織でも、ある事業の予算が足りなくなったとき に、最初に削られがちなのか広報ですが、そういう厳しい状況を一歩抜けていく ためには、常に「伝わる言葉を、どのように生み出していくか」ということを考え ることに尽きると思っています。 いかにリレーションズ(関係)をつくるか  鎌倉幸子 広報のト広報のコツ! 図書館の情報発信に効く! 広報のコツ × 取材のツボ 相手の心を動かし、行動を促す言葉とは? 『走れ!移動図書館』の鎌倉幸子さん、『つな がる図書館』の猪谷千香さんが、広報、取材の基本的な考え方から、ソーシャル時代の情報 発信まで、明日からすぐに使えるノウハウを徹底伝授!
  • 8. 007ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 広報とはそもそも何でしょう。広報と聞くと売りこむこととか、広告を出すこ ととか、テレビCMに出たり、新聞記事になったりといった、いろいろなイメー ジがあるかと思いますが、広報というのはPublic Relationsですので、いかにリ レーションズ(関係)をつくるかということにつきると私は思っています。関係を 持ってもらうような雰囲気をつくっていくところまでやらないと、本来の広報活 動ではないんですね。 「日本パブリックリレーションズ協会」(パブリック・リレーションズ“PR”を 扱う企業“PR会社”などにより構成された公益法人。元経済産業省所管)が、広報 の定義をしています。「企業、行政、学校、NPO等あらゆる組織体が、その組織 を取り巻く多様な人々(現代ではその組織と何らかの関係がある人々をステーク ホルダーと呼ぶ)との間に、継続的な“信頼関係”を築いていくための考え方と行 動の在り方である」(『広報・PR概論』同協会編、2010年)。 広報の基本は、どのように信頼関係を築いていくか――どういう情報を出し、 どういう情報の受け取り方をされたら、その人に私たちのことを信頼してもらえ るかということを考え、実行していくことなんですね。 鎌倉幸子さんによるレクチャー風景 写真提供=日本財団CANPANプロジェクト
  • 9. 008 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ Twitterで呟きました、Facebookで投稿しましたというのもいいのですが、そ れだけで信頼を得て、継続的な関係を築いているのか、そのことを常に頭の片隅 で考えながら、私は広報の仕事をしています。では、どのように信頼関係なり、 継続的な関係なりを築いていくかは、自分軸で考えていいと思います。どういう 相手なら信頼できるか、どういう話し方をされたら安心してコミュニケーション をとれるか、それを自分軸で考えていくと、発信する時に「この文章でいいのだ ろうか」ということに気付くと思うので、「自分はどんな人を信頼するのか」を考 えることがまず基本形だと思います。 認定ファンドレイザー(社会の課題を解決するために、活動資金を集める専門 家)になるための資格試験のテキストに、ACTIONフレーム というものがあります。 これは、共感メッセージをつくっていくためのコミュニケーション戦略です。ま ずACTIONのAがAttention。どのようにして目を引くキャッチコピーをつくるか、 いかに注目を浴びる言葉をつくるか、相手が気にかける「なにか」を仕掛けること です。 ACTIONのCはChange。もし自分がそこに関わったら、社会や自分はどう変 わるのか――その変化を見せること。Changeを見せていくということです。T はTrustで、信頼です。その情報を、どうやったら信頼してもらえるか。普段、 ACTIONフレームワーク コミュニ ケーション 戦略 Imagination 認定ファンドレイザー必修研修テキスト (日本ファンドレイジング協会) Change Trust Imagination Only One Network
  • 10. 009ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 私たちもネットなどを見ていて、嘘っぽいなと感じることがありますよね。そこ はやはり自分軸で考えてみると、何かしら理由が見つかるはずです。どうやった らTrustまでいくかということを考えます。 次がI、Imaginationで、想像させるということです。たとえば募金がこれだけ 集まれば、「100万人」の子どもたちに私たちの活動が届きます、という数字を書 いて見せるのもImaginationかもしれませんが、その活動によって子どもたちの 生活がどう変わるのかをストーリーとして伝えていくことで、そうなったらいい なあという想像力をかき立てることもできます。これはTrustにも関わってきま すね。 OはOnly Oneです。多くのプレスリリースがそうだと思いますが、「あなただ け」「ここだけ」というところに、人は目がいくんですね。Only Oneの強みを表 現します。 NのNetworkは、横の広がりを見せるということです。ひとりでがんばってい る人よりも、社会全体をみんなで変える人だという、「つながりや広がり」を見せ ると、人は応援したくなるんですね。ACTIONフレームについては本誌第4号の 「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」に詳しく書いていますので、ぜ ひ見ていただければと思います。 人が動きたくなる言葉とは? よく図書館やNPOの方から、ソーシャルメディアについて聞かれます。「図書 館でどうやってFacebookを使ったらいいですか、Twitterはどうすればいいです か」といった質問です。でもソーシャルメディアというのは、ただFacebookを やること、たんにTwitterをやることではなく、これも定義があるんです。 ソーシャルブランドクリエーターのオガワカズヒロさんが出された本には、 ソーシャルメディアの定義を「インターネットを通して世界中に広がる“社会的 な会話”」(『ソーシャルメディアマーケティング』ソフトバンククリエイティブ、 2010年)と書いています。 つまり「Facebookを書きました」で終わりだと会話になっていない。コメント が一気につけば驚くこともあるかもしれないですが、「いいね!」が押されたり、 交流が生まれたりというコミュニケーションが生まれるところまでいかないと、
  • 11. 010 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 実はソーシャルメディアが活用されている状態に達していません。 では、思わず相手がコミュニケーションをとりたくなるようにするには、どう したらいいのでしょうか。4つの理念が日本パブリックリレーションズ協会から 挙げられています(前掲書、2010年)。まず「事実に基づいた、正しい情報を提供 する」。さきほどのACTIONフレームのTrustにも関係するのですが、事実ではな いことを言うと、人はどこかで嘘くささを感じて、コミュニケーションを閉ざし ます。次に「ツーウェイ・コミュニケーションを確保する」。これはパブリックリ レーションズに関係しますが、どうやったら返答したくなるか、いかに両方向の コミュニケーションを作り出せるかというところも考えないといけません。3番 目に、「人間的アプローチを基本とする」。人間味あふれるイマジネーションに働 きかけるようなものが基本となって、最後に4番目「公共の利益と一致させる」と いうことで、社会のためになるかを意識することが挙げられています。犯罪はし てはいけません。 人が動きたくなる言葉を考える際に、私がこだわっているのは「誰に伝えるの か」、「伝えたい相手に伝わる言葉を選ぶ」ということです。これはすべてに関係 すると思います。Trust、信頼関係にも関係しますし、リレーションズ、この人 と話したくない、関係したくないという雰囲気になってしまったら、その時点で 広報の定義は成り立ちません。本当に伝わる言葉を選んで、その人の心に染み渡 るようにどうしたらいいかということを私は常に考えています。 「伝わる言葉とは相手の心を動かし、行動をうながす言葉」であるという定義 4つの理念 1. 事実に基づいた正しい情報を提供する 2. ツーウェイ・コミュニケーションを確保する 3.「人間的アプローチ」を基本とする 4.「公共の利益」と一致させる 『広報・PR概論』 (日本パブリックリレーションズ協会編、2010年)
  • 12. 011ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ が『「売り言葉」と「買い言葉」心を動かすコピーの発想』(岡本欣也、NHK 出版、 2013年)という本にがあります。その言葉を聞いた人に、心に染み渡るものが あってはじめてツーウェイ・コミュニケーションが生まれるわけです。「図書館 に来てください」とただ言っても人は来ない、来ようと思わないなら、その言葉 は伝わっていない、そこに染み渡るものがないということです。 ではこれからベーシックな広報の話をするために、私が関わった3つの事例を 紹介します。こちらからの発信からコミュニケーションが生まれたり、アクショ ンを頂いたりして、リレーションズが生まれている事例ばかりですので、どうい う言葉でそれが生まれたのか、一緒に考えていただければと思います。 3日で目標額達成!プロジェクト名に施した匠の技 被災地支援プロジェクトの事例から まず一つ目の事例は、READYFOR? というクラウドファンディングを使った「陸 前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」です。 このプロジェクトでは、シャンティが取り組んでいた陸前高田市にある仮設住 宅の中に図書室の建設に際して、その図書室に入れる本棚と本を購入するための 資金をクラウドファンディングで募ったのですが、目標額の200万円を3日間で 達成し、しかも応募期日の最後の日まで、募金してくださる方が止まらず、40 日間で最終的に824万5000円という、目標額の4倍近い金額を集めることがで きました。 この時に工夫したのが、まずプロジェクト名です。「どこで、いまどんな状況で、 このプロジェクトが成功したら、そこがどんな状況になるのか」をひと言で言い たかった。そこで、陸前高田市の(どこで)、空っぽの図書館を(あ、今空っぽな んだ)、本でいっぱいにしようプロジェクト(自分が協力したら、本でいっぱいに なるらしい)と、プロジェクト名に全てのストーリーを入れました。 「空っぽ」が「いっぱい」という対極の言葉をプロジェクト名に入れたのは、『大 改造!!劇的ビフォーアフター』というテレビ番組名をヒントにしました。ご存知 の方も多いかと思いますが、この番組は、ボロボロの家に匠が来て、リフォーム して見違えるような家になるという番組なのですが、こういうBefore&Afterを見
  • 13. 012 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ るのが好きな人というのは結構、多いんですね。 プロジェクト名がとても大事なのは、たくさんの人に広めてもらうためです。 たとえばこのプロジェクトをTwitterのタイムラインで知って、応援したい、み んなにも知らせてあげたいと思った人が、ツイートボタンをクリックしたときに、 リツイート画面に引用されたプロジェクト名からその内容が想像できなかったら、 リツイートする人は、そのプロジェクトの説明を打ち込まないといけません。そ れが時間がかかったり、手間になったら、結局リツイートされないということが 起こり得ます。ですから、応援してあげたいと思ってくれる人のために、ストレ スフリーな環境をつくることが必要です。 タイトルが上手くいけば、見ただけで内容がわかります。「陸前高田市の空っ ぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト(吉田晃子)」、カッコ内は挑戦 者で、弊社のSVA岩手事務所図書館事業の担当スタッフですが、リツイート画面 ではその名前のあとにプロジェクトのURLが記載されるので、そのサイトに飛べ ることが分かります。こうすればぐっと拡散が起こりやすくなりますね。 次に工夫したのが、「話しかけられたら、無視しない」です。ツーウェイ・コ ミュニケーションなので、コメントが入ったら必ず返事をして反応するというこ とを心がけました。READYFOR? のサイトには、挑戦中のプロジェクトを応援す るコメントが書き込めるのですが、そのコメント覧にコメントがついたら必ず返
  • 14. 013ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 答しました。好きな本や思い出のストーリーを書きこんでくださる方もいて、そ れがどれもすごくいい話で、読んでいて何回も泣きました。私だけ感動するので はもったいないと思って、その本の版元のTwitterにこういう方がいますよとそ のURLをお知らせしたら、出版社の人からありがとうと感謝されて、仲良くなっ たりもしました。 それからこのプロジェクトでは、BUZZ(口コミ)で学んだことがあるんです。 このプロジェクトがクラウドファンディング3日目にして目標額を達成した要因 の一つに、ある漫画家の方が私たちのプロジェクトを知ってTwitterで呟いてく ださったということがあります。こういうプロジェクトがあるからみんなで応援 しようと呟いてくださって、その方のファンの方々が賛同してくださって、一気 に支援の輪が広がったんですね。インフルエンサーの応援は強いです。 それから思いがけないところですと、クラウドファンディングに挑戦した吉田 に、「吉田さんを、吉田が応援しようぜ!」と、勝手に吉田さんコミュニティーが 盛り上がって、支援者に吉田、吉田、吉田と……。こういうバズり方もあるのか と思いました。いろんな切り口があるんですね、漫画家という切り口だったり、 吉田という切り口だったり。でも気がついたのは、それだけ拡散されていたから で、そこまで拡散されていなければ、推測だけで終わっていたかもしれません。 行動を促す流れをコピーに! 企業との連携したプロジェクトの事例から 2番目の事例は、新古本を中心とした流通チェーン「ブックオフ」と提携したプ ロジェクトです。 シャンティはブックオフと提携して「ボランティア宅配便」を行っていて、これ はシャンティに寄付して頂いた本をブックオフに運んで、社会貢献としてその査 定金額に10%上乗せした分を、シャンティへの募金にしてもらうという「本で寄 付するプロジェクト」の一環なのですが、競合がたくさんいまして、ブックオフ と提携している他のNPOが他にも28団体おられるんです。 ブックオフだけでなく、別の新古書店の「バリューブックス」とでも同じような 仕組みがあってここは39 団体もいます。どの団体も「本をください、本をくださ い」と言っている。トータル数十団体もいるなかから、一歩抜け出すために特異 性をだすにはどうしたらよいか。そう思って生み出したのが「あなたの過去引き
  • 15. 014 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 取ります」というプロジェクトです。 4月末にプレスリリースを打ったのですが、これは6月のジューンブライドに あわせたんです。たとえば結婚する前に、実家やアパートに置いているものを片 付けて引っ越さないといけないはず。「大切な人生の転機、部屋をすっきり片付 けてからジューンブライドを迎えてください」というような、少し冗談めいた感 じでリリースを書きました。「実家に置いていて、親に開けてほしくない箱があ りませんか」といった感じです。 シャンティは国際協力の団体なので、募金の目的が「世界の子どもの教育支援」 ということはもちろん伝えているのですが、同時に日本にもたくさん悩みを抱え ている人はいます。たとえば、部屋を片付けたいといった悩みです。そういう ちょっとした悩みを解決しながら、世界のためにも役立つという流れになればい いなと思ったんです。社会問題の解決だけでなく、自分の問題も解決できたら嬉 しいだろうと。それから「あなたの過去を引き取ります」と、思わずドキッとして、 つっこみたくなる言葉を工夫しました。 結果的にいろいろな媒体に載りまして、Yahoo!にも取り上げていただきまし たし、Facebookやブログで投稿したら、「gooニュース」や「マイナビウエディン グ」などが勝手に拡散をしてくれました。リリースを出して取り上げられただけ ではなく、そこでまたBUZZが起こるということもありました。 特にマイナビウエディング「『あなたの過去を引き取ります!』ジューンブライ 事例② あなたの過去引き取ります ・工夫したこと① 社会課題の解決だけじゃなく、自分の問題も 解決できちゃうと嬉しいよね ・工夫したこと② 思わずつっこみたくなる言葉 ・工夫したこと③ 13.5文字を目指す
  • 16. 015ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ ドの季節を前に、地球に優しいプロジェクトスタート!」とタイトルをつけてく ださり、内容も校正してくださったので、私はその記事を見ながら、こういう言 い回しだといけるのか、来年使わせてもらおうと参考にしました。どこかのメ ディアに取り上げられる際、そのメディアで校正、校閲をしてもらえてしまうと いうこともプラスだと思います。ちなみに私がプレスリリースの書き方を習って いたときに、「Yahoo!トピックス」や「Googleニュース」で、長い文字数のタイト ル記事のものはあまり取り上げられないと教わりました。目指すは13.5文字と 言われて、13.5文字にどう入れるかということを常に意識しながらやっています。 思わず参加したくなる仕掛けづくり DIYの出版キャペーンの事例から 最後の事例が、拙著『走れ!移動図書館』の出版キャンペーンです。このキャン ペーンは、Facebookだけで告知したのですが、目を引くようなイベント名にし たいと思い、「『走れ!移動図書館』販売イベント、紀伊國屋書店を封鎖せよ」と名 付けました。これはたんに私が織田裕二が好きで、『踊る大捜査線』が大好きで、 『レインボーブリッジを封鎖せよ!』も好きだったというだけで、こういうキャン ペーン名になりましたが、ここで工夫したことは「封鎖せよ」という、思わずつっ こみたくなる言葉です。 キャンペーンの内容としては、販売日に新宿の紀伊國屋書店で本を買ってくだ さった方に、書店の近くの銀座ルノアールという喫茶店の会議室に来ていただき、 そこで待っている私が「ありがとうございます!」と言うだけというものだったの ですが、それでもみんななんだろう………と興味をもってくだったようで、100 人ぐらいが参加してくれたかと思います。 キャンペーン名の副題に「東京以外の方は地元の書店を使おうキャンペーン」と したのは、東京に来なくても楽しめるイベントにしたかったからです。東京にあ る団体だと、報告会やイベントが東京だけになりがちですが、そうすると地方の 人は「シャンティは結局東京しか向いていない」と言って、立ち去ってしまうこと もなきにしもあらずなので、「東京に行かなくても、地元の本屋さんで『走れ!移 動図書館』を買って、それは参加ということにしましょう」ということでやりま した。Amazonキャンペーンでもよかったのですが、やはり本屋に行ってほしい、 本があるところに身を置いてほしいということがありましたし、それは図書館に
  • 17. 016 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ も行ってほしいということにもつながります。 ちなみにFacebookの告知では、「本を買った人は、写真を撮って、『確保だ!』 とつぶやいてください」とお願いしたのですが、みなさん、「確保だ」「確保しま した」「配本遅れた、地方だから」と自由につぶやいてくれて、それを見た周りの 方が、面白そうなことが起こっているぞということで、Facebook上に私がいな くても自然と会話が生まれていました。嬉しかったのが、本屋さんに20年ぐら い行っていなかったけど、このイベントがあったから足を運んでみたといった方 もいて、こういうことがあると、本を手に取るムーブメントのようなものを起こ せたのではと思います。それから最後にデジタル・イン、アナログ・アウトと言 いまして、デジタルでは私もFacebookなどで発信していますけど、やはり最後 は人と直接会う、デジタルで入ってきてもアナログ、リアルにお会いして最後ま でだと私は思っています。 以上、3つの事例をお話してきましたが、広報の相手は絶対に「他人」です。国 際協力の場でも専門用語を使いがちなんですが、自分がわかっていても、他人に
  • 18. 017ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ はわからないということは色々な場で多々ありますよね。私はたとえ知り合いと 話していても、この人は他人かもしれないと思って、どういう言葉を使えばわ かってもらえるかということを常に考えています。冒頭でもお話したように、広 報とはパブリックリレーションズ、つまり関係づくりなので、どういう言葉を言 えばわかってもらえて、望ましい関係をつくりあげることができるのか、それを 原点として忘れなければよいのではないかと思います。
  • 19. 018 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 記者、媒体の目にとまるためのノウハウ ・ニュースバリューはどこにあるか 猪谷千香です。私は新聞記者のあと、ネットメディア「ニコニコ動画」のニュー スサイトを担当する編集に転職をしまして、現在はインターネット新聞「ハフィ ントンポスト」で記者をしています。 さて、2014年に出版した『つながる図書館』は、個人的な活動として出しました。 同じ発売日に、鎌倉さんも『走れ!移動図書館』を出版されたのですが、お互いが 本を出すことを知らなかったんです。結果的に筑摩書房から図書館の本が2冊同 時に出版されることになって、そのことが図書館に対するムーブメントになった のはすごくよかったです。2冊同時ということが重要で、1年ずれていたら、ま た違った結果になったのではないかと思います。 単体ではなく2つ、3つ、4つと事象が増えていくことで、ニュースバリュー というのは上がるんですね。そこは非常に大事で、1つの図書館、1つのNPOで やっているイベントでなくても、他の図書館や他の地域と連携することでニュー スになりやすくなります。「村上春樹の図書館イベントを、大阪と東京でやりま す」といった小さなつながりでもよいので、同時というだけで価値が上がるわけ です。 さて、記者がニュースバリュー、つまり「時間やコストをかけてそれを記事に した結果、人に読んでもらえるか」をどこで判断するかというと、まず事実を ベースにきちんと勝負できる内容であることが必須です。そこは絶対譲れないラ インですね。ただ、一概にどことも言えなくて、あるリリースがいいか悪いかは、 メディアによって判断が違ってくると思います。たとえば新聞であれば、一番好 きそうなのは「全国で初めて」といったフレーズで、リリースに「全国で初の事例 です」と書けば、媒体からの問い合わせは来やすくなると思います。一方、ネッ トメディアですと、たとえばクリックされやすい、キャッチーなものといった視 点が重要だったりします。 このように、メディアによってニュース価値というのはそれぞれ違います。で すから自分がそのニュースをどこに出したいか、そのメディアを通じてどこの読 共感や協力を得るための情報発信へ  猪谷千香 広報のトボ !取材のツボ!
  • 20. 019ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 者に届けたいかというところまで見通して、そのメディアに適した戦略を打つと いうのが一番かと思います。 とはいえ基本的に押さえておきたいのは5W1H、「誰が、いつ、どこで、何を したか、どうしてそれをしたのか、どのようにしたのか」ということを答えられ るようにしておくということです。リリース自体に盛りこんでおくと、ぱっと見 てわかります。 ・ビジュアル要素もカギ! それから最近のニュースでは、テキストだけではなく、動画や写真も記事の構 成要素として非常に大事です。ですからテキストだけではなくて、ビジュアルも 用意してください。その方がニュースになる確率が上がります。特にネットメ ディアはビジュアル勝負の面もあって、写真1枚でもニュースになったりします。 ですから、ニュースに取り上げてほしいと思ったら、同時に画像素材を用意 しておくとよいです。TwitterやFacebookを使っているのであれば、embedと いって動画や写真をニュースサイトやブログに埋め込むことができます。これが すごく大事です。特にネットメディアは、1分1秒を争っていたりするので、な 猪谷千香さんによるレクチャー 写真提供=日本財団CANPANプロジェクト
  • 21. 020 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ るべく早く素材がほしい。「送ってください」「ここからダウンロードしてくださ い」という手間なく、リンクを貼って「ここをembedしてください」と言えば、メ ディア側で全て行うことができます。 とはいえ相反するようですが、メディアとしてはネットで簡単には見られない ような動画や写真もほしかったりします。「うちのサイトのニュースをクリック してくれれば、普通では見られないような動画がありますよ」といったニュース バリューを、メディアとしては高めたいわけです。ですので、そういう目線でプ レス用に多めに用意していただけると、とてもありがたいです。 また新聞とネットメディアでは、適した写真もおそらく違います。新聞の場合、 ニュース価値をどこで見るかというと段数で見ます。今は変わっているところも あるかもしれませんが、新聞の1面は15段で構成されている場合が多いのですが、 1段の写真は使いません。最低でも1段半。全国面レベルだったら、できれば縦 写真で使いたい。紙面的にすごく映えるからです。 新聞を開いたとき、まず目につくのが大きな見出しと写真のあるトップ記事で す。次に目がいく真ん中辺りを「へそ」と呼びます。ここのビジュアルも大切です。 トップ記事というのは事件、事故のような、硬派な大きいニュースを扱いますが、 今日、ここに来てくださっている図書館やNPOの方が記事を書いてほしい場合、 大きな事件、事故よりは、もう少しやわらかい話題が多いと思いますので、もし ・そこにニュース価値はあるか? (ただし、ニュース価値はメディアによって違う) ・記事を構成するのは、「5W1H」 (Who、What、When、Where、Why、How) ・テキストだけではなく、動画や写真も重要な要素 ・取材対象にも優先順位がある (面白い人、若い人、ビジュアルにインパクト) ・リリースのタイミングも案外、重要 (大事件や選挙にぶつかると扱いが小さくなる) 取材「基本のキ」
  • 22. 021ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 新聞に写真を提供する場合があったら、縦写真も用意しておくと、使われる率が 高くなるかもしれないです。これはちょっとしたコツですね。 ・だれに話させるか それから、メディアとしては「取材対象」がとても大事です。私も取材で図書館 に行きますけれども、館長さんがだいたい出てきて説明をしてくださるのですが、 行政から出向いてきた方だったりすると、間違いは仰らないけど、面白いことも 言わない……そうすると、非常に文章にしにくかったりします。それよりは現場 の若い人が対応してくださると、記事の扱いが変わる場合があります。 ビジュアルインパクトもすごく大事です。最近、私が取材してハフィントンポ ストで取り上げた、神楽坂にある「かもめブックス」という書店店主の方は30代 の男性なのですけれども、わりと恰幅が良く、葉加瀬太郎さんのようなもじゃも じゃ頭、眼鏡で蝶ネクタイをされているんです。もうこれだけで映えるんですね。 彼が本棚の前で立っている写真だけで、読者にクリックさせたくなる力がありま す。 かもめブックスをとりあげたどのニュースを見ても、そのスタイルを崩してい ないので、彼はプロデュース力が高いのだろうと思います。こういう場合、非常 に雰囲気のいい記事になります。ですから、若い女性でないといけないというわ けでも、イケメンでないといけないというわけでもなくて、その取材の場に合う 方、きちんと答えていただける方がよいです。 それから、案外見落としがちなのが、リリースのタイミングです。事件や事故 はいつなんどき起きるか予測できませんから仕方ないですが、あらかじめ選挙だ とか、地方紙だったら高校野球県大会決勝のようなイベントごとがある日は、リ リースを避けたほうがいいでしょう。トップの記事は絶対これになるし、紙面が これで埋め尽くされるはずです。リリースを出すときは、その日にニュースにな りそうな大きなイベントが自分の地域にないか、ざっと調べてみるのも重要です。
  • 23. 022 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 図書館から世論を喚起し、動かすために 今日はせっかくなので悪い話もしてみようと思います。「アンネの日記破損事 件」です。この問題は、私が最初に記事で書きました。どういうふうにこの事件 を見つけたかというと、2014年の2月に静岡県の図書館関係者の方が、「都内の 図書館で『アンネの日記』が破られている事件が頻発しているのに、まったく表に 出てこない」といった感じでツイートをされていました。ネットの方はソースを 求める傾向が強いのですが、このツイートに関して言うと、ソース不明というこ とで叩かれていました。そんなにたくさん『アンネの日記』が破損されているので あれば、もう記事になっているはずだと。 私は気になりつつ、これがもし本当だったとしたら取材して記事にすべきだけ ど、記事にしたら模倣犯が出るのではないかという心配もしました。でも、もし 事実だとしたら大変な社会問題になるし、ましてや『アンネの日記』ですから、下 手をすると国際問題にも発展するだろうと。 なかなか慎重にならざるをえないところがありましたが、同じ月の20日の朝 から、23区内の図書館に片っ端から電話をしました。TRCが運営している図書 館でもかなりの被害があって、TRC社内で情報交換がされていたことがわかりま した。23区の区立央館図書館長でつくる特別区図書館長会では、実はだいたい の被害状況を把握していましたが、図書館長会は何もせず、放置していた。それ もあって静岡県の方の告発ツイートにつながっていくわけです。結局、片っ端 から電話しながら被害冊数を合計したのですけれども、なかには他の館で被害が 出ていることを承知の上で「うちの被害は少ないから、被害届は出していない」と いった館もありました。図書館間では情報は共有されていたのですが、単一の犯 人だったら別の館でも被害が出るかもしれませんし、早く警察に届けて広範囲な 捜査に情報提供しないといけないのに、本当にのんびりしているんです。 「責任者がいないので何も言えません」という取材拒否のようなところもあり、 非常に対応が悪くて、驚きました。 図書館がこういう取材を受けることに慣れていないということももちろんあっ たと思うのですが、図書館が何も手をうたないうちに、どういうことが起きたか というと、サイモン・ウィーゼンタール・センターという、アメリカのユダヤ人 の人権団体が声明を出しました。ユダヤ人の人権に関するニュースを世界レベル
  • 24. 023ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ ・日本図書館協会が2月25日、公立図書館における 「アンネの日記」破損事件について(声明)を発表。 アンネの日記事件概要 どのような理由があれ、このような貴重な図書館の蔵書 を破損させることは、市民の読書活動を阻害するもので あり極めて遺憾なことである。今回の事件について日本 図書館協会は、図書館の所蔵する文化資産が広く市民 に提供されることを願うものとして、非常に残念に思っ ている。
  • 25. 024 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ でウォッチしていて、ここが動くと「BBC」や「CNN」「ニューヨークタイムズ」など、 海外の主要なメディアが報じていきます。それだけ発言力がある団体です。 声明が出されたのが2014年2月20日で、その翌日には菅官房長官が「極めて 遺憾」という、単なる器物損壊事件としては異例となるコメントを出しています。 日本政府として、そこまで海外からの目を気にしているわけで、これが国際問題 としてどれだけ影響力があったかということがわかります。 ところが日本図書館協会が声明を出したのは2月25日でした。これは遅すぎ ます。20日の時点で出すべきでした。「こんなことはテロだから許されません、 言論風圧です」ということを、図書館の自由を守るという意味で訴えるべきだっ たのではないかと思います。 ちなみに、日本図書館協会が出した声明には「市民の読書活動を阻害するもの であり極めて遺憾なことである」という文言があるのですが、これは国際的な 問題になって騒いでいるところに、そぐわないだろうとも思います。もし悪い ニュースがあった場合に、どういうことが自分たちに求められているか、対応と してふさわしいかということを、自分たちの論理ではなくて、周りの状況を見て 決める必要があります。 結局、日本図書館協会が調査も注意喚起もせず、特別区図書館長会も何もし ない間に、支援の手が広がって、イスラエル大使館から杉並区に300冊も寄贈が あったり、匿名の方が続々と図書館にアンネ関係の本を下さったりしました。図 書館を応援したいという方もいるわけで、悪いニュースだから封じるというのは 本当によくないことで、むしろ悪いニュースこそ積極的に出していって、自分た ちはこんなに困っている、こんなことは許されないと、世論を動かすぐらいの発 信力をもっていただけたらと思います。 どうしてそういうことが大事なのかと言うと、NPOであれ図書館であれ、そ の組織、団体が社会に必要なものであると思ってもらえるかどうか、いまその 境目だからです。昨今メディアというのは、もうマスコミだけではありません。 ネットが普及して、ソーシャルメディアが出てきて、記者をしている私ですら情 報源をたどっていくことが大変なくらい、情報が複雑化しています。ですがそれ を逆手にとって、マスコミが取り上げなければ、SNSを使うということもできる はずです。
  • 26. 025ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ SNSをツールにして、共感、協働、対話を生み出す 図書館ですと従来は何か情報発信をしたい場合、掲示板に貼ったり、チラシを 配ったりしてきました。でも、それでは図書館に来てくれる方しか手に取らない ので、来てくださる層が固定化してしまいます。マスメディアを使うという手も ありますけれども、必ずしもマスコミが取材をしてくれるとは限らないので、何 をしたらいいかというと、やはりFacebookやTwitterが有効だと思います。 たとえば一例として、国際基督教大学図書館のTwitterアカウントが「『誰も借 りてくれない本フェア』始まりました!」とつぶやいたことがあります。このツ イートは、私がキャプチャをとった時点で、2万近くRTされていました。大事 なのはやはり写真です。写真に写っている、悲しげな絵文字。一般の方からする と、大学の、しかも図書館が絵文字を使うという、そのギャップが面白いわけで す。そうやって2万RTぐらいになると何が起こるかというと、朝日新聞が取材 をしてくれる。そうなると、ますます広い範囲の読者に届いていくという現象が 起こりえます。 他方、ニューヨーク公共図書館が自撮りブースをつくったように、図書館は何 もしなくてもいいという例もあります。これは図書館に来た方が、自分たちで写 真を撮って勝手にFlickrに上げていくというブースで、「ここで自撮りをしてく ださい、でもFlickrにアップしてください」という場所さえ用意しておけば、来
  • 27. 026 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 館者がどんどんニューヨーク公共図書館の写真をFlickr上に上げていってくれて、 図書館側としては、無料で手間もかからない宣伝になるわけです。ソーシャルメ ディアの上手い使い方だと思います。 さきほどビジュアルが大事という話をしましたが、これは「ブクログ」という、 読書好きの方が集まっているSNSです。東京外語大学図書館のアカウントは「東 京外国語大学図書館で読める おいしい本フェア」というフェアと連動して、この SNS上でも展開しました。こういう形でかわいい本棚に、表紙を見せて並んでい ると、すごく興味を引きやすいと思います。ブクログに取材をして聞いたところ、 図書館のアカウントは160ぐらいあるけれども、ほとんどが大学図書館で、公立 ではあまり使われてないということです。公立の図書館でも新着図書を挙げて いったり、こんなフェアをやっていますということを、こうしたSNSで上げても いいと思います。 FacebookやTwitterは、炎上するのが怖いということをよく言われますが、図 書館やNPOが発信しようと思っている情報は、そもそも炎上要素がすごく低い ので、あまり心配しなくてもよいのではと思います。とはいえ昨今の殺伐とした ネット界隈で、どこから矢が飛んでくるかわからないのも事実です。 実際、私の母校の明治大学図書館が軽く炎上してしまったことがあります。 ブックツリーといって、クリスマスシーズンに本を積み上げて、ツリーの形に
  • 28. 027ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ ディスプレイしたところを写真に撮ってTwitterに投稿したら、「本を粗末にして いる」という苦情のメールがきました。Twitterのアカウントにも批判がきて、ど うしたかというと、公式なアカウントからツイートを削除してお詫びをしたわけ ですが、お詫びするだけではなく、きちんと説明もされていました。普段、日の 目を見ない本を、目につくディスプレイをすることによって、関心を呼び起こし たいという意図があったと。広く世界を見ると、ブックツリーというのは海外の 図書館ではそう珍しいことではないので、そこまで神経質にならなくてもよいの ではと擁護する人が出てきたり、きちんと対話して説明をすることによって、炎 上だけで終わらずに、議論が深まるといったこともありました。もし炎上が怖い、 この発言はどうだろうと思った場合は、どうしてそれをやろうと思ったのかをき ちんと説明できるようにしておけば、なんら怖いことはないと思います。そして、 何かあったら対話をするということです。 最後に情報発信が必要な理由をあらためて言いますと、今の時代において、共 感や協力を得ることはとても大事だからです。それは物事を動かす力になります。 渋谷に「森の図書室」という深夜まで開いているブックカフェ・バーのような場所 ができたときのことです。実際に植物が生い茂っているわけではなく、森さんと いう方が運営しているので「森の図書室」という名前なのですが、森という言葉と
  • 29. 028 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 渋谷、図書室という組み合わせの妙が抜群でした。森さんは、この図書室をつく るための資金調達をクラウドファンディングで募ったんです。お金はそんなに集 まらないだろうと思っていたけれども、クラウドファンディングをすれば広報に もなるしということで挑戦したところ、当時のクラウドファンディング史上高額 の1,000万円近く集まりました。それくらいインパクトがあったという……広報 の勝利だと思います。それくらい広報は大事なので、ぜひ、明日からできること を実践していただけたらと思います。
  • 30. 029ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 鎌倉 先日、鳥取県立図書館に行ったのですが、ここは営業のトークが上手です ね。 猪谷 同館の支援協力課長・小林隆志さんが、非常にパワフルですね。顔も広い ですし。『つながる図書館』の取材で鳥取県立図書館にうかがった時も、半日ずっ としゃべってくださいました。よく鳥取県立図書館のことだけで、そんなにも話 すことがあるものだと(笑)。しかもどの話もすごく面白い。自信に満ちあふれて 「うちの図書館はこんなにすごいんですよ、どうですか、すごいでしょう?」とい う感じが伝わってきて、取材する側としてもテンションが上がりました。情熱で すね。 鎌倉 小林さんは「半日しゃべり通してみるものだね。『つながる図書館』でばっ ちり取り上げられたよ」というようなことを仰っていました。この本で取り上げ られてから、鳥取は取材が入るようになって注目されたそうで、半日しゃべり通 すと何かになるということがわかりました(笑)。 あと、鳥取県立図書館のすごいところは、すべてのメディアを使い倒すという ことです。たとえばTシャツもそうで、バックプリントにREAD(読む)にかけた LEAD(リードする)という文字、その下に「本を読もう!鳥取県をリードしよう! 鳥取県立図書館」というメッセージ。スタッフの方々は背中でも語っています。 猪谷 これは、まさに小林さんの背中ですね(P30上)。 鎌倉 はい。歩いているだけで広告塔になる。あのね、背中というのがポイント なんですよ。フロントだと恥ずかしくなりますが、背中だと自分では見られない から、どんどん書けます(笑)。 あと、ここは言葉の使い方で上手ですね。「就職支援」の書架を「働く気持ち応 援」としているのとか、寄り添う感じがいいなあと。それから「ゴホン!といえ ば龍角散」ではないですが、「トラブル解決にはこの1枚」という、トラブルを解 伝わる情報の書き方、届く情報発信とは? 広報のトボ !クロストーク
  • 31. 030 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ エントランスの外にある「トラブル解決にはこの1枚」 コーナー 撮影=鎌倉幸子 READ×LEADの文字がバックプリントされたT シャツを着る鳥取県立図書館の小林隆志さん 撮影=鎌倉幸子
  • 32. 031ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 決するための資料などの情報が載ったチラシコーナーがあります。 猪谷 そう、エントランスを入る前にあるんですよね。だから図書館に入る前に 手にとれるのですが、大量のチラシが一面に置かれていて、気になって足をとめ ているうちに、いったい私は何をしにここ来たのだろう、本を借りに来たはずな のにと。 鎌倉 たとえば、なにか病気を抱えている人が、カウンターに来て「こういう病 気に関する本を探していて」と言うのは、居心地が悪いかと思います。でも、エ ントランス前にこういう情報があれば、自分が困っていることについて書かれた 本がどこにあるのかわかるので、誰かに尋ねることなく本を見つけることができ ます。ちょっとした気遣いですが、大切なことだと思います。 猪谷 あと、鳥取県立図書館は本のリクエストを受けてから翌日には県内の市 立図書館や、鳥取大学図書館、県立高校の図書室に届くんですよ。それを「翌 日には配送で届きます」と言うのではなくて、小林さんは「鳥取県立図書館は、 Amazonよりも早い」と言うわけです。これ、すごくキャッチーな言い方ですよ ね。このサービス自体は、他の図書館でもやっていると思いますが、こういうふ うに言われれば、それが見出しになる。 鎌倉 「鳥取県立図書館はAmazonよりも早い」のように、何かと比較してみる。 「子どもの教育が世界を変える」を信念に掲げる「ルーム・トゥ・リード」という NGO団体が、世界中で図書館をつくっていますが、「スターバックスの出店ス ピードをもしのぐ勢いで途上国に図書館を建てている」というふうに言っていま す。そう言われると、え、すごい!となりますよね。 猪谷 スタバと言えば、鳥取にまだスタバがなかった頃に、鳥取県知事が「スタ バはないが、スナバ(砂場)はある」と仰っていて、砂場というのは鳥取砂丘のこ とですけど、これもすごくキャッチーです。ニュースになる、見出しになる言い 方ですね。本当にちょっとした言葉の選び方だったりする部分もあるので、ぜひ 取り入れていただきたいですね。
  • 33. 032 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 鎌倉 言葉を選ぶためには、自分の中にたくさんの引き出しがあったほうが一歩 抜け出せます。伝える仕事にある人は、色々なことにアンテナを張って、日々、 頭のエクササイズ(妄想)をすることが大事だと思います。 危機管理広報の重要性 猪谷 最近見た広報の悪い例で、オリンピックのエンブレムの問題があります。 広報担当者がデザイナーの奥様なのですが、あそこまで炎上してしまうと、第三 者を広報担当者に立てないといけません。でないと、どんな答え方をしても「妻 が猛反論」と書かれてしまいます。そうなると、ニュアンスが違ってきます。「広 報担当者が否定」と、「妻が猛反論」とでは、だいぶ受け取られ方が違いますから。 やはり誰にしゃべらせるかということは、すごく大事です。 鎌倉 やはり危機管理広報というのがすごく鍵になるんですね。たとえばシャン ティはアフガニスタンに事務所がありますが、アフガニスタンの法人スタッフが 誘拐されたり、事件、事故を起こしてしまうということが、今後絶対に起こらな いとはいえない。究極の広報は危機管理広報と言われていますが、そのときに一 番大切なのがやはり誰を出すかです。それから何を着るかも重要です。たとえば 男性でしたら、斜めにストライプの入ったレジメンタルストライプのネクタイと いうのは、ヨーロッパなどでは騎士を表すらしく、戦いますというニュアンスが あるようで、NGです。ビジュアルを含めてトータルで考える必要があります。 猪谷 さきほど危機管理の話が出ましたが、アルジェリアでテロにあった日揮と いう企業がありましたね。そこの広報の男性が、すごく落ち着いた方でした。会 社に言われずとも事件が起きてからすぐに会社の近くにホテルをとって、そこか ら24時間体制で広報をされたそうで、メディアの取材に対して絶対にいやな顔 を見せませんでした。あのときメディアは被害にあった社員の名前を知りたがっ ていましたが、それを出してしまうとご家族の方に取材攻勢がくるとか、今まさ に事件に巻き込まれている方々のプライバシーの問題になってしまうので、日揮 は最初、絶対に名前を出さなかった。そういう姿勢を貫かれていました。そして、 その姿勢はメディアから批判はされませんでした。それはやはり彼らの説明がき
  • 34. 033ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ ちんと理にかなっていたということもありますし、きちんとコミュニケーション をとり、いやな顔をしなかったということが大事なんですね。私、これは男女の 別れ話と一緒だと思っていて、いきなりコミュニケーションを断つと……必ずこ じれるんですよ。 鎌倉 あああ~そうですねえ……。さきほど猪谷さんのレクチャーでお話にでた 明治大学ブックツリー炎上問題も、「批判されたので、撤去しました」ではなく、 きちんとやった側なりの意図を示して、きちんとやった側なりの意図を示して、 コミュニケーションをとったことがポイントですよね。 私は広報なので、非常時のシミュレーションも行っています。とにかく聞いた ことをひたすら模造紙に時系列で書いていって、得ていない情報は言わない。誠 実に事実に基づいて伝えつつも、「わかりませんので、もう少し待ってください」 と言うことが大切だと思います。ただ言わないだと、隠していると思われるので、 「午後2時から記者会見をここで開くので、その時に伝えます」というように、い つ、どこで情報を伝える、という機会をつくる。嘘をついたり、思いこみで言う のが危ないですね。 猪谷 そういう一番の危機のときに、広報としてきちんと動けるかどうかとい うことは、おそらく日ごろの鍛錬だと思います。災害と一緒で、平和時の訓練 が大事。平和時にいかにメディアとつき合えているかということが響いてくる。 FacebookもTwitterもそうですし、いかに運営できているかというところだと思 います。 興味の取っ掛かりをつくる 鎌倉 いざプレスリリースを書こうとなったとき、相手は誰か、誰に伝えたいか ということを、やはり最初に意識する必要があります。「お話会をやりたい」と なったときに、「お話会をやります」だけでは、誰の心にも響きませんよね。まず は誰に伝えたいかを考えてみる。たとえば、小さいお子さん連れの2、30代のお 母さんに伝えたいとしましょう。でもそこで終わらずに、さらに考えてみる。そ の条件にあてはまる人は全員、同じような興味を持って、同じような行動をする
  • 35. 034 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 人だろうか? いや、同じではない可能性が多いにあります。 そこで参考になるのが、雑誌です。雑誌は読んでほしいターゲット層が明確な ので。悩んだら、伝えたい人が読みそうな雑誌を読み比べて、調べてみるといい と思います。 たとえば、『すてきな奥さん』(主婦と生活社)という雑誌の2014年2月号の見 出しを見てみましょう。「これは使える!あったかテク&グッズ」「家族と、親せ きと、年始は美味しい料理を囲もう!み~んなで食べたい”お正月”ごちそうレ シピ」とあって、「み~んなで」と伸ばすところがおそらくポイントです。そして 一番最後に「達人主婦・あな吉さんと 目標達成シート作りました!」。「あな吉 さん」というのは、私には誰なのかわからないのですが、『すてきな奥さん』の読 者層からしたら、何かしらのカリスマかもしれません。その他にも平仮名、片仮 名、英語のバランスや、どういう記号を使ってるのかということも見て注目して 頂きたいです。 次に、同じくらいの年齢を対象とした『VERY』(光文社)という女性誌。これ は2014年3月号の見出しで、「この春トライしたい新しいカジュアルはデニム ONデニム」とデニムにONデニムと英語をカタカナとアルファベットで重ねてく るわけです。そして働いていた方が多いのか、「関西・美脚投資家」、「関西・美 脚投資家はJETのパンツを選びます♥」と、白ではなく、黒いハートが続きます。 さらにすごいのが「義父母を招く初節句の食卓、いい嫁プレゼンマニュアル」。な んと食卓でプレゼンまでしないといけない。投資家、プレゼンときたら、アイコ ンも違ってきます。「VERY読者の寄せ書きに、大先輩・林真理子さんが喝!ママ だって野心を持っていい!」。『すてきな奥さん』に林真理子さんが出てきたらそ れだけで炎上するかもしれませんね、「なぜ、あんたに喝を入れられないといけ ないのか」と(笑)。だからと言って『VERY』にあな吉さん(浅倉ユキ)が出てきたら、 また違う感じになりそうです。『すてきな奥さん』は、平仮名が多い温かい印象で、 『VERY』は英語、片仮名が多いようです。届けたい相手が平仮名系か片仮名系か、 来てほしい人はこういう言葉をしゃべるのではないかということを想像する訓練 をぜひして頂きたいです。 猪谷 ハフィントンポストにも、メールで取材の売り込みをいただくんですけど、 ダメなメール、いいメールがありますね。たとえば、ありがちなダメなメールは 件名がダメです。件名「御サイトさま 記事にしていただきたくプレスリリース
  • 36. 035ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ を送付させていただきます」。この件名だけで絶対に読まないです。クリックし ないですね。スパムメールかと思いますよ。あなたの銀行口座教えてくさい、何 千万振り込みますみたいな本文が続くんじゃないかと疑います。でも実際、本文 を読んでみると、凄く面白そうなイベントをやっていたりするんですよ。なんで その内容をタイトルに持ってこない!と。メールの件名一つで開けられるか、開 けられないかが決まる運命の分かれ道なので、そこも手を抜かないで頂きたいで す。  最近、けっこう良かったのが、具体的な事例ですけど、件名に「エヴァの綾波 レイがAERAの表紙に」。わかりやすいですよね。クリックします。AERAが「エ ヴァンゲリオン20年目の論点」という特集をしたんですけど、その特集号の表紙 が綾波レイだと。「AERA」の表紙は、人物の肖像写真を使うっていうのはみんな 知ってるわけじゃないですか。そこにアニメのキャラである綾波レイが登場し ちゃうのっていう、その新鮮感です。それがクリックの大きなきっかけになるん ですね。もし硬めの広報さんだったら、「アエラ何号はエヴァンゲリオンの特集 です」だけになっちゃうんですよね。それだと弱い。  本文も、説明の下にビジュアルが載っていてダウンロードできる状態になって いたりすると、煩雑なやりとりが必要ないので、記事にしてみようかと検討対象 になりますね。 ターゲット・編集方針をチェック ファッション雑誌ガイド http://www.magazine-data.com/ すてきな奥さん  ・年齢:20代∼30代  ・系統:家事・生活・節約  ・紹介:節約術やお料理レシピなど、若い主婦向け情報満載です! VERY  ・年齢:30代中心  ・系統:コンサバ・カジュアル  ・紹介:私のキレイが家族の幸せ!基盤のある女性は、強く、優しく、美しい。
  • 37. 036 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ ではいよいよワークを始めますが、箇条書きで書いていただけると嬉しいです。 大事なことは、本当に数行でいい。日時や詳しい場所は文章にしなくても、下の 方で箇条書きで書いてあればよくて、いかに読ませるかというテキスト重視で やってください。あとはうしろにどんどん情報を付加していきます。最初が命で す。見出しと最初の数行が命だと思います。 鎌倉 一番大事なのは、誰に届けるかということと、タイトルです。猪谷さんが 仰ったように、どうキャッチーかが勝負です。「イベントをやりますので来てく ださい」では開けずに捨てられるかもしれないので、そのイベントをどうひねる か、では、脳から汗をかいてください。 本稿は2015年8月24日(月)、日本財団CANPANプロジェクトの主催のもと行われた「日本財団CANPAN・ NPOフォーラム NPOや図書館の情報発信に効く!広報のコツ×取材のツボ~ジャーナリスト猪谷さん& NPO広報の達人シャンティ鎌倉さんに聞く!~」を本誌用に編集し、収録したものである。
  • 38. 037ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 伝わる情報の書き方、届く情報発信とは?        伊達文 広報のトボ !参加者の声 2015年8月24日、シャンティ国際ボランティア会の鎌倉幸子さんと、ジャー ナリストの猪谷千香さんによるフォーラム「NPOや図書館の情報発信に効く!広 報のコツ×取材のツボ」を聞いた。聞きながら、そこで語られている内容が、本 誌第10号に収録された梅澤貴典さんによる特別寄稿「ライブラリアンの講演術」 と、同じく第11号に収録された岡本真さんによる特別寄稿「ライブラリーアドボ カシーの重要性とその実践」と重なっていると感じた。 学術情報リテラシーの名講師である梅澤さんの寄稿は、その巧みな講習の秘訣 を公開したものである。一方、岡本さんの寄稿は、ご自身が主宰する「神奈川の 県立図書館を考える会」を通して行ったアドボカシー活動について書かれたもの だ。鎌倉さんの広報、猪谷さんの取材、梅澤さんの講演術、岡本さんのアドボカ シー活動、それぞれのテーマは異なるが、私には、全員が同じことを言っている と感じられたし、ジャーナリストである猪谷さんは立場が少し違ってくるが、他 のお三方は同じことを実践していると感じた。四名の話に共通する、「図書館を 伝える」という行為について考えてみたい。 大切なのは、相手と一緒に何ができるかという目線 具体的にどこが同じかというと、まず自分が言いたいことを言いっぱなしにす ることが目的ではなく、相手との関係性をつくっている点である。たとえば梅澤 さんは、図書館の利用について学生たちに話をする際、本の破損を予防するため に、単に禁止を告げるのではなく、本の魅力を感じてもらえるように導くことで、 利用者自らが資料に敬意をもち、破損しなくなるように働きかけることを薦める。 その他にも、学生たちが自分の授業に耳を傾け集中し 、内容を一回で理解でき るように、最初から過不足なく情報を伝えるという工夫もしていた。 誰でも、大喜びで誰かの邪魔がしたいわけではない。互いの活動を妨げてしま うような状況をはじめから出現させないことで、一見逆の立場の人間でも、円満 な関係をつくることができるという好例だ。
  • 39. 038 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ 岡本さんも、自分たちの活動をメディアに取り上げてもらえるように、普段か らメディアと関係を構築することや(メディアリレーション)、行政と敵対せずに 対話の場を設けることなどに努めている。 ここには、相手と一緒に何ができるか、という目線がある。共によりよい未来 を作るために、相手と協力しあうことを考えているし、そのために、相手が動き やすくなるように行動している。注意し、こちらのルールに従ってもらうよりも、 そのルールが自分たちにとって必要だと認識してもらう方がお互い気持ちがよい 上に、効果としても有効だろう。「神奈川の県立図書館を考える会」が、県側を責 めるより、互いを認めあい、提言をしてきたことや、猪谷さんからお話のあった、 メディアに取り上げられやすいプレスリリースのノウハウも同様である。自分が 言いたいことを言いっぱなしにするのではなく、相手が動きやすくなる情報を用 意すること。そこを押さえることで、一緒によい案やよい記事をつくりやすくな るのだ。 自分たちの論理からでは、伝わらない 次に共通していたのは、相手に伝わるように、伝えようとしている点である。 相手の目線への意識と言ってもいいだろう。 猪谷さんは「アンネの日記破損事件」に際しての日本図書館協会の対応にふれつ つ、「どういうことが自分たちに求められているか、対応としてふさわしいかと いうことを、自分たちの論理ではなくて、周りの状況を見て決める必要がありま す」というお話をしていたが、たとえば図書館側の人には、本や図書館の必要性 は言わなくてもわかる、広く世の中に共有されているべきだという、空気があり はしないだろうか。そこでは、相手の論理よりも自分たちの論理が前提になって いる。 岡本さんは、「神奈川県の図書館集約問題」にふれて、「図書館関係者だけが集 まって『図書館は大切だ』と言ったところで、『それはあなたがたの職場が図書館 だから、そう言うんだろう』と受けとられ、白けられてしまうだけだ」と書かれて いる。そして「ではどうやって議員を動かすか。それは議員に『これは問題だ』と 認識してもらうしかないのである」と述べている。 同じように考えると、「どうやって図書館に価値を感じない人に図書館に来て
  • 40. 039ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ もらうか?それは、図書館に価値を感じない人に『図書館は必要だ』と認識しても らうしかない」ということになる。相手の目線に立つことが必要なのだ。 だからこそ鎌倉さん、猪谷さんともに、誰に伝えたいかを考え、その相手に向 けて伝え方を考えることの重要性を話されていた。梅澤さんも、伝える相手がど ういう人間かを考え、たとえ話を駆使するなどして、相手に伝わる話をされてい る。岡本さんも、行政に意見を伝えたいときは、ホチキスで留めたパワーポイン ト資料ではなく、文書を作成するというふうに、行政側の流儀にのっとった伝え 方を実践されている。 ここまでは梅澤さん、岡本さんの話と重ねて聞いていたのだが、当日、意外 だったことが2つある。1つ目は「自分軸で考えていい」という鎌倉さんの言葉 だ。これは、広報の相手は他人だという鎌倉さんの言葉と矛盾しない。「自分だっ たら」は文字通りの「自分は」ではなく、「自分が相手だったら」ということであり、 猪谷さんの言う「自分たちの論理ではなく」と同じことなのだ。 取材する側である猪谷さんの目線は取材される側にとって貴重だが、自分軸で 徹底的に考えることで出せる答えもある。「他人はどういう内容を信頼するか」と いう仮定は優れているが、自分が他人ではない以上、推測が入る。それがときに は、「信頼してほしい」という甘えや願望を生むかもしれない。しかし自分の目線 は、ごまかしがきかない。「自分はこの内容を信頼するか」は、誠実に考えれば答 えが出ることだからである。 この日、有り難かったのは、プレスリリースを出す側、受ける側である鎌倉さ ん、猪谷さん両方の話が聞けたことである。同じコインを両面から見たことで、 自分の目線が相手の目線になりうることがわかった。広報にとっての「記者はク リックしてくれるか?」は、「自分が記者だったら、クリックするか?」であり、「記 者はどうしたら取材に来てくれるか?」は、「自分が記者だったら、どういうとこ ろに取材に行きたいか?」なのだ。 両輪としての広報と活動 もうひとつ意外だったことは、イベント後半、クロストークの中で「情熱」とい う言葉が出てきたことである。面白い図書館という話題になったとき、『つなが る図書館』にも登場する鳥取県立図書館支援協力課課長、小林隆志さんのトーク
  • 41. 040 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 広報のコツ × 取材のツボ がいかに自信と情熱にあふれ、鳥取県立図書館の魅力を伝えているかという話が 出た。役に立つ知識やテクニックをずらりと教わってきたあとで、一瞬肩すかし をくらったように感じたが、実はこれも、鎌倉さん、梅澤さん、岡本さんが話し ていることの共通点だ。 梅澤さんは、緊張せず上手く話すためにも、講習の中味を充実させることを薦 めている。そうすれば、伝えたくなるし、自信をもてるからと。つまり、情熱が 生まれるのだ。岡本さんも、自分の存在が、記者にとって「一種のメンターとし て安心感を持ってもらえるようにお伝えした」と書かれていたが、これも、自分 たちの見識と経験に自信や情熱があってできることである。活動と広報は、当た り前だが両輪なのだ。 私自身、イベントを主催していて、その内容がどんなにすばらしいかをひたす ら熱弁して推した結果、「伊達さんが熱烈に書いていたから」という理由で、イベ ントに参加してもらえたことがある。この記事を読んでいる方も、あまりに熱烈 なPOPや推薦文に心をつかまれて、本などを買ったりしたことはないだろうか。 情熱は、案外伝わる。 自分ではない人間に自分のしていることを伝える努力をし、自分ではない人間 と協力関係を結ぶことが、どれほど大きな成果を生み出すことか。それは、猪谷 さんが最後にお話されたクラウドファンディングによって生まれた「森の図書室」 の事例でもよく分かる。 この日、クロストークのあとで行われたワークはイベントの広報用のものだっ たが、図書館の広報が目指す先は、図書館自体の価値を伝えること、すなわちラ イブラリーアドボカシーだろう。つながってきた図書館が「伝わる図書館」になる ために、本特集が役立つことを願ってやまない。 伊達文(だて・あや) 書店、大学図書館を経て校正者。勤務時間外に、人と人、人と知識や体験が出会う場作りや、調べものを手伝うなどのフ リーライブラリアン活動を行う。主な企画は、煎茶道など生活型のワークショップ、書店と図書館の違いを両方の勤務経 験者で語り合うなどの対話型の会、女優さんにあえて無機質なもの(例:トリセツ)を読んでもらう朗読会などくすっと笑 えるイベント、文章を書きかえたり音読の仕方を変えたりすることでどれだけ感じ方が変わるか遊ぶなどの芸術体感型イ ベント。https://note.mu/kotobanoumi
  • 42. 041ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 マガジン航 Pick Up ぼくがウィキペディアタウンを知ったのは、2012年のことだったと思う。イ ギリスのモンマス(Monmouth)が世界初のウィキペディアタウンに認定された というニュースがフェイスブックのタイムラインに流れてきたところ、偶然目に とまったのだった※1 。 モンマスはイギリスのウェールズ南東に位置する人口9千人弱の小さな田舎町 で、11世紀初頭にノルマン人の軍事拠点として発祥。モンマス城をはじめ千年 近くの歴史を持つ遺産が多く残されているらしい。そんなモンマスで、ある活動 が立ち上がった。文化機関のスタッフや市民によるボランティアグループが名所 旧跡や博物館の所蔵品など街の観光資源になりそうなあれこれについての記事や 写真を次々にウィキペディアにアップロード、そして、ウィキペディアの記事へ のリンクURLが仕込まれたQRコードを刻印したタイルを町のあちらこちらに掲 出、スマホ等でQRコードを読み込むことで、対応するウィキペディア記事へと 直接誘導できるようにしたというものだった。 この、一風変わった田舎町の観光振興施策だが、ぼくにはこの活動が単なる観 光振興施策ではない、それ以上の価値を秘めていると思えた。そして、日本でも ウィキペディタウンを開催しようと考えた。これが、日本でのウィキペディアタ ウンの誕生のきっかけだった。 ウィキペディアを通じてわがまちを知る 1977(昭和52)年 神奈川県生まれ。情報アーキテクト、デザイナー、プロデューサー。大手企業や 自治体等のウェブサイト構築プロジェクトに多数参加。また、地域情報化×ウェブをテーマに活動。 オープンデータにも積極的に取り組んでおり、政府や自治体、公共機関のオープンデータ施策の支援 も行っている。特定非営利活動法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブ副理事長、一般社 団法人オープン&ビッグデータ活用・地域創生推進機構委員 小林巌生(こばやし・いわお) マガジン航Pick Up Vol.2
  • 43. 042 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 マガジン航 Pick Up ウィキペディアタウンの企画を練っていた当時、ぼくはウィキペディアの編集 経験をほとんど持っていなかった。そんな状態でウィキペディアを扱うイベント を開催することが無謀であることはわかっていたので、餅は餅屋ということで 「ウィキペディアの中の人」に相談することにした。 幸い、ぼくの周囲にはそういうことを相談できる仲間がいたので、すぐに東京 ウィキメディアン会の中心人物を紹介してもらうことができた。日 くさかきゅうはち 下九八氏との 出会いだった。 日下九八氏への協力要請は正解で、すぐに、ウィキペディアを編集するなら基 本的な編集ポリシーを知る必要があること、とくに、特筆性といわれる、そのこ とをウィキペディアに載せる妥当性を客観的に説明できること、ウィキペディア に記す文章では典拠情報を明確にすること、また、典拠として望ましいものはな にかなど、いくつかの重要なポイントを指摘されることとなった。一見煩わしく も思えるようなルールだが、そのルールからはずれると、せっかく書いた記事で あっても他のユーザーに修正される(修正されること自体は望ましいことだが)、 または、削除すらされることもあるというから大変だ。 改めて思い返してみれば、これまでもウィキペディア上でのトラブルというの はニュースとして見聞きすることはあった。そんな事態も外から傍観しているぶ んにはウェブらしい話のネタでしかなかったが、いざ、自分がウィキペディアを 編集する立場になった場合には遠慮したいところだ。そして、自分が企画したイ ベントに参加してくれた人にはなるべくポジティブな印象を持ち帰ってもらいた い。そのためには、このウィキペディアのポリシーを知ることが極めて重要であ るということだ。 ウィキペディアの「誰でも編集に参加できるウェブの百科事典」という触れ込み はウソではないが、ウィキペディアがここまで維持発展してきた背景にはそれな りに厳格なルールが存在し、クオリティコントロールがあったということがわ ウィキペディアのルールを知る
  • 44. 043ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 マガジン航 Pick Up かったわけだが、一方で、ウィキペディアのコミュニティは、あらたに記事を書 いてくれるユーザーを求めているという事実もある。ぼくも会場で聞いていたの だが、東大本郷キャンパスで開催された「Wikimedia Conference Japan2013」で ウィキメディア財団のジェイ・ウォルシュ氏は、キーノートの中でそうした状況 についてデータを基に説明をしていた※2 。 ウィキペディアにちょうど良い項目があったので、ウィキペディア自身から引 用してみよう。 「1日当たりの記事新設数は日本語版設置後順調に伸び続けたが、2007年3 月の469件をピークに減少傾向にあり、2008年5月の1日当たりの記事新設 数はピーク時と比較して49%減の240件にとどまった。2009年1月に一時 300件台を回復したが再び減少に転じ、2008年5月以降は一部240件台もあ るものの、概ね200件台後半で推移していたが、2010年5月以降は再び減少 傾向に転じ、2011年5月以降はおおむね150件前後で推移している。2012 年8月にはピーク時以降で最小となる131件を記録した。2013年4月現在の 日本語版の記事新設数は143件であり、内部リンク数上位10言語版(英語版、 ドイツ語版、日本語版、スペイン語版、フランス語版、ポーランド語版、イ タリア語版、ロシア語版、ポルトガル語版、オランダ語版)の中で内部リン ク数ではドイツ語版に次ぐ! 3位につけているものの、記事新設数では10位 である)出典:「ウィキペディア日本語版」(2015/03/02時点) 典拠を見ると、主に、「ウィキペディア 多言語統計」のデータの解釈であるこ とがわかるが、たしかに、記事新設数はピーク時よりは低い水準で推移している。 ウィキペディアの価値について多少乱暴な言い方をさせてもらうと、それは、圧 倒的な項目数とピアレビューによる信頼性であると言える。その価値を高めてい くためにはユーザーの獲得、それも、単なるユーザー利用者ではなく、項目を新 設してくれて、また、間違いを正してくれる、編集者としてのユーザーの獲得が 不可欠なのである。 ウィキペディアタウンの仕掛けでは、まちに暮らす一般の人々を対象とするが、 その多くはウィキペディアを編集することについてはまったくの素人だ。素人ゆ
  • 45. 044 ライブラリー・リソース・ガイド 2015年 夏号 マガジン航 Pick Up えに前述のような基本的なルールを十分に理解しないまま投稿してくるケースも でてくるかもしれない。しかし、ウィキペディアタウンはウィキペディアに対し、 コミュニティの裾野を広げ、コンテンツの拡充という面でメリットを提供できる。 さらに、詳しくは後述するが、まちの既存のコミュニティとの連携により見いだ される新たな価値も提供することができる。 コミュニティのガバナンスという視点からは、コミュニティの拡大とクオリ ティコントロールの両立という難しい課題もあるだろう。ウィキペディアタウン の活動をポジティブなものにするために、活動に賛同してくれている「中の人」に は、企画時からいろいろとトラブル予防的観点でのアドバイスももらっているし、 トラブルに発展しそうな場合にはいわゆる調停役も担ってもらうこともある。 新たに参加するメンバーはこれから書こうとする記事の質を高める努力は惜し むべきではないとは思うが、萎縮して書き込むことを止める必要もない。 従来からのコミュニティメンバーとウィキペディアタウンをきっかけに新たに 入ってくるメンバーとの関わりの中で、さらにウィキペディアを発展させて行く 良い方法を模索することもぼくらに課された課題の1つなのかもしれない。 ウィキペディアタウンには実に多様な価値があると思うが、ここでは、学びの 機会としての価値に注目してみよう。 ウィキペディアタウンは図書館や博物館といった文化機関、または、まちを舞 台としたインフォーマルな学びのプログラムとして成立している。そして、一言 で「学び」と言っても大きく2つの側面があると思っている。 まず、核となるのはウィキペディアタウンが対象とするテーマについての学び ということになる。ウィキペディアタウンでは調査対象を地域の歴史的、文化的、 ウィキペディアタウンの価値