幸福度世界1位の国 デンマークにおける研究者のワークライフバランス3. 研究 6.0 hr
通勤 1.0 hr
睡眠 8.0 hr
食事 2.5 hr
余暇 6.5 hr
十分な余暇を設け、家族と共に過ごす時間を大事にする
デンマークでは、税金が高いがゆえに「働き過ぎは損だ」という考え方が根強い。彼らにとって、
研究はあくまでも自己実現のための選択肢であり、研究業務に追われることで自分の余暇や家族と
の時間を削ってしまうことは、本末転倒であると考えている。平日は、午前8時~9時に出社し、午
後2~3時には帰宅する(上図) 。残業したとしても午後5時頃までで、夕方以降は必ず自分の時間
を確保している。週末も土日は休み(次スライド)で、年間複数回の長期休暇がある。十分な余暇
を確保することができるのは、研究者と技術員、その他補助員が統率のとれた役割分担をし、風通
しのよいオープンな研究環境を構築している賜物であると考えられる(後述)。
デンマーク研究者の標準的な1日
睡眠
起床
朝食
通勤
研究
昼食
研究
通勤
帰宅
余暇
夕食
余暇
出宅
睡眠
出宅
4. 代表的な1週間のスケジュール
ポスドク(35歳・男性)の場合
日曜日 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日
午前 息子と博物館へ
技術員とともに
1週間の予定を確認
セミナーへの参加 論文の執筆 論文の執筆
全体ミーティングで
来週の予定を報告
午後のBBQの準備
午後
自宅で家族そろって
ゆったりと過ごす
論文の執筆 論文の執筆
研究内容に関して
ボスとディスカッ
ション
息子の送迎のために
早めに帰宅
専属技術員と
実験計画について
ディスカッション
仲間を呼んでBBQ
技術員(30歳・女性)の場合
日曜日 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日
午前 ガーデニング
担当の研究者と
1週間の予定を確認
動物実験の管理 依頼を受けた実験 依頼を受けた実験
全体ミーティングで
今週の成果を報告
ロードバイクで
サイクリング
午後
自宅で家族とともに
ゆったりと過ごす
実験試薬の在庫確認
今週の実験の準備
依頼を受けた実験
娘の送迎のために
早めに帰宅
英語の勉強会
担当の研究者と
実験計画について
ディスカッション
市内で買い物
准教授(40歳・女性)の場合
日曜日 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日
午前
スウェーデンの
別荘でゆっくり
論文の執筆 研究機関で会議
部下である研究者と
ディスカッション
他大学で会議
全体ミーティングの
進行と運営
スウェーデンの
別荘へ向かう
午後
自宅のある
コペンハーゲンへ
他大学で会議 論文の執筆
部下である研究者と
ディスカッション
他大学で会議 論文の執筆
スウェーデンの
別荘でゆっくり
残業 他大学で会議
新たな研究計画の
捻出
10. 研究所における男女比
♂1 ♀4.5
1. 家事育児は男女平等の話題であり、「お互いが
一生働き続けることが当たり前」の風潮がある。
税金対策的にも収入源を分けた方が徳らしい。
2. 出産育児休暇は1歳までは必ず取得しなければ
ならない。休暇中の給与は100%保障される。
3. 1歳から入ることのできる保育園が充実してい
て、日本のような待機児童はいない。さらに保
育園から大学までの学費は完全無料である。
4. ミーティングの日程やコアタイム、有給の取得
は子の送迎や学校行事等に配慮されている。
5. 子どもは親だけの責任ではなく、社会全体で育
むべきであるという意識が高く、子育てや出産
でキャリアに悩むことはない。日本での問題は
逆に理解し難い。なお、ヨーロッパの中でもデ
ンマークはとくに働きやすい国であるらしい。
私の滞在した研究所おける男女比は、なん
と1対4.5であった。もともとデンマークにお
ける女性の大学進学率は男性よりも高く、
2012年の時点においては男性の66.3%に対し、
女性は93.5%に昇る。技術員に女性が多いの
はもちろんのこと、私の世話になった教授や
准教授も女性であった。また、男性が少ない
ので、男同士の結束が強い点も特徴的である。
女性研究者が多い理由
女性研究者の進出と社会的支援
デンマークの子育て事情
日本と大きく異なると感じたのは、上述の通り、デンマークにおける子育ては、「親にのみ義務と
責任が課せられるのではなく、社会全体が担うもの」という認識が強いことである。そして、その認
識が、職場において子育てに協力する「意識」を生み出し、子育てを前提とした休暇や配慮した出勤
時間等の「体制」に繋がっていると推測する。実際に、デンマークの街中を歩くと、子ども達に対す
る人々の暖かい対応を見ることができる。