前回の記事ではN2WS Backup & Recoveryの2つの新機能、Archive Snapshots to Amazon S3（Amazon S3へのスナップショットアーカイブ：保持期間の長期化を回避し、ストレージコストを削減）とCross Account Incremental Backup（アカウント間をまたがる増分バックアップ）を紹介しました。本稿では、もう2つの新機能、VPC Capture & Clone（VPCキャプチャー&クローン）とEnhanced RESTful API（RESTful APIの強化）を解説します。

1. 1
N2WS Backup & Recovery 2.4：VPC キャプチャー&クロ
ーンと RESTful API の新機能
前回の記事では N2WS Backup & Recovery の 2 つの新機能、Archive Snapshots to Amazon
S3（Amazon S3 へのスナップショットアーカイブ：保持期間の長期化を回避し、ストレージコストを削減）と
Cross Account Incremental Backup（アカウント間をまたがる増分バックアップ）を紹介しました。本稿
では、もう 2 つの新機能、VPC Capture & Clone（VPC キャプチャー&クローン）と Enhanced RESTful
API（RESTful API の強化）を解説します。
N2WS Backup & Recovery は長年、Amazon EC2（Elastic Compute Cloud）インスタンスをシス
テム障害、マルウェア、ランサムウェア、その他、あらゆる災害から守り、インスタンの迅速なリカバリ機能を提供し
続けてきました。そして、新バージョンでは、この VPC Capture & Clone 機能が加わり、他のリージョンをまっ
たく同じインフラストラクチャ設定で立ち上げることが可能になりました。それは、AWS CloudFoundation のよ
うなツールでインフラストラクチャを一から作成したのと同じ結果をもたらします。つまり、VPC Capture &
Clone は、すばやく手軽な機能性によって、いつでも完全リストアが可能なリカバリ環境の維持を可能にします。
さらに、N2WS Backup & Recovery では、通常 RESTful コールによってさまざまな処理や作業を実行す
る開発者向けに API 機能を強化し、RDS データベースや Redshift データウェアハウスなどを直接バックアップ
やリカバリできるようになりました。N2WS Backup & Recovery のコンソールから Amazon EC2 インスタン
スのリカバリを実行できます。
本稿では、VPC Capture & Clone の設定方法と、強化された RESTful API の活用方法を概説します。

2. 2
必須要件と環境
以下の要件を満たしていることを前提として、運用例を見ていきます。
• 現在 AWS 上に VPC（仮想プライベートクラウド）があり、N2WS Backup & Recovery が下記のコ
ンフィギュレーションで稼働するインスタンスがあること
o ポリシー、スケジュール、エージェント、リカバリを設定する権限を持つログインアカウント
o N2WS Backup & Recovery インスタンスに対して IAM ユーザーが設定され、Amazon EC2
VPC の作業と Amazon EC2 の作業（スナップショットの作成やリストア）が許可されること
以下の環境を基準に解説します。
• 1 N2WS Backup & Recovery サーバー
• 1 VPC（us-east-1 上にあり、eu-west-2 に記録される)
• 2 AWS リージョン：us-east-1 (Primary)、eu-west-2 (Secondary)
• 1 AWS Account
VPC Capture & Clone
以下に、VPC Capture & Clone の設定方法を紹介します。
ステップ 1：VPC Capture のコンフィギュレーション
N2WS Backup & Recovery に、VPC コンフィギュレーションをスケジュールにもとづいてキャプチャーするよう
に設定します。インスタンスのバックアップをスケジュールするのと同じしくみです。まったく同じ見た目の VPC を同
じアカウントに作成することも可能ですが、混乱の原因になるかもしれません。ここでは、DR（災害復旧）リー
ジョンへのリストア目的でキャプチャーを作成する例を見ていきます。
VPC Capture & Clone の機能では、AWS の CloudFoundation を利用してキャプチャーとクローンを行う
しくみになっています。VPC のキャプチャーには含まれないデータもあるので、実際に何がキャプチャーされるのか
は、正しく理解しておくと便利です。具体的には、NAT（ネットワークアドレス変換）ゲートウェイ、VPC ピアリン
グ接続設定、カスタマーゲートウェイ、VPN 接続、ネットワークインタフェース、Elastic IP アドレス、VPC エンド
ポイント、VPC エンドポイントサービスは VPC キャプチャーに含まれません。VPC Capture & Clone のさらに
詳しい情報と制限事項については、公式サポートドキュメントを参照してください。
1. CPM（N2WS Backup & Recovery）のトップメニューから General Settings ボタンをクリックしま
す。

3. 3
2. Capture VPC セクションを展開し、以下の各項目を設定します。
o Capture VPC Environments: Enabled
o Capture VPCs Interval: 24 hours
3. Capture Now をクリックします。
VPC キャプチャーの例
4. VPC 環境のキャプチャーを確認するには、ポップアップウィンドウの OK をクリックします。
5. Capture Log ボタンをクリックすれば、何がキャプチャーされたのかの詳細を確認できます。
6. Apply をクリックします。
VPC キャプチャーログの例
ステップ 2：キャプチャーされた VPC をクローン

4. 4
N2WS Backup & Recovery は、VPC を一から作成する必要をなくし、VPC クローンを実行するための
AWS CloudFormation テンプレートのデプロイメントも省くので、すべての作業は UI から行えます。ここでは、
キャプチャーされた VPC 環境を eu-west-2 リージョンにクローンします。
1. N2WS Backup & Recovery の UI のトップメニューから Accounts をクリックします。
2. VPC がバックアップされたアカウントを選び、Clone VPCs（Actions 列）をクリックします。
3. Clone VPCs for Account:（アカウント名）ウィンドウで以下の項目を入力します。
o Capture Source: US East (N. Virginia)
o VPC:（バックアップ済みの VPC を選択します）
o Captured at:（ここで紹介する方法でバックアップを設定した場合は選択肢が 1 つだけですが、バッ
クアップが増えるにつれ、リカバリ時に必要に応じた選択が可能になります）
o Region: EU (London) –
注：カスタマイズするには、CloudFormation Template をクリックします。それにより JSON 形
式のテンプレートが開くので、独自の AWS CloudFormation スタックを実行します。
o Clone VPC をクリックします。

5. 5
VPC クローンの例
以下は、London リージョンに対してバックグラウンドで稼働する AWS CloudFormation です。
AWS CloudFormation 実行例
London リージョンにリストアされた VPC は以下の通りです。

6. 6
リストアされたクローンの例
以上のプロセスを用いると、DR（災害復旧）プランとしての VPC リカバリが簡単になるので、RTO（リカバリポ
イント目標）が短縮されます。インフラストラクチャの構成が把握され、自分で細かい調整をする必要がなくなり
ます。
Enhanced RESTful API
API と RESTful コールのしくみに馴染みがない場合は、以下の説明が入門編として役に立つはずです。しかし、
正式なドキュメントでさらに詳しい解説や手順を確認するのも忘れないでください。ここでは、API コールの成り
立ちと API トークンの作成、そして、スナップショットや Amazon S3 バックアップ、スケジュールなどに対する基
本的なクエリーについて説明します。
まず、API のアクセストークンを取得する必要があります。トークンの有効期限は 1 時間だけなので、ジョブを通
して使う場合は、トークンの自動更新プロセスを設定すべきです。その方法も前述のドキュメントに解説されてい
るので、該当箇所を参照してください。
また、JSON を読み取り可能な形式に解読するために jq をインストールすることも推奨されます。
ステップ 1：API トークンの作成
API コールに使用するトークンを作成します。
重要： API コールに必要になるので、CPM サーバーの DNS 名か IP を取得しておいてください。CPM の UI
アドレスに見つけることができます。また、API コールを実行するホストからの 443 アクセスを CPM サーバーが許
容することも、確認しておく必要があります。
1. UI の下部より Configure API Authentication Key リンクをクリックします。
2. Configure API Access ウィンドウで以下の設定を行います。
o API Access: Enabled

7. 12
まとめ
本稿では、N2WS Backup & Recovery の新機能のうち、VPC Capture & Clone（VPC キャプチャー
&クローン）と Enhanced RESTful API（RESTful API の強化）を紹介しました。両機能は、リカバリの
即効性とスクリプトによるユーティリティ活用の柔軟性を特長としています。API がもたらす拡張性が、CPM への
UI からの直接クエリーだけでなく、有用性の高いツールによるレポートとクエリースクリプトの活用を可能にし、幅
広いサポートを実現します。
N2WS Backup & Recovery の 4 つの新機能を、2 回の記事に渡って紹介してきましたが、いずれの機能
も AWS におけるコスト削減とリカバリ時間の短縮を可能にするものです。今後も、そのような N2WS Backup
& Recovery の新機能をわかりやすく伝えていくの、ご期待ください。
株式会社クライム
〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町 1-36-7
日本橋蛎殻町ビル４F
TEL: 03-3660-9336 / 06-6147-8201
soft@climb.co.jp www.climb.co.jp
https://www.climb.co.jp/soft/n2ws/