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プロジェクト型学習プログラム「防災コミュ
ニケーション実習」の設計・運営・評価



                       石村源生
     北海道大学科学技術コミュニケーション教育研究部門
                    第1期MOSTフェロー
発表趣旨
• 北海道大学科学技術コミュニケーション教育研究
  部門(CoSTEP)では、毎年学内外から「プロジェ
  クト」を公募し、適切なものを一年間の実習授業
  として教育プログラムに組み入れている。
• 2012年度は、津波防災ワークショップの企画・実
  施を目的としたプロジェクト型学習プログラム「防
  災コミュニケーション実習」を実施することとした。
• 本発表では、この学習プログラムの概要ならびに
  評価手法の開発について報告・考察する。
学習プログラム(実習)概要




    ※詳しくはMOSTにて公開中のスナップショットをご参照ください。
学習プログラム(実習)の成立経緯
• 北海道大学科学技術コミュニケーター養成プログラム
  (CoSTEP)とは、北海道大学の学生に限らず、広く一般市
  民から受講生を募り、科学技術コミュニケーターとして必要
  な知識・スキル・経験を習得してもらう1年間の学習プログ
  ラムである。
• CoSTEPでは、毎年一般からプロジェクトを公募し、適切な
  ものを次年度の一年間の実習授業として組み入れている。
• この公募に対し、本学地震科学研究センターの教員から津
  波防災教育をテーマとした応募があり、これを採択した。
• この応募内容を元に、発表者が担当教員となって、2012
  年度、「北海道における津波防災教育プログラムの実施」を
  目的としたプロジェクト型学習プログラム(実習)を企画・実
  施することとした。
受講生の学習目標
• 科学技術コミュニケーターとして、大学におけ
  る利用可能な資源を開拓、編集し、地域で課
  題を抱えている当事者の支援に結びつけるま
  での一連のプロセスを実践的に習得する。
• 習得したプロセスを、他の事例で応用可能な
  ようにモデル化すると同時に、他の実践者が
  利用可能な形で公開・共有するためのスキル
  を身につける。
学習目標を達成するために実習に
組み込んだ主な学習要素
•   科学技術コミュニケーション実践で扱う「内容」に関する学習要素
    –   津波に関する知識
    –   防災に関する知識
    –   市民の防災意識に関する知識
    –   防災教育の手法に関する知識とスキル
•   科学技術コミュニケーション実践の「マネジメント」に関する要素
    –   企画法
    –   チームビルディング
    –   階層的目的-手段関係の理解
    –   プロジェクトマネジメント
    –   クライアントとの交渉
    –   ステークホルダーの把握、ステークホルダーとの交渉
    –   広報
    –   実践結果の分析・評価
•   リフレクション・メタ学習・実践のモデル化に関する要素
    – 実践目標、学習目標の自己設定
    – 実践目標、学習目標の達成度の自己評価
    – 活動報告書の作成
実習メンバー
• CoSTEPの本科受講生の
  うち「防災コミュニケーショ
  ン実習」を希望した者5名。
• 大学院修士課程、博士
  課程の学生各一名ずつ、
  社会人三名(20代~60
  代)。
• 社会人三名のうち一名は
  気象台勤務であったが、
  他の受講生は津波防災
  に関する前提知識は特に
  無かった。
授業運営
• 正規の授業スケジュールは、年間21コマ(1コマ
  120分)であった。
• 実際には、必要に応じて正規の授業以外の時間
  を使い、打ち合わせ、現地視察、リハーサル、家
  庭学習などを行った。
• また、2012年11月ならびに2013年1月に各1
  回、津波の被害が懸念される道内地域(釧路市)
  での防災集会(ワークショップ)を実施した。
• 結果として本実習の受講生は、正規授業時間の
  3倍程度の時間を実質的に費やした。
防災集会の企画
• 一昨年の東日本大震災の教訓を踏まえ、防災教
  育に対する社会的ニーズが高まっていた。
• 今回の実習では、防災集会の受け入れ先を検討
  した結果、釧路市を対象地域とした。
• 釧路市は津波の被害が懸念される地域であるが、
  市内各地区で地理的条件等が異なり、地区毎の
  ニーズに合わせてプログラムをカスタマイズするこ
  とが必要であると考えた。
• また、集会の形式については、一方向的な「啓
  蒙」ではなく、双方向的なコミュニケーションを取り
  入れたプログラムが有効であると考えた。
防災集会の実施
第1回
  – タイトル:『「津波防災」知る・備える・話し合う~
    家族の避難計画書~』
  – 日時:2012年11月10日(土)10:00~13:40
  – 場所:釧路市富士見町内会館
  – 参加者:42名


第2回
  – タイトル:『「津波防災」知る・備える・話し合う』
  – 日時:2013年1月14日(月・祝)13:00~
    16:00
  – 場所:釧路市緑ヶ岡コミュニティー消防センター
  – 参加者:24名
活動報告書の作成
目次
1. はじめに
2. 一年間の活動概要
  2.1 実習の内容
  2.2 実習の目的
  2.3 メンバー
  2.4 一年間の活動

3. 防災集会の企画
  3.1 開催日時、場所の決定
  3.2 企画書の作成
  3.3 企画書の内容

4. 防災集会の実施概要
  4.1 第1回防災集会(富士見)
  4.2 第2回防災集会(緑ヶ岡)

5. 防災集会の結果の分析と評価
  5.1 第1 回防災集会(富士見)
  5.2 第2 回防災集会(緑ヶ岡)

6. 受講生の自己評価
巻末資料
                      (CoSTEPウェブサイトにてpdf公開予定)
授業評価
プロジェクト型学習の評価における課題
• 現実のクライアントが存在する:
 – クライアントによってプログラムを構成する前提条件が大き
   く変動し、活動形態も多種多様なものとなる。
 – 受講生個々人の学習目的・到達目標をわかりやすい形で
   設定することが難しい。
 – これらがプログラム実施期間中に変化する可能性が高い。
• 受講生がチームを組んでプロジェクトに取り組む:
 – 受講生個々人の達成とチームの達成を切り分けることが
   難しい。
 – 受講生同士の相互作用が常に生じており、そのことが学
   習プロセスに複雑な影響を与えるとなる。

 →必ずしも「教育評価の一般的方法」を適用することができ
  ず、評価に際しては大きな困難が伴う。
プロジェクト型学習プログラムにおける
新しい評価手法の開発に向けて

• これまで述べた問題整理をふまえ、 2012年
  度のプロジェクト型学習プログラム(実習)に関
  して発表者が試みた評価手法を紹介し、その
  実効性と課題について検討したい。
授業評価
• 実習開始時に受講生に対して「事前アンケート」を実施した。
 – アンケート項目は、プロジェクトマネジメントの分野における
   WBS(Work Breakdown Structure; 中島 1998)、ならびに行
   政評価などの分野で定評のあるプログラム評価とロジックモデ
   ルの考え方(ロッシ他 2005)に基づいて設計した。
• また、実習終了時には「事前アンケート」と項目を対応させ
  た「事後アンケート」を実施することとした(石村 2009)。
 – 事後アンケートの項目設計にあたっては、本授業がPBLであり、
   実践と教育の二重の到達目標を持っていること、ブロジェクト公
   募の応募者(専門家)、協力者、ワークショップ参加者、実施地
   域の行政担当者などの多様なステークホルダーが関与している
   こと、メンバーの知識、経験、スキル、モチベーションの多様性が
   大きいことなどから、必ずしも当初設計通りに実習が進まないこ
   とが予想されるため、それを織り込んだ形での柔軟な評価が可
   能となるようにした。
受講生自身による
学習目的・到達目標の設定と自己評価
• プロジェクト開始直後と終盤の2回、受講生
  に、学習目的・到達目標を設定してもらった。

1. プロジェクト開始直後
 – 「学習目的・到達目標の自己設定」を目的とする
   「事前アンケート」を実施
2. プロジェクト終盤
 – 「学習目的・到達目標の「再」自己設定と、それ
   に即した学習成果の自己評価」を目的とする「事
   後アンケート」を実施
評価手法の考え方
• この評価手法は、業務全体を実行可能な単
  位のタスクに分解するWBS(Work Breakdown
  Structure)(中島 1998)、プログラム評価の
  代表的手法である「ロジックモデル」(Rossi et
  al. 2004)、自己調整学習(Zimmerman and
  Schunk 2001)の手法をそれぞれ部分的に取
  り入れて組み合わせたものである。
• まだ試行段階であるので、「評価手法自体の
  評価」を行いながら、改善していくことが望ま
  れる。
「事前アンケート」の実施
• 設問
 – プロジェクトで取り組まなければならない個々のタスク
   に関して「目的-手段の階層構造」を構成するように
   設計。
• 目的
 – 受講生自らが、プロジェクトの複合性を分解し、自ら
   が学ぶべき明示的な知識やスキルと、クライアントの
   ニーズ・関連する外部環境などとを対応付けること。
 – これを、教員があらかじめタスクリストを作成して提示
   するのではなく、アンケートに答えてもらうことによって
   受講生自身に考えてもらう。
事前アンケート質問項目
• あなたは、この実習に何を期待しますか?
• あなた自身は、この実習にどのような貢献が
  できると思いますか?
• 一年後にこの実習が終わったとき、自分がど
  んな状態になっていることを目標としますか。
• 一年後にこの実習が終わったとき、実習チー
  ムがどんな状態になっていることを目標としま
  すか。
事前アンケート質問項目
• 実習チームで実施してみたいことはありますか?
  企画アイディアをお聞かせ下さい。
 ① どんなテーマの企画にしたいと思いますか?
 ② 企画のコンセプトはどのようなものですか?
 ③ 対象者についてのイメージはありますか?
 ④ この企画によって、企画への参加者(来場者・利用
   者・読者等)にどのような効果を及ぼしたいと考えま
   すか?
 ⑤ どのような内容構成にすればそれを実現できると思
   いますか?
事前アンケート質問項目
• 実習チームで実施してみたいことはありますか?企画アイ
  ディアをお聞かせ下さい。
 ⑥ ④を実現するためにはどのような調査、交渉、準備等をする
   必要があると思いますか?
 ⑦ ④の効果は、どのようにすれば確認できると思いますか?
 ⑧ ④~⑦を達成するには、どのような現象、事実、理論を理解し
   なければならないと思いますか?
 ⑨ ④~⑦を達成するには、どのような方法論の理解や、スキル
   の修得が必要だと思いますか?
 ⑩ ④~⑦を達成するには、どのようなリソース(人材、活動場所、
   資金等)を獲得する必要があると思いますか?
 ⑪ ⑧~⑩を達成するには、どのような学習をすると効果的だと思
   いますか?
各設問の「目的ー手段」関係
                   テーマ
                            手法
                   コンセプト            知識の習得
                           内容構成
         実施して                       スキルの習得
実習への期待             対象者                        学習方法
         みたいこと             調査・交渉・
                  直接の参加者    準備等
                                    リソースの獲得
                   への効果
                           評価手法
                  直接の参加者
                  以外への効果


         実習への貢献

         個人の到達
          イメージ

         チームの到達
          イメージ
「事後アンケート」の実施
• 設問
 – 事前アンケートの「プロジェクトの階層的「目的-手段」関係」
   の各項目に沿う形で、達成度の自己評価がなされるように設
   計された。
• 目的
 – 受講生
   • 自分が事前アンケートで設定した一つ一つの「目的」「手段」に即して、
     学習目標の達成度を自己評価する。
   • プロジェクトの持つ「階層的「目的-手段」関係」という性格をより深く
     理解し、自分が行ってきたこと、学んできたことを構造的に振り返り、
     再確認する。
   • 自分が達成できなかったことを構造的に再確認する。
 – 教員
   • 受講生の設定した一つ一つの「目的」「手段」に即して、受講生の学習
     目標の達成度を評価する。
アンケート質問項目の対応例
事前アンケート    事後アンケート
あなたは、この実   あなたのこの実習に対する期待は、当初の
習に何を期待しま   ものから途中で変わりましたか?
すか?        変わった場合は、どのように変わったのかと
           いうことと、その理由についてお答え下さい。
           あなたの実習への期待(途中から変わった
           場合は変化後の期待)はどの程度達成され
           ましたか?達成されなかった点があれば、具
           体的に、原因と思われる点を含めてお書き
           下さい。
           上記の「達成されなかった点」について、どの
           ような部分が改善されるとよいと思います
           か?
アンケート質問項目の対応例
事前アンケート回答結果           事後アンケート
        回答(※2が複数の場合は右
質問項目                  質問項目
        に列を足してください)

                          ・あなたのこの実習
          ・地震や津波の科学的な情
                          に対する期待は、
          報の中から,地域住民が身
                          当初のものから途
          を守るために必要な情報を
                          中で変わりました
  あなたは、この 効果的に伝えるスキルを養
                          か?
1 実習に何を期 うこと           11
                          ・変わった場合は、
  待しますか? ・自分自身の災害への意識
                          どのように変わった
          を高め,普段から災害発生
                          のかということと、
          時に最も適切な行動を考え
                          その理由について
          てゆけるようになること
                          お答え下さい。



                          ・あなたの実習へ
                          の期待(途中から
                          変わった場合は変
                          化後の期待)はど
                          の程度達成されま
                        2 したか?
                          ・達成されなかった
                          点があれば、具体
                          的に、原因と思わ
                          れる点を含めてお
                          書き下さい。


                          上記の「達成され
                          なかった点」につい
                        3 て、どのような部分
                          が改善されるとよ
                          いと思いますか?
アンケート質問項目の対応例
事前アンケート回答結果           事後アンケート
        回答(※2が複数の場合は右
質問項目                  質問項目
        に列を足してください)
                                      変わったというよりも、付け加わったというのが適切で、以下の2点です
                            ・あなたのこの実習
          ・地震や津波の科学的な情
                            に対する期待は、 ①必要な情報を効果的に伝えるスキルだけでなく、地域住民が欲しがっている情報を正しく把握し、
          報の中から,地域住民が身
                            当初のものから途 効果的にフィードバックするコミュニケーションスキルを養う
          を守るために必要な情報を
                            中で変わりました その理由: 釧路側の担当者や住民と接し、集会の目的や意図として、こちら側が必要だろうと想
  あなたは、この 効果的に伝えるスキルを養
                            か?        像して提示したものと、当事者側のニーズが異なることを体験した。地域住民のためのイベントが、
1 実習に何を期 うこと             11
                            ・変わった場合は、 企画者側の独りよがりで終わらない為にも、当事者側の現状を取り入れるための当事者とのコミュ
  待しますか? ・自分自身の災害への意識
                            どのように変わったニケーションスキルは重要だと考えるようになった
          を高め,普段から災害発生
                            のかということと、 ②考えの整理や新たな気付きの手助けになるファシリテーションのあり方を学ぶ(できるようになる
          時に最も適切な行動を考え
                            その理由について のは難しいだろうと思うので、とっかかりを得る、くらいのニュアンスです)
          てゆけるようになること
                            お答え下さい。   その理由: 一回目の集会で、グループワークファシリテーション中に、新たな気付きを引き出すまで
                                      には至ることができず、ファシリテーションの難しさを実感した為
                                   地域住民が身を守るために必要な情報を効果的に伝えるスキルを養う
                                   ⇒ ある程度達成された。
                           ・あなたの実習へ
                           の期待(途中から
                                     自分自身の災害への意識を高め,普段から災害発生時に最も適切な行動を考える
                           変わった場合は変
                                     ⇒ あまり達成されなかった。自分の本業や本実習の企画、本実習以外のCoSTEPの活動にかま
                           化後の期待)はど
                                     けて、自分の普段の生活の中で防災の取り組みをする余裕(気力?)があまりなかった
                           の程度達成されま
                         2 したか?
                                     地域住民が欲しがっている情報を正しく把握し、効果的にフィードバックするコミュニケーションスキ
                           ・達成されなかった
                                     ルを養う
                           点があれば、具体
                                     ⇒ ある程度達成された
                           的に、原因と思わ
                           れる点を含めてお
                                     考えの整理や新たな気付きの手助けになるファシリテーションのあり方を学ぶ
                           書き下さい。
                                     ⇒ 達成されなかった。時間の制約もあり、企画で手一杯でファシリテーション方法についての意見
                                     交換が少なかった。実際のファシリテーション練習ができなかった
                           上記の「達成され
                           なかった点」につい 実習の中で、各自の防災の取り組みについて報告、意見交換する(最初と中間の2回程度)回があ
                         3 て、どのような部分 ると良い
                           が改善されるとよ ファシリテーション講習やファシリテーションのし合いをするとよい
                           いと思いますか?
受講生の「授業開始当初の授業への
 期待」の達成度
          設問             受講生A
          あなたは、この実習に何を期待 防災に関して,専門家と地域を結ぶ,新しい形の企画を生み出すこと
事前アンケート   しますか?
          ・あなたのこの実習に対する期 ・事前には「専門家と地域を結ぶ」と挙げているが、その中でも「地域の住民」と、
          待は、当初のものから途中で変 防災という話題をもとに討論すること自体から得られるものがたくさんあるのでは、
          わりましたか?         と期待するようになった。集会を設計していくうちに、この変化があった。
          ・変わった場合は、どのように変
          わったのかということと、その理
          由についてお答え下さい。
          ・あなたの実習への期待(途中 ・事前には「専門家と地域を結ぶ」という文言を挙げているが、これは相当むずか
          から変わった場合は変化後の期 しいことを掲げていたと感じる。「地域」には住民と行政という2つのアクターを含
          待)はどの程度達成されました めて考えていたが、実際は、専門家と協力しながら住民と接するだけで精一杯
          か?              だった。そもそもとして掲げてる目標・期待が大きすぎたとも言える。
          ・達成されなかった点があれば、 ・住民と防災について討論することに関しては、実際に集会のなかで、ファシリ
事後アンケート   具体的に、原因と思われる点を テーションに四苦八苦しながらも、達成することができた。住民の生の声に接する
          含めてお書き下さい。      ことができたのは他には無い経験であったし、ファシリテーションすること自体もと
                          ても勉強になった。



          上記の「達成されなかった点」に ・メンバーで企画を練っていくうちに、自分の期待するところが変わっていった。今
          ついて、どのような部分が改善 回は、それにあまり自覚的ではなかったため、そのまま集会の実施までこぎつけて
          されるとよいと思いますか?   しまった。企画が出来上がったところで、再度、自分が実習に何を期待し、どんな
                          ことを目標とするのかを確認し直す必要があったと思う。
受講生の「授業開始当初の授業への
  期待」の達成度
       設問          受講生B
         あなたは、この実習に何 ・地震や津波の科学的な情報の中から,地域住民が身を守るために必要な情報を効果的に伝えるスキルを
事前アンケート を期待しますか?     養うこと
                     ・自分自身の災害への意識を高め,普段から災害発生時に最も適切な行動を考えてゆけるようになること
        ・あなたのこの実習に対 変わったというよりも、付け加わったというのが適切で、以下の2点です
        する期待は、当初のもの ①必要な情報を効果的に伝えるスキルだけでなく、地域住民が欲しがっている情報を正しく把握し、効果的
        から途中で変わりました にフィードバックするコミュニケーションスキルを養う
        か?           その理由: 釧路側の担当者や住民と接し、集会の目的や意図として、こちら側が必要だろうと想像して提
        ・変わった場合は、どのよ 示したものと、当事者側のニーズが異なることを体験した。地域住民のためのイベントが、企画者側の独りよ
        うに変わったのかという がりで終わらない為にも、当事者側の現状を取り入れるための当事者とのコミュニケーションスキルは重要だ
        ことと、その理由につい と考えるようになった
        てお答え下さい。     ②考えの整理や新たな気付きの手助けになるファシリテーションのあり方を学ぶ(できるようになるのは難しい
                     だろうと思うので、とっかかりを得る、くらいのニュアンスです)
                     その理由: 一回目の集会で、グループワークファシリテーション中に、新たな気付きを引き出すまでには至る
                     ことができず、ファシリテーションの難しさを実感した為
        ・あなたの実習への期待 地域住民が身を守るために必要な情報を効果的に伝えるスキルを養う
事後アンケート (途中から変わった場合 ⇒ ある程度達成された。
        は変化後の期待)はどの 自分自身の災害への意識を高め,普段から災害発生時に最も適切な行動を考える
        程度達成されましたか? ⇒ あまり達成されなかった。自分の本業や本実習の企画、本実習以外のCoSTEPの活動にかまけて、自分
        ・達成されなかった点が の普段の生活の中で防災の取り組みをする余裕(気力?)があまりなかった
        あれば、具体的に、原因 地域住民が欲しがっている情報を正しく把握し、効果的にフィードバックするコミュニケーションスキルを養う
        と思われる点を含めてお ⇒ ある程度達成された
        書き下さい。       考えの整理や新たな気付きの手助けになるファシリテーションのあり方を学ぶ
                      ⇒ 達成されなかった。時間の制約もあり、企画で手一杯でファシリテーション方法についての意見交換が少
                     なかった。実際のファシリテーション練習ができなかった
       上記の「達成されなかっ 実習の中で、各自の防災の取り組みについて報告、意見交換する(最初と中間の2回程度)回があると良い
       た点」について、どのよう ファシリテーション講習やファシリテーションのし合いをするとよい
       な部分が改善されるとよ
       いと思いますか?
受講生の「授業開始当初の授業への
 期待」の達成度
       設問               受講生C       受講生D          受講生E
       あなたは、この実習に何を期 効果的な防災知識の普及啓 災害、特に、津波の被害を受 防災に対する知識と意識を
事前アンケー 待しますか?        発の実践         けるであろうと想定される地 高めて、自治体の防災体制
                                  域の方々とのコミュニケーショ 作りに貢献できる人材を目指
ト                                 ン力の向上          したい。

       ・あなたのこの実習に対する 実践するまでの過程をよりよ 変わらない         住民への啓蒙は行えたが、人
       期待は、当初のものから途中 いものに。メンバーが納得で               材育成及び仕組みづくりまで
       で変わりましたか?      きるような活動ができるよう              はできなかった。
       ・変わった場合は、どのように に。
       変わったのかということと、そ
       の理由についてお答え下さい。


       ・あなたの実習への期待(途 ほぼ達成。満足しています。 防災集会でコミュニケーション 人材育成及びしくみづくりま
       中から変わった場合は変化 メンバーもこれまでの活動に はある程度取れたが、担当し でやるには、距離及び時間の
事後アンケー 後の期待)はどの程度達成さ 概ね満足していると思うから。たグループのメンバー構成が 関係から無理であった。
ト      れましたか?                      違っていたら、同じ様に出来
       ・達成されなかった点があれ               ていたかは疑問である
       ば、具体的に、原因と思われ
       る点を含めてお書き下さい。


       上記の「達成されなかった点」              場数をこなす必要がある   指導者(西村先生)及び地元
       について、どのような部分が                             代表者との時間をかけた徹
       改善されるとよいと思います                             底的な議論が必要であった。
       か?
受講生による「プロジェクト実習」
という授業形態についての評価(抜粋)
•   プロジェクト実習という形態は、一番意義深い実践体験を出来ていると思
    う。他のメディア実習にはない外部との協同作業から学んだことは多く
    あった。
•   外部との交渉や共同作業を実習として経験できることは、滅多にない良い
    経験だったと思う
•   実際にステークホルダーと協働作業をしてみると、それぞれのステークホル
    ダーのできること、できないこと、思惑、費やせる時間や労力、資金には
    様々なものがあることを実感としてまなぶことができた
•   複数のステークホルダーそれぞれの良い面を取り込んで効果的なプロジェ
    クトを実行する難しさとおもしろさ、コミュニケーションスキルの大切さを学
    べた
•   スケジュールの都合や実習という形態上、地域のステークホルダーとの間
    で、プロジェクトの目的と方法、対象者、地域特性などに関して話し合う機
    会が少なかった
•   対象者や実施場所なども、メンバーで検討させてもらえたら、さらに活動
    の幅が広がったと思う。でも時間的には厳しいかもしれない・・・
•   外部専門家と実習の担当教員が存在するという構造は、集会を企画する
    上でも、都度、お伺いを立てて、という面もありやりにくい部分でもあった
受講生による総括的自己評価(例)
事前アンケート                       事後アンケート
あなた自身は、この実習 (運営に携わったことはないが…) ・あなた自身は、この実習にど ・避難計画書とシナリオの作成に貢献でき
にどのような貢献ができ 市民参加型討論に関する知識 のような貢献ができた(あるい たと思う。
ると思いますか?(くわし                 はできなかった)と思います  ・「こうしたい」というイメージがはっきりし
い分野の知識・スキル・                  か?             ていたからこそ、計画書もシナリオも率先
人脈・経験・「もりあげ                  ・なぜそのように判断しました して作成できたのだと思う。
役」・「宴会部長」等なん                 か?
でも)                          ・そのような結果をもたらした
                             要因は何だと思いますか?
一年後にこの実習が終    津波の基本的知識や防災体制の 事前アンケートの「一年後にこ     いちから集会を組み立て、無事に実施で
わったとき、自分がどん   実状をまとめることで,わかりやす の実習が終わったとき、自分    きたことは、この上ない結果だと思う。準
な状態になっていること   く伝えるスキルを向上させる.   がどんな状態になっていること   備段階では様々な関係者との折衝があっ
を目標としますか。     ◎専門家・行政・住民など,さま を目標としますか」という設問    たので、その点では「バランス感覚」も養え
              ざまな関係者の間で,科学技術コ に対する回答に照らし合わせ     たのではないかと思う。しかし、様々な関
              ミュニケーターとして活動するため て、ご自身の現在の状態を自    係者をつなげた上で、そこから何かを生
              のバランス感覚を学ぶ.      己評価してください。       み出すまでには至っていないように思うの
                                                で、それに関しては反省が残る。
一年後にこの実習が終 互いのスキルを活かしあい協調で 事前アンケートの「一年後にこ 「社会の中での科学技術コミュニケーター
わったとき、実習チーム きるチームになりたい.防災に関 の実習が終わったとき、実習 という存在のあり方に対する意見」につい
がどんな状態になってい するコミュニケーションという実体 チームがどんな状態になってい ては、防災というある意味シビアなテーマ
ることを目標としますか。 験を通して,社会の中での科学技 ることを目標としますか」という に取り組んだことで、メンバー全員が意識
             術コミュニケーターという存在のあ 設問に対する回答に照らし合 するようになったのではないかと思う。5
             り方に対する意見を持つ.     わせて、実習チームの現在の 人の連携も徐々に上手くとれるようになっ
                              状態を自己評価してください。 ていたと思われる。いつも楽しい実習だっ
                                             た。
受講生による「事前アンケート・事後ア
ンケート」についての評価
• 今、見てみると、事前では自分はそんなことを考えてい
  たのか、という発見があった。一年間の途中で振りかえ
  ればもっと良かったのではないかと思う。
• 記入にずいぶん時間がかかったが、頭を使って一年間
  のふりかえりができ、自分の中でこの実習の位置づけが
  できたので良かった
• 自分が、どんなことに関しても、自分の苦手なものに進
  んでチャレンジする気がほとんどないのはうすうす気づい
  ていたが、それをはっきり自覚した。苦手とすることにも
  意を決してチャレンジするべきなのか、それともそういう
  ものを回避していくほうが幸せなのか、今後の人生につ
  いて考えてしまった
• おなかいっぱいです。
• 設問に対して回答しにくい
結果の考察
• 肯定的な評価があったことから、本手法によって、学習者
  のプロジェクトに対する省察や構造的理解が促進される一
  定の可能性は見いだせたと言えるかもしれない。
• また、事後アンケートは、学習目標がプロジェクトの遂行過
  程を通じて変化するという仮説に基づいて設計されたもの
  であったが、実際のアンケート結果もそのような変化の存在
  を捉えていたと考えられる。
• 一方、「回答負担が大きい」「回答の難易度が高い」との指
  摘もあった。
• また、授業終盤では無く、中盤でこのようなアンケートの実
  施による振り返りの機会を設けるべきという意見もあった。
• これらの結果から、アンケート内容の設計や、実施のタイミ
  ングについて、さらなる検討が必要であると考える。
議論
• プロジェクト型学習の成果は、「学習目標の変化」に
  象徴されるような、「学習過程を通して生まれてくる
  ダイナミックな活動の総体」として捉えられる。
• 学習者にとっての学習環境とは、教授者が事前にす
  べて設計し、最適化することができるようなものでは
  なく、学習者自身の活動や相互作用によって刻一刻
  と創造されていくと同時に、その結果が逆に学習者
  の活動に影響を与える、循環的なシステムの構成要
  素であると考えられる。
• プロジェクト型学習においては、学習者と学習環境と
  の間の、こうしたダイナミックな相互作用をすくいとる
  ことのできる評価手法の開発が求められている。
参考文献
石村源生 2009:「 CoSTEPにおけるプロジェクト型学習プログラムの
   開発・運用・評価:プロジェクト実習「環境学習の場のデザインと評
   価」を事例として」『科学技術コミュニケーション』5, 86-104.
中島秀隆 1998: プロジェクトマネジメント, 日本能率協会マネジメント
   センター
Rossi, P.H. et al. 2004: EVALUATION: A Systematic Approach
   (7th Edition); ロッシ他2005: 大島巌他監訳『プログラム評価の理
   論と方法 システマティックな対人サービス・政策評価の実践ガイド』
   日本評論社
Zimmerman, B.J. and Schunk, D. H 2001: Self-Regulated Learning
   and Academic Achievement; ジマーマン、シャンク編著 2006 塚
   野州一編訳『自己調整学習の理論』北大路書房
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プロジェクト型学習プログラム「防災コミュニケーション実習」の設計・運営・評価

  • 1. プロジェクト型学習プログラム「防災コミュ ニケーション実習」の設計・運営・評価 石村源生 北海道大学科学技術コミュニケーション教育研究部門 第1期MOSTフェロー
  • 2. 発表趣旨 • 北海道大学科学技術コミュニケーション教育研究 部門(CoSTEP)では、毎年学内外から「プロジェ クト」を公募し、適切なものを一年間の実習授業 として教育プログラムに組み入れている。 • 2012年度は、津波防災ワークショップの企画・実 施を目的としたプロジェクト型学習プログラム「防 災コミュニケーション実習」を実施することとした。 • 本発表では、この学習プログラムの概要ならびに 評価手法の開発について報告・考察する。
  • 3. 学習プログラム(実習)概要 ※詳しくはMOSTにて公開中のスナップショットをご参照ください。
  • 4. 学習プログラム(実習)の成立経緯 • 北海道大学科学技術コミュニケーター養成プログラム (CoSTEP)とは、北海道大学の学生に限らず、広く一般市 民から受講生を募り、科学技術コミュニケーターとして必要 な知識・スキル・経験を習得してもらう1年間の学習プログ ラムである。 • CoSTEPでは、毎年一般からプロジェクトを公募し、適切な ものを次年度の一年間の実習授業として組み入れている。 • この公募に対し、本学地震科学研究センターの教員から津 波防災教育をテーマとした応募があり、これを採択した。 • この応募内容を元に、発表者が担当教員となって、2012 年度、「北海道における津波防災教育プログラムの実施」を 目的としたプロジェクト型学習プログラム(実習)を企画・実 施することとした。
  • 5. 受講生の学習目標 • 科学技術コミュニケーターとして、大学におけ る利用可能な資源を開拓、編集し、地域で課 題を抱えている当事者の支援に結びつけるま での一連のプロセスを実践的に習得する。 • 習得したプロセスを、他の事例で応用可能な ようにモデル化すると同時に、他の実践者が 利用可能な形で公開・共有するためのスキル を身につける。
  • 6. 学習目標を達成するために実習に 組み込んだ主な学習要素 • 科学技術コミュニケーション実践で扱う「内容」に関する学習要素 – 津波に関する知識 – 防災に関する知識 – 市民の防災意識に関する知識 – 防災教育の手法に関する知識とスキル • 科学技術コミュニケーション実践の「マネジメント」に関する要素 – 企画法 – チームビルディング – 階層的目的-手段関係の理解 – プロジェクトマネジメント – クライアントとの交渉 – ステークホルダーの把握、ステークホルダーとの交渉 – 広報 – 実践結果の分析・評価 • リフレクション・メタ学習・実践のモデル化に関する要素 – 実践目標、学習目標の自己設定 – 実践目標、学習目標の達成度の自己評価 – 活動報告書の作成
  • 7. 実習メンバー • CoSTEPの本科受講生の うち「防災コミュニケーショ ン実習」を希望した者5名。 • 大学院修士課程、博士 課程の学生各一名ずつ、 社会人三名(20代~60 代)。 • 社会人三名のうち一名は 気象台勤務であったが、 他の受講生は津波防災 に関する前提知識は特に 無かった。
  • 8. 授業運営 • 正規の授業スケジュールは、年間21コマ(1コマ 120分)であった。 • 実際には、必要に応じて正規の授業以外の時間 を使い、打ち合わせ、現地視察、リハーサル、家 庭学習などを行った。 • また、2012年11月ならびに2013年1月に各1 回、津波の被害が懸念される道内地域(釧路市) での防災集会(ワークショップ)を実施した。 • 結果として本実習の受講生は、正規授業時間の 3倍程度の時間を実質的に費やした。
  • 9. 防災集会の企画 • 一昨年の東日本大震災の教訓を踏まえ、防災教 育に対する社会的ニーズが高まっていた。 • 今回の実習では、防災集会の受け入れ先を検討 した結果、釧路市を対象地域とした。 • 釧路市は津波の被害が懸念される地域であるが、 市内各地区で地理的条件等が異なり、地区毎の ニーズに合わせてプログラムをカスタマイズするこ とが必要であると考えた。 • また、集会の形式については、一方向的な「啓 蒙」ではなく、双方向的なコミュニケーションを取り 入れたプログラムが有効であると考えた。
  • 10. 防災集会の実施 第1回 – タイトル:『「津波防災」知る・備える・話し合う~ 家族の避難計画書~』 – 日時:2012年11月10日(土)10:00~13:40 – 場所:釧路市富士見町内会館 – 参加者:42名 第2回 – タイトル:『「津波防災」知る・備える・話し合う』 – 日時:2013年1月14日(月・祝)13:00~ 16:00 – 場所:釧路市緑ヶ岡コミュニティー消防センター – 参加者:24名
  • 11. 活動報告書の作成 目次 1. はじめに 2. 一年間の活動概要 2.1 実習の内容 2.2 実習の目的 2.3 メンバー 2.4 一年間の活動 3. 防災集会の企画 3.1 開催日時、場所の決定 3.2 企画書の作成 3.3 企画書の内容 4. 防災集会の実施概要 4.1 第1回防災集会(富士見) 4.2 第2回防災集会(緑ヶ岡) 5. 防災集会の結果の分析と評価 5.1 第1 回防災集会(富士見) 5.2 第2 回防災集会(緑ヶ岡) 6. 受講生の自己評価 巻末資料 (CoSTEPウェブサイトにてpdf公開予定)
  • 13. プロジェクト型学習の評価における課題 • 現実のクライアントが存在する: – クライアントによってプログラムを構成する前提条件が大き く変動し、活動形態も多種多様なものとなる。 – 受講生個々人の学習目的・到達目標をわかりやすい形で 設定することが難しい。 – これらがプログラム実施期間中に変化する可能性が高い。 • 受講生がチームを組んでプロジェクトに取り組む: – 受講生個々人の達成とチームの達成を切り分けることが 難しい。 – 受講生同士の相互作用が常に生じており、そのことが学 習プロセスに複雑な影響を与えるとなる。 →必ずしも「教育評価の一般的方法」を適用することができ ず、評価に際しては大きな困難が伴う。
  • 14. プロジェクト型学習プログラムにおける 新しい評価手法の開発に向けて • これまで述べた問題整理をふまえ、 2012年 度のプロジェクト型学習プログラム(実習)に関 して発表者が試みた評価手法を紹介し、その 実効性と課題について検討したい。
  • 15. 授業評価 • 実習開始時に受講生に対して「事前アンケート」を実施した。 – アンケート項目は、プロジェクトマネジメントの分野における WBS(Work Breakdown Structure; 中島 1998)、ならびに行 政評価などの分野で定評のあるプログラム評価とロジックモデ ルの考え方(ロッシ他 2005)に基づいて設計した。 • また、実習終了時には「事前アンケート」と項目を対応させ た「事後アンケート」を実施することとした(石村 2009)。 – 事後アンケートの項目設計にあたっては、本授業がPBLであり、 実践と教育の二重の到達目標を持っていること、ブロジェクト公 募の応募者(専門家)、協力者、ワークショップ参加者、実施地 域の行政担当者などの多様なステークホルダーが関与している こと、メンバーの知識、経験、スキル、モチベーションの多様性が 大きいことなどから、必ずしも当初設計通りに実習が進まないこ とが予想されるため、それを織り込んだ形での柔軟な評価が可 能となるようにした。
  • 16. 受講生自身による 学習目的・到達目標の設定と自己評価 • プロジェクト開始直後と終盤の2回、受講生 に、学習目的・到達目標を設定してもらった。 1. プロジェクト開始直後 – 「学習目的・到達目標の自己設定」を目的とする 「事前アンケート」を実施 2. プロジェクト終盤 – 「学習目的・到達目標の「再」自己設定と、それ に即した学習成果の自己評価」を目的とする「事 後アンケート」を実施
  • 17. 評価手法の考え方 • この評価手法は、業務全体を実行可能な単 位のタスクに分解するWBS(Work Breakdown Structure)(中島 1998)、プログラム評価の 代表的手法である「ロジックモデル」(Rossi et al. 2004)、自己調整学習(Zimmerman and Schunk 2001)の手法をそれぞれ部分的に取 り入れて組み合わせたものである。 • まだ試行段階であるので、「評価手法自体の 評価」を行いながら、改善していくことが望ま れる。
  • 18. 「事前アンケート」の実施 • 設問 – プロジェクトで取り組まなければならない個々のタスク に関して「目的-手段の階層構造」を構成するように 設計。 • 目的 – 受講生自らが、プロジェクトの複合性を分解し、自ら が学ぶべき明示的な知識やスキルと、クライアントの ニーズ・関連する外部環境などとを対応付けること。 – これを、教員があらかじめタスクリストを作成して提示 するのではなく、アンケートに答えてもらうことによって 受講生自身に考えてもらう。
  • 19. 事前アンケート質問項目 • あなたは、この実習に何を期待しますか? • あなた自身は、この実習にどのような貢献が できると思いますか? • 一年後にこの実習が終わったとき、自分がど んな状態になっていることを目標としますか。 • 一年後にこの実習が終わったとき、実習チー ムがどんな状態になっていることを目標としま すか。
  • 20. 事前アンケート質問項目 • 実習チームで実施してみたいことはありますか? 企画アイディアをお聞かせ下さい。 ① どんなテーマの企画にしたいと思いますか? ② 企画のコンセプトはどのようなものですか? ③ 対象者についてのイメージはありますか? ④ この企画によって、企画への参加者(来場者・利用 者・読者等)にどのような効果を及ぼしたいと考えま すか? ⑤ どのような内容構成にすればそれを実現できると思 いますか?
  • 21. 事前アンケート質問項目 • 実習チームで実施してみたいことはありますか?企画アイ ディアをお聞かせ下さい。 ⑥ ④を実現するためにはどのような調査、交渉、準備等をする 必要があると思いますか? ⑦ ④の効果は、どのようにすれば確認できると思いますか? ⑧ ④~⑦を達成するには、どのような現象、事実、理論を理解し なければならないと思いますか? ⑨ ④~⑦を達成するには、どのような方法論の理解や、スキル の修得が必要だと思いますか? ⑩ ④~⑦を達成するには、どのようなリソース(人材、活動場所、 資金等)を獲得する必要があると思いますか? ⑪ ⑧~⑩を達成するには、どのような学習をすると効果的だと思 いますか?
  • 22. 各設問の「目的ー手段」関係 テーマ 手法 コンセプト 知識の習得 内容構成 実施して スキルの習得 実習への期待 対象者 学習方法 みたいこと 調査・交渉・ 直接の参加者 準備等 リソースの獲得 への効果 評価手法 直接の参加者 以外への効果 実習への貢献 個人の到達 イメージ チームの到達 イメージ
  • 23. 「事後アンケート」の実施 • 設問 – 事前アンケートの「プロジェクトの階層的「目的-手段」関係」 の各項目に沿う形で、達成度の自己評価がなされるように設 計された。 • 目的 – 受講生 • 自分が事前アンケートで設定した一つ一つの「目的」「手段」に即して、 学習目標の達成度を自己評価する。 • プロジェクトの持つ「階層的「目的-手段」関係」という性格をより深く 理解し、自分が行ってきたこと、学んできたことを構造的に振り返り、 再確認する。 • 自分が達成できなかったことを構造的に再確認する。 – 教員 • 受講生の設定した一つ一つの「目的」「手段」に即して、受講生の学習 目標の達成度を評価する。
  • 24. アンケート質問項目の対応例 事前アンケート 事後アンケート あなたは、この実 あなたのこの実習に対する期待は、当初の 習に何を期待しま ものから途中で変わりましたか? すか? 変わった場合は、どのように変わったのかと いうことと、その理由についてお答え下さい。 あなたの実習への期待(途中から変わった 場合は変化後の期待)はどの程度達成され ましたか?達成されなかった点があれば、具 体的に、原因と思われる点を含めてお書き 下さい。 上記の「達成されなかった点」について、どの ような部分が改善されるとよいと思います か?
  • 25. アンケート質問項目の対応例 事前アンケート回答結果 事後アンケート 回答(※2が複数の場合は右 質問項目 質問項目 に列を足してください) ・あなたのこの実習 ・地震や津波の科学的な情 に対する期待は、 報の中から,地域住民が身 当初のものから途 を守るために必要な情報を 中で変わりました あなたは、この 効果的に伝えるスキルを養 か? 1 実習に何を期 うこと 11 ・変わった場合は、 待しますか? ・自分自身の災害への意識 どのように変わった を高め,普段から災害発生 のかということと、 時に最も適切な行動を考え その理由について てゆけるようになること お答え下さい。 ・あなたの実習へ の期待(途中から 変わった場合は変 化後の期待)はど の程度達成されま 2 したか? ・達成されなかった 点があれば、具体 的に、原因と思わ れる点を含めてお 書き下さい。 上記の「達成され なかった点」につい 3 て、どのような部分 が改善されるとよ いと思いますか?
  • 26. アンケート質問項目の対応例 事前アンケート回答結果 事後アンケート 回答(※2が複数の場合は右 質問項目 質問項目 に列を足してください) 変わったというよりも、付け加わったというのが適切で、以下の2点です ・あなたのこの実習 ・地震や津波の科学的な情 に対する期待は、 ①必要な情報を効果的に伝えるスキルだけでなく、地域住民が欲しがっている情報を正しく把握し、 報の中から,地域住民が身 当初のものから途 効果的にフィードバックするコミュニケーションスキルを養う を守るために必要な情報を 中で変わりました その理由: 釧路側の担当者や住民と接し、集会の目的や意図として、こちら側が必要だろうと想 あなたは、この 効果的に伝えるスキルを養 か? 像して提示したものと、当事者側のニーズが異なることを体験した。地域住民のためのイベントが、 1 実習に何を期 うこと 11 ・変わった場合は、 企画者側の独りよがりで終わらない為にも、当事者側の現状を取り入れるための当事者とのコミュ 待しますか? ・自分自身の災害への意識 どのように変わったニケーションスキルは重要だと考えるようになった を高め,普段から災害発生 のかということと、 ②考えの整理や新たな気付きの手助けになるファシリテーションのあり方を学ぶ(できるようになる 時に最も適切な行動を考え その理由について のは難しいだろうと思うので、とっかかりを得る、くらいのニュアンスです) てゆけるようになること お答え下さい。 その理由: 一回目の集会で、グループワークファシリテーション中に、新たな気付きを引き出すまで には至ることができず、ファシリテーションの難しさを実感した為 地域住民が身を守るために必要な情報を効果的に伝えるスキルを養う ⇒ ある程度達成された。 ・あなたの実習へ の期待(途中から 自分自身の災害への意識を高め,普段から災害発生時に最も適切な行動を考える 変わった場合は変 ⇒ あまり達成されなかった。自分の本業や本実習の企画、本実習以外のCoSTEPの活動にかま 化後の期待)はど けて、自分の普段の生活の中で防災の取り組みをする余裕(気力?)があまりなかった の程度達成されま 2 したか? 地域住民が欲しがっている情報を正しく把握し、効果的にフィードバックするコミュニケーションスキ ・達成されなかった ルを養う 点があれば、具体 ⇒ ある程度達成された 的に、原因と思わ れる点を含めてお 考えの整理や新たな気付きの手助けになるファシリテーションのあり方を学ぶ 書き下さい。 ⇒ 達成されなかった。時間の制約もあり、企画で手一杯でファシリテーション方法についての意見 交換が少なかった。実際のファシリテーション練習ができなかった 上記の「達成され なかった点」につい 実習の中で、各自の防災の取り組みについて報告、意見交換する(最初と中間の2回程度)回があ 3 て、どのような部分 ると良い が改善されるとよ ファシリテーション講習やファシリテーションのし合いをするとよい いと思いますか?
  • 27. 受講生の「授業開始当初の授業への 期待」の達成度 設問 受講生A あなたは、この実習に何を期待 防災に関して,専門家と地域を結ぶ,新しい形の企画を生み出すこと 事前アンケート しますか? ・あなたのこの実習に対する期 ・事前には「専門家と地域を結ぶ」と挙げているが、その中でも「地域の住民」と、 待は、当初のものから途中で変 防災という話題をもとに討論すること自体から得られるものがたくさんあるのでは、 わりましたか? と期待するようになった。集会を設計していくうちに、この変化があった。 ・変わった場合は、どのように変 わったのかということと、その理 由についてお答え下さい。 ・あなたの実習への期待(途中 ・事前には「専門家と地域を結ぶ」という文言を挙げているが、これは相当むずか から変わった場合は変化後の期 しいことを掲げていたと感じる。「地域」には住民と行政という2つのアクターを含 待)はどの程度達成されました めて考えていたが、実際は、専門家と協力しながら住民と接するだけで精一杯 か? だった。そもそもとして掲げてる目標・期待が大きすぎたとも言える。 ・達成されなかった点があれば、 ・住民と防災について討論することに関しては、実際に集会のなかで、ファシリ 事後アンケート 具体的に、原因と思われる点を テーションに四苦八苦しながらも、達成することができた。住民の生の声に接する 含めてお書き下さい。 ことができたのは他には無い経験であったし、ファシリテーションすること自体もと ても勉強になった。 上記の「達成されなかった点」に ・メンバーで企画を練っていくうちに、自分の期待するところが変わっていった。今 ついて、どのような部分が改善 回は、それにあまり自覚的ではなかったため、そのまま集会の実施までこぎつけて されるとよいと思いますか? しまった。企画が出来上がったところで、再度、自分が実習に何を期待し、どんな ことを目標とするのかを確認し直す必要があったと思う。
  • 28. 受講生の「授業開始当初の授業への 期待」の達成度 設問 受講生B あなたは、この実習に何 ・地震や津波の科学的な情報の中から,地域住民が身を守るために必要な情報を効果的に伝えるスキルを 事前アンケート を期待しますか? 養うこと ・自分自身の災害への意識を高め,普段から災害発生時に最も適切な行動を考えてゆけるようになること ・あなたのこの実習に対 変わったというよりも、付け加わったというのが適切で、以下の2点です する期待は、当初のもの ①必要な情報を効果的に伝えるスキルだけでなく、地域住民が欲しがっている情報を正しく把握し、効果的 から途中で変わりました にフィードバックするコミュニケーションスキルを養う か? その理由: 釧路側の担当者や住民と接し、集会の目的や意図として、こちら側が必要だろうと想像して提 ・変わった場合は、どのよ 示したものと、当事者側のニーズが異なることを体験した。地域住民のためのイベントが、企画者側の独りよ うに変わったのかという がりで終わらない為にも、当事者側の現状を取り入れるための当事者とのコミュニケーションスキルは重要だ ことと、その理由につい と考えるようになった てお答え下さい。 ②考えの整理や新たな気付きの手助けになるファシリテーションのあり方を学ぶ(できるようになるのは難しい だろうと思うので、とっかかりを得る、くらいのニュアンスです) その理由: 一回目の集会で、グループワークファシリテーション中に、新たな気付きを引き出すまでには至る ことができず、ファシリテーションの難しさを実感した為 ・あなたの実習への期待 地域住民が身を守るために必要な情報を効果的に伝えるスキルを養う 事後アンケート (途中から変わった場合 ⇒ ある程度達成された。 は変化後の期待)はどの 自分自身の災害への意識を高め,普段から災害発生時に最も適切な行動を考える 程度達成されましたか? ⇒ あまり達成されなかった。自分の本業や本実習の企画、本実習以外のCoSTEPの活動にかまけて、自分 ・達成されなかった点が の普段の生活の中で防災の取り組みをする余裕(気力?)があまりなかった あれば、具体的に、原因 地域住民が欲しがっている情報を正しく把握し、効果的にフィードバックするコミュニケーションスキルを養う と思われる点を含めてお ⇒ ある程度達成された 書き下さい。 考えの整理や新たな気付きの手助けになるファシリテーションのあり方を学ぶ ⇒ 達成されなかった。時間の制約もあり、企画で手一杯でファシリテーション方法についての意見交換が少 なかった。実際のファシリテーション練習ができなかった 上記の「達成されなかっ 実習の中で、各自の防災の取り組みについて報告、意見交換する(最初と中間の2回程度)回があると良い た点」について、どのよう ファシリテーション講習やファシリテーションのし合いをするとよい な部分が改善されるとよ いと思いますか?
  • 29. 受講生の「授業開始当初の授業への 期待」の達成度 設問 受講生C 受講生D 受講生E あなたは、この実習に何を期 効果的な防災知識の普及啓 災害、特に、津波の被害を受 防災に対する知識と意識を 事前アンケー 待しますか? 発の実践 けるであろうと想定される地 高めて、自治体の防災体制 域の方々とのコミュニケーショ 作りに貢献できる人材を目指 ト ン力の向上 したい。 ・あなたのこの実習に対する 実践するまでの過程をよりよ 変わらない 住民への啓蒙は行えたが、人 期待は、当初のものから途中 いものに。メンバーが納得で 材育成及び仕組みづくりまで で変わりましたか? きるような活動ができるよう はできなかった。 ・変わった場合は、どのように に。 変わったのかということと、そ の理由についてお答え下さい。 ・あなたの実習への期待(途 ほぼ達成。満足しています。 防災集会でコミュニケーション 人材育成及びしくみづくりま 中から変わった場合は変化 メンバーもこれまでの活動に はある程度取れたが、担当し でやるには、距離及び時間の 事後アンケー 後の期待)はどの程度達成さ 概ね満足していると思うから。たグループのメンバー構成が 関係から無理であった。 ト れましたか? 違っていたら、同じ様に出来 ・達成されなかった点があれ ていたかは疑問である ば、具体的に、原因と思われ る点を含めてお書き下さい。 上記の「達成されなかった点」 場数をこなす必要がある 指導者(西村先生)及び地元 について、どのような部分が 代表者との時間をかけた徹 改善されるとよいと思います 底的な議論が必要であった。 か?
  • 30. 受講生による「プロジェクト実習」 という授業形態についての評価(抜粋) • プロジェクト実習という形態は、一番意義深い実践体験を出来ていると思 う。他のメディア実習にはない外部との協同作業から学んだことは多く あった。 • 外部との交渉や共同作業を実習として経験できることは、滅多にない良い 経験だったと思う • 実際にステークホルダーと協働作業をしてみると、それぞれのステークホル ダーのできること、できないこと、思惑、費やせる時間や労力、資金には 様々なものがあることを実感としてまなぶことができた • 複数のステークホルダーそれぞれの良い面を取り込んで効果的なプロジェ クトを実行する難しさとおもしろさ、コミュニケーションスキルの大切さを学 べた • スケジュールの都合や実習という形態上、地域のステークホルダーとの間 で、プロジェクトの目的と方法、対象者、地域特性などに関して話し合う機 会が少なかった • 対象者や実施場所なども、メンバーで検討させてもらえたら、さらに活動 の幅が広がったと思う。でも時間的には厳しいかもしれない・・・ • 外部専門家と実習の担当教員が存在するという構造は、集会を企画する 上でも、都度、お伺いを立てて、という面もありやりにくい部分でもあった
  • 31. 受講生による総括的自己評価(例) 事前アンケート 事後アンケート あなた自身は、この実習 (運営に携わったことはないが…) ・あなた自身は、この実習にど ・避難計画書とシナリオの作成に貢献でき にどのような貢献ができ 市民参加型討論に関する知識 のような貢献ができた(あるい たと思う。 ると思いますか?(くわし はできなかった)と思います ・「こうしたい」というイメージがはっきりし い分野の知識・スキル・ か? ていたからこそ、計画書もシナリオも率先 人脈・経験・「もりあげ ・なぜそのように判断しました して作成できたのだと思う。 役」・「宴会部長」等なん か? でも) ・そのような結果をもたらした 要因は何だと思いますか? 一年後にこの実習が終 津波の基本的知識や防災体制の 事前アンケートの「一年後にこ いちから集会を組み立て、無事に実施で わったとき、自分がどん 実状をまとめることで,わかりやす の実習が終わったとき、自分 きたことは、この上ない結果だと思う。準 な状態になっていること く伝えるスキルを向上させる. がどんな状態になっていること 備段階では様々な関係者との折衝があっ を目標としますか。 ◎専門家・行政・住民など,さま を目標としますか」という設問 たので、その点では「バランス感覚」も養え ざまな関係者の間で,科学技術コ に対する回答に照らし合わせ たのではないかと思う。しかし、様々な関 ミュニケーターとして活動するため て、ご自身の現在の状態を自 係者をつなげた上で、そこから何かを生 のバランス感覚を学ぶ. 己評価してください。 み出すまでには至っていないように思うの で、それに関しては反省が残る。 一年後にこの実習が終 互いのスキルを活かしあい協調で 事前アンケートの「一年後にこ 「社会の中での科学技術コミュニケーター わったとき、実習チーム きるチームになりたい.防災に関 の実習が終わったとき、実習 という存在のあり方に対する意見」につい がどんな状態になってい するコミュニケーションという実体 チームがどんな状態になってい ては、防災というある意味シビアなテーマ ることを目標としますか。 験を通して,社会の中での科学技 ることを目標としますか」という に取り組んだことで、メンバー全員が意識 術コミュニケーターという存在のあ 設問に対する回答に照らし合 するようになったのではないかと思う。5 り方に対する意見を持つ. わせて、実習チームの現在の 人の連携も徐々に上手くとれるようになっ 状態を自己評価してください。 ていたと思われる。いつも楽しい実習だっ た。
  • 32. 受講生による「事前アンケート・事後ア ンケート」についての評価 • 今、見てみると、事前では自分はそんなことを考えてい たのか、という発見があった。一年間の途中で振りかえ ればもっと良かったのではないかと思う。 • 記入にずいぶん時間がかかったが、頭を使って一年間 のふりかえりができ、自分の中でこの実習の位置づけが できたので良かった • 自分が、どんなことに関しても、自分の苦手なものに進 んでチャレンジする気がほとんどないのはうすうす気づい ていたが、それをはっきり自覚した。苦手とすることにも 意を決してチャレンジするべきなのか、それともそういう ものを回避していくほうが幸せなのか、今後の人生につ いて考えてしまった • おなかいっぱいです。 • 設問に対して回答しにくい
  • 33. 結果の考察 • 肯定的な評価があったことから、本手法によって、学習者 のプロジェクトに対する省察や構造的理解が促進される一 定の可能性は見いだせたと言えるかもしれない。 • また、事後アンケートは、学習目標がプロジェクトの遂行過 程を通じて変化するという仮説に基づいて設計されたもの であったが、実際のアンケート結果もそのような変化の存在 を捉えていたと考えられる。 • 一方、「回答負担が大きい」「回答の難易度が高い」との指 摘もあった。 • また、授業終盤では無く、中盤でこのようなアンケートの実 施による振り返りの機会を設けるべきという意見もあった。 • これらの結果から、アンケート内容の設計や、実施のタイミ ングについて、さらなる検討が必要であると考える。
  • 34. 議論 • プロジェクト型学習の成果は、「学習目標の変化」に 象徴されるような、「学習過程を通して生まれてくる ダイナミックな活動の総体」として捉えられる。 • 学習者にとっての学習環境とは、教授者が事前にす べて設計し、最適化することができるようなものでは なく、学習者自身の活動や相互作用によって刻一刻 と創造されていくと同時に、その結果が逆に学習者 の活動に影響を与える、循環的なシステムの構成要 素であると考えられる。 • プロジェクト型学習においては、学習者と学習環境と の間の、こうしたダイナミックな相互作用をすくいとる ことのできる評価手法の開発が求められている。
  • 35. 参考文献 石村源生 2009:「 CoSTEPにおけるプロジェクト型学習プログラムの 開発・運用・評価:プロジェクト実習「環境学習の場のデザインと評 価」を事例として」『科学技術コミュニケーション』5, 86-104. 中島秀隆 1998: プロジェクトマネジメント, 日本能率協会マネジメント センター Rossi, P.H. et al. 2004: EVALUATION: A Systematic Approach (7th Edition); ロッシ他2005: 大島巌他監訳『プログラム評価の理 論と方法 システマティックな対人サービス・政策評価の実践ガイド』 日本評論社 Zimmerman, B.J. and Schunk, D. H 2001: Self-Regulated Learning and Academic Achievement; ジマーマン、シャンク編著 2006 塚 野州一編訳『自己調整学習の理論』北大路書房