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• 科学技術の高度化、複雑化、不透明化
– 非専門家にとっては敷居が高い。
– 専門家にとってさえ、自分の専門分野以外の内容を適切に理解する
ことは難しい。
– 科学技術の高度化、複雑化、不透明化により、科学技術自体が新た
なリスクをもたらしている。
• 社会システムの複雑化、流動化、不透明化
– 科学技術を受容する側の市民の価値観も多様化している。
– 科学技術と密接に関わる社会システムもまた、複雑化、流動化、不透
明化が著しい。このことが、科学技術と社会システムの複合体に新た
なリスクをもたらしている。
→科学技術と社会システム、個々人の価値観が相互作用することによっ
てどのような事態が生じるのか、その帰結を見通すことは極めて難しい。
13. 科学技術コミュニケーションとは?
• 「科学コミュニケーション」という言葉は、次のグループ間の
コミュニケーションを指している。
• すなわち、
– 科学コミュニティ(大学、研究所及び企業を含む)内のグループ間
– 科学コミュニティとメディア間
– 科学コミュニティと公衆間
– 科学コミュニティと政府あるいは権力や権威を備えた機関間
– 科学コミュニティと政府ないし政策に影響力を持つ機関間
– 企業と公衆間
– メディア(博物館や科学センターを含む)と公衆間
– 政府と公衆間
のコミュニケーションである。
(Science and the Public : A Review of Science Communication
and Public Attitudes to Science in Britain (2000))
21. イギリスにおける
科学技術コミュニケーションの歴史
• 王立研究所(Royal Institution of Great Britain, 1799~)
• 研究活動、啓蒙講演
• 「クリスマスレクチャー」
• 若者を対象とした、エンタテイメント性にあふれる演示実験を含む
科学イベント
• 1825年にマイケル・ファラデーが始める
• 金曜講座(1825~)
• 英国科学振興協会(BA: British Association for the
Advancement of Science, 1831~)
• 科学と社会を橋渡しする活動
• 「サイエンス・フェスティバル」
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
22. 王立協会(1985): 「公衆の科学理解
(PUS: The Public Understanding of
Science)」
• ボドマーを議長とする特別委委員会が作成・提出した
ものであり、「ボドマー・レポート」と呼ばれている
• 若者の理科離れ、国民の科学への関心低下を懸念
• 「公衆の科学理解を促進すること」に大きな重点
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
23. 事例: BSE (牛海綿状脳症 Bovine
Spongiform Encephalopathy)問題
• 最初は、1990年前後にイギリスで発生。
• 1988年に設置された、オックスフォード大学の動物学者であるサウスウッ
ド教授らによる専門家委員会は、検討の結果1989年に、「人間へのBSE
感染の危険性は極めて少ない」と結論づけた。
• ただし同時に同委員会は、「さらなる研究が不可欠」「こうした評価が謝
っていれば結果は大変深刻なものになるであろう」と警告した。
• しかし、行政関係者や政治家はこの警告を適切に評価せず、安全性の
みを強調した。
• 1996年に政府は、10名のクロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD : variant
Creutzfeld Jacob Disease)患者について、BSE感染牛を食べたことが
原因で発症した可能性を認めた。
• その結果国民は、政府や政府機関に所属する科学者に対して強い不信
感を抱くようになった。
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
25. 「科学技術社会論」の研究成果
(STS: Science and Technology Studies)
• 「科学知識が増えれば、科学への肯定的態度が増
す」という通説が、単純には成立しない
– 科学知識が多い人ほど科学一般を支持するが、倫理的
な問題をはらむ研究分野に対しては否定的な態度を示す
傾向がある(Durant)。
– 英国、デンマークなど、科学の理解度が高い国々の人々
が、他の諸国に比べて、科学に関心を持っていない。
• 王立協会の「科学の公衆理解の不足」という認識自
体に再検討が必要
– 「欠如モデル(deficit model)」批判
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
27. 「科学技術社会論」の主張
(STS: Science and Technology Studies)
• 欠如モデルに基づいた施策は実際には問題解決を
もたらさない。
• 公衆は単に無知なのではなく、公衆なりの文脈で独
自の知識(=ローカルノレッジ)を持っている。
• 科学者の間でさえ、「科学とは何か」「科学的知識と
は何か」ということについて、明確な合意は存在しな
い。
• 科学への態度は、科学的知識だけではなく、人々の
政治的知識も関係して決まる。
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
31. ブダペスト会議(世界科学会議 1999)
1. 知識のための科学:進歩のための知識
2. 平和のための科学
– 科学的思考の特質は批判的かつ自由な思考にあり、これは民主主
義社会にとって不可欠のものである。科学者共同体は、国家や宗教
、民族を超越した議論共同体の伝統を作り上げてきており、これを通
じて「人類の知的、道徳的連帯」を促進すべきである。
3. 発展のための科学
4. 社会の中の科学と社会のための科学
– 科学研究と科学知識の利用は、貧困の克服、人間の尊厳や人権の
擁護、地球環境の保護を目指すべきであり、同時に将来世代への責
任も果たさなければならない。
(小林 2007: 「トランスサイエンスの時代」)
32. 「モード1科学」と「モード2科学」
モード1科学 モード2科学
主な目的 世界の解明 問題解決
典型的な分野 物理学・生物学など 環境学・情報学など
研究の担い手 大学が研究の中心 大学・政府・自治体・企業などの協
同が不可欠
価値規範 CUDOS(※)と呼ばれる科
学のエートスを重視
CUDOSより問題解決への有効性が
優先
(Gibbons et. al. 1994)
※CUDOS:「共有主義(Communalism)」「普遍主義(Universalism)」「利害の超越
(Disinterestedness)」「組織的懐疑主義(Organized Skepticism」
(参考 伊勢田 2011: 「科学の拡大と科学哲学の使い道」, 『もうダマされないための「科学」講義』所収)
45. • 科学技術に関する社会システムの「集合的意思決定機能」を向上
させるための、多様なアクターの参加によるコミュニケーション実践
1. 科学技術の適正利用の促進
• 科学教育(フォーマル/インフォーマル)
• 科学報道、科学書・科学雑誌の出版
2. 科学技術に対する参加型評価
• 参加型テクノロジーアセスメント(例:コンセンサス会議、討論型世論調査)
• 規制科学(regulatory science) (参照:ELSI(倫理的・法的・社会的問題))
3. 科学技術に関する政策立案・政策執行・評価
• 科学技術政策(研究開発への資金配分、研究(/研究関連)人材育成)
• 産業政策、イノベーション政策、知財戦略
• 納税者へのアカウンタビリティー(例:研究者・研究機関のアウトリーチ活動、各
種報告書、関連統計、研究成果、政策に関する意思決定プロセスの公開)
• → 「参加」による「計算」
科学技術コミュニケーションの定義(2)
―「機能」の視点から
46. 科学技術コミュニケーションの「構成要素」分類試案
促進的 規制的
理論 科学教育学、技術経営学、情報デザイン論、
博物館学、高等教育学
科学技術社会論、規制科学
政策 科学技術研究政策、イノベーション政策
産業政策、知財政策
教育政策
許認可・規制政策
リスクマネージメント政策
実践 科学教育、科学博物館・サイエンスセンター
の活動、科学イベント、サイエンスカフェ
サイエンスアート、科学の可視化
アウトリーチ活動、研究機関広報
研究助成
技術系企業の事業活動そのもの
技術系ベンチャー、ベンチャー支援
環境教育
行政による監督(許認可・規制・検査等)
リスクコミュニケーション
参加型テクノロジーアセスメント
サイエンスショップ
市民科学、市民運動
(研究助成組織)
政策のための科学、科学史、科学哲学、科学基礎論、科学社会学、情報科学
エスノグラフィー、コミュニケーション論、社会心理学、サービスサイエンス
科学ジャーナリズム、科学出版、放送メディア、インターネットメディア
大学経営、FD、URA、NPO、NGO
科学技術コミュニケーション政策
(※各要素は、必ずしも配置されているマスのみに該当するものではない。
また、この分類は、「本質論」「規範論」というよりは「現状記述」として用いるのがよい。)
50. ミクローメゾ領域の
科学技術コミュニケーション実践
1. 情報・知識・意図などを伝える
– 伝える目的を明確にする
– 情報デザインの観点から伝え方を工夫する
2. 相手に対する想像力を持つ
– 相手の状況を理解して、それに適したコミュニケーションを行う。
3. 「双方向性」を深める
– 一方的に伝えるだけではなく、相手の期待や不安、異議にも耳を傾ける。
– 場合によっては“自分を変える”覚悟を持つ。
4. ファシリテーションを実践する
– 「聴く力」「質問力」を磨く
5. コミュニケーションの場を創る
– 市民同士が、あるいは専門家を含む多様なステークホルダーがコミュニケ
ーションするための場を創出する。
65. 科学技術コミュニケーションの「構成要素」分類試案
促進的 規制的
理論 科学教育学、技術経営学、情報デザイン論、
博物館学、高等教育学
科学技術社会論、規制科学
政策 科学技術研究政策、イノベーション政策
産業政策、知財政策
教育政策
許認可・規制政策
リスクマネージメント政策
実践 科学教育、科学博物館・サイエンスセンター
の活動、科学イベント、サイエンスカフェ
サイエンスアート、科学の可視化
アウトリーチ活動、研究機関広報
研究助成
技術系企業の事業活動そのもの
技術系ベンチャー、ベンチャー支援
環境教育
行政による監督(許認可・規制・検査等)
リスクコミュニケーション
参加型テクノロジーアセスメント
サイエンスショップ
市民科学、市民運動
(研究助成組織)
政策のための科学、科学史、科学哲学、科学基礎論、科学社会学、情報科学
エスノグラフィー、コミュニケーション論、社会心理学、サービスサイエンス
科学ジャーナリズム、科学出版、放送メディア、インターネットメディア
大学経営、FD、URA、NPO、NGO
科学技術コミュニケーション政策
(※各要素は、必ずしも配置されているマスのみに該当するものではない。
また、この分類は、「本質論」「規範論」というよりは「現状記述」として用いるのがよい。)