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The Innovation Journey
- 19. プ口ジェクトチームは、思考実験を開始した。
世界を、財やサービスで、魅了する、と価値創出の要件を置いたとき、【今まで】と【これから】はどう 設定できるのか。図1にあるように、【今まで】は、顧客は日本国内中心、財やサービスの中心には高品質 /高効率のモノづ<り、魅了する方法としてはsupplyサイドからdemandサイドに線形で価値の交換が行わ れていた。この価値創出の仕組みを支える非常に好都合な経済構造は、効率ドリブン経済といえるもの だった。大まかな捉え方だが、違和感はないと思う。
それでは【これから】はどうあるべきか。言うまでもなく顧客は世界だ。これは、先進国、新興国の富裕 層・中間層のみならず、BOP(Baseofthepyramid)市場も含まれる。財やサービスの軸はサービスに移行 する。モノづくりでなくコト起こしであり、モノづくりそのものもサービス化が必要となる。そして、価 値交換から価値共創、文脈価値の共有をすることで、魅了していく。
【これから】を創り出す経済構造は、イノベーションドリブン経済ということになる。この【今まで】と 【これから】の間に、イノベーションのルビコン河とでも云うべき深くて広い河が流れている。経済低迷、 少子高齢化、財政懸念、新興国の台頭、IT技術の発展、内向き志向、成功体験の呪縛といったものだ。そ して、それは越えなければならない河でもある。泳ごうが、橋を架けようが、舟を出そうが、やりかたは 何でも構わない。命題は唯一つ。越えなければ生きていけない。では、どう越えるか?
旅の始まり
図1:イノベーションのルビコン河
今まで
顧客
財・サービスの内容
魅了する方法
経済構造
日本国内
(内需中心)
・モノづくり
・メーカー主導
・高品質/高効率
・価値の生産
→価値の消費
・その間で価値交換
効率ドリブン経済
これから
世界
(新興国、BOP、
先進国)
・コト起こし
・サービス業主導
・モノづくりのサービス化
・価値の共創
・価値交換から文脈価値へ
イノベーション
ドリブン経済
顧客を変える
立地・顧客価値を
変える
収益構造を変える
・経済低迷
・少子化
・高齢化
・内需縮小
・内向き志向
・イデオロギー固執
・懐古主義
・成功体験の呪縛
・…
イノベーションのルビコン河
- 20. 旅の途中で
図2:イノベーションサイクル
②規模拡大
①新規創造
③勝ちパターン の確立
?
アソビの許容
改善
創造
効率の追求
①新しいことへのチャレンジ
●ドメインを決めずに自由な発想で思考
●非効率であっても、「アソビ」を許容する
②規模拡大の要求
●より多くの顧客に財やサービスを届けるため
●より安価で顧客に提供するため
③ドメインの固定化
●現状を磨き続けることに執着
●強い組織スキームの確立
旅の途中で立ち寄った様々な企要や高等教育機関から、ルビコン河の渡り方やその苦労・エ夫等を聴くこ とができた。図2をご覧頂きたい.企業に於けるイノベーション創出のサイクルを図示した。
①の新規創造の領域では、東京大学i.schoolでのアイデアを磨くワークショッブや、真のグローバル人材 を輩出しようとしている国際教養大学の取り組みが印象的だった。強いコンセプトを基に「キッザニア」 という場を創造し磨き続けているキッズシティージャバンや、炭素繊維という素材の将来性を信じ切って 事業を推進した東レ、研究開発を事業の根幹と規定し新規創造を進めている味の素などの企業の動きも見 逃せない。
②の規模拡大の象限では、顧客の立場に立ち切ることで事業推進してきたカクヤスの行動や、頑強な理念 を掲げ、言い続けやり続けることを実践してきたグリーンホスピタルサプライのケースが参考になった。
③の勝ちバターンを【今まで】に創り出した企業は数多い。そこで起きているのはドメインの固定化であ り、良くも悪くも現状を磨き続けることに執着してしまいがちだ。成功体験から脱却できず、故に組織ス キーマが生じてしまい、創造とのコンフリクトが起きてしまう。
大日木印刷、資生堂、NTTデータ、ローソン、東京スター銀行等の企業は、自社の強みや勝ちパターンと 新しい概念を繋ぎ新規創造を促す試みを、研修や日々のコミュニケーションを通じて実践し成果をあげて いる。しかし、ここが難しい。組織は、管理し画一化、同質化しようとするのが常だ。気づくと外部環境 が劇的に変化している。そのことに、勝ち組企業ほど気付かない。ただ、これは幸いなことに組織の問題 だ。組織内での作法を、力イゼン・効率の追求から、創造・アソビの許容に変えることができれば、イノ ベーションのブレークスルーは起きるだろう。
組繊の週営ボリシーは命令・統制から寛容へ。 個人に求めるのは従順さや染まることから強い 個性やプロフェッショナリズムへ。
チームは規律・同質化・上下関係からコラボ レーション・異質を活かす・対等性へ。
仕組みは行動規範・マニュアル化から権限委譲 へ。
経営者のコミット次第では、③から①の領域へ の移行も可能だろう。
- 21. 旅の終わりに
日本のイノベーションドリブン経済を牽引する企業はたくさん現れるだろうか? その鍵を握るのは誰か?
明治維新と戦後復興という2つの開国は謂わば外圧の結果であり、その後の成長は 国家や企業が主導して成し得たものだ。第3の開国をして、3度目の奇跡を我々日 本は起こさなければならない。その主体者は間違いなく【個人】だ。必要なのは 個人の【内なる開国】とも言うべき違いの許容であり、一歩前に進むちょっとし た勇気だ。自らを多様の世界に置いて、混沌を楽しむ。権利としての自由を前提 に、義務としての責任を果たす。そんな個人が組織の内外に弾けている。それは 激しいブラウン運動のような状態であり、決して「茹でガエル」ではない。【個 人】が主役になり、【組織】の力を得て、【創新*】とも言うべきイノベーション が実現する.外部環境の激変、という前提条件は既にある。
「奏は投げられた」。あとは進むだけだ。
イノベーションの旅の終わりは、新たな旅の始まりだ。
*創新:イノベーションの現代中国語訳。日本ではイノベーションは技術革斯と訳されることが多い。中国では、全ての社会活助におい てイノベーションは必要とされると考え.1980年代に創新と訳し直した。