はこだて未来大学のみなさんを石狩データセンターにお招きした際のライトニングトークセッションで使った資料（ちょっと手直し版）

1. 運用LT
（アポロ12号の話）
ロケットがカミナリに打たれるとどうなるか
2019/12/17
(C) Copyright 1996-2019 SAKURA Internet Inc
さくらインターネット研究所 所長 鷲北 賢さくらインターネット株式会社

2. ライトニングトーク
なので
カミナリの話をします
2

3. アポロ12号
• 人類2回目の月面着陸
• あんまり注目されてない
• オモシロエピソード満載
• 紹介し始めると10時間ぐらいかかる
• 今回は打ち上げのときのトラブルの話
3

4. アポロ12号打ち上げ
• 1969年11月14日
• 雷雨の日に打ち上げ強行
─初めての雷雨打ち上げだった
─ニクソン大統領が見物に来ていた
─延期できなかった
具体的にどんな危険があるか
分かっていなかった
4

5. 雨雲を突き抜けて打ち上げたら…
• 打ち上げ36.5秒後、雷が直撃
─ 排気ガスを伝わって電流が流れてしまった
• 司令船の燃料電池のブレーカーが過負荷に
─ 遮断回路が働いて一斉にダウン
─ コンピュータのタイマとプラットフォームが停止
─ 警告ランプが一斉に点灯
（クリスマスツリー効果）
• サターンVロケットは正常に飛行
─ ロケットの制御コンピュータは別の場所にあって
無事
5

6. 宇宙飛行士の置かれた状況
• 背中には2000トン以上の燃料が燃焼中
─ １段目切り離しまで２分間もない（２分３０秒で
燃え尽きる）
─ アボート・レバーを引けば脱出できるが、何百億
ドルの資産が吹き飛ぶ
─ コンパネは真っ赤で、訳が分からない
• 管制室ではテレメトリが読めない状態
─ ダウンリンクが死んで画面が壊れた状態に
─ かなり絶望的な状況
6

7. テレメトリの異常
7From the Earth to the Moon, HBO(TV) の再現シーンより

8. 現場に天才がいた
• 画面の崩れ方を見て、思い出した
─ 昔受けた訓練と同じ壊れ方をしている
─ あの時の直し方を試すことに
• 「SCEをAUXに」と指示
─ EECOMの指示をFD（現場責任者）が理解できない
─ が、CAPCOMに伝えるように指示
─ CAPCOMも理解できないが、そのまま指示
─ CDR（宇宙船船長）は「NCE？？ってなんだ？」
─ LMP（着陸船パイロット）が気づいて対処
• 落雷後、１分間で対処法を指示
• 指示後、11秒で復帰
8

9. その後のアポロ12号
• 無事に打ち上げ成功
• 地球周回軌道でコンピュータをリセット
─タイマは予備があったのでそちらで合わせ直し
─プラットフォームは星を見て測り直し
• ミッションルールを変更
─雷雨のときは延期することにした
9

10. 監視とは…
「監視とはスキルであり、開発チーム内の全
員がある程度のレベルに至っておくべき」
Mike Julian,松浦隼人 訳,入門 監視
• 真理だが、「ある程度」ってどの程度？
• システムが複雑すぎて「全員」は不可能
• これは1分間で解決できる問題だろうか
• どれほどの訓練でこの境地に達するのか？
10

11. アポロ11号が
チートシートで
救われた話
は、また今度
11