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WIDE 合宿 2011 春 ボードワークショップ


   地球規模 OS の実現に向けて
  ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ ∼


慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 特別研究講師
            斉藤 賢爾
            ks91@sfc.wide.ad.jp

             Twitter:   ks91020

           地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.1/37
「既存の現実と闘うことではけっして物事を変えられ
ない。何かを変えるためには既存のモデルを時代遅れ
にする新しいモデルを打ち立てよ」
                         — バックミンスター・フラー


“You never change things by fighting the existing
reality. To change something, build a new model that
makes the existing model obsolete”
                                   — Buckminster Fuller




               地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.2/37
これまでとこれからのあらすじ



(架空アニメ作品「産業社会少女まどか ⋆ マギカ」より)
 第 1 話「石油があった、ような . . .」
 第 2 話「成長はとっても嬉しいなって」
 第 3 話「もう石油ピークも怖くない」
 第 4 話「石炭ピークもピークウランもあるんだよ」
 第 5 話「1 人あたり 1.4kW なんて、あるわけない」
 第 6 話「こんなの絶対おかしいよ」
 第 7 話「次の文明と向き合えますか?」




          地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.3/37
問題提起編
青白き点




       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.4/37
問題の捉え方



問題の中に身をおいてしまうと、見えなくなってしま
うものがあります
 既存の現実と闘うことではけっして物事を変えられない
 (フラー)
問題は突き放して考える必要があります
 問題と距離をおき、うまく表現できれば解決方法が自明に




          地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.5/37
問題の捉え方



問題の中に身をおいてしまうと、見えなくなってしま
うものがあります
 既存の現実と闘うことではけっして物事を変えられない
 (フラー)
問題は突き放して考える必要があります
 問題と距離をおき、うまく表現できれば解決方法が自明に


地球は今、問題を抱えています
 その問題を考えるとき、どのくらいの距離をおけばよいの
 でしょうか



          地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.5/37
とりあえず土星の軌道まで離れてみました




     地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.6/37
PALE BLUE DOT (青白き点)




                          カール・セーガンの提案で
                          撮影
                          1990 年 2 月、太陽系の黄
                          道面を離れたボイジャー 1
                          号は地球を振り返る
                          地球はどこ?




          地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.7/37
PALE BLUE DOT (青白き点)




                          カール・セーガンの提案で
                          撮影
                          1990 年 2 月、太陽系の黄
                          道面を離れたボイジャー 1
                          号は地球を振り返る
                          地球はどこ?




          地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.7/37
PALE BLUE DOT (青白き点)




                          セーガンの講演
                          「この青白い点の上に、あ
                          なたの愛するすべての人、
                          すべての知人、あなたが聞
                          いたことがあるすべての人、
                          すべての人類が生きている」


                          YouTube 動画
                              http://bit.ly/9PApWV
                              (full speech)
                              http://bit.ly/2fTCL5 (日本語字幕)



          地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.8/37
2006 年、カッシーニが撮影した地球




       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.9/37
2006 年、カッシーニが撮影した地球




     Our Spaceship EARTH




          地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.9/37
2006 年、カッシーニが撮影した地球




      Our Spaceship EARTH




宇宙船地球号の上での活動を可能にしているエネルギー源は?


           地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.9/37
2006 年、カッシーニが撮影した地球




      Our Spaceship EARTH




宇宙船地球号の上での活動を可能にしているエネルギー源は?
私たちの生命を維持しているメカニズムは?
           地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.9/37
エネルギー、経済、環境




 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.10/37
単位系のおさらい



1J (ジュール) = 1Ws (約 2.78 × 10−7 kWh)
  エネルギー、仕事、熱量の単位
  1N の力が、力の方向に物体を 1 メートル動かすときの仕事
    1kg · m2 · s−2
    小さなリンゴが地球上で 1 メートル落下するときの仕事
  1kJ で Google で 1 回検索でき、1MJ で 3kg の氷が溶ける
1W (ワット) = 1J/s
  仕事率の単位
  人体は約 100W 消費します (10 秒で Google での検索 1 回)
  ヤシマ作戦 (TV 版) は 160GW (今だと 300GW 近く)




             地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.11/37
規模感の把握のために



植物プランクトンのエネルギー蓄積:
 約 62.7TW
 その約 1%である 630GW のパワーで魚や海洋哺乳
 類が海水をかき回す結果、深海の潮流に作用し、気
 候に影響をもたらしているという学説


植物のエネルギー蓄積:
 約 120TW ぐらいか
 植物プランクトンの酸素生成への寄与が約 50%




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.12/37
地球のエネルギー予算、収入と支出




      地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
地球のエネルギー予算、収入と支出



                         地球の大気に入るエネルギー
                         総量は約 174PW
174PW




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
地球のエネルギー予算、収入と支出



                         地球の大気に入るエネルギー
                         総量は約 174PW
174PW                        潮汐力: 約 3TW/0.002%




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
地球のエネルギー予算、収入と支出



                         地球の大気に入るエネルギー
                         総量は約 174PW
174PW                        潮汐力: 約 3TW/0.002%
                             地熱: 約 23TW/0.013%




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
地球のエネルギー予算、収入と支出



                         地球の大気に入るエネルギー
                         総量は約 174PW
174PW                        潮汐力: 約 3TW/0.002%
                             地熱: 約 23TW/0.013%
                             化石燃料の燃焼:
                             約 13TW/0.007%




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
地球のエネルギー予算、収入と支出



                         地球の大気に入るエネルギー
                         総量は約 174PW
174PW                        潮汐力: 約 3TW/0.002%
                             地熱: 約 23TW/0.013%
                             化石燃料の燃焼:
                             約 13TW/0.007%
                             太陽からの放射:
                             約 174PW/100%




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
地球のエネルギー予算、収入と支出



                         地球の大気に入るエネルギー
                         総量は約 174PW
174PW     174PW              潮汐力: 約 3TW/0.002%
                             地熱: 約 23TW/0.013%
                             化石燃料の燃焼:
                             約 13TW/0.007%
                             太陽からの放射:
                             約 174PW/100%
                         3 割が即、反射され、7 割が吸
                         収された後に赤外線放射




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
文明の全景



                         人類のエネルギー利用は
                         約 12.5∼18TW (でかい)
                             米国: 約 3.4TW (11kW/人)
                             日本: 約 700GW (5.5kW/人)




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
文明の全景



                         人類のエネルギー利用は
                         約 12.5∼18TW (でかい)
                             米国: 約 3.4TW (11kW/人)
                             日本: 約 700GW (5.5kW/人)
                             完新世 (Holocene) から
                             人新世 (Anthropocene) へ




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
文明の全景



                         人類のエネルギー利用は
                         約 12.5∼18TW (でかい)
                             米国: 約 3.4TW (11kW/人)
                             日本: 約 700GW (5.5kW/人)
                             完新世 (Holocene) から
                             人新世 (Anthropocene) へ
                         私たちはエネルギーの流れを
                         制御し、そこに情報の流れを
                         乗せています




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
文明の全景



                         人類のエネルギー利用は
                         約 12.5∼18TW (でかい)
                             米国: 約 3.4TW (11kW/人)
                             日本: 約 700GW (5.5kW/人)
                             完新世 (Holocene) から
                             人新世 (Anthropocene) へ
                         私たちはエネルギーの流れを
                         制御し、そこに情報の流れを
                         乗せています
                         その情報の流れがエネルギー
                         の流れを支配しています
                             貨幣経済の都合で起こる
                             壮大な無駄と暴力

        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
文明の全景



                         人類のエネルギー利用は
                         約 12.5∼18TW (でかい)
                             米国: 約 3.4TW (11kW/人)
                             日本: 約 700GW (5.5kW/人)
                             完新世 (Holocene) から
                             人新世 (Anthropocene) へ
                         私たちはエネルギーの流れを
                         制御し、そこに情報の流れを
                         乗せています
                         その情報の流れがエネルギー
                         の流れを支配しています
                             貨幣経済の都合で起こる
                             壮大な無駄と暴力
                             ただしそれは続きません
        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
ピークオイル/コール (石炭)/ウラン . . .



                                          ピークオイル
                                              世界の石油生産量がピークを迎
                                              え、その後は永久に減少傾向に
                                              転じる時点
                                              その後は経済は衰退
                                          私たちはすでにピークオイル
                                          期に突入しました
                                              IEA は在来型石油の生産ピーク
                                              は 2006 年との見方を発表

                                          今世紀前半、すべての主要な
                                          エネルギー資源の生産がピー
http://www.theoildrum.com/node/5177       クを打つと見られます
                                          現在の文明は、私たちの多くが
                                          現役のうちに終了します

                         地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.15/37
The Big Picture — 大きな絵




エネルギー、経済、環境のすべての問題は、私たちがどのように
情報 (主に「お金」) の流れを作るかによって生まれています
            地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.16/37
提案編
地球規模オペレーティングシステム




       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.17/37
問題の本質と解決に向けた着眼点



地球上で文明を持続させていくためには、低エネル
ギー消費を維持できる社会に変えていく必要がある




       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.18/37
問題の本質と解決に向けた着眼点



地球上で文明を持続させていくためには、低エネル
ギー消費を維持できる社会に変えていく必要がある
無駄なく資源・エネルギーを使い回すための調整を担
う何かが必要




       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.18/37
問題の本質と解決に向けた着眼点



地球上で文明を持続させていくためには、低エネル
ギー消費を維持できる社会に変えていく必要がある
無駄なく資源・エネルギーを使い回すための調整を担
う何かが必要
オペレーティングシステムだ!
 計算機システムにおける OS は、計算機上の資源の利用の
 調整を行う基本ソフトウェアである
 同様に、地球規模で資源・エネルギーの利用の調整を行う
 OS により、文明が低エネルギー消費を維持することが可
 能になるのではないか



        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.18/37
宇宙船地球号での生命維持が機能するための
       オペレーティングシステム (OS)
自然への非暴力、不服従を貫くために
Non-violence and peaceful resistance against the nature




                   地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.19/37
地球規模 OS




          地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.20/37
SF で描くゴール


                         「不思議の国の NEO
                         — 未来を変えたお金の話」
                         ジャンル:
                         「SF お金ファンタジー」
                              お金を根本から変える技
                              術の存在
                              それにより生まれるドラマ
                         英語版はフリーで公開
                              http://grsj.jp/neo.pdf
                              (CC-BY-SA 3.0)
                         企画書であり計画書



       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.21/37
関連研究分野・プロジェクト



Sustainable computing
   むしろ計算機システムの環境負荷に関わる領域
   地球規模 OS は、計算機システムが社会の持続性の維持に
   寄与できることを追求
     かつ、計算機システムとしてだけではなく、社会システムとして捉え、設計
     していくことにその意義がある

マイクロ/スマートグリッド等
   電力の融通を行うシステム
   地球規模 OS では電力に留まらず、資源・エネルギー一般
   の融通と共有を扱う
よいことプラットフォーム              (村井純 他; G1 サミットからの提案)

   地球規模 OS のサービス基盤と捉えることができる

                地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.22/37
検討編
一緒に考えていきましょう




       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.23/37
目標となるエネルギー消費率は?



仮に、人類が文明を持続できるために必要十分なエネ
ルギー消費率を 10TW と置く
 これは十分に低い値ではない可能性があるが、現状と比べ
 ればかなり低い
これを現在の世界の人口で割れば、 1 人当たりのエネ
ルギー予算が導かれる




       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.24/37
目標となるエネルギー消費率は?



仮に、人類が文明を持続できるために必要十分なエネ
ルギー消費率を 10TW と置く
 これは十分に低い値ではない可能性があるが、現状と比べ
 ればかなり低い
これを現在の世界の人口で割れば、 1 人当たりのエネ
ルギー予算が導かれる
その値は約 1.4kW




         地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.24/37
関連事例 – 2000-Watt Society (Switzerland)



http://en.wikipedia.org/wiki/2000-watt_society
2050 年までに産業国のエネルギー消費率を 1 人当たり
2kW に抑えるという運動
現在の人類全体のエネルギー消費率を全人口で割って
いる

スイスは現状 5kW 社会で、1960 年代には 2kW 社会
だった




               地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.25/37
私たちにとって 1 人当たり 1.4kW とは?



現状、日本のエネルギー消費率は約 700GW
1 人あたりでは約 5.5kW
1.4kW 社会の実現は、我が国ではエネルギー消費を                              1
                                                        4
に減らさなければならないことを意味する

同時に、各家庭の状況に注目した場合、既に 1 人あた
り 1.4kW 以下を実現している家庭も多いのでは
むしろ交通や各種産業を含む、社会インフラの面での
エネルギー効率の向上が必要
 どこまで自動化でき、どこから社会のルールなのか



         地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.26/37
地球規模 OS への要求



1. 物質・エネルギー循環のアカウンティングおよび需
給マッチング
2. あらゆる資源をネットワーク上の抽象として扱うた
めの、大規模・大容量分散ストレージ
3. 社会インフラとしての公共性の実現
4. 高信頼性のための可塑性の実現
5. 新たな資源管理の必要が生まれた際等の創発性の
実現
6. 知識の共有と保守のためのオープンソース化
7. 法律改正等、人間のルールに対して働きかけるため
の仕組み

        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.27/37
基本方針



地球規模 OS では P2P (Peer-to-Peer) 技術を採用
  P2P には、中央制御を排すことを通して、専用のインフラスト
  ラクチャを用意することなしに、皆が価値あると認めるサービ
  スが規模を拡大していけるという特徴がある

P2P は、地球規模 OS に対する要求のうち 3∼5 を実現
するに役立ち、高い信頼性をもって 1∼2 を実現するた
めの支えになると期待できる
  地産地消 P2P (P2P の強化概念) を推進する


そうした技術上の選択に加え、政策面に関しても、要
求のうち 7 を実現すべく、地球規模 OS の運用時に、
必要とされる政策提言が支援されるような枠組みにつ
いて考えていく必要がある
           地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.28/37
機能と階層




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.29/37
ひとまずのまとめ



現在の文明は私たちの多くが現役のうちに終了します
 資源・エネルギーは枯渇しないが利用しづらくなっ
 ていく
 それでも無理してエネルギーを使うと自分の首を絞
 める生物多様性の劣化、環境の悪化へ
太陽からのエネルギー予算を人間の身の丈で利用し、
自然に対する非暴力、不服従を貫いて持続可能な新し
い文明をつくる
 そのための基盤としての地球規模 OS
 その一部としての新しい通貨
  同時に、来るべき混乱から身を守るための術



       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.30/37
それは可能なのでしょうか?




  地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.31/37
「宇宙のなかで私たちに与えられた機能以外、なんの
権威に頼ることもなく、それをどうやって達成させた
らいいかも発見できる。宇宙では、もっとも理想的な
ことが、もっとも現実に即した実際的 (プラクティカル)
なことなのだ」
                           — バックミンスター・フラー


“. . .we may discover how it may be accomplished by
our own directly-seized initiative, undertaken and
sustained without any further authority than that of
our function in universe, where the most ideal is the
most realistically practical.”
                                     — Buckminster Fuller
                地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.32/37
ワークショップ編
一緒につくっていきましょう




       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.33/37
よいことプラットフォーム



村井純 他; G1 サミットからの提案
(私的に所有される) 様々なレベルにおけるセンサネッ
トワーク・インフラストラクチャからの情報を公益の
ために利用可能にし、多様な応用を生むための基盤と
する取り組み
 ウェザーニューズ社 (集合知による気象予測)
 インターネット自動車
 NTT docomo による人間の流動の観測
 クロネコヤマトのセンサ情報の活用
 . . . 等々
規制との戦い
            地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.34/37
ウェザーニューズ社の取り組み



有料会員からのリポートを解析して気象を予測

「従来の天気予報では、生活に密着している情報を、
アウトソーシングしていた . . . 自分の身の回りの変化
を五感で感じるようにして欲しい」
「クラウド同士がうまく繋がった状態で、各々が判断
できるというプラットフォームが必要 . . . 一個、完全な
プラットフォームが必要と思った時点でおかしなこと
になる」
       — 石橋 知博 (ウェザーニューズ社取締役)




        地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.35/37
ウェザーニューズ社の取り組みを機能と階層で考える




      地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.36/37
ワークショップのお題



1) 人間のひとりひとりが目で見て、耳で聞いて、肌で
感じた気象情報を集めるプラットフォームをデザイン
してください
2) そのプラットフォームからの入力を、次の出力につ
なげてください
   a) 地球環境の可視化
   b) 減災
   c) エネルギー制御




       地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.37/37

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地球規模OS の実現に向けて

  • 1. WIDE 合宿 2011 春 ボードワークショップ 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ ∼ 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 特別研究講師 斉藤 賢爾 ks91@sfc.wide.ad.jp Twitter: ks91020 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.1/37
  • 2. 「既存の現実と闘うことではけっして物事を変えられ ない。何かを変えるためには既存のモデルを時代遅れ にする新しいモデルを打ち立てよ」 — バックミンスター・フラー “You never change things by fighting the existing reality. To change something, build a new model that makes the existing model obsolete” — Buckminster Fuller 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.2/37
  • 3. これまでとこれからのあらすじ (架空アニメ作品「産業社会少女まどか ⋆ マギカ」より) 第 1 話「石油があった、ような . . .」 第 2 話「成長はとっても嬉しいなって」 第 3 話「もう石油ピークも怖くない」 第 4 話「石炭ピークもピークウランもあるんだよ」 第 5 話「1 人あたり 1.4kW なんて、あるわけない」 第 6 話「こんなの絶対おかしいよ」 第 7 話「次の文明と向き合えますか?」 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.3/37
  • 4. 問題提起編 青白き点 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.4/37
  • 5. 問題の捉え方 問題の中に身をおいてしまうと、見えなくなってしま うものがあります 既存の現実と闘うことではけっして物事を変えられない (フラー) 問題は突き放して考える必要があります 問題と距離をおき、うまく表現できれば解決方法が自明に 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.5/37
  • 6. 問題の捉え方 問題の中に身をおいてしまうと、見えなくなってしま うものがあります 既存の現実と闘うことではけっして物事を変えられない (フラー) 問題は突き放して考える必要があります 問題と距離をおき、うまく表現できれば解決方法が自明に 地球は今、問題を抱えています その問題を考えるとき、どのくらいの距離をおけばよいの でしょうか 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.5/37
  • 7. とりあえず土星の軌道まで離れてみました 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.6/37
  • 8. PALE BLUE DOT (青白き点) カール・セーガンの提案で 撮影 1990 年 2 月、太陽系の黄 道面を離れたボイジャー 1 号は地球を振り返る 地球はどこ? 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.7/37
  • 9. PALE BLUE DOT (青白き点) カール・セーガンの提案で 撮影 1990 年 2 月、太陽系の黄 道面を離れたボイジャー 1 号は地球を振り返る 地球はどこ? 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.7/37
  • 10. PALE BLUE DOT (青白き点) セーガンの講演 「この青白い点の上に、あ なたの愛するすべての人、 すべての知人、あなたが聞 いたことがあるすべての人、 すべての人類が生きている」 YouTube 動画 http://bit.ly/9PApWV (full speech) http://bit.ly/2fTCL5 (日本語字幕) 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.8/37
  • 11. 2006 年、カッシーニが撮影した地球 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.9/37
  • 12. 2006 年、カッシーニが撮影した地球 Our Spaceship EARTH 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.9/37
  • 13. 2006 年、カッシーニが撮影した地球 Our Spaceship EARTH 宇宙船地球号の上での活動を可能にしているエネルギー源は? 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.9/37
  • 14. 2006 年、カッシーニが撮影した地球 Our Spaceship EARTH 宇宙船地球号の上での活動を可能にしているエネルギー源は? 私たちの生命を維持しているメカニズムは? 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.9/37
  • 15. エネルギー、経済、環境 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.10/37
  • 16. 単位系のおさらい 1J (ジュール) = 1Ws (約 2.78 × 10−7 kWh) エネルギー、仕事、熱量の単位 1N の力が、力の方向に物体を 1 メートル動かすときの仕事 1kg · m2 · s−2 小さなリンゴが地球上で 1 メートル落下するときの仕事 1kJ で Google で 1 回検索でき、1MJ で 3kg の氷が溶ける 1W (ワット) = 1J/s 仕事率の単位 人体は約 100W 消費します (10 秒で Google での検索 1 回) ヤシマ作戦 (TV 版) は 160GW (今だと 300GW 近く) 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.11/37
  • 17. 規模感の把握のために 植物プランクトンのエネルギー蓄積: 約 62.7TW その約 1%である 630GW のパワーで魚や海洋哺乳 類が海水をかき回す結果、深海の潮流に作用し、気 候に影響をもたらしているという学説 植物のエネルギー蓄積: 約 120TW ぐらいか 植物プランクトンの酸素生成への寄与が約 50% 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.12/37
  • 18. 地球のエネルギー予算、収入と支出 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
  • 19. 地球のエネルギー予算、収入と支出 地球の大気に入るエネルギー 総量は約 174PW 174PW 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
  • 20. 地球のエネルギー予算、収入と支出 地球の大気に入るエネルギー 総量は約 174PW 174PW 潮汐力: 約 3TW/0.002% 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
  • 21. 地球のエネルギー予算、収入と支出 地球の大気に入るエネルギー 総量は約 174PW 174PW 潮汐力: 約 3TW/0.002% 地熱: 約 23TW/0.013% 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
  • 22. 地球のエネルギー予算、収入と支出 地球の大気に入るエネルギー 総量は約 174PW 174PW 潮汐力: 約 3TW/0.002% 地熱: 約 23TW/0.013% 化石燃料の燃焼: 約 13TW/0.007% 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
  • 23. 地球のエネルギー予算、収入と支出 地球の大気に入るエネルギー 総量は約 174PW 174PW 潮汐力: 約 3TW/0.002% 地熱: 約 23TW/0.013% 化石燃料の燃焼: 約 13TW/0.007% 太陽からの放射: 約 174PW/100% 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
  • 24. 地球のエネルギー予算、収入と支出 地球の大気に入るエネルギー 総量は約 174PW 174PW 174PW 潮汐力: 約 3TW/0.002% 地熱: 約 23TW/0.013% 化石燃料の燃焼: 約 13TW/0.007% 太陽からの放射: 約 174PW/100% 3 割が即、反射され、7 割が吸 収された後に赤外線放射 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.13/37
  • 25. 文明の全景 人類のエネルギー利用は 約 12.5∼18TW (でかい) 米国: 約 3.4TW (11kW/人) 日本: 約 700GW (5.5kW/人) 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
  • 26. 文明の全景 人類のエネルギー利用は 約 12.5∼18TW (でかい) 米国: 約 3.4TW (11kW/人) 日本: 約 700GW (5.5kW/人) 完新世 (Holocene) から 人新世 (Anthropocene) へ 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
  • 27. 文明の全景 人類のエネルギー利用は 約 12.5∼18TW (でかい) 米国: 約 3.4TW (11kW/人) 日本: 約 700GW (5.5kW/人) 完新世 (Holocene) から 人新世 (Anthropocene) へ 私たちはエネルギーの流れを 制御し、そこに情報の流れを 乗せています 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
  • 28. 文明の全景 人類のエネルギー利用は 約 12.5∼18TW (でかい) 米国: 約 3.4TW (11kW/人) 日本: 約 700GW (5.5kW/人) 完新世 (Holocene) から 人新世 (Anthropocene) へ 私たちはエネルギーの流れを 制御し、そこに情報の流れを 乗せています その情報の流れがエネルギー の流れを支配しています 貨幣経済の都合で起こる 壮大な無駄と暴力 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
  • 29. 文明の全景 人類のエネルギー利用は 約 12.5∼18TW (でかい) 米国: 約 3.4TW (11kW/人) 日本: 約 700GW (5.5kW/人) 完新世 (Holocene) から 人新世 (Anthropocene) へ 私たちはエネルギーの流れを 制御し、そこに情報の流れを 乗せています その情報の流れがエネルギー の流れを支配しています 貨幣経済の都合で起こる 壮大な無駄と暴力 ただしそれは続きません 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.14/37
  • 30. ピークオイル/コール (石炭)/ウラン . . . ピークオイル 世界の石油生産量がピークを迎 え、その後は永久に減少傾向に 転じる時点 その後は経済は衰退 私たちはすでにピークオイル 期に突入しました IEA は在来型石油の生産ピーク は 2006 年との見方を発表 今世紀前半、すべての主要な エネルギー資源の生産がピー http://www.theoildrum.com/node/5177 クを打つと見られます 現在の文明は、私たちの多くが 現役のうちに終了します 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.15/37
  • 31. The Big Picture — 大きな絵 エネルギー、経済、環境のすべての問題は、私たちがどのように 情報 (主に「お金」) の流れを作るかによって生まれています 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.16/37
  • 32. 提案編 地球規模オペレーティングシステム 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.17/37
  • 33. 問題の本質と解決に向けた着眼点 地球上で文明を持続させていくためには、低エネル ギー消費を維持できる社会に変えていく必要がある 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.18/37
  • 35. 問題の本質と解決に向けた着眼点 地球上で文明を持続させていくためには、低エネル ギー消費を維持できる社会に変えていく必要がある 無駄なく資源・エネルギーを使い回すための調整を担 う何かが必要 オペレーティングシステムだ! 計算機システムにおける OS は、計算機上の資源の利用の 調整を行う基本ソフトウェアである 同様に、地球規模で資源・エネルギーの利用の調整を行う OS により、文明が低エネルギー消費を維持することが可 能になるのではないか 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.18/37
  • 36. 宇宙船地球号での生命維持が機能するための オペレーティングシステム (OS) 自然への非暴力、不服従を貫くために Non-violence and peaceful resistance against the nature 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.19/37
  • 37. 地球規模 OS 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.20/37
  • 38. SF で描くゴール 「不思議の国の NEO — 未来を変えたお金の話」 ジャンル: 「SF お金ファンタジー」 お金を根本から変える技 術の存在 それにより生まれるドラマ 英語版はフリーで公開 http://grsj.jp/neo.pdf (CC-BY-SA 3.0) 企画書であり計画書 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.21/37
  • 39. 関連研究分野・プロジェクト Sustainable computing むしろ計算機システムの環境負荷に関わる領域 地球規模 OS は、計算機システムが社会の持続性の維持に 寄与できることを追求 かつ、計算機システムとしてだけではなく、社会システムとして捉え、設計 していくことにその意義がある マイクロ/スマートグリッド等 電力の融通を行うシステム 地球規模 OS では電力に留まらず、資源・エネルギー一般 の融通と共有を扱う よいことプラットフォーム (村井純 他; G1 サミットからの提案) 地球規模 OS のサービス基盤と捉えることができる 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.22/37
  • 40. 検討編 一緒に考えていきましょう 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.23/37
  • 41. 目標となるエネルギー消費率は? 仮に、人類が文明を持続できるために必要十分なエネ ルギー消費率を 10TW と置く これは十分に低い値ではない可能性があるが、現状と比べ ればかなり低い これを現在の世界の人口で割れば、 1 人当たりのエネ ルギー予算が導かれる 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.24/37
  • 42. 目標となるエネルギー消費率は? 仮に、人類が文明を持続できるために必要十分なエネ ルギー消費率を 10TW と置く これは十分に低い値ではない可能性があるが、現状と比べ ればかなり低い これを現在の世界の人口で割れば、 1 人当たりのエネ ルギー予算が導かれる その値は約 1.4kW 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.24/37
  • 43. 関連事例 – 2000-Watt Society (Switzerland) http://en.wikipedia.org/wiki/2000-watt_society 2050 年までに産業国のエネルギー消費率を 1 人当たり 2kW に抑えるという運動 現在の人類全体のエネルギー消費率を全人口で割って いる スイスは現状 5kW 社会で、1960 年代には 2kW 社会 だった 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.25/37
  • 44. 私たちにとって 1 人当たり 1.4kW とは? 現状、日本のエネルギー消費率は約 700GW 1 人あたりでは約 5.5kW 1.4kW 社会の実現は、我が国ではエネルギー消費を 1 4 に減らさなければならないことを意味する 同時に、各家庭の状況に注目した場合、既に 1 人あた り 1.4kW 以下を実現している家庭も多いのでは むしろ交通や各種産業を含む、社会インフラの面での エネルギー効率の向上が必要 どこまで自動化でき、どこから社会のルールなのか 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.26/37
  • 45. 地球規模 OS への要求 1. 物質・エネルギー循環のアカウンティングおよび需 給マッチング 2. あらゆる資源をネットワーク上の抽象として扱うた めの、大規模・大容量分散ストレージ 3. 社会インフラとしての公共性の実現 4. 高信頼性のための可塑性の実現 5. 新たな資源管理の必要が生まれた際等の創発性の 実現 6. 知識の共有と保守のためのオープンソース化 7. 法律改正等、人間のルールに対して働きかけるため の仕組み 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.27/37
  • 46. 基本方針 地球規模 OS では P2P (Peer-to-Peer) 技術を採用 P2P には、中央制御を排すことを通して、専用のインフラスト ラクチャを用意することなしに、皆が価値あると認めるサービ スが規模を拡大していけるという特徴がある P2P は、地球規模 OS に対する要求のうち 3∼5 を実現 するに役立ち、高い信頼性をもって 1∼2 を実現するた めの支えになると期待できる 地産地消 P2P (P2P の強化概念) を推進する そうした技術上の選択に加え、政策面に関しても、要 求のうち 7 を実現すべく、地球規模 OS の運用時に、 必要とされる政策提言が支援されるような枠組みにつ いて考えていく必要がある 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.28/37
  • 47. 機能と階層 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.29/37
  • 48. ひとまずのまとめ 現在の文明は私たちの多くが現役のうちに終了します 資源・エネルギーは枯渇しないが利用しづらくなっ ていく それでも無理してエネルギーを使うと自分の首を絞 める生物多様性の劣化、環境の悪化へ 太陽からのエネルギー予算を人間の身の丈で利用し、 自然に対する非暴力、不服従を貫いて持続可能な新し い文明をつくる そのための基盤としての地球規模 OS その一部としての新しい通貨 同時に、来るべき混乱から身を守るための術 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.30/37
  • 49. それは可能なのでしょうか? 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.31/37
  • 50. 「宇宙のなかで私たちに与えられた機能以外、なんの 権威に頼ることもなく、それをどうやって達成させた らいいかも発見できる。宇宙では、もっとも理想的な ことが、もっとも現実に即した実際的 (プラクティカル) なことなのだ」 — バックミンスター・フラー “. . .we may discover how it may be accomplished by our own directly-seized initiative, undertaken and sustained without any further authority than that of our function in universe, where the most ideal is the most realistically practical.” — Buckminster Fuller 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.32/37
  • 51. ワークショップ編 一緒につくっていきましょう 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.33/37
  • 52. よいことプラットフォーム 村井純 他; G1 サミットからの提案 (私的に所有される) 様々なレベルにおけるセンサネッ トワーク・インフラストラクチャからの情報を公益の ために利用可能にし、多様な応用を生むための基盤と する取り組み ウェザーニューズ社 (集合知による気象予測) インターネット自動車 NTT docomo による人間の流動の観測 クロネコヤマトのセンサ情報の活用 . . . 等々 規制との戦い 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.34/37
  • 53. ウェザーニューズ社の取り組み 有料会員からのリポートを解析して気象を予測 「従来の天気予報では、生活に密着している情報を、 アウトソーシングしていた . . . 自分の身の回りの変化 を五感で感じるようにして欲しい」 「クラウド同士がうまく繋がった状態で、各々が判断 できるというプラットフォームが必要 . . . 一個、完全な プラットフォームが必要と思った時点でおかしなこと になる」 — 石橋 知博 (ウェザーニューズ社取締役) 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.35/37
  • 54. ウェザーニューズ社の取り組みを機能と階層で考える 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.36/37
  • 55. ワークショップのお題 1) 人間のひとりひとりが目で見て、耳で聞いて、肌で 感じた気象情報を集めるプラットフォームをデザイン してください 2) そのプラットフォームからの入力を、次の出力につ なげてください a) 地球環境の可視化 b) 減災 c) エネルギー制御 地球規模 OS の実現に向けて ∼ ポスト石油・石炭ピーク時代における情報インフラストラクチャ – p.37/37