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FinTech そのビジョンと実現に向けての施策
- 6. FinTechにインパクトをもたらす肝
FinTechが金融業界内部の変革にとどまらず、産業全体にインパクトをもたらす変革につなげるためには、インターネ
ット上でやり取りされる情報化された財の対価の支払いが、フリクションなく実現する世界を実現する必要がある。
- コンテンツ、電力、シェアリングエコノミーのパラダイムのもとで情報化された不稼働資産等
チャネルが分散化したインターネット上の支払いの円滑は、様々なチャネルから銀行をはじめとする支払アカウント
提供業者に接続し、支払のオペレーションを実行することができて初めて実現する。
欧州PSD2では、銀行をはじめとする支払アカウント提供業者に対し、資格を取得したアカウント情報サービス事業者
(AISP)と支払指図サービス事業者(PISP)からの接続要請に応じる義務(XS2A)を課すことで、実質的に銀行に
API導入を義務付ける施策を導入。これにより、銀行は口座情報の開放を前提としたインターネット時代の新しいビジ
ネスモデルの構築に挑戦する方向に舵が切られている。
<新たなビジネスモデルの例>
・ 連携を強制されたデータ以上に有用なデータの創出とその連携を有料で実施
・ 自らAISPモデルに参入
・ オープンAPIの提供を通じ銀行をプラットフォーム化し、その上で多様なプレイヤーが事業を営むエコシステムを
組成する
銀行によるRESTfulなオープンAPIの導入の先には、ブロックチェーンを用いたセキュアなスマートコントラクトが
APIを経由して銀行口座から直接自動的かつマイクロな決済を実現する世界がひらける。ブロックチェーンは、銀行
APIの導入によって初めて、IOTにおける様々なデータ連携や取引をセキュアかつ自動的に行い、決済を完了させるキ
ーテクノロジーとして位置づけられることになる。
- 代替的なシナリオとしては、IoT時代の決済を仮想通貨が担うというシナリオもありうるが、法定通貨の決済コ
ストが十分に下がり、マイクロな支払いも可能になるシナリオも十分にありうる。
APIを通じて様々な事業者が、ユーザーの意思により銀行から直接・リアルタイムで決済を実現するというシナリオ以
外もありえたが、欧州がXS2Aに舵を切った以上、このモデルよりも優位性のあるモデルを提示できないかぎりは、国
際競争の観点からこのシナリオに可能なかぎり早く追随するのが得策
- 7. 銀行API+ブロックチェーンモデルのインパクト
金融仲介の効率性を格段に高めることになる
リアルタイム決済の実現による金融システムの強靭性の強化
- 支払サイトという概念がなくなることにより、資金繰りのための別の金融サービスが生まれる
- 銀行の新たなビジネスモデルのチャンス
決済データの銀行からの開放により生まれる様々な事業と他の金融サービスへの好影響
- 資産運用ビジネス、保険ビジネスetc
エコシステム型のビジネスモデルのもと、多くの新規参入企業が、より利用者にとって使い勝手の
良い金融サービスを開発
金融機関にAPIが組み込まれることは、金融モニタリングのリアルタイム化と高度化を実現するこ
とにつながり、新たな金融モニタリングの手法とツールが見えてくる
- 共通APIが組み込まれ、金融当局向けに金融機関の持つアカウントデータが連携されれば、収集し
た全ての金融機関のデータをビッグデータとして解析することで、例えば、市場のどこにリスクが
溜まっているかリアルタイムに分析することができる。
- 大量の金融トランザクションデータを解析することで、一定の特徴量から将来パターンの予測も可
能となり、金融危機を未然に防止するオペレーションも不可能ではないと思われる。
⇒ 「フォワードルッキングなリスク把握と対応」は、リアルタイムなデータを分析することで把握さ
れる客観的かつ定量的な現状認識があってこそ。
一方、決済チャネルを寡占していたクレジットカードのモデルは変更を迫られることになる
<金融が抱える課題の多くを解決>
欧州と英国は2018年第一四半期までに銀行によるAPIの実装を目指すものとされている。
- 8. 国際競争の環境
多くのイニシアチブは欧州、とりわけ英国から発信されている
- 金融立国として、金融業界の国際標準語である英語の地位を最大限に利用したルールメイク
- アジアシフトを敷いており、シンガポール・オーストラリアと連携
- Open Banking Standardへの自主的取り組みも、Brexit後はCMAから導入に向けた勧告が出され
るなど、加速が見られる。
今年に入り、中国がブロックチェーンで猛追
- インターネットと同様、政府管理のブロックチェーン?
- ブロックチェーン業界の錚々たるメンバーをアドバイザーに迎える
<日本単独で行うのは環境面・人材面で無理>
⇒ 日本一国のクローズドイノベーションで太刀打ちできる状況にはなく、国際的なルールメイクの主
導権の所在が決まるまでそれほど猶予があるわけでもないように思われることや、地政学的な点も
考慮に入れると、適切な外国政府パートナーと組んで、アジアの面を取りにいく戦略を考えなけれ
ば、FinTechの果実を取り逃してしまうのではないか
- 10. 機能 決済 送金 交換 融資 投資 保険
収納代行
プリペイドカード
送金
デビットカード
電子マネー
P2P
(送金)
外国通貨(DCC)
(クラウドファンディング) 延長保証
電子マネー
(前払)
仮想通貨
ソーシャルレンディング
ソーシャル
インベストメント P2P保険
決済代行
立替払
クレジットカード
電子マネー
(後払) ポイント
トランザクション
レンディング
ロボアドバイザー 非保険化
ポイント 仮想通貨
前払 資金決済法
後払
割賦販売法
資金決済法
資金決済法
商
品
レ
イ
ヤ
ー
貸金業法 金商法 保険業法
分散型
AI
販
売
レ
イ
ヤ
ー
Personal Finance Management
経営・会計支援(中小企業)
銀行代理業、保険代理業、証券仲介業
インフラ
レイヤー
認証・セキュリティ・不正検知
犯収法、個人情報保護法等
< BCBS > <IOSCO > <IAIS >
<FATF>
※1 銀行は銀行法に基づく銀行業として決済、送金、融資を営むことが可能である。
※2 各法律の適用は原則的なものを示すものであり、適用除外に該当する場合には適用を受けないサービスもある。
※3 クラウドファンディングについては、融資型、投資型に分類されるもののほか、売買型や寄付型に分類されるサービスもある。
個別サービスの導入
- 14. 大企業におけるイノベーション導入の鉄則
トップマネジメントのコミットメント
ー イノベーションは重要な経営戦略と位置づけ
ー 実務部隊から上がってくる案件をマネジメントに直接説得できる者
担当するトップマネジメントは組織の長期戦略に責任を負う者(CEO、CFO、CSO)
ー 個別最適に陥らない全社的・長期的な観点からの投資
実務部隊は既存の事業ユニットに属してはいけない
ー ディスラプティブなイノベーションは既存の事業ユニットに潰される
実務部隊はトップマネジメントの直属部隊
ー 間に余計な階層を設けるとディスラプティブなイノベーションの角がとれてしまう
規制当局におけるイノベーション担当部署への応用
企画・監督いずれにも帰属しない部署
省庁の長期戦略に責任を負う幹部の直属組織
上がってきた案件を企画・監督に下ろすのでは意味がなく、その部署と直属の上司で判断
ー 既存の規律とぶつかる場合には、例外を認めるための枠組み・ツールを用意
適切なKPIのもとでPDCA管理
注)組織令を動かさずに行う方法として企画・監督の共管として部署構成員は両局兼務がありうるか
規制改革のための枠組み
- 15. ビジネスモデルの実地テストという位置づけ
ー 期間と対象者を限定し、ビジネスモデルの仮説を検証することを目的とする
ー 対象者はリスク許容度の高いアーリーアダプター、最初の1000人
法律や規則を直接いじる必要はない
ー イノベーションは既存のルールの境界領域で起こる。特にディスラプティブなイノベーションは、マージナルである
もののルールの根幹に関わる問題を提起するため、解釈指針として一般化されてしまうノーアクションレターや
グレーゾーン解消制度では解消できない
ー 先の例に見るとおり、抵触は監督指針レベルで発生するものがほとんど(法律や規則は十分に抽象的。直
接に抵触しており修正が必要であれば改正ダマとして上げやすい)
「イノベーションの促進」を目的として、案件ごとに個別的に例外を許容する枠組み
ー 多くの事案は、「本件はやっても良いと思われるが、この事案を認めると、そのロジックを適用すれば、現行法
上(ないし現行監督上)とても認められない○○という事案まで認めなければならないことになる」という理
由で認められない
- 具体的なビジネスモデルのもと、「イノベーションの促進のためにビジネスモデルの仮説検証を行う」という目的
のために、一定の限定された期間、限定された対象者につき行うものについて、監督指針上の例外を許容
する、という建付けであれば、上記のような理由で認められないことにはならない
ー 例外を許容するための着眼点の公表
不測の事態が生じた場合の対処
ー 利用者保護のための一定のコンティンジェンシープラン(保険手当を含む)の用意を、提案を許容するため
の判断基準に含める
ー 問題が生じた場合に関する当局のあらかじめのコミットは技術的に難しいところもあり、曖昧にしておくことはや
むを得ない
規制の例外を認めるための枠組み
- 17. 10
弁護士 増 島 雅 和
森・濱田松本法律事務所
tel. 03.5220.1812
email. masakazu.masujima@mhmjapan.com