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利他的UX研究の成果と課題
- 9. Copyright © Masaya Ando
これまでに行った研究
安藤研究室では、いくつかのアプローチで利他的UXの研究
に取り組んできた。
① 田中・安藤「“やってあげる”行為とその意欲の測定」、2014
• 色々な利他的行動の意欲をマグニチュード法で測定する方法の研究
• 相手との親密度によって意欲が変わることや行為状況で繊細に意欲が変
化することを示した
② 安藤・田中「相互援助ネットコミュニティにおける依頼情報の伝え
方と“やってあげる意欲”、2015
• 地域の助け合いのSNSを想定し、その依頼情報が掲示板かメッセージの
違いだけで比較実験。メッセージ方式の方がやってあげる傾向が高い
③ 安藤・杉山「どんな表現であれば人は援助しても良いと思うの
か?」、2017
④ (研究中)「利他的UXのアプリはどんな人に評価されるのか?」
- 10. Copyright © Masaya Ando
結果:援助依頼がメッセージ方式か掲示板方式かの違いだけ
で、人の援助行動の判断が異なる。
**
**
χ2 = 22.0, df = 6, p < .01
* p < .05
** p < .01
②地域SNSでの援助依頼情報の伝え方と利他的意欲
- 11. Copyright © Masaya Ando
②地域SNSでの援助依頼情報の伝え方と利他的意欲
結果:情報閲覧回数について交互作用が有意。また、メッ
セージ方式において明示ありと明示なしの間に有意な差。
*
* p < .05
- 13. Copyright © Masaya Ando
③SNSでの依頼情報がどういうデザインなら助けるか
目的:
‒ 普及が拡大しているSNS上での社会貢献活動の援助依頼
の情報画面(依頼情報)に対して、閲覧者はどのように
反応するかについて実験により把握
‒ 結果から、どのような情報提示の方法が援助の動機づけ
となりうるかについて考察
方法:
‒ Webアンケート形式での依頼情報の提示による印象及び
援助の意思決定などの反応を把握・分析
‒ 仮説に基づいて依頼情報画面を改良する前後で、依頼情
報への反応がどのように変化するかについて分析
- 14. Copyright © Masaya Ando
③SNSでの依頼情報がどういうデザインなら助けるか
実験1 実験2W
e
b
ア
ン
ケ
ー
ト
に
よ
る
実
験
イ
ン
タ
ビ
ュ
ー
に
よ
る
思
考
プ
ロ
セ
ス
の
検
討
10名の協力者への
インタビュー
+
M-GTAによる分析
依頼情報画面
改良案の検討
実
験
1
と
2
の
結
果
を
因
子
分
析
等
で
比
較
分
析
特に判断に迷うようなポイントや「やって良い」と
感じる条件などに注目して検討
同一の情報を使用して実施
基本的には
「助けよう」と思う
人が増える方向で改善
- 16. Copyright © Masaya Ando
③SNSでの依頼情報がどういうデザインなら助けるか
インタビューを通して、依頼情報画面の状況と反応の傾向を
質的に分析・解釈し、以下の5つの点を改善点として導出。
① 依頼主が十分に知られていないと考えられる個人や団体の場合、通常
よりも依頼主の情報量を増やす
② 困っていると感じてもらえないと援助は行われない。依頼文章には必
ずどうして困っているかを説明し、必要に応じて援助対象が写った
写真、困っている人の声などの情報を追加する
③ (閲覧者が)「自分が助けた」という実感を得られるような情報があ
れば追加する
④ 援助の手段はわかりやすく提示する
⑤ 援助内容を身近に感じさせる関連情報を提示するなどして、自分ごと
意識を高め責任分散を防ぐ工夫をする
情報追加はポイントに沿って必要最小限になるように考慮した
- 17. Copyright © Masaya Ando
③SNSでの依頼情報がどういうデザインなら助けるか
結果:改良後では、依頼情報3のみ5%水準で有意にやって
あげる人が7.3%増加した。だが、他は差がなかった。
援助率(%) やってあげる意欲(平均)
実験1 実験2 実験1 実験2
国際
依頼1
(寄付)
36.8 36.2 4.0 4.0
依頼2
(毛布)
51.0 50.7 4.2 4.2
地域
依頼3
(バザー)
41.3 48.6* 3.9 4.0
依頼4
(ごみ)
46.7 51.7 4.1 4.1
( χ2 t
* p <.05)
- 18. Copyright © Masaya Ando
-0.2
-0.15
-0.1
-0.05
0
0.05
0.1
0.15
0.2
因子1 因子2 因子1 因子2 因子1 因子2 因子1 因子2
依頼1 依頼2 依頼3 依頼4
実験1 実験2
③SNSでの依頼情報がどういうデザインなら助けるか
結果:依頼情報に対する印象分析では、改悪傾向があるもの
もある。(因子1:援助対象者へのネガティブ印象、因子2:援助に対する人任せ)
ネガティブ
ポジティブ
- 19. Copyright © Masaya Ando
リッチなデザインがダメ?
結果的に既存の募金・寄付
サイトのように、多くの人
からお金を集めるサービス
のような印象のデザインに。
よくデザインされていると、
自分が援助しなくても良さ
そうな印象になったのかも
しれない。ただし、援助の
意思決定率に差はない。
責任分散の要因に
安藤, 田中(2015)の
実験結果とも類似
- 20. Copyright © Masaya Ando
改善されたものもある
援助率も有意に高く、
印象も改善。
問題状況を示す写真に入
れ替え、依頼主と援助対
象の情報の優先度を変更。
困り度をわかりやすく
伝える事が重要
- 21. Copyright © Masaya Ando
③SNSでの依頼情報がどういうデザインなら助けるか
この研究でわかったことを整理すると。
依頼情報3だけ、デザインにより印象を改善でき、援助率を
上げる事ができた。だが、その理由まではまだ十分分析でき
ていない。
逆に印象が悪くなったものもある。だが、改良する5つの方
向性は、誤っていたとは言い切れない。援助内容など、要因
が多いため、要因を絞り、それぞれの効果を見る必要がある。
要するに要因が複雑でわからないことが多すぎる
おそらく人の要因がもっと何かあるはず
- 23. Copyright © Masaya Ando
おそらく人の要因が大きすぎるので
利他的行動尺度を元にk-meansで分けてみた。
1:どの対象にも非利他的
2:家族だけ利他的
5:誰に対しても利他的
3:家族・友達人まで利他的
4:どの対象にも程々に利他的
- 24. Copyright © Masaya Ando
利他的な人のパターンの特徴
群別に見ていたら、利用しているSNSの数に違いがあること
がわかった。これは人の社会性を示しているのではないか?
- 25. Copyright © Masaya Ando
④新たな調査を実施してみた
利他的尺度得点で2分割してみると、やはり利他的な人ほど
フォロワー数が多い。
30
58.7%
30
47.5%
- 27. Copyright © Masaya Ando
④新たな調査を実施してみた
既存の利他的UXアプリで人助けしてみたいかを5段階で訪ね
た。どうやら地域愛着の方が綺麗に差が出そう。
- 28. Copyright © Masaya Ando
④新たな調査を実施してみた
安藤の独自手法であるSEPIA的な分類を試みた。なお、SNS
フォロワー数は主成分で簡便に選択肢で指標化した。
SNS
- 31. Copyright © Masaya Ando
④新たな調査を実施してみた
この分析は、まだ途中。ただし、いくつかの方向性が見えて
きた。
SNSのフォロワー数は、その人の社会性を表している可能性
がある。ただ、地元愛が強い人は、必ずしも人数が多い方が
良いわけではない。むしろ、地元愛が低い場合に、利他的な
傾向を示す何かかもしれない。
利他的行為は、居住地への地元愛と、強い関係がありそう。
他者を思う気持ちは、地域とのつながり、つまり地域の問題
を“自分たち事”として考えられると関連しているのではない
か?
利他的UXが援助意欲を換気すべきは「1」と「3」?
- 32. Copyright © Masaya Ando
利他的UXの研究は
人が意外とやってくれない
ことがわかる
でも、ちょっとしたことで
やってくれる可能性がある
こともわかる
- 33. Copyright © Masaya Ando
正直まだ利他的UXには迫りきれてない
ただ、誰かを助けたり
地域のために働いたりすることは
今後ますます必要なこと
安藤研究室では引き続き
「利他的UX宣言」の下
活動を続けていきます
- 34. Copyright © Masaya Ando
正直まだ利他的UXには迫りきれてない
ただ、誰かを助けたり
地域のために働いたりすることは
今後ますます必要なこと
安藤研究室では引き続き
「利他的UX宣言」の下
活動を続けていきます