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やはり俺のスタートアップの
意思決定はまちがっている。
Takaaki Umada / https://medium.com/@tumada/
May 24th, 2015
1
Photo/image credit should read: (cc) Kenneth Yeung -www.snapfoc.us
https://www.flickr.com/photos/kyeung808/7412662724/
2
CEO を最も正確に測るには
意思決定のスピードと質を
見ればいい
- Ben Horowitz
@ Andreessen Horowitz
“Andreessen Horowitz がどうやって CEO を評価するか”
http://www.bhorowitz.com/how_andreessen_horowitz_evaluates_ceos
3
が必要
Focus
スタートアップには
4
時間と資源の乏しいスタートアップは、
をするために、より良い
をしないと生き残れない
意思決定
Focus
5
6%
とある企業での通常の方法で重大な意思決定をした後に
意思決定が「成功した」と判断した案件の数は
つまり、ほとんどの意思決定はまちがっている
6
40%
しかし同じ企業が「とある条件」を満たして意思決定をした場合
意思決定が「成功した」と判断した案件の数は
7
意思決定は改善できる
スタートアップは極度に不確実性が高い状況下でのビジネスで、状況はよく激変し、その度に様々な
意思決定を下さなければならない。そしてその一つ一つがスタートアップにとって命取りとなりうる。
8
スタートアップは会社の命運を左右する意思決定の連続
誰をアサインするか、今やるべきか、No と言うべきか
そもそもこの意思決定は必要か?
戦略策定
戦術決定
技術的負債の解消
パートナーシップ
資金繰り
資金調達
方針転換
人材採用
企業買収
特許申請
昇進 イベント参加契約
技術選択 モチベーションマネジメント
組織構築
人材解雇
改善のための業務全面ストップ
オフィス増築
広告
製品開発
廃業
9
時間と資源の乏しいスタートアップは、
より良い
をして、より良い
をしないと生き残れない
Focus
Decision
良い意思決定ができなければ効率の良いオペレーションに意味はなく、効率的なオペレーションがな
ければ良い意思決定もできない(後述の自我消耗などの影響で)。より良いフォーカスを実現するに
は、良い意思決定と良いオペレーションの両輪が必要である。
10
フォーカスするための両輪: How と What
• スタートアップにおけるフォーカスの重要性
• 時間、ツールやフレームワークの使い方
• なぜスタートアップは意思決定を間違えるのか
• より良い意思決定のやり方
どうやってフォーカスするか(前回) 何にフォーカスするか(今回)
Focus を実現する為に
11
Do Things That Don’t Scale
スケールしないことをしよう
Writing Code
and
Talking to Users
コードを書いて顧客と話そう
Make Something People Want
人が欲しいと思うものを作れ
最初期のフォーカスポイントは明確
12
次第にフォーカスポイントを
自分で意思決定する必要が出てくる
13
意思決定の間違いやすい
ポイントと理由
よりよい意思決定の
方法論
「意思決定のよくある間違い」と「意思決定の方法」
両方について理解する
本スライドでは、意思決定が間違う理由を行動経済学や認知
心理学の視点から振り返りがら、どうやってスタートアップ
の意思決定の間違いを減らし(意思決定の質を良くし)、ま
た意思決定を早めるかについて解説する。
なお行動経済学や意思決定の知見については大きく左記の 2
つの本に依っているので、随時参照のこと。
部立ては以下のとおり。
1. 意思決定が間違う理由
2. 意思決定を改善する方法
(解決策のみ知りたい場合は第二部を読んでください)
タイトルは「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」
から。多くの青春における意思決定もまたまちがっている。
14
意思決定の間違いを減らしながら、意思決定を早くする
Thinking, Fast and Slow
Daniel Kahneman
Decisive
Chip & Dan Heath
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
15
第一部
スタートアップの意思決定が
間違う理由とその解決策
https://www.theinformation.com/YC-s-Paul-Graham-The-Complete-Interview 16
スタートアップは
極めて反直観的である
- Paul Graham
Co-Founder, Y Combinator
http://paulgraham.com/before.html
スタートアップの適切な判断の多くは、反直観的なものが多い。実際に、Y Combinator のパート
ナーたちは起業家に対してアドバイスを行うが、起業家のほとんどはアドバイスを聞かず、1年後に
なって「あのアドバイスを聞いておけばよかった」と言う。
なぜ聞かないのかといえば、アドバイスが反直観的だからだ (Paul Graham)。
以下ではスタートアップの直観がまちがう大きな 3 つの原因を挙げた。
http://paulgraham.com/before.html 17
スタートアップの意思決定がまちがう理由: 反直観的
問題や状況を
適切に認識
できていない
正しく
情報収集
できていない
バイアスに
される
しかし意思決定は対策をすれば良くなることが多い。対策だけで正しい答えに行き着くとは限らない
が、それでもミスは減らすことができる。本稿では、特に以下の 3 つの対応策について解説を行う。
1. スタートアップ特有の問題を適切に認識する
2. 適切な情報収集の手段を用いる
3. バイアスを避ける
18
意思決定のまちがいやすいところを知って対策する
スタートアッ
プ特有の問題
を適切に認識
する
適切な
情報収集の
手段を用いる
意思決定の
バイアスを
避ける
スタートアップ特有の問題を
適切に認識する
19
前述の通り、スタートアップは反直観的である (Paul Graham)。
そのため、問題が問題に認識できなかったり、問題の見方もまた直観的でない場合がある。
本パートでは、スタートアップの問題を把握する上での 2 つの手法について解説する。
1.問題や状況の基本的な捉え方を知る
2.良い問題と選択肢を捉える
20
スタートアップは反直観的だから問題を認識しづらい
問題や状況の
基本的な捉え方を知る
21
Best Practices
22
を知る
そのためにはまず
ニコラ・プッサン - Metropolitan Museum of Art 23
巨人の肩に乗る
人類の叡智を使う
信頼できる書籍やドキュメントを読んでみる。スタートアップに関する多くの課題やその解決策は共
通であり、蓄積された知識はきっとあなたのスタートアップにも役立つ。
24
1. 書籍やドキュメントを読んで直面する問題を知る
よく言われるステージ別に気にするべきこと
最初期は大きなリスク順で検証を続ける。たとえば以
下の順序で考えてみる。
1. 創業チームの頑強さ
2. 顧客の課題を把握できているか
3. 課題に対するソリューションが適切かどうか
4. プロダクト開発は予定通り進んでいるか
5. 顧客に愛されるプロダクトを作れているか
6. ユーザー獲得のチャネルの検証
7. LTV と CAC の検証
ビジネスモデルの検証については、Lean Canvas を
用いると便利。
やるべきでないこと
• パートナーや提携には期待しない (How to Start a
Startup, Lecture 1)
• Corp Dev と話をしない (Don t Talk to Corp
Dev)
• 採用を早くしすぎない (How to Start a Startuo,
Lecture 2)
• 競合を意識しすぎない (Startups in 13
Sentences)
スタートアップを始めるにあたっては以下の本を読んでみると良い。
25
スタートアップの初期にお勧めの本
リーンスタートアップ
Eric Ries
Running Lean
Ash Maurya
スタートアップマニュアル
Steve Blank
一人で問題を考えると視野狭窄になりがちなため、社内外に相談相手を持つと問題を把握しやすい。
またメンターは一人ではなく、ポートフォリオという形で複数種類のメンターを持ち、問題そのもの
ではなく問題の兆候や失敗談も聞くとよい。
26
2. 相談相手を複数持って問題を深く知る
カテゴリ メンター 目的
経営者 ピアメンター 同じステージ特有の共通の悩みを相談できる。感情的な相談なども行ない
ながら、一緒に成長していける相手として相談したい。
1 ‒ 2 年の先輩 直近で起こりうる問題をあらかじめ知って予防したり、問題解決したとき
のコツを知る。
5 ‒ 6 年の先輩 中長期的に起こりうる問題や、気をつけておいたほうが良いことを知る。
またコネクションの提供などをしてもらう。
10 年以上の先輩 狙う市場など、目線を高くするためのヒントをもらう。またトップリレー
ションの提供などを行ってもらうことも。
理論家 投資家やアクセ
ラレーター
多くの事例からの知見や理論、また適切なメンターの紹介などをしてもら
う。資本政策やビジネスモデルの相談も。
専門家 業界の専門家 業界専門の知見からのアドバイスや、ヒントをくれる業界の人脈の提供を
してもらう。
27
メンターポートフォリオを持つ
メンターポートフォリオとして相談相手を様々な領域に持ちながら、一部に密度の高い繋がりを作る
ことを推奨する。
28
マージナルな領域 / 強い繋がり、その両方を持つと良い
異異なるネットワークタイプの中⼼心
にいる⼈人物ほど起業で成功しやす
い (Gloor, 2013)
密度度の⾼高く強い繋がりのほうが
⾏行行動の変容には効率率率的 (Centola)
(情報の伝達は弱い繋がりが優位)
経営者グループ (1)
ピア
1-2年
先輩
理論家
投資
家
Accel
erato
r
専門領域 (1)
専門
家
専門領域 (2)
専門
家
経営者
グループ (2)
5-6年
先輩
経営者
グループ (3)
10年
先輩
起業家起業家
アクセラレーターに入ると様々な支援やメンターの紹介をしてもらえる。メンターのいない最初の起
業の際には特にお勧めする。ただし自分のビジネスやステージにあったアクセラレータに入ること。
29
3. アクセラレーターに入ればネットワークが手に入る
ハンズオフ型のアクセラレーター
オフィスアワーを中心に、レク
チャーなどを適宜行うアクセラ
レーター。
Y Combinator などが有名。
ハンズオン型のアクセラレーター
メンターやアドバイザーがかなり
しっかりとスタートアップのサ
ポートを行い、短期間でビジネス
の立ち上げや成長を支援する。
AngelPad などが有名。
メンター中心のアクセラレーター
メンターとスタートアップとの組
み合わせを重視して、メンターの
選定に時間をかけながら、支援を
行なっていく。
TechStars などが有名。
良い問題と選択肢を捉える
30
a
Photo Taken by Jeff McNeill
http://www.flickr.com/photos/jeffmcneill/5789354451/in/photostream/
31
問題に見える多くは
症状であって問題ではない
Peter Drucker
日常的かつ戦術的な意思決定は解決策を重視するのも良いが (Drucker)、大きな問題は問題を捉える
ところから始める。
32
まずは解決策ではなく、問題に焦点を当てる
症状ではなく動く問題を捉える
問題に見える多くは症状であって
根本的な問題ではないことが多い。
その症状を引き起こしている問題
を捉えるよう心がける。
また問題は環境とともに変化する
ことが多いことに気をつける。
答えではなく問題に焦点を当てる
大きな問題については、正しい答
えを得ることではなく、まずは正
しい問いを見つけることに焦点を
当てる。
人に相談しながら進める
大きな問題であるほど、一人では
解決できないことが多く、また解
決に人の協力を必要とする。必要
な人、頼りになる人に相談しなが
ら進めれば、問題の把握が精緻に
なるだけではなく、解決にも協力
してくれる。
また社内でも社外のアドバイザー
でも良いので、意見の壁打ち相手
を得られると良い。
解決策の考え方は多岐に渡るため他の本に譲る。たとえば以下の本などが有用である。
33
解決策を考えるための思考法を学ぶ
イシューからはじめよ
安宅和人
考える技術・書く技術
Barbara Minto
いかにして問題をとくか
G ポリア
https://www.flickr.com/photos/34651674@N07/7258061584
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Frame_2_(PSF).png
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Empty-frame.png
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Louis_(Ludwig)_de_Wette_(Frame_only)_Wellcome_L0068368.jpg
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Frame.svg 34
問題のフレーム(枠)をチェックする
問題の枠組み、問題の見方。フレームを変えると問題の認識方法が変わる。
たとえば、
・この手術は死亡率が 10% である
・この手術は生存率が 90% である
では、同じ情報を言っているのに後者のほうが好ましく感じる。
実質的には同じ意味なのに、人はその記述によってその印象と判断を大きく変えてしまう。
同じように問題のフレームの用い方によって、人はその解決策や判断を変える。
問題と解決策がある程度固まってきたら、一度問題のフレームをチェックしたほうが良い。人間はフ
レームによって意思決定を大きく変えてしまうので、様々な角度から問題を見るのが有効である。
35
問題のフレームをチェックすると問題把握が効果的に
問題の記述は
最適か?
解決策に
選択肢は含まれ
ているか?
十分に広い
フレーミング
か?
かな記述の変更にすら、我々の直感は左右される。
36
人は記述(フレーム)の仕方だけでも判断を変える
14.99 ドルで欲しいビデオが特別価格で売って
いたとする。その際以下の選択肢が提示される。
A. このビデオを買う
B. このビデオを買わない
この場合は、75% の人が A (ビデオを買う) を
選んだ。
次に以下のような選択肢を提示する。
A. このビデオを買う
B. このビデオを買わない。14.99 ドルで別のも
のを買う
すると 45% の人が B (ビデオを買わない) を選
んだ (Frederick, 2009)。
まったく同じ意味なのに、判断が変わっている。
全く同じ意味の選択肢でも、注意書きを少し書
くだけで大きく判断が変わる。(たとえば無視
されやすい機会損失について明記してみるなど:
Frederic)
たとえば企業買収などでも「A 社を買うか、同
じ値段で⃝⃝するか」といったように記述を変
えて考えてみるといい。
実際にアイゼンハワーも「一気の爆撃機で 30
以上の都市に学校を建てられる」といった機会
費用を考えながら判断した。
詳細と例
我々の多くは選択肢を持たないで意思決定するばかりか、選択肢を提示されたとしてもその数などに
よって判断が変わってしまう。ただし多くの場合は、選択肢の数が多い方がパフォーマンスは良い。
37
人は選択肢の提示(フレーム)の仕方だけで判断を変える
2 つのグループに以下の異なる選択肢を与えた。
A. 明日締め切りのレポートを書きに図書館に行
くか、尊敬する作家の講演を聞きに行く
B. 明日締め切りのレポートを書きに図書館に行
くか、尊敬する作家の講演を聞きに行くか、
見たかった映画の上映を見に行く
A の選択肢のグループでは、レポートを書きに
行く人は 60% の人が図書館に行くのに対し、B
のグループは 80% の人が図書館に行くと答えた
(Redelmeier, 1995)。B のほうが魅力的な娯楽
が多いのに、娯楽をすることを選ぶ人は減った。
我々は多くの場合、解決策を一つあるいは二つ
しか検討していない。そしてその場合の意思決
定のパフォーマンスは悪い (Gemunden, 1985)。
選択肢が増えるだけで意思決定は変わる。ただ
し多すぎると選択肢を考えるコストが高くなり、
別の影響が出る (24 種類のジャムと 6 種類の
ジャムでは 6 種類のジャムのほうが売れた、と
いう Iyengar (2000)の実験が有名)。
ただし、Nutt (1993) が168 の意思決定を分析
したところ、二つ以上の選択肢を考慮していた
のは 29% だけだったので、基本的には選択肢を
増やすほうに考えたほうが良い。
詳細と例
狭いフレーミングでは不合理な結論を下してしまいがちである。ギャンブルであれば、たとえば一回
勝負で一か八かにかけるのではなく、何個かの独立した けと捉えたりする必要がある。
38
広いフレーミングで罠を避ける
一つのグループには次の順序で質問した。
1. あなたは最近どのくらい幸せですか?
2. あなたは先月何回デートしましたか?
ここで両者の相関性はほとんどゼロだった。
もう一つのグループには次の順序で質問した。
1. あなたは先月何回デートしましたか?
2. あなたは最近どのくらい幸せですか?
この場合、高い相関性 (0.66) を示した (Strack,
1988)。
幸せかどうか、という全般的な質問が、デート
という特定の事柄に対する質問として無意識的
に置き換えられてしまう。
狭いフレーミングを設定しがちな意思決定者は、
リスクを伴う選択に直面すると、そのつど選択
を決めることになる。そしてそのつどの選択は
認知的な間違いを起こしやすい。
そのため、なるべく広いフレーミングで問題を
捉える。たとえばリスクポリシーを設定して、
問題が持ち上がったときに適用するなどをして
狭いフレーミングを避けると良い。
詳細と例
39
記述は適切か 選択肢はあるか 広いフレーミングか
問題をリフレーミングすることで新たな視点が得られ、適切に問題を把握できることが多い。
40
問題をリフレーミングして、問題をきちんと把握する
選択肢を増やす
「⃝⃝すべきか否か」という問い
を絶対に避ける。選択肢を 3 つ以
上持つことでリフレームできる可
能性が高い。
選択肢を消去する
今考えている選択肢がどれも選べ
ないとして、他に何ができるかを
考える。
類推する
問題の特徴を抜き出し、その特徴
を持つ問題がどうやって解決され
たかなどを類推したりする。類推
は効率の良い科学者がよく使うス
キルである (Dunber, 1996)。
So What / Why So を繰り返す
問題をより深堀りしたり、その捉
え方を変えるために自問してみる。
分布の両端を考える
極端な事例を考える。トリッキー
な使い方をしている顧客など。イ
ンクルーシブデザインなどの事例
を見ると良い。
別のフレームを使う
3C などのフレームワークを無理や
りにでも適用してみる。少なくと
も整理にはなるし、抜け漏れの
チェックなどもできる。
2. 情報収集する
41
現状の深い理解のためには情報を収集することが重要となる。また情報収集をすることによって不確
実性が下がることが多く、意思決定の際にはそのベースとなる情報が必要である。
ただし注意点として、
• 情報が増えても将来の予測精度が高まるとは限らない
• 情報収集には時間などのコストがかかる
ことを踏まえて、仮説を持った上で、どのような情報が必要なのかを考えながら、効率的に情報収集
を行う必要がある。
※なお、どのような情報が必要かを問う時には「1 年以内に再びこの意思決定をする時に、どういう
情報がほしくて、その情報を今得られるか?」と問うのも良い。
42
意思決定には情報収集が必要
情報には大きく二つの分類があり、それぞれ異なる手段を用いて収集される。
Roberto, Know What you don t know
IDEO HCD Toolkit
43
情報には 2 つの分類がある
定量的な (Quantitative) 情報
数字で測れる、量的な情報。以下のような手段を使う。
• プロダクトの量的分析
• 市場調査データ
• 競合の量的調査 (SimilarWeb, App Annie など)
• データからの類推
定性的な (Qualitative) 情報
数字ではない、質的な情報。以下のような手段を使う。
• フィルタを通していない情報を集める (現場に出る)
• 顧客を観察する
• 参与観察
• 専門家へのインタビュー
スタートアップはその性質上、定性的な情報が情報収集の中心となることが多い。
44
スタートアップは定性的な情報に頼ることが多い
定量的な (Quantitative) 情報
スタートアップは以下のような状況に置かれることが
多く、定量的な情報が得難い。
• 新規市場を狙うから、市場データがない
• 顧客がいないから、顧客データがない
• プロダクトを使っている人が少ないから、プロダク
トに関する十分なデータがない
• 競合が急成長しているから、数ヶ月前の過去のデー
タですらあてにならない
• データを買うお金がない
定性的な (Qualitative) 情報
スタートアップには少数の顧客しかいないが、その分
会社と顧客(あるいは現場)が近いので、定性的で微
細な情報を集めやすい。
また定性的な情報から深みのある洞察が得られること
が多く、それがスタートアップの武器となりやすい。
スタートアップの初期は
定性的な情報に頼ることが多い
スタートアップの環境では
定量的な情報が手に入らない場合が多い
45
けれど
定性的な情報は
扱いが難しい
定性的な情報は扱いが難しく、スタートアップのほとんどは定性的な情報の取り扱い方に慣れていな
い。その結果、以下のような状況が生まれがちである。
46
定性的な情報を取り扱うのは様々な理由で難しい
「自分の聞き
たい意見」を
顧客から
集めがち
顧客の意見に
左右されすぎ
て方向が定ま
らない
そもそも顧客
は顧客の欲し
いものを知ら
ない
定性的な情報を扱える人は少ない。だからこそきちんと定性的な情報が扱えるようになれば、競合に
対しての優位性にもなりうる。定性的な情報を扱う際には、ファクトをベースとして洞察を得ること。
47
定性的な情報を収集するコツは「事実」を集めること
たとえば定性的な情報をユーザーから引き出すためには、
たとえば以下のような質問の仕方をする必要がある。
• 意見や希望ではなく、今現時点の実際を聞く
• 誘導せずに、オープンに聞く
• 抽象的に聞かずに、具体的に&プロセスを聞く
• 希望の機能を聞かずに、競合や課題を聞く
• 自己分析させずに、ファクトを聞く
また定性調査を共有することも重要である (Facebook
はレポジトリにすべて記録しているらしい)。
そのほか、観察や参与によって得られる情報の取り扱い
についても注意すること。
詳細はこちらのスライドで:
http://www.slideshare.net/takaumada/lean-
customer-development-lean-startup-update-2015
集団で持ち寄る情報は個人の情報よりも多いと考えられているが、多くの場合はそうではない。少人
数のチームでも非共有情報は共有されにくいので、意識的に共有するよう努めること。
Steiner, 1972, group process 48
そして集団の「非共有情報」に意思決定の がある
全員が同じ情報を持っている場合
集団が全員同じ情報を持っているとき、集団の
意思決定の質は個人の意思決定の質よりも高
かった。
全員がそれぞれ異なる情報を持っている場合
集団の各自が独自の情報を持っているとき、集
団の意思決定の質は個人の意思決定の質よりも
劣る傾向にある。
共有情報の 1/3 は最初に討議されてからもう一度話される可能性が高い
一方で非共有情報が繰り返し議論されるのは 1/4 程度である。
無視されがちな非共有情報を十分に共有する必要がある
集団で話すと、権力の強い人などに集団の意見全体が偏りがちである。全員の意見や情報を聞くため
に、様々な手段を用いると良い。以下は Google Ventures の勧める会議の方法論である。
49
例) Google Ventures の会議手法の活用: Note & Vote
5 分間で誰とも相談せずにアイデアや情報を書き出す。この時点では誰と
も共有しない。その後、2 分間でベストだと思うアイデアや情報を選ぶ。
ペンと紙で
個別に書き出す①
参加者各自が良いと思ったアイデアや情報を読み上げる。ただし詳細はこ
こでは話さない。ただ読み上げ、誰かがすべてホワイトボードに書き出す。
アイデアや
情報を発表する②
ホワイトボードに書き出された中から気に入ったアイデアや聞きたい情報
を書き出す。時間は 5 分間。
アイデアを
選んで集計する③
得られた集計から責任者がアイデアの意思決定をしたり、より詳しい情報
を話す時間を与える。
責任者が
意思決定する④
3. 意思決定のバイアスを避ける
50
一つ目の原則は自分自身を さ
ないということだ。
自分というものは最も簡単に
しやすい人なのだ。
Richard Feynman
一つ目の原則は自分自身を さ
ないということだ。
自分というものは最も簡単に
しやすい人なのだ。
Richard Feynman
Phto taken by Gianca97
http://it.wikipedia.org/wiki/File:Richard-feynman.jpg
51
52
人間の意思決定は
不合理によく間違う
様々な行動経済学や認知心理学の研究から、人間は不合理に行動することが分かっている。代表的に
は、感情、直感、理性などにおいて、人は自分に されやすい。
53
人は自分に されやすく、不合理な意思決定をする
感情に惑わされる
直観に惑わされる
理性に惑わされる
事前に されやすいポイントを知り、その解決策を知ることで、より良い意思決定ができるようにな
る。以下のページでは代表的な 9 つのポイントについて例を用いながら解説する。
54
されやすいポイントを知り、対策をする
損失回避
代表性
確証バイアス
リスク追求
利用可能性
ランダムさ
楽観バイアスと
自信過剰
アンカリング
専門家の予測の脆さ
感情に惑わされない
直感に惑わされない
理性に惑わされない
感情に惑わされない
55
損失回避
代表性
確証バイアス
リスク追求
利用可能性
ランダムさ
楽観バイアス
アンカリング
予測の脆さ
自分の後任者やトレーダーならどうするか考えたり、親友にアドバイスするなら
どうするかを考える。また「損失」という言葉を「費用」と言い換えてみる。
人は状態より参照点からの変化に敏感で、変化の中でも特に利得よりも損失について敏感であり、過
度に損失を避けたがる傾向にある。
56
1. 損失回避: 人は損失を極端に避けたがる
サンクコストが処理できない
多くの投資家は損切りを避けて、より大きな損
失につながりがちである。
保有効果
何かを得た場合、持っているものを高く評価し
がちになる。たとえばマグカップを与えられた
人はそれを 7.12 ドルで売ると言い、与えられ
なかった買い手は 2.87 ドルで買うとした
(Kahneman)。その評価額の差は約 2 倍である。
人は損失を過度に避けたがる。その結果、サン
クコストを処理できなかったり、また自分の
持っているものを過剰に高く評価しがちである。
また、認知的容易性による好意と損失回避性に
よって過度に現状維持を望む傾向にある。
これらを回避するためには、外部の冷静な意見
が必要な場合が多い。
対策
詳細と例
57
親友にアドバイスするなら
自分の損失回避性を回避するためには、遠くから自分の状況を
眺めることが効果的である。
損失回避をしていることに気付いたら、たとえば以下のような
問いを自分自身で考えてみると良い。
• 同じ状況に置かれた自分の親友にならどうアドバイスする
か
• 同じ状況に置かれた自分の後任者ならどうアクションする
べきなのか
重み付けをして計算する。ギャンブルに勝つ秘訣は「小さく勝って小さく負け
る」ことであり、事業の成功は博打ではなく、小さな成功の積み重ねで成り立つ。
勝ち目のない戦いでは、人は過度にリスクを取りがちになる。たとえば窮鼠は猫を噛むが、おそらく
その後反撃されて死ぬ。
58
2. リスク追求: 窮鼠猫を噛む、そして殺される
宝くじ
宝くじの購入は期待値が悪く、大金を得る確率
を 0% から 0.001% 程度にするものでしかない
が、0% からの かな上昇値に不相応な重みをつ
けているから購入するものと考えられる。
敗訴するのが目に見えている訴訟
弱い立場の訴訟では、負けるのが当然でほぼ確
実な損失があるが、 かな可能性で利得が得ら
れるかも、と積極的にリスクを追求してしまう。
勝ち目の薄い戦いや損の可能性が高い時、絶望
的な状況ではリスク追求的になりやすく、事態
を一層悪化させる選択肢を取りやすい。
たとえば 0% -> 5% への かな確率の向上など
に対して不相応な重みをつけてしまう。
スタートアップの破綻が見えているときに、一
か八かの けに出るなども稀にある。
対策
詳細と例
59ファスト & スロー(下)より
損失の感じ方は次第
に緩やかになる
最初の損失について
の感じ方は激しい
たとえば 900 ドル失う苦痛の
ほうが、1,000 ドル失う苦痛
の 90% よりは大きい
→その結果、リスク追求的に
なりがち
Premortem (事前検死) を行う。また外部や過去の情報を参照する。
判断に必要な情報に欠けていても、一貫性のある説明ができれば失敗の恐れや疑問を持たず、主観的
な自信が形成される。
60
3. 楽観と自信過剰: 人々はストーリーで自分を す
「あなたは運転が平均以上に上手ですか?」
上述の問いに、90% 以上のドライバーが Yes
と答える。平均の定義からしてそれはおかしい。
我々はまずまずうまくできることについては、
過度に楽観的になりやすい (Windschitl, 2008)。
予定通りにプロジェクトを進められた人は?
ダイエットや宿題、書き初めでの意思表明をす
べて達成できた人は皆無に近いだろう。だが計
画した当時は皆できると楽観的に思っていた。
多くの判断は過度な楽観に基づきやすい。そし
て過度な楽観は間違った結論を導きやすい。
過度の楽観の原因は様々だが、自分の知ってい
る内部の情報にのみ基づく判断や、自分の中で
一貫性のあるストーリーが形成された時点で楽
観的になりやすい。
また過去の後知恵バイアスや、予測に対する自
信過剰が良く見られる。
対策
詳細と例
61
事前検死 Premortem
プロジェクトを始めると決める前に、プロジェクトが
大失敗した時の検死 (post-mortem) を事前に行うも
のである。
具体的には、仮にプロジェクトを進めて、1 年後にプ
ロジェクトが大失敗した時に、どんな風に失敗したの
かを 5 ‒ 10 分程度でまとめてみる。そして、その失
敗の原因を順次潰していくという方法論である。
こうすることで、決定の方向性がはっきりしてくるし、
事情をよく知っている人の想像力を引き出せる。反対
意見もより出しやすくなるので、組織的な自信過剰を
防ぐこともできる。
直感に惑わされない
62
損失回避
代表性
確証バイアス
リスク追求
利用可能性
ランダムさ
楽観バイアス
アンカリング
予測の脆さ
標本サイズや偶然性についてチェックする。統計的な計算を行う。
また同じ問題を確率表記ではなく、「100 人中何人」といった数で表記してみる。
人は「もっともらしさ」に出会った時、早急に判断を下しがちになる。
63
4. 代表性: もっともらしければ確率を忘れる
リンダ問題
とある女性(リンダ)について「31歳独身女性、
外交的で、学生時代は差別や社会正義の問題に
関心を持っていた。反核運動に参加した経験も
ある」と聞いた後、彼女の職業を以下の 2 つか
ら推定してください、と尋ねる。
• 銀行員
• 銀行員でフェミニスト
すると、直感では「もっともらしい」後者であ
る可能性が高いと判断してしまいがちである。
人は典型的と思われる事項の確率を過大に評価
しやすい。
たとえば以下の二択であれば後者が「もっとも
らしい」と思わせる。
• 来年日本のどこかで死亡者 1000 人以上の津
波が起こる
• 来年東京で地震が起こり、死亡者 1000 人以
上の大規模な津波が発生する
対策
詳細と例
自分の知識の範囲に疑いを持ち、一歩引いて統計データを参照する。
人は自分の手持ちの情報や、その事例が容易に思い浮かぶかどうかに基づいて結論を下しがちである。
64
5. 利用可能性: 「自分が見たものがすべて」と思い込む
頻繁なニュースによる錯誤
事故死はニュースで報道されやすい。そのため
事故で死ぬ人は糖尿病で死ぬ人よりも多く感じ
るが、実は 1/300 程度で、糖尿病で死ぬ人のほ
うが圧倒的に多い。
スタートアップが陥りがちな錯誤
頻繁に資金調達のニュースが報道されると、資
金調達をしやすいと勘違いしてしまいやすい。
思い出しやすい事柄と思い出した例の数を優先
して評価しやすい。
たとえば、中年の人が心臓発作を起こすリスク
を考えるときには、知人にそうした例がないか
を考えてしまう。
対策
詳細と例
アンカーとなる数字を見ない。見てしまったらボトムアップでの再計算をするほ
か、両極端のシナリオと数字を考えてみる。
ある未知の数値を見積もる前になんらかの特定の数値を示されると、その数値に引きずられてしまう。
65
6. アンカリング: 数字には無意識に引っ張られる
寄付の聴き方によるアンカリング
「5ドル以上寄付するつもりがありますか」と聞
かれたグループは平均 20 ドルの寄付、「400
ドル以上寄付するつもりはありますか」と聞か
れたグループは 143 ドルの寄付を行った。
キャンベルスープの限定数
「お一人様12個まで」と掲示した日のスープの
平均購入数は 7 缶で「お一人様何個でも」とし
た日は 3.5 缶だった。12 個にアンカーされた。
最初に与えられた情報を基準として、それに調
整を加えてしまう傾向にある。たとえば資金調
達の数字が 1 億円の提示から始まると、それが
基準の情報となってしまう。また数字がまった
く無関係と分かっていても、直前に提示される
とその数字にアンカリングされる。
アンカリング率はおおよそ 55% 程度の水準にな
ることが多い。
対策
詳細と例
66
直感を習得できるのは特定の条件下
日常的な直感は非常に役立つし、正解となる場合が多い。また棋士やレーサーなどの専門家の直感についても
多くの場合は正答となる。つまり、特定の条件下では直感は働くし、学べる。
研究によれば、直感は以下の二つの条件を満たせるならスキルとして習得できる可能性が高いとされている。
・十分に予見可能な規則性を備えた環境であること
・長期間にわたる訓練を通じて、そうした規則性を学ぶ機会があること
スタートアップの環境は変わりやすく、(特定の専門分野で長期の経験を積んだ後の起業でない限り)長期間
の訓練を受けることも少ないので、多くのスタートアップの意思決定は直感で行ってはならないと思われる。
理性に惑わされない
67
損失回避
代表性
確証バイアス
リスク追求
利用可能性
ランダムさ
楽観バイアス
アンカリング
予測の脆さ
科学哲学で言われているように、仮説を補強するのではなく反証するよう心がけ
る。また反対意見を集める。複数の情報を独立させるプロセスを持つ。
ビジネス上最も厄介なのがこの確証バイアスである。我々は我々の信念を補強する情報を中心に集め
てしまう。
68
7. 確証バイアス: 仮説を補強するが反証しようとしない
ハロー(後光)効果
以下の二人のうちどちらの人物が好きだろうか。
鈴木:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固
佐藤:頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい
普通の人なら前者を好ましく思うが内容は同一
である。最初の情報によって大きく規定される。
面接官
初印象が良いと、それを補強する情報ばかりを
集めてしまいがちになる。
人は自論に合う情報のみを取り上げ、それによ
り自信を深める傾向にある。また蒸し器に人は
耳当たりの良い情報のみを受容しやすい。
理性的に情報を集めても、確証バイアスによっ
て自論を補強しているだけの場合があるので注
意する。
対策
詳細と例
69
複数の視点から検証する
自説を補強する情報ばかり集めないで、たとえばトップダウンの推定に対してはボトム
アップでの推定も行って、両方の視点から間違いないかを検証するなど、様々な視点か
ら情報を検証する必要がある。
多くの事柄は偶然であり、平均への回帰が起きることを知っておく。
人は偶然性を認めたがらず、因果関係の明確なストーリーを作りたがる。一見理性的なストーリーが
構築できても、そのストーリーの中から偶然性が排除されていることが多い。
70
8. ランダムさ: 人は偶然性を信じない
自分や競合の評価もランダム性に左右される
競合がコンテストで 1 位を獲得しても動じては
いけない。また自分たちが勝ったとしても、そ
れは偶然である可能性もある。いずれ平均への
回帰が起こることを自覚しておく。
我々は因果関係を見つけたがる強いバイアスが
かかっている。
たとえば小さい標本に対しても過剰な信頼をお
きがちであり、因果関係を見つけたがる。十分
な標本がないときにも、手持ちの情報を過大評
価し、その中から一貫した最善のストーリーを
作りたがり(講釈の誤り)、偶然やランダム性
を認めたがらない。
対策
詳細と例
71
ランダムな運の要素も大きい
一度の勝ち負けに一喜一憂しない。コンテストで勝っても自信過剰になってはいけない
し、負けても過剰に卑下してはいけない。いずれ平均への回帰が起こる。ただし負け続
けると、何かが平均的に悪い証拠である。
結果を幅で考えて、大成功と大失敗のどちらにも対応できるようにする。また参
照クラス予測法やプロセスを用いる。
理性的な専門家の予測ですら外れる。専門家の意見を軸に将来の予測をしても、その多くは外れるこ
とになる。
72
9. 予測の脆さ: 専門家の予測ですら猿並みである
投資家は猿並み
投信ファンドの 2/3 はどの年も市場全体のパ
フォーマンスを下回っていた (Bogle, 2000) ほ
か、アドバイザーのスキルの存在を示す相関係
数は 0.01 であり、スキルの差は見当たらな
かった (Grinblatt, 1992)
専門家も猿並み( かに良い程度)
政治評論家の予測は、専門外の人を大幅に上回
る予測ではなかった (Tetlock, 2005)
多くの専門家(投資家、評論家、カウンセラー、
面接官など)の予測はよく外れることがわかっ
ている。
専門家には過去や理論については正しいことが
多いが、人間は複雑な情報から判断すると間違
いやすい。なので、最後の予測は計算式や参照
クラス予測法などに頼ったほうがよい結果が出
る。
対策
詳細と例
Photo Taken by Jason Scragz
https://www.flickr.com/photos/scragz/132750805
73
予測は難しい
多くの予測は猿並みにしかならない。特に
自信を持っている評論家の予測は外れやす
い。
未来は予測不可能なのだから、予測のエ
ラーはさけられない。だから未来の予測は
ピンポイントではなく幅を持って行うべき
である。
そして予測は多くの場合、最終決定をアル
ゴリズムを通して行った方が精度が良い。
ワインの予測などの結果が有名。
意思決定のバイアスを避ける:
人間は予想通りに不合理
74
以上、9 つの人間の認知バイアスについて解説した。これらのバイアスは多くの意思決定を歪ませる
ものであり、意思決定の際には注意を払うべきである。
75
人間の意思決定は不合理さに満ちている
損失回避
代表性
確証バイアス
リスク追求
利用可能性
ランダムさ
楽観バイアスと
自信過剰
アンカリング
専門家の予測の脆さ
感情に惑わされない
直感に惑わされない
理性に惑わされない
人間の意志力は、意思決定をするたびに消耗していく。意思決定の数を減らすことが、意思決定の質
をよくするためには必要である。
76
さらに悪いことに、意志は消耗して決定の精度を落とす
ツールやフレームワークを用いたり、習慣化することにより意思決定の回数を減
らす。また重要な意思決定を夜にしないなどを心がける。
仮釈放判定人の事例 (Danziger, 2011)
仮釈放の判定人の審査結果を時間で分けたとこ
ろ、休憩直後は 65% の仮釈放を認めたが、その
後一貫して承認比率は下がっていき、次の休憩
直前にはゼロ近くになった (平均の承認率は
35% 程度で、基本は却下する)。
疲労と空腹で消耗すると、意思を使わないデ
フォルトの意思決定に回帰しがちである。
意思決定や自制をするたびに自我消耗 (ego
depletion) と呼ばれている現象が起こり、うま
く意思を使えなくなる。自我消耗が起きた時は、
休憩を挟んだり、糖分を補給すればある程度回
復することがわかっている。
また認知的負荷が高いときには、利己的な選択
や表面的な判断をしやすい (Gilbert, 1991)。
対策
詳細と例
第一部まとめ:
なぜ意思決定は間違うのか
77
人間には様々な不合理さが潜む。そのため意思決定は間違いがちになる。
78
我々が意思決定をまちがうのは「人間だから」
問題や状況を
適切に認識
できていない
正しく
情報収集
できていない
バイアスに
される
スタートアップの特徴
構成員が少ない プロセスが少ない 日々やることが変わる
Pros 自分の力を自由に発揮できる 面倒なプロセスが少ない 新しい仕事ばかりで刺激的
Cons 自分の意思決定の間違いが組
織の意思決定の間違いとなり
がち
標準的なプロセスがないので
たくさんの意思決定が必要
新しい仕事ばかりなので様々
な種類の意思決定が必要
79
「人間だから」スタートアップの意思決定はまちがう
スタートアップはほかの企業に比べて属人的なことが多い。そのため、個人の意思決定における間違
いが、スタートアップの意思決定の間違いとなりがちである。
スタートアップは意思決定が多く、また個人の認知バイアスが大きな影響を与える
80
スタートアップはとても属人的
81
スタートアップはとても属人的
だからこそ人間的なまちがいを犯しやすい
82
やはり俺のスタートアップの
意思決定はまちがっている。
やはり俺のスタートアップの
意思決定はまちがっている。
83
続
84
第二部
意思決定のミスを減らして
より良い意思決定をするための
たったひとつの冴えたやり方
85
良い意思決定をする
たった一つの冴えたやり方は
Process
86
を持つ
意思決定の
これまで人間の意思決定にはバイアスやフレームに関する問題があること、そしてそれらに対策があ
ることを解説した。でも全部チェックはできないから、系統だったプロセスを持つ。
87
意思決定のプロセスを持つと意思決定は改善する
6%
40%
意思決定の際に選択肢が
2 つ以上あるだけで成功率
は約 7 倍になる
=
選択肢を増やす意思決定
プロセスがあればいい
意思決定のプロセスを持つメリットがあることは各種の研究からわかっている。
88
意思決定プロセスを持つメリット
プロセスを持つと意思決定の精度が上がる
McKinsey が 1,048 回の意思決定を調査したところ、
正しい意思決定のためには、分析そのものよりもプロ
セスのほうが 6 倍重要である、ということがわかった
(Lovallo, 2010)。
プロセスが優れていると、論理の穴が見つかるなど、
分析も改善することが多かった。
選択肢を増やすだけでも効果大 (Geunden, 1985)
とある企業で 83 の重大な意思決定が行われた。その
内訳は以下の通りである。
• 95% は「∼すべきか否か」の二者択一の意思決定
• 5% は選択肢を二つ以上検討する意思決定
後日意思決定結果を評価したところ、以下のような明
確な差が出た。
「∼すべきか否か」か二者択一の意思決定
成功と評価されたのは 6% のみだった。
選択肢を二つ以上検討した
40% が成功と判断された
よって選択肢を増やすプロセスがあれば、意思決定は
改善すると思われる。
89
裁判所にて
1. 検察官がパワーポイントを使って被告が有
罪であることを説明する
2. 裁判官が反論する
3. 検察官は用意していた回答を伝える
4. こうして裁判官は有罪判決を決める
会議室にて
1. コンサルタントがパワーポイントを使ってこ
のプランが有効であると説明する
2. 幹部が反論する
3. コンサルタントは用意していた回答を伝える
4. こうして幹部はプラン採用を決める
ビジネスの現場ではよく起こっている
けれど疑問には思われていない
法廷ではあり得ない、公正さに欠けるプロセス
(現実のプロセスでは、検察官と弁護士が両極
端からの意見を戦わせることで、様々な見落と
しを減らしている)
裁判所でプロセスがなければ ビジネスでプロセスがなければ
Decisive より引用、改変
Photo taken by John O Neil (http://en.wikipedia.org/wiki/File:High_court_of_Australia_-_court_2.jpg)
Process
90
を持とう
意思決定の
意思決定のプロセスをうまく用いるには、以下の 3 つに気をつけると良い。
91
意思決定のプロセスの解説を行う
個人の意思決
定プロセスを
持つ
組織の意思決
定プロセスを
持つ
知性と勇気を
持つ
1. 個人の意思決定プロセスを持つ
92
意思決定の際には WRAP フレームワークが便利である。このすべてを行えているか、チェックしな
がら初めて行くと良い。
Heath Brothers, Decisive 93
個人の意思決定のプロセスを持つ
選択肢を広げる
仮説の現実性を確かめる
決断の前に距離を置く
誤りに備える
iden Your Options
eality-Test Your Assumptions
ttain Some Distance
Before Deciding
repare to be Wrong
W
R
A
P
このフレームワークは
Decisive から引用
目の前にある選択肢への視野狭窄に陥らず、「もっといい方法は? ほかに何ができるだろう?」と
自分自身で問いかけていき、手持ちの選択肢以外の選択肢を探し出す。
94
(W) 選択肢を広げて、フレーミングを変える
機会費用を
考える
何かをすると決めた時に発生する費
用を考える。たとえば「イベントに
出る時間で何ができるだろう?」
「ビデオを買うお金で何ができるだ
ろう」と考える。
二つ以上の選択
肢を検討する
「AかBか (A or B)」ではなく「Aも
Bも (A and B)」をできないかを考
えてみる。その際には偽の選択肢
(A が B の言い換えだけである
等)には注意すること。
選択肢を消去
してみる
今考えている選択肢がどれも選べな
い時に、ほかに何ができるかを考え
てみる。たとえば「A さんを解雇す
るかどうか」ではなく、「解雇でき
ないとしたら」を考えてみる。
同じ問題を解決
した人に聞く
人に聞いたり、競合分析をしたりす
る。また社内外のベストプラクティ
スを探す。
W
W
W
W
多くの仮説は確証バイアスによってダメな方向に(一見理性的に)補強されてしまう。それを避ける
ために、仮説を反証したり実験したりすると良い。
95
(R) 仮説の現実性を確かめて、予測はしない
小さく実験する
小さく実験して、自分の仮説を検証
する。我々は未来の予測が下手なの
で、実際に試してみればよい。たと
えば面接するより、実際に少し一緒
に働いてみたほうが実力が分かる。
ズームインと
ズームアウト
現場にズームインしてニュアンスの
ある情報を得たり、ズームアウトし
て外部の視点や平均値を見たりする。
外部の視点が正しいことが多いが、
内部情報で判断してしまいがち。
逆を考える
確証バイアスにとらわれないように
するため、反対意見や反証を探す。
また、直感とまったく逆のことを考
えてみたり、あえて小さく失敗して
みることで仮説を検証できる。
選択肢が正解で
ある条件を探す
今の選択肢が最善であるための条件
を考える。これは反対意見を探すこ
とにも使える。組織内から反対意見
はなかなか発言しにくいので、疑問
を出しやすいやり方で実施したりす
る必要がある。
R R
R R
決定に際しては感情的なバイアスがかかることが多い。そのため自分の感情と距離を置くための幾つ
かの手法を採用すると良い。
96
(A) 決定の前に距離を置いて、感情とも距離を置く
10-10-10 を
考える
その決定をした 10 分後、10 ヶ月
後、10 年後のことを考えてみる。
時間軸的に少し距離を置いて決定を
見てみる。なお我々は後悔を過大評
価しがちなので注意すること。
優先事項をリス
トアップする
意思決定に苦しむのは、優先事項が
対立しているサインである。そのた
め核となる優先事項を一度明文化し
てみることで、 藤を解決しやすく
なる。ただし優先事項を決めるのと
実行するのは異なるので注意するこ
と。
親友や後任者な
らどうするか
親友や後任者へどうアドバイスする
かを考えてみる。「仕事を取るべき
か家庭を取るべきか」「気になる人
に電話すべきかどうか」など。他人
の距離から状況を見ることで、損失
回避や現状維持バイアスなどを避け
ることができる。
やらないことリ
ストを作る
優先事項への時間を捻出するには優
先順位の低い物事を止める必要が有
る。やらないことリストを作り、や
らないことを避けたり、あるいは他
人へ任せたりすること。
A A
A A
意思決定には多くの場合将来の予測が含まれるが、我々は予測に対して能力が低い上に、自分の予測
に対して自信過剰になりがちである。そのため、将来の予測が謝ることを前提で対策を打つと良い。
97
(P) 誤りに備えて、様々なシナリオを模索する
事前検死を
行う
未来を幅で考えるうちの、大失敗す
る方を考える。1年後にプロジェク
トが失敗したときの最悪のシナリオ
を考え、なぜ失敗したかを検討する。
たとえば法律、費用が尽きた、等々。
そうすることで事前にリスクを把握
できる。
期限や小分けを
用いる
投資を小分けにして、大きな失敗を
しないようにしたり、長い期限を設
けるのではなく、細かい期限を複数
設けたりする。実際に人為的な期限
が設けられると、人はより効率的に
提出物を提出したりする。
前祝いを行う
未来を幅で考えるうちの、大成功す
る方を考える。1年後に大成功した
ときのことを考え、パーティをする
未来が待っているとしたら、その備
えが十分かを考える。たとえば在庫、
人材、ボトルネックの解消などが十
分であるかを考えてみる。
アラームを
設ける
取れるリスクを決めておき、そこに
差しかかったらアラームを鳴らせて
再度意思決定する、などを講じるこ
とで、選択肢の存在に気がつくよう
になる。
P P
P P
意思決定は一朝一夕にうまくなるものではないが、様々な経験を通して練習を重ねれば個人のスキル
として身につくものと信じる。
Heath Brothers, Decisive 98
個人の意思決定のプロセスを練習する
選択肢を広げる
視野の狭窄を避けて新しい選択肢を見つける(べきか否かで考えない)、
複数の選択肢を同時検討する、同じ問題を解決した人を見つける
仮説の現実性を確かめる
反対意見など逆を考えて確証バイアスを避ける、ズームアウトとズー
ムイン(外部の視点とクローズアップ)、予測ではなく実験する
決断の前に距離を置く
一時的な感情を乗り越える(10分後、10ヶ月後、10年後を考える)、
後継 CEO ならどうするか考える、優先事項を明文化する
誤りに備える
未来を唯一の点でなく幅(大失敗と大成功)で考える、リスクの上限ア
ラームをセットする、プロセスを信じて しなかったこと を後悔しない
iden Your Options
eality-Test Your Assumptions
ttain Some Distance
Before Deciding
repare to be Wrong
W
R
A
P
2. 組織の意思決定プロセスを持つ
99
組織として意思決定のプロセスを持つと、意思決定が間違う可能性が減るだけでなく、多くの人が納
得して意思決定の結果を 実行 できるようになる。組織としてのプロセスを育てることを推奨する。
100
組織の意思決定のプロセスを持つメリット
成功率が高まる
組織内での交渉が行われることに
よって、意思決定の成功率は劇的
に上がった。組織で適切な意思決
定プロセスが構築できれば、組織
の意思決定の成功率が上がるもの
と期待できる。
公正さが保たれ、実行しやすい
何かをすると決めた意思決定後に
は必ず実行が伴い、大きな問題で
あるほど組織で実行しなければな
らない。そのとき公正な意思決定
プロセスがあれば、納得感を醸成
した上で実行できるため、実行し
やすい。
自信と勇気を与えてくれる
プロセスを信じられれば、プロセ
スによって出た結論がどんなに大
胆でも、大きなリスクを冒して決
断が下せる。
そして自信と勇気があれば、素早
い意思決定も可能になる。
Photo taken by Alan Cleaver
https://www.flickr.com/photos/alancleaver/4320245924
101
Google の面接プロセス
通常、面接は非構造化インタビューの形で行われ、個人が好き勝手に質問を
して相手のパフォーマンスを予測する。その場合、ハロー効果などの影響で
面接結果は最初の印象に大きく左右されてしまう。そして非構造化インタ
ビューの結果は 14% しかパフォーマンスを説明できない。
それを避ける為、Google では面接や採用の方法を各個人に任せきりにせず、
あらかじめ質問を決めた構造化面接 (26% 説明できる) と認知テスト (26%) 、
誠実度検査、リーダーシップ検査を組み合わせて実施している。さらに面接
専用の qDrid という社内ツールを用意している。
http://www.wired.com/2015/04/hire-like-google/
まずは個人の意思決定プレイリストの作成から始めてみることをお勧めする。またプレイリスト自体
に合意をして公正さを保つことが必要なので忘れないこと。
102
組織の意思決定プロセスを作る
プレイリストの例
たとえば意思決定の前には必ず以下の項目をプレイす
るものとする。
• 選択肢を 3 つ以上 えてから意思決定する
• 反対意見を必ず出す
• 予測をするときには必ず幅を持たせる
• 事前検死を行う
• ⃝円以上の投資が必要な場合、必ず小規模な実験を
行う
• 必ず全員での Silent Vote を行ってから、責任者が
責任を持って決定する
GOFER プロセス
たとえば GOFER プロセス (Mann, 1988) などの採用
を検討してみても良い。
GOFER は以下の要素で構成される。
• Goal (目的) の明確化
• Option (選択肢) の創出
• Fact (事実) の特定
• Effect (影響) の考察
• Review (評価) と実践
プロセスに振り回されないようにすること。特に新しいチェックやプロセスを導入すると、チェック
のコストがかかるが、多くの人はチェックのコストについて考えない (Paul Graham)。
103
けれどプロセスの奴隷にならない
プロセスは文化や環境に依存する
内部環境や外部環境の変化によっ
て、プロセス自体が環境に合わな
くなるケースがある。
自社の文化にあった形や、ビジネ
ス環境に合わせて変更していくの
が望ましい。
プロセスは必然的に失敗する
プロセスには適切な適用範囲があ
るが、プロセスがうまく動く限り、
プロセスが失敗するまで使い続け
られる。そのためプロセスはいず
れかの時点で必然的に失敗する
(一般ピーターの法則)。
プロセスには時折ランダム性を取
り入れるなどの対策が有効
(Pluchino, 2010)
プロセスを過信しない
意思決定プロセスが良くなったか
らといって、必ず正しい成果が出
るとは限らない。ただ単に、失敗
する可能性を低くするものである、
と捉えること(それだけでも随分
と改善されるはずではある)。
プロセスの奴隷にならず、プロセスを改善していく必要がある
一朝一夕に意思決定はうまくならない。練習して、学習して、改善していく必要がある。
そして適切な意思決定プロセスが根付けば、それは企業文化の一部となり、そしてスタートアップの
強みとなってくれる。
意思決定が引き起こした結果は偶然性に大きく左右されたり、時間の経過を要するものも多いため、
正確な学習は難しいが、以下のようなところから学習を進めていけば良い。
• まずかったプロセスを見直す
• どこに時間を使ってしまったかを見直す
結果バイアスでプロセスを見直すのではなく、プロセス自体を良くすることを考えてみること。
Russo, Winning Decisions: Getting It Right The First Time 104
組織の意思決定プロセスを育てる
105
プロセスが企業文化となる
より良い意思決定プロセスが根付けば、それは企業文化となり、
スタートアップに長期的な優位性を齎してくれる。
3. 知性と勇気を持つ
106
Photo taken by TechCrunch
http://www.flickr.com/photos/tcdisrupt/4640172908/
107
CEO としての私の経
験からして、もっとも
困難な決断は知性より
も勇気を必要とした
- Ben Horowitz
@ Andreessen Horowitz
Hard Things about Hard Thing
CEO は常に不完全な情報しかない状況下で決定をしなければならない。典型的には Harvard
Business School のケーススタディの 10% 以下の情報すら持ち合わせていない (Ben Horowitz)。
そして時には何が正しい選択肢であるか自明なときに、間違った結論に向かわせる圧倒的な圧力を感
じるときもある。「人気があって容易だが間違った決断」と「困難で人気がなく、しかし正しい決
断」のどちらかを迫られたとき、勇気を持って後者を選ぶことが必要になる。
困難だが正しい決断をするたびに、人は少しずつ勇気を得る。
Hard Thing about Hard Things
108
決断には勇気が必要な時がある
知性 勇気
最後に
109
Photo by TechCrunch
https://www.flickr.com/photos/techcrunch/14092127486/
110
残念なことに、素晴らしい実行のた
めのコツは「No」とたくさん言う
ことだ。
100 回のうち 97 回は「No」と言
わねばならず、多くの創業者はそう
するのに意識的な努力を必要とする。
ほとんどのスタートアップは十分に
フォーカスできるとはいえない。
- Sam Altman
President, Y Combinator
http://startupclass.samaltman.com/courses/lec02/
スタートアップは時間的、金銭的資源が欠乏している。だからこそフォーカスせねばならず、多くの
意思決定は「⃝⃝をしない」ものとなる。
111
ほとんどには No の意思決定をすることになる
Yes の意思決定
(何かをすると決める)
No の意思決定
(今はしないと決める)
スタートアップは時間や資金といった資源が極端に少なく、フォーカスしないと成功できない。そし
てどこにフォーカスするかの意思決定を間違うと、成功から大きく離れてしまう。
だからこそスタートアップにとって意思決定は重要である。
質の良いフォーカスを実現するために、質の良い意思決定をしよう。質の良い意思決定をするために、
人間の不合理さを軽減する意思決定プロセスを持とう。そうすれば少しだけフォーカスが良くなると
思われる。
以上の情報がスタートアップの皆さんのお役に立てば幸いです。
112
質の良い意思決定をしてより良いフォーカスをする
Process
113
を持とう
質が良く素早い意思決定のために
Focus
114
のため
そしてすべては
115
Make something people want
Do Things that Don’t Scale
スケールしないことをしよう
116
Make something people want
Writing code and Talking to Users
コードを書いて顧客と話そう
117
Make something people want
Make Something People Want
人が欲しいと思うものを作れ
118http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Keep-calm-and-carry-on.svg

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