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角化型疥癬のアウトブレイクに介入した
感染対策チーム(ICT)の実際と課題
国際医療福祉大学病院
感染対策管理室 池澤恵美子
国際医療福祉大学病院の現況
病床数 353 床 入院患者 600名/月
外来人数 900名/日
救急搬入台数/約2,603台/年間
ベッド稼働率 80%
平均在院日数12.2日
DPC算定
臨床研修病院
基本料7:1
医師 111名
看護師 337名
0
50
100
150
200
250
300
350
400
1990年 1998年7月 1998年9月 2002年 2003年 2011年 2012年
病床数の推移
22年間で
18.5倍に!
2年後には55床
増床して408床
に!
経過
• 2012年3月 内科系病棟の看護師数名がうで
や腹部の掻痒と発疹を訴えた。
症状から疥癬を疑い探索の結果
• 82歳 女性 介護福祉施設からの入院
15日を経過していた。
Trick合同カンファ(疥癬について 池澤様)150521
Trick合同カンファ(疥癬について 池澤様)150521
患者情報
• (82歳女性)施設入所者、約1年前より
当院皮膚科を定期的に受診中であっ
た。急性腎不全、水疱性類天疱瘡、湿
疹に対してステロイド薬、軟膏等を投与
されていた。
• 脱水、腎不全により近医から紹介入院。
掻痒感が強い全身発疹あり、皮膚科も
フォロゥしていた。
ヒゼンダニの
ライフサイクル
生態
メス0.4mm オスその
60%
潜伏期間 1~2か月
約2Wで成虫になり交
尾後疥癬トンネルの
中で2~3個の産卵
疥癬診療ガイドライン(第2
版)日本皮膚科学会
感染対策チーム
ICN:院内周知と関連職種に症状の確認
患者ケア状況の確認
入院前施設の情報収集
入所者18名中7名に発疹の症状あり
医師・薬剤師: 職員の治療
感染が疑わしい(皮膚症状あり) ストロメクトール内服。
感染はしていない(無症状)がケアするスタッフ
オイラックス-O
検査技師:積極的な検鏡
事務: 院内へ対策の経過を院内へ周知
ユニホームの洗濯(毎日の交換に対応)へ
*患者説明文書の配布
*電話問い合わせマニュアル整備。
*緊急入院の制限 2週間
清掃関係
*臨時・清掃担当者の教育
*病棟の清掃確認
*患者環境と同時に休憩室・仮眠ソファも
入院患者への対応
対策
• 患者は角質型疥癬 個室隔離
• ストロメクトール内服 2回
• 1Wは接触予防策、毎日入浴、
リネン交換
• 発症者の病室にスミシリンパウ
ダー
2回内服後の1週間後
後頭部の角化に
たいせつなお知らせ
国際医療福祉大学病院 ○棟○病棟にご入院中の患者様、ま
たは2/16~3/6の間にご入院されていた患者様に,たいせつなお
知らせを申し上げます。
3月2日(金),当院に入院中の患者様より感染性の皮膚疾患
が確認されました。院内での感染拡大防止のため、速やかに対
応しておりますが,すでに感染してしまっている場合があります。
この疾患の発症を予防する有効な方法はありませんが,発症し
ても適切な治療を行うことで完治いたします。この1−2ヶ月の間
に,下記の症状が発生した場合には,早めに皮膚科への受診を
お願いいたします。
【症状】 皮膚の赤いプツプツ,皮膚の下のしこり
1 cmくらいのS字状のミミズ腫れのような発疹,かゆみ
【対応】 専門の皮膚科へ受診して下さい。
本件に関するお問合せ先は,○○○○へ
結果
• 職員14名 患者3名 家族3名
• 約2ヶ月の経過を見て終息
• 費用
職員の内服:13名 15万円
カーペット清掃30万円
その他、入院制限、職員の休業、個人防護具
など
課題
1. 職員のパニック
2. 皮膚科医師との共同
検鏡 (対策の終了の確認) 検出率
外用薬の併用(爪・角化層には効きにくい)
3.皮膚症状の確認
高齢者ではドライスキンが多く、掻痒もある
ステロイド外用薬使用
4.日常の感染対策
スタンダードプリコーション
その後
• 対象病棟では疥癬の早期発見
• リネン交換時のPPE着脱
• 全身状態の観察(頭部を含め)
• ユニホーム洗濯の回数が3/Wになった
• カーテン洗濯
• 手指衛生遵守率 アップ
地域連携の必要性
1、潜伏期間が長い
• 退院患者から2W後に発症1例
• 他施設に転院での発症も2例→クレーム
すでに転院している先の施設にも情報提供が
必要であった
• 発症の情報は地域で共有できるようシステム
が必要
(流行情報が表出しにくい傾向→発見が遅れ
る)
治療
【内服】
イベルメクチン 200μg/kg
【外用薬】
• クロタミトン(オイラックス®) 保険適応外
• 安息香酸ベンゼル
• γBHC
• ペルメトリン ピレスロイド系 (未承認)
• スミシリンローション 薬価収載2014.5
疥癬診療ガイドライン(第2版)から
特殊製剤

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