SlideShare a Scribd company logo
1 of 3
Download to read offline
1.日本版休眠口座基金 スキーム

                            預金者の権利は100%保護。金融機関と預金者の関係は変わらず預金者の権利は消滅しない。金融機関は、法律に基づく休眠預
                             金の管理機関である休眠口座基金に対して「寄付」を行う(寄付を促す税制上の措置を講じる)。
                            金融機関を横断したワンストップの休眠口座照会体制を構築。
                            資金は団体/組織向けの無利子貸付等で活用し、民間の新しい活力を生み出す。金融機関が毎年利益計上している休眠預金額
                             は、約880億円/年。そのうち、350億円を預金者への返還用として引き当て、さらに230億円を払戻率が高まった場合のバッファーとして
                             留保し、最終的に払戻しがされなかった300億円程度を活用。

                                                     日本版休眠口座基金スキーム(案)


                                                                                        団体/組織
RESEARCH PROJECT REPORT
RESEARCH PROJECT REPORT




                                                                       金融庁

                                                                                        児童相談所
                                             金融機関       休眠預金の寄付          規制・監督
                            預金者
                                    休眠預金の               休眠預金の払戻し請求
                                    払戻し請求     A銀行                                貸付等   震災復興支援組織

                                              B銀行
                                                                                       中間支援組織
                                                                     休眠口座基金
                                              C銀行

                                  休眠預金の払戻し    D銀行       休眠預金の払戻し                       DV防止センター
                                               ・
                                               ・                         連携
                                               ・
                                                                                         大学
                                                   休眠口座のデータ提供
                                                   (法律で定められた限定的な
                              休眠口座の照会              情報の提供)                               NPOバンク
                                                                       休眠口座
                                                                     ワンストップ照会             ・
                                                                        窓口                ・
                                                                                          ・
                              休眠口座の照会結果通知
                                                                                                  1
2-1.教育分野への活用

                                児童養護施設の児童数は約30,000人であり、大学進学率は10.8%(全国平均は53.9%)。
                                学費を除いた大学4年間の総生活費は600~700万円(東京都社会福祉事業団試算)
                                300億円の休眠口座基金から貸付を行う場合、希望する全ての児童が金銭的不安なく進学可能。

                            図表 児童養護施設の児童が大学進学する例

                                  児童養護施設の現状                                                            進学に伴い発生する費用
                                   データ                                                                 必要費用

                                       ・児童数: 29,753人 (2009年時)                                           ・学費 : 最低250万円(国公立大学)
RESEARCH PROJECT REPORT
RESEARCH PROJECT REPORT




                                        ・平均入所年数:4.6年                                                    ・生活費: 600~700万円/4年
                                        ・大学進学率:10.8% (全国平均53.9%)                                          (東京都社会福祉事業団試算)
                                         進学率が低い主な理由は経済的負担                                               ・その他: 大学受験費等

                                         →毎年約6,500名の児童が退所(卒業)                                             →学費は奨学金で補うと仮定

                                     3,500人(50%強)が大学進学希望と仮定                                                 600万円/ 人の貸付が必要




                                          児童養護施設から大学に全国平均で進学希望した場合


                                                  3 5 00                       人
                                                                                       必要な支援額は               あれば、大学進学を希望する全ての
                          参考資料
                          独立行政法人統計センター 平成21年社会福祉施設等調査
                                                                                        約210億円               児童養護施設の児童が
                          http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001068770
                          社団福祉法人全国社会福祉協議会
                                                                                                             大学進学可能。
                          http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011cpd-att/2r98520000011dad.pdf
                          厚生労働省雇用均等・児童家庭局                                                                       *仮に生活費600万円/4年をバイトで稼ぐとすると
                          http://www.crc-japan.net/contents/notice/pdf/h20_0722.pdf                              時給800円で150時間/月以上働く必要がある。   2
2-2.災害時緊急支援への活用

                                 東日本大震災の被災者を対象とした生活復興支援貸付の上限額は月額20万円(複数世帯の一時生活支援費)。
                                 東日本大震災における住宅の全壊世帯は約13万戸(平成24年3月14日政府発表)。
                                 300億円の休眠口座基金から貸付を行う場合、すべての全壊世帯に対して緊急支援が可能。

                           図表 地震災害時における生活福祉資金貸付制度の例

                                   災害時の被害状況                                                 平均貸付費用
                                    データ                                                         必要費用

                                     ・ 東日本大震災の災害規模                                              ・ 災害時の緊急貸付金額: 20万円
RESEARCH PROJECT REPORT
RESEARCH PROJECT REPORT




                                        住宅全壊世帯: 13万世帯
                                                                                                ・ 一時生活支援費
                                    → 住宅全壊世帯がすべて、                                                 生活の目処が立つまでの当面の生活費
                                      一時的な生活困窮世帯と仮定                                               の貸付




                                                    13万世帯に貸付が必要                                    20万円/世帯の貸付額が必要


                                                 東日本大震災並の大規模地震災害時
                                                 における緊急貸し付けが必要な世帯数


                                                    1 3 0 0 0 0 世帯
                                                                                                     あれば、すべての必要世帯に対して
                                                                                    必要な緊急貸付額は        緊急貸付が可能。
                                                                                      約260億円
                          参考資料
                          東北地方太平洋沖地震の被害状況(警察庁)
                          http://www.npa.go.jp/archive/keibi/biki/higaijokyo.pdfl                                       3

More Related Content

Similar to 120324 休眠口座国民会議シンポジウム発表資料(生田氏)

See dx 20120824
See dx 20120824See dx 20120824
See dx 20120824SEEDx
 
韓国の社会的企業から学ぶ 雇用開発のあり方
韓国の社会的企業から学ぶ雇用開発のあり方韓国の社会的企業から学ぶ雇用開発のあり方
韓国の社会的企業から学ぶ 雇用開発のあり方Takuji Hiroishi
 
長野市放課後子ども総合プラン有料化の方針
長野市放課後子ども総合プラン有料化の方針長野市放課後子ども総合プラン有料化の方針
長野市放課後子ども総合プラン有料化の方針長野市議会議員小泉一真
 
団体概要(20120704) 1
団体概要(20120704) 1団体概要(20120704) 1
団体概要(20120704) 1Ryo Yamato
 
ソーシャルファイナンス講演資料 20110425
ソーシャルファイナンス講演資料 20110425ソーシャルファイナンス講演資料 20110425
ソーシャルファイナンス講演資料 20110425Marie Goto
 
公益信託概要
公益信託概要公益信託概要
公益信託概要Marie Goto
 

Similar to 120324 休眠口座国民会議シンポジウム発表資料(生田氏) (10)

See dx 20120824
See dx 20120824See dx 20120824
See dx 20120824
 
12.2010 0614 social_fin
12.2010 0614 social_fin12.2010 0614 social_fin
12.2010 0614 social_fin
 
20120111 シンポジウム
20120111 シンポジウム20120111 シンポジウム
20120111 シンポジウム
 
韓国の社会的企業から学ぶ 雇用開発のあり方
韓国の社会的企業から学ぶ雇用開発のあり方韓国の社会的企業から学ぶ雇用開発のあり方
韓国の社会的企業から学ぶ 雇用開発のあり方
 
長野市放課後子ども総合プラン有料化の方針
長野市放課後子ども総合プラン有料化の方針長野市放課後子ども総合プラン有料化の方針
長野市放課後子ども総合プラン有料化の方針
 
団体概要(20120704) 1
団体概要(20120704) 1団体概要(20120704) 1
団体概要(20120704) 1
 
23.2010 1024 lifenet
23.2010 1024 lifenet23.2010 1024 lifenet
23.2010 1024 lifenet
 
ソーシャルファイナンス講演資料 20110425
ソーシャルファイナンス講演資料 20110425ソーシャルファイナンス講演資料 20110425
ソーシャルファイナンス講演資料 20110425
 
130222対話フォーラム onc
130222対話フォーラム onc130222対話フォーラム onc
130222対話フォーラム onc
 
公益信託概要
公益信託概要公益信託概要
公益信託概要
 

More from 休眠口座国民会議

休眠預金未来構想プラットフォーム
休眠預金未来構想プラットフォーム休眠預金未来構想プラットフォーム
休眠預金未来構想プラットフォーム休眠口座国民会議
 
日本とイギリスにおける休眠預金活用の最前線~Big Society Capitalのすべて~
日本とイギリスにおける休眠預金活用の最前線~Big Society Capitalのすべて~日本とイギリスにおける休眠預金活用の最前線~Big Society Capitalのすべて~
日本とイギリスにおける休眠預金活用の最前線~Big Society Capitalのすべて~休眠口座国民会議
 
日本の案(システム・フロー等)
日本の案(システム・フロー等)日本の案(システム・フロー等)
日本の案(システム・フロー等)休眠口座国民会議
 
休眠口座活用例(韓国)(システム・フロー等)
休眠口座活用例(韓国)(システム・フロー等)休眠口座活用例(韓国)(システム・フロー等)
休眠口座活用例(韓国)(システム・フロー等)休眠口座国民会議
 

More from 休眠口座国民会議 (7)

休眠預金未来構想プラットフォーム
休眠預金未来構想プラットフォーム休眠預金未来構想プラットフォーム
休眠預金未来構想プラットフォーム
 
日本とイギリスにおける休眠預金活用の最前線~Big Society Capitalのすべて~
日本とイギリスにおける休眠預金活用の最前線~Big Society Capitalのすべて~日本とイギリスにおける休眠預金活用の最前線~Big Society Capitalのすべて~
日本とイギリスにおける休眠預金活用の最前線~Big Society Capitalのすべて~
 
休眠口座活用5つのポイント
休眠口座活用5つのポイント休眠口座活用5つのポイント
休眠口座活用5つのポイント
 
休眠口座活用5つのポイント
休眠口座活用5つのポイント休眠口座活用5つのポイント
休眠口座活用5つのポイント
 
休眠口座白書
休眠口座白書休眠口座白書
休眠口座白書
 
日本の案(システム・フロー等)
日本の案(システム・フロー等)日本の案(システム・フロー等)
日本の案(システム・フロー等)
 
休眠口座活用例(韓国)(システム・フロー等)
休眠口座活用例(韓国)(システム・フロー等)休眠口座活用例(韓国)(システム・フロー等)
休眠口座活用例(韓国)(システム・フロー等)
 

120324 休眠口座国民会議シンポジウム発表資料(生田氏)

  • 1. 1.日本版休眠口座基金 スキーム  預金者の権利は100%保護。金融機関と預金者の関係は変わらず預金者の権利は消滅しない。金融機関は、法律に基づく休眠預 金の管理機関である休眠口座基金に対して「寄付」を行う(寄付を促す税制上の措置を講じる)。  金融機関を横断したワンストップの休眠口座照会体制を構築。  資金は団体/組織向けの無利子貸付等で活用し、民間の新しい活力を生み出す。金融機関が毎年利益計上している休眠預金額 は、約880億円/年。そのうち、350億円を預金者への返還用として引き当て、さらに230億円を払戻率が高まった場合のバッファーとして 留保し、最終的に払戻しがされなかった300億円程度を活用。 日本版休眠口座基金スキーム(案) 団体/組織 RESEARCH PROJECT REPORT RESEARCH PROJECT REPORT 金融庁 児童相談所 金融機関 休眠預金の寄付 規制・監督 預金者 休眠預金の 休眠預金の払戻し請求 払戻し請求 A銀行 貸付等 震災復興支援組織 B銀行 中間支援組織 休眠口座基金 C銀行 休眠預金の払戻し D銀行 休眠預金の払戻し DV防止センター ・ ・ 連携 ・ 大学 休眠口座のデータ提供 (法律で定められた限定的な 休眠口座の照会 情報の提供) NPOバンク 休眠口座 ワンストップ照会 ・ 窓口 ・ ・ 休眠口座の照会結果通知 1
  • 2. 2-1.教育分野への活用  児童養護施設の児童数は約30,000人であり、大学進学率は10.8%(全国平均は53.9%)。  学費を除いた大学4年間の総生活費は600~700万円(東京都社会福祉事業団試算)  300億円の休眠口座基金から貸付を行う場合、希望する全ての児童が金銭的不安なく進学可能。 図表 児童養護施設の児童が大学進学する例 児童養護施設の現状 進学に伴い発生する費用  データ  必要費用 ・児童数: 29,753人 (2009年時) ・学費 : 最低250万円(国公立大学) RESEARCH PROJECT REPORT RESEARCH PROJECT REPORT ・平均入所年数:4.6年 ・生活費: 600~700万円/4年 ・大学進学率:10.8% (全国平均53.9%) (東京都社会福祉事業団試算) 進学率が低い主な理由は経済的負担 ・その他: 大学受験費等 →毎年約6,500名の児童が退所(卒業) →学費は奨学金で補うと仮定 3,500人(50%強)が大学進学希望と仮定 600万円/ 人の貸付が必要 児童養護施設から大学に全国平均で進学希望した場合 3 5 00 人 必要な支援額は あれば、大学進学を希望する全ての 参考資料 独立行政法人統計センター 平成21年社会福祉施設等調査 約210億円 児童養護施設の児童が http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001068770 社団福祉法人全国社会福祉協議会 大学進学可能。 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011cpd-att/2r98520000011dad.pdf 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 *仮に生活費600万円/4年をバイトで稼ぐとすると http://www.crc-japan.net/contents/notice/pdf/h20_0722.pdf 時給800円で150時間/月以上働く必要がある。 2
  • 3. 2-2.災害時緊急支援への活用  東日本大震災の被災者を対象とした生活復興支援貸付の上限額は月額20万円(複数世帯の一時生活支援費)。  東日本大震災における住宅の全壊世帯は約13万戸(平成24年3月14日政府発表)。  300億円の休眠口座基金から貸付を行う場合、すべての全壊世帯に対して緊急支援が可能。 図表 地震災害時における生活福祉資金貸付制度の例 災害時の被害状況 平均貸付費用  データ  必要費用 ・ 東日本大震災の災害規模 ・ 災害時の緊急貸付金額: 20万円 RESEARCH PROJECT REPORT RESEARCH PROJECT REPORT 住宅全壊世帯: 13万世帯 ・ 一時生活支援費 → 住宅全壊世帯がすべて、 生活の目処が立つまでの当面の生活費 一時的な生活困窮世帯と仮定 の貸付 13万世帯に貸付が必要 20万円/世帯の貸付額が必要 東日本大震災並の大規模地震災害時 における緊急貸し付けが必要な世帯数 1 3 0 0 0 0 世帯 あれば、すべての必要世帯に対して 必要な緊急貸付額は 緊急貸付が可能。 約260億円 参考資料 東北地方太平洋沖地震の被害状況(警察庁) http://www.npa.go.jp/archive/keibi/biki/higaijokyo.pdfl 3