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公共交通マーケティング研究会第7回例会(2020年12月24日開催)での講演資料二つ目「『コロナ危機』収束まで/収束後における高速バスの対応事例と戦略」
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1.
「コロナ危機」収束まで/収束後における 高速バスの対応事例と戦略 2020年12月24日 公共交通マーケティング研究会公式サイトにて公開予定
2.
高速バス市場の概観(コロナ前)
3.
年間輸送人員の推移 3 1965 1億人 年間輸送人員 1億万人強 国 内 線 航 空 航空を上回り 鉄道に次ぐ第二の 幹線輸送モード 75 85 95
2005 15 2014 15 16 17 1億人 乗務員不足 や停留所発 着枠不足な どが要因 2014年以降は横ばい、微減
4.
4 高速バスの市場 高速バス路線の分類 運行形態 事例 比率 大都市間
主に夜行。多数社競合 東~阪、名、仙 約7% 長距離 夜行 東京~青森(350㎞超) 約7% 短・中距離 昼行・高頻度 東京~長野、大阪~岡 山(~250㎞) 約86% 高速バスの市場シェア 首都圏→松本市周辺 居住地→移動先 松本市周辺→首都圏 37.1% 高速バス 6.8% 鉄道、自家用車、貸切バス等 ⚫ パーク&ライドや高頻度運行が人気で、地方部では定着 ⚫ 出張、冠婚葬祭、「都市型消費(コンサート、有名店でのショッピン グなど大都市ならではの消費活動)」など「老若男女」の利用 国土交通省「第5回全国幹 線旅客純流動調査」より 当社にて集計 各社時刻表より 当社にて推計 夜行便は1割程度 市場の本丸は 高頻度運行する 短・中距離の 昼行路線。 「地方の人の都市 への足」として定 着
5.
5 「コロナ前」からの課題 ➌供給量に制約 ⚫ 需要が集中する繁忙日・時間帯の続行便(2号車、3号車)が特 に不足→「満席お断り」が発生 慢性的な乗務員不足 大都市部の停留所不足 ➊地方部の市場が縮小 沿線人口の減少
例:長野県の人口推計 2015 2020 2025 2030 2035 2040 人口推計 2,099 2,052 1,958 1,878 1,793 1,705 (指数) 102.3 100 95.4 91.5 87.4 83.1 ⚫ 全国的に、地方部の人口は毎年1%弱減少 →10年で約1割、20年で約2割、市場が縮小する 国立社会保障・人口問題研究所「日本 の地域別将来推計人口」(2018年)を 元に当社にて集計。人口は単位:千人 市場が縮小傾向 供給、需要の双方 に課題➋大都市市場が未開拓 認知度不足 ⚫ 国内客/訪日客とも、旅行形態のシフト(団体→個人)が進む にも関わらず、観光需要を取り込めず
6.
6 求められる戦略 ❶「筋肉質な高速バス事業」作り 市場縮小。競合する鉄道が新しい戦い方を導入する懸念も 「売上減→コスト削減(減便や車両グレードダウン、安全性への 投資減)→さらなる客離れ」だけは避けねばならない 「市場が縮小しても収益を確保→サービス品質に再投資→ 顧客基盤を再強化」のサイクル作り ❷次の市場(個人化が進む観光客市場)の獲得 ⚫ 国内/訪日市場とも「団体旅行から個人旅行へ」シフト ⚫ 大都市(および海外)市場での想起率向上と、個人旅行に使 いやすい商品(路線、ダイヤ…)作りがカギ 新高速乗合バス制度(幅運賃、貸切バス型管理の受委託)活用 従来の「バスツアー」(貸切バス)に代わる、「オーダー メイド型バス旅行」作り 「市場の潮目」 に到来した 「コロナ危機」 収益モデルの転換 が必要
7.
7【復習】メインシナリオと サブシナリオ 【メインシナリオ】高速バスを例に 「制御」フェーズ(収束まで) に取り組むべきこと ⚫ 運行計画を柔軟に変更& 内容を丁寧に情報提供 ⚫ 「Go
To」活用 ⚫ 再び「緊急事態」に戻る リスクへの備え ・出向/副業受け入れ先確保 「新常態」フェーズ(収束後) に取り組むべきこと ⚫ 現有顧客基盤での収益性 向上 ・ダイナミック・プライシング ・管理の受委託活用 ⚫ 新規市場 ・個人化する観光客取り込み 短期に収束 し、相当の 需要が回復 した場合 【サブシナリオ】 ❶「緊急事態」に 戻るケース(地域 限定などを含む) ❷事態が相当長期化するケース ❸「収束」したのに、自社の市場で は需要が大きく回復しないケース
8.
8 【復習】シナリオ作り 「事業別×分野・ 市場別×フェーズ 別」で 考えられうる施策 をすべてリスト アップ メイン・シナリオ 収束 まで 収束 後 運行計画 営業 (既存客) 営業 (新規客) 人事・労務 ファイナン ス その他 サブ・シナリオ 再び 緊急事態 収束が 遅れる 収束しても 回復しない
9.
9 メインシナリオ(抜粋) 「事業別×分野・ 市場別×フェーズ 別」で 考えられうる施策 をすべてリスト アップ 収束まで 収束後 運行 ⚫感染防止 ⚫需要のレベルに合わせ た柔軟なダイヤ改正と 情報発信 ⚫柔軟なダイヤ(曜日別ダ イヤなど)+効率的な続 行便 →共同運行モデル再構築が 必要? 既存顧客 主に地方の 人 ⚫定期的な割引キャン ペーン(バス利用習慣 を維持) ⚫ダイナミック・プライシ ング精度向上 ⚫CRM強化 新規市場 主に個人観 光客 ⚫GoTo活用 ⚫GoTo活用 ⚫沿線の観光・宿泊施設や 行政、協会との連携強化 その他 ⚫リスク・マネジメント •
営業所でクラスター発 生時のBCP • 「緊急事態」に戻るリ スクへの備え(出向先 確保など)
10.
「GO TOトラベル」活用
11.
対象商品はかなり限定的 11 「GO TO」と高速バス 対象にはしてもらったが ⚫ 「高速バス+観光または宿泊」 の「セット商品」を「旅行会社 またはOTAで予約」した場合 ⚫
「旅行会社扱い」の「旅行商品」がほとんどなかった ⚫ 在庫連携などが必要で、急ごしらえは意外と難しい ⚫ そもそも旅行会社にとって「バス」と言えば貸切バス。 旅行会社と高速バスでは、商習慣などに大きな溝 その中でも ⚫ 私鉄系旅行会社(例:京王観光)などでフリープラン (高速バス+宿または入場券など)を以前から持ってい た例もあった ⚫ 新たに準備して商品を準備した例も(神姫観光、京成バ ス、神奈川中央交通…) 「GoTo」の設計は 「昭和の旅行(団体 /PKG)」形態に 引きずられたが、 実際の需要は 個人旅行に偏った
12.
12 成功事例 富士急トラベル「得Qパック」 ⚫ 「高速バス+富士急ハイランドの フリーパス」セット商品 ⚫ もともと、オンライン予約に対応 ✓
高速バス座席管理システムと 在庫連携済み ✓ 現地でのフリーパス引き換え のオペレーションも構築済み ⚫ 急きょ改修などを行い「Go To」 に対応 トラベルジャーナルオンライン 2020/12/7 6:45発➊号車→ 7:15発➋号車→ 7:15発➌号車→ (二階建てバス) 7:35発➋号車→ 7:45発 ➋号車→ バスタ新宿→富士急ハイランド 10月26日(月)時点での 10月31日(土)朝の空席状況 7:55発→ ➋号車 6:45発➋号車→ 7:15発➊号車→ 7:35発➊号車→ 7:45発 ➊号車→ 7:55発 ➊号車→
13.
13 成功事例 ターゲット客へのリーチがカギ 富士急ハイランドの公式サイト 共同運行先の電車内 「富士急ハイランドに行こうかな」と検索し た人に「今なら安いよ」 →プル型アプローチ 通勤などで電車に乗ってるだけの人に 「富士急へ行こうよ」 →プッシュ型アプローチ →しかも、エリアを絞った「ターゲティン グ」ができている ⚫ 相鉄の電車、路線バス 車内では横浜発のポス ターを掲出(同様に京 王=新宿発。東急=渋 谷発)
14.
Product(商品) Place(販路) Promotion(認知) Price(価格) 14 成功事例 ⚫
コロナ前から「高速 バス+フリーパス」 商品を持っていた ⚫ ウェブ予約で完結(高 速バス座席管理システ ムと連携+現場オペ レーション) ⚫ 即座に「Go To」対応し た(割引処理のシステ ム改修などが必要) ⚫ プル型、プッシュ型の 効果的プロモーション 最低でも「プル型」を確実に実現 特に「Place」と 「Promotion」の差を 意識して
15.
15 自治体の支援策 高知県の事例=宿泊すれば交通費を助成 ⚫ 「Go To」の宿泊単品予約を補完する支援策 ⚫
個人手配でも還付されるが、ホワイトベア社の「高速バス +宿」だと「Go To」対象でもあるので相当な割引に 観光部局の支援策は 「宿泊」「団体」に向 きがち。 「観光産業の一員」の 自覚を持ち事業者から 観光部局にアピールを
16.
ダイナミック・プライシング
17.
17 ダイナミック・プライシングとは レベニュー・マネジメントの手法の一つ 単価 販売数 より高くても 買いたい人はいる より安ければ買う、 という人もいる 単価 販売数 市場を細分化し、 価格を「出し分 け」すれば売上は 最大化 プライシングの高度化 図:三菱総合研究所 正規運賃のみ 往復割引/回数券 早期購入割/席数限定割 カレンダー(曜日別)運賃 DP(随時変動運賃) 「予約制」で 「在庫に上限があ る」商材に有効 宿泊や航空では収 益性向上に大きな 実績。約半世紀の 歴史
18.
18 2008/6/23 日経MJ 2008/11/7 日経産業新聞 日経情報ストラテジー 2009年9月号 2006年から 「高速バスにおけるレベ ニュー・マネジメント (ダイナミック・プライ シング)」 に取り組む 国土交通省「バス事業の あり方検討会」委員とし て、高速バスの運賃変動 を認める制度改正を提言 (2012年「新高速乗合バ ス」制度が実現)
19.
19 高速バスにおける導入状況 2002年 認可運賃制。割引は50%まで 上限認可運賃制導入 「営業割引運賃」 →届出すれば事業者の 裁量で割引可能に 2006年 軽微運賃制導入 →上限額も撤廃 2012年 新高速乗合バス制度 「幅運賃」 →届出の範囲内で 随時変動可能に 2002年
高速ツアーバス誕生 2006年 高速ツアーバス各社 価格変動を導入開始 2013年 高速ツアーバス廃止 新高速乗合バスに一本化 高速バスの運賃制度の変遷 「幅運賃」(2012年~) 「予約を受け付け又は運賃をお支払い頂いた後に、同便の運賃額が変更さ れた場合は差額の追徴及び払い戻しは行わない」旨を、営業所掲出や乗車 券記載等で旅客に周知することで、予約受付開始後も、随時、運賃額を変 更可能に 数度の制度改正を 経て 事業者の裁量によ り (事前届出の範囲 内で)運賃を随時 に変動可能に
20.
20 高速バスにおける導入状況 運賃支払い 主要顧客 予約方法
需要波動 便変更 主な運賃施策 大都市間 事前支払い前提 若年層 ウェブが ほぼ100% 曜日単位 なし ダイナミック・プラ イシング 長距離 老若男女 電話・窓口 も多い 曜日別運賃 短・ 中距離 当日・車内払いも 便(時間 帯)単位 あり 往復割引・回数券 路線タイプ別 運賃施策導入状況の傾向 オペレーションが複雑で運賃施策が遅れがち 「高速バス市場の本丸」 高頻度運行の短・中距 離昼行路線で初めて、 本格的ダイナミック・プラ イシングを導入 短・中距離路線の特徴 ⚫ 鉄道自由席との競合上、なるだけ当日支払い&直前での乗車便変 更を認めたい 「遅い便に予約しておき、早く終われば一本前に変更し帰宅」 →便や乗客によって運賃が異なると、乗務員が一人で対応する必要
21.
21 「SRS×MAGIC PRICE」 京王「SRS」が、 ダイナミック・プライシング・システムと連携 ⚫ 予約データ分析により、システムが最適な運賃額を算出 名鉄バスら中部・北陸各社、西日本鉄道ら九州内16社など、全国45社が導入中 (青森駅前から鹿児島中央駅前までの全国の窓口、予約センターに端末設置) 高速バス基幹(座席管理)システム「SRS」 ※乗客向け予約サイトのブランドは「ハイウェイバスドットコム」 2020/12/14
東京交通新聞 2020/12/21 トラベルジャーナル オンライン 2020/12/11 乗りものニュース 2020/12/14 バスマガジンweb ス
22.
22 オペレーションとの両立が肝心 「SRS×MAGIC PRICE」 2012/11/27 日本経済新聞 ⚫ 高頻度運行の昼行路線でダイナミック・プライ シングを導入するには、「運賃体系」や「現場 オペレーション」の整備が前提 昼行路線で追及すべき「手軽な乗車」 鉄道自由席に対抗するためには、利用のハードルを下げることが必要 ・当日発券、車内運賃収受
・発車直前まで乗車便変更 →ダイナミック・プライシングとの両立には綿密なオペレーション設計 とシステム改修が必須 ⚫ 2012年夏(新制度施行)以来、戦 略性を持ち一貫してオペレーショ ンとシステムの準備を進めてきた 京王電鉄バスに敬意
23.
ご清聴いただきましてありがとうございました 追伸 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ プライシング、あるいはそれに象徴されるマーケティングを、公共交通の世界が後 回しにしてきたのは事実。 でも、裏返してみれば、そこが「伸びしろ」として残っているなら、「コロナ禍」で厳し い状況で「タンスの底から、むかし隠したヘソクリが見つかった」ようなもの。 意外とそれで食つなぐことができるかも、よ。
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