2024/4/24 「TrailblazerDX 2023 Global Gathering for Architects」に寄稿したLTのスライドです。 TDXコンテンツ「Asynchronous vs. Synchronous Architectures」に対する日本語解説記事となります。

1. Takashi Hatamoto
Synchronous vs Asynchronous Architectures：同
期/非同期アーキテクチャの比較
TDX’23発表内容紹介
株式会社チームスピリット

2. 自己紹介
はたもと たかし
畑本 貴史
株式会社チームスピリット エンジニア(Expert)
サービスディベロプメントディビジョン
TSFチーム(AppExchange製品開発)
経歴：こんな感じ
• Salesforceひとすじ早1x年
• 今の会社で早3年半
• Lightning Championとかやってた人
• Salesforce Developer Group Tokyo 運営

3. TDX’23の発表内容を紹介します
Asynchronous vs. Synchronous
Architectures
Learn use cases for asynchronous and
synchronous operations. Leverage these
patterns to improve your automations as
discussed in Salesforce Well-Architected.
Role: Architect, Salesforce Consultant
Product: Salesforce Platform
同期 vs. 非同期アーキテクチャ
同期処理と非同期処理のそれぞれのユースケース
を学びましょう。
「Salesforce Well-Architected」※ で説明されて
いるように、これらのパターンを活用して自動化
を改善します・
対象ロール：Salesforceアーキテクト、コンサル
タント
対象製品: Salesforce Platform
※ https://architect.salesforce.com/

4. 同期/非同期の違い

5. 同期/非同期の違い
同期処理：
起動して即座に処理される
非同期処理：
起動とは別のタイミングで
処理される

6. サンプル：レコードトリガフローの同期/非同期処理

7. サンプル：レコードトリガフローの同期/非同期処理
トリガ起点で「スケジュール
済みパス」を追加すると
非同期処理が設定できる

8. 同期/非同期処理の特徴

9. 同期/非同期処理の特徴
同期処理
• 特定の実行順序内で実行される
• 単一で不可分なデータベーストラ
ンザクションを持つことができる
（エラー発生時に全ての変更が
ロールバックされる）
• 複数のレコード変更を束ねて、デ
ータの不一致を防止する
非同期処理
• 元のトランザクションがコミットさ
れた後に実行される
• 独立した作業の流れを強制的に
実行する
（関連処理がエラーになってもロ
ールバックされない）
• 外部コールアウト、複数のDML、
より大規模な処理

10. 補足：同期処理/非同期処理の一覧
同期処理
Apex
• Visualforceコントローラー
• Apexトリガ
• プロセスビルダーやフローから呼び出した
Apexアクション
フロー
• 画面フロー
• レコードトリガフロー(即時実行)
• 自動起動フロー
非同期処理
Apex
• @futureメソッド
• 非同期Apex(Queueable)
• Apex一括処理(バッチ)
• Apexスケジューラ
• プラットフォームイベントトリガ
• 変更データキャプチャトリガ
フロー
• レコードトリガフロー(非同期実行)
• スケジュールトリガフロー
• プラットフォームイベントトリガフロー

11. 何か問題ある？（あります）

12. 制限、そして処理遅延

13. 制限、そして処理遅延
非同期処理に関する組織全体の日次制限
• 25万件/日 or 200 × ユーザーライセンス数、(いずれか大きい方)
• つまり、25万件/日が最低ラインであり、大規模な組織（1,250人以上のユー
ザー）の場合はもっと増える可能性があります。
• 制限量を監視し、管理していますか？使い切ったらどうなるか、リスク分析で
きてる？
いつ実行されるかの確証はありません。
• Salesforceは、非同期処理を速度よりも信頼性を重視してチューニングして
います。
※非同期処理のキューが溜まっている場合、サーバリソース不足による失
敗を回避するためシリアルに実行される
• そのため、実行予定時刻からの遅延が発生する場合があります！
• 酷い時は20分ほどかかることがあります。

14. 非同期処理のエラーハンドリング
森で木が倒れる時、それを聞く人が周りにいない場合、木の倒れる音は鳴ったのでしょうか？

15. 非同期処理のエラーハンドリング
森で木が倒れる時、それを聞く人が周りにいない場合、木の倒れる音は鳴ったのでしょうか？
何故、ややこしくなるのか
• 非同期処理が完了しても、それ
は画面に映らない！
• 非同期処理を呼び出した「親」リ
クエストはすでに完了している！
• これを防ぐために非同期処理が
終わるまでUI側が待機するのは
（常識的に考えて）悪いUXです。
こんな対応ができます
• 以下の手段でAdmin向けのエラ
ーリストを作成できます。
・結果をレコードに保存する
・プラットフォームイベントを流す
• カスタム通知やメールの送信と
いう手段もあります。
• あるいは、レコードロックのような
機能を実装して自動的にリトライ
できるようにしますか？

16. 非同期フローによるユーザーのクリーンアップ
実践的な非同期アクション

17. 非同期フローによるユーザーのクリーンアップ
実践的な非同期アクション
ユースケース
• 社員の退職と共に、自動的に外部システムと連携して関連
ユーザを無効化します。
• また、退職した社員ユーザから権限セットと管理パッケージ
ライセンスを削除するクリーンアップ作業を行います。

18. システムデザイン上の注意点

19. システムデザイン上の注意点
• この処理は直ちに実行する必要がありますか？
• 処理には長い時間がかかりますか？
• この業務にプロセスリスクはありますか？

20. 非同期フローを作ってみる

21. 非同期フローを作ってみる
フロー起動時点で設定すること
• レコードトリガフローを選択する
• フローを最適化：アクションと関連レコード
• チェックボックス「トリガレコードの元のトランザクションが正
常にコミットされた後に外部システムにアクセスするには、
非同期に実行パスを含めます。」をONに設定

22. 最終的な感想

23. 現場での実装経験からのメモ
私たちが見てきた、実際に機能するもの、しないもの

24. 現場での実装経験からのメモ
私たちが見てきた、実際に機能するもの、しないもの
Apex一括実行を
濫用するな！
• OKパターン：10万件以上の組織
全体のレコードに対する一括更
新ジョブ
• NGパターン：ユーザが日常的に
使うApexトリガからの起動
(1ユーザのために都度バッチを
起動すること)
• Flexキュー(一括処理専用キュ
ー)は100件の制限があります。
• Batchableジョブの起動は、
Queueableに比べて比較的遅い。
• Start / Execute / Finish メソッド
は、1 日あたりの非同期ジョブ制
限にカウントされます。
@futureより
Queueableを使え！
• @futureは複雑な型の引数をサ
ポートしません。
• @future は実行ジョブId を返し
てくれません。
※ジョブIDがあれば実行結果を
追跡したり、実行前ジョブをキャ
ンセルできる
• ＠futureはfinalizer処理をサポー
トしていません。
※非同期ジョブ終了後にコール
バック処理を起動できる機能
• ＠futureは今後アップデートされ
ません。

25. 補足：@futureとQueueable Apexの違い
比較要素 @future アノテーション Queueable Apex
単位 メソッド クラス
パラメータ入力方法 引数 メンバー変数
起動方法 同期処理からメソッドを呼ぶ System.enqueueJob()でキュー登録
プリミティブ型のパラメータ入力 ○ ○
すべての型のパラメータ入力 × ○
実行結果を設定画面から確認 ○ ○
実行結果をApex中で確認 × ○
ジョブのチェーニング
(次の非同期ジョブを連鎖起動)
× ○
Transaction Finalizersで
終了時処理起動
× ○

26. 現場での実装経験からのメモ
私たちが見てきた、実際に機能するもの、しないもの
自動起動フローの
「一時停止」要素を
無暗に使うな！
• 以前は処理のトランザクションを
切るために0秒の停止処理を挟
んでいたが、現在はレコードトリ
ガフローに置換している
• 処理を中断する場合、フローイン
タビューの機能に頼らず現在の
状態をレコードに保存する。
非同期フローで
外部システムと連携する
場合の処理順
1. Salesforceレコードを取得する
2. 外部コールアウト、外部オブジェ
クトの更新
3. 更に複数のステップを処理する
場合、いったん現状のパラメー
タを割り当てて保存する
4. 最後に、Salesforceレコードの
作成/更新/削除操作を行う
画面フローは
どう実装する？
• 「ロールバック」要素を使うことで
DBへの更新処理を初期状態ま
で遡って取り消すことができる
※画面フローで複数のDB更新
を行っていた場合、エラーが起
きても直近の1件しか自動でロ
ールバックされない(!?)
• ロールバックを活用することで
高度なトランザクション管理が実
装できる

27. 補足：画面フローの「ロールバック」要素
例：「取引先責任者作成」で
エラーが発生した場合
• 何もしない（障害パスを引かなかった場合）
エラーが発生し、すべてのDB更新処理が自動的にロー
ルバックされる
→「取引先作成」はロールバックされ、画面には標準エ
ラーが返る
• 障害パスを設定したが、ロールバックを実行しない場合
直近のDB更新処理が中断され、その他はコミットされる
→「取引先責任者作成」でエラーが起きても、「取引先作
成」はされる
• 障害パスを設定し、ロールバックを使った場合
画面「初期画面」 ～ 「完了画面」の間のすべてのDB更
新がロールバックされる
→ 「取引先作成」もロールバックされる

28. 最後に：解説者の所感
• 大規模組織でガバナ制限を回避するためには、処理の非同期化は必須
• 非同期ジョブの実行結果確認をどうするか課題だったが、Transaction Finalizersで簡略化でき
そう
• @futureは既存メソッドを簡単に非同期化できるので便利だったが、厳密な管理ができないの
で利用頻度抑えた方がいいかも
• @futureメソッドをQueueableクラスに1：1で置換するとクラス数が膨大になるので、パラメータに
応じてexecuteの処理内容が切り替わる汎用クラス作ると良さそう
• 大量データ処理 = Apexバッチという固定観念があったが、Queueableのチェーニングでも実装
できそう
• バッチ処理のExecuteはデータ件数に比例して日次実行回数を大量消費するので、Queueableで数千
件ごとに処理をした方がコスパが良い
• フローでの非同期処理実装がかなり簡便になっている
• Apexですべて実装するより、非同期フローからApexを呼ぶ方が楽かもしれない

29. 関連資料リンク
• Asynchronous vs. Synchronous Architectures
• https://reg.salesforce.com/flow/plus/trailblazerdx23/sessioncatalog/page/Catalog/session/1667588449
732001XodW
• Trailhead
• 非同期 Apex
https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/modules/asynchronous_apex
• Apex開発者ガイド
• 非同期 Apex
https://developer.salesforce.com/docs/atlas.ja-jp.apexcode.meta/apexcode/apex_async_overview.htm
• 実行ガバナと制限
https://developer.salesforce.com/docs/atlas.ja-jp.apexcode.meta/apexcode/apex_gov_limits.htm