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情報産業サービス化論レポート「自主テーマにおける新たなビジネスチャンスについて」
                                      s0950352 須田泰司
 本課題レポートでは ICT 活用型のヘルスケアサービスのひとつである EHR:Electronic
Health Record(電子医療記録)を自主テーマとし、本テーマにおける二面市場の考え方
を適用した EHR サービスについての考察結果を述べる。
■自主テーマにおける現状課題・問題点の整理■
 当初電子カルテ、昨今は日本版 EHR と称されることが多い日本における EHR の取り組
みは、2001 年の e-Japan 戦略以降、政府の情報化戦略の重要施策のひとつに位置づけられ
てきた。EHR をベースとした、個人の医療情報の情報ネットワーク上の流通(HIE:Health
Information Exchange)
                    、つまり医療情報のルーティング・サービスが実現すれば、医療サ
ービスの効率性と安全性が向上するものとして大きな期待を集めている。
 しかし約 10 年間に渡る取り組みにもかかわらずその普及率は 10%に満たないとの統計
が出されるなど、その普及は一向に進んでいない。その原因としては、技術的な要因(異
種システム接続の標準化が遅れているため、HIE が一部実現にとどまり、スケールアウト
できない)と非技術的な要因(作りこみの多いシステム開発のため高額となり、財務余力
が小さく、また既存のワークフローの混乱の原因となるため中小医療機関が導入に否定
的。
 )の存在が指摘されている。まとめると、ICT 活用型ヘルスケアサービスの抱えている
課題は以下のようになる。
 ●ベンダー、医療機関双方が細分化されており、規模の経済性が発揮されない
 ●EHR システムの高導入コストが小規模医療機関の採用上の障害となっている
 なお、小規模医療機関(病床数が 20 床未満の一般診療所)の数は 2009 年 12 月時点で
99,643(医療施設動態調査)、また、平成 20 年度の病院報告によると、1 日平均の外来患者
数は 143.1 万人、同入院患者数は 131.8 万人であり、このことからも規模の経済性を実現
できるベースを備えていながら実現できていない現状が推察できる。
■解決策となるサービス■
 このように技術とコスト上の問題に端を発し、大きな潜在市場規模の実現が阻害されて
いる現状の解決策を二面市場の手法を用いて検討していく。まず、講義で学習した二面市
場のポイントを次のように整理した。
 ●異なる2種類のユーザー・グループのマッチング。
 ●インターネットを使用することで、
                 「固定費が大きく変動費が小さい。、
                                 」「広域普及が
 容易(物理的な制約を受けにくい)
                」な環境の実現。
 ●ユーザーの増加が製品・サービスの持つ効果・価値を高めるネットワーク効果が機能。
 ●一方のユーザー・グループにとっての市場価値が他方のユーザー・グループの数で規
 定される。
 次にこれら各ポイントに沿って、二面市場の手法を適用した EHR サービス像を明らかに
していくことを試みる。


                                                  1
①異なる2種類のユーザー・グループのマッチング:EHR サービス(医療情報のルーティ
ング・サービス)では、
          (中小)医療機関と患者というふたつのユーザー・グループ、つま
り市場の存在を規定することができる。これらのユーザー・グループを結びつけるものが
EHR サービス(プラットフォーム)になる。
②インターネットを使用することで、「固定費が大きく変動費が小さい。、
                                 」「広域普及が容
易(物理的な制約を受けにくい)
              」な環境の実現:ICT 型ヘルスケアサービスの課題として
既に指摘したように、現在 EHR システムは巨大なイニシャルコストと医療機関の低導入率
という状況にある。そして尐数のネットワーク化された医療機関を除けば、大多数の医療
機関は EHR システムを個別に導入しているためにその運用コストも小さくない。そこで、
各ヘルスケアソフトウェアベンダーが協力して EHR システム基盤部分の標準化・共通化を
実現できれば、固定費と変動費の双方で現在よりも大幅に低減できる可能性がある。特に
EHR 基盤システムをクラウド化できれば、広域普及も容易になるものと考えられる。
③ユーザーの増加が製品・サービスの持つ効果・価値を高めるネットワーク効果が機能:
                                       「フ
リー<無料>からお金を生み出す新戦略(クリス・アンダーソン。NHK 出版)」では、プ
ラクティス・フュージョン社(salesforce.com が出資)の無料医療ソフトウェアが紹介され
ている(139P)が、そこで記述されているように、患者、医師の情報が蓄積されデータベ
ース化されることで、二次的利用による付加価値の源泉が創出される。これはネットワー
ク効果の一形態といえよう。
④一方のユーザー・グループにとっての市場価値が他方のユーザー・グループの数で規定
される:ヘルスケア市場では事業者である医療機関にとって、患者は顧客という関係にな
る。したがって、顧客である患者が、購入するヘルスケアサービスに EHR を使用すること
で未使用の場合以上のベネフィットを認識・享受できる場合、事業者の医療機関は患者に
提供するヘルスケアサービスに EHR を使用することが避けられなくなる。




                                                2
つまり EHR の使用を支持する患者の数が増えれば増えるほど、
                               医療機関にとっての EHR
システム/サービスの価値は高まる関係にあるといえるのである。
【EHR クラウドの課金形態】
 EHR クラウドサービスでは、EHR を使用しない旧来型のヘルスケアサービスと同様に
患者側は無料として優遇し、医療機関側に課金をする形式が考えられる。各医療機関を仮
                                     1
想的に巨大な医療機関化して患者情報のルーティング処理を行うことになるので、 医療機
関当たりは低額課金を実現できると考えられる。また、前述したプラクティス・フュージ
ョン社と同様に、データベース化した情報の利用・販売が可能となれば、利用料金単価の
更なる抑制を実現できる可能性が高まる。
■まとめ■
 このように、EHR サービスに二面市場の手法を適用すると、現在抱えている技術上、コ
スト上の普及障害を克服し、規模の経済性とネットワーク効果が機能することで、ヘルス
ケアサービスの利用を制限せずに医療費の抑制が実現できる可能性がみえた。
 EHR はこれまで(情報)システム、つまりプロダクトとして分類・表記されることが常
識であり、ここで記したような EHR サービスとして分類・表記されることはあまりなかっ
た。つまり ICT 型のヘルスケアにおいて EHR はまさにプロダクトであって、サービスと
しての視点が大きく欠落していたということを本課題レポートの作成過程で再確認するこ
とができた。また、EHR クラウドでは、そのサービスプロバイダーはヘルスケアソフトウ
ェアベンダーに限らず、異業種からの参入者となる可能性も十分に考えられるので、ソフ
トウェアベンダーは早急に EHR クラウドへの対応を決断する必要性に迫られるだろう。
                                         ―以上




                                             3

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K459情報産業サービス化論

  • 1. 情報産業サービス化論レポート「自主テーマにおける新たなビジネスチャンスについて」 s0950352 須田泰司 本課題レポートでは ICT 活用型のヘルスケアサービスのひとつである EHR:Electronic Health Record(電子医療記録)を自主テーマとし、本テーマにおける二面市場の考え方 を適用した EHR サービスについての考察結果を述べる。 ■自主テーマにおける現状課題・問題点の整理■ 当初電子カルテ、昨今は日本版 EHR と称されることが多い日本における EHR の取り組 みは、2001 年の e-Japan 戦略以降、政府の情報化戦略の重要施策のひとつに位置づけられ てきた。EHR をベースとした、個人の医療情報の情報ネットワーク上の流通(HIE:Health Information Exchange) 、つまり医療情報のルーティング・サービスが実現すれば、医療サ ービスの効率性と安全性が向上するものとして大きな期待を集めている。 しかし約 10 年間に渡る取り組みにもかかわらずその普及率は 10%に満たないとの統計 が出されるなど、その普及は一向に進んでいない。その原因としては、技術的な要因(異 種システム接続の標準化が遅れているため、HIE が一部実現にとどまり、スケールアウト できない)と非技術的な要因(作りこみの多いシステム開発のため高額となり、財務余力 が小さく、また既存のワークフローの混乱の原因となるため中小医療機関が導入に否定 的。 )の存在が指摘されている。まとめると、ICT 活用型ヘルスケアサービスの抱えている 課題は以下のようになる。 ●ベンダー、医療機関双方が細分化されており、規模の経済性が発揮されない ●EHR システムの高導入コストが小規模医療機関の採用上の障害となっている なお、小規模医療機関(病床数が 20 床未満の一般診療所)の数は 2009 年 12 月時点で 99,643(医療施設動態調査)、また、平成 20 年度の病院報告によると、1 日平均の外来患者 数は 143.1 万人、同入院患者数は 131.8 万人であり、このことからも規模の経済性を実現 できるベースを備えていながら実現できていない現状が推察できる。 ■解決策となるサービス■ このように技術とコスト上の問題に端を発し、大きな潜在市場規模の実現が阻害されて いる現状の解決策を二面市場の手法を用いて検討していく。まず、講義で学習した二面市 場のポイントを次のように整理した。 ●異なる2種類のユーザー・グループのマッチング。 ●インターネットを使用することで、 「固定費が大きく変動費が小さい。、 」「広域普及が 容易(物理的な制約を受けにくい) 」な環境の実現。 ●ユーザーの増加が製品・サービスの持つ効果・価値を高めるネットワーク効果が機能。 ●一方のユーザー・グループにとっての市場価値が他方のユーザー・グループの数で規 定される。 次にこれら各ポイントに沿って、二面市場の手法を適用した EHR サービス像を明らかに していくことを試みる。 1
  • 2. ①異なる2種類のユーザー・グループのマッチング:EHR サービス(医療情報のルーティ ング・サービス)では、 (中小)医療機関と患者というふたつのユーザー・グループ、つま り市場の存在を規定することができる。これらのユーザー・グループを結びつけるものが EHR サービス(プラットフォーム)になる。 ②インターネットを使用することで、「固定費が大きく変動費が小さい。、 」「広域普及が容 易(物理的な制約を受けにくい) 」な環境の実現:ICT 型ヘルスケアサービスの課題として 既に指摘したように、現在 EHR システムは巨大なイニシャルコストと医療機関の低導入率 という状況にある。そして尐数のネットワーク化された医療機関を除けば、大多数の医療 機関は EHR システムを個別に導入しているためにその運用コストも小さくない。そこで、 各ヘルスケアソフトウェアベンダーが協力して EHR システム基盤部分の標準化・共通化を 実現できれば、固定費と変動費の双方で現在よりも大幅に低減できる可能性がある。特に EHR 基盤システムをクラウド化できれば、広域普及も容易になるものと考えられる。 ③ユーザーの増加が製品・サービスの持つ効果・価値を高めるネットワーク効果が機能: 「フ リー<無料>からお金を生み出す新戦略(クリス・アンダーソン。NHK 出版)」では、プ ラクティス・フュージョン社(salesforce.com が出資)の無料医療ソフトウェアが紹介され ている(139P)が、そこで記述されているように、患者、医師の情報が蓄積されデータベ ース化されることで、二次的利用による付加価値の源泉が創出される。これはネットワー ク効果の一形態といえよう。 ④一方のユーザー・グループにとっての市場価値が他方のユーザー・グループの数で規定 される:ヘルスケア市場では事業者である医療機関にとって、患者は顧客という関係にな る。したがって、顧客である患者が、購入するヘルスケアサービスに EHR を使用すること で未使用の場合以上のベネフィットを認識・享受できる場合、事業者の医療機関は患者に 提供するヘルスケアサービスに EHR を使用することが避けられなくなる。 2
  • 3. つまり EHR の使用を支持する患者の数が増えれば増えるほど、 医療機関にとっての EHR システム/サービスの価値は高まる関係にあるといえるのである。 【EHR クラウドの課金形態】 EHR クラウドサービスでは、EHR を使用しない旧来型のヘルスケアサービスと同様に 患者側は無料として優遇し、医療機関側に課金をする形式が考えられる。各医療機関を仮 1 想的に巨大な医療機関化して患者情報のルーティング処理を行うことになるので、 医療機 関当たりは低額課金を実現できると考えられる。また、前述したプラクティス・フュージ ョン社と同様に、データベース化した情報の利用・販売が可能となれば、利用料金単価の 更なる抑制を実現できる可能性が高まる。 ■まとめ■ このように、EHR サービスに二面市場の手法を適用すると、現在抱えている技術上、コ スト上の普及障害を克服し、規模の経済性とネットワーク効果が機能することで、ヘルス ケアサービスの利用を制限せずに医療費の抑制が実現できる可能性がみえた。 EHR はこれまで(情報)システム、つまりプロダクトとして分類・表記されることが常 識であり、ここで記したような EHR サービスとして分類・表記されることはあまりなかっ た。つまり ICT 型のヘルスケアにおいて EHR はまさにプロダクトであって、サービスと しての視点が大きく欠落していたということを本課題レポートの作成過程で再確認するこ とができた。また、EHR クラウドでは、そのサービスプロバイダーはヘルスケアソフトウ ェアベンダーに限らず、異業種からの参入者となる可能性も十分に考えられるので、ソフ トウェアベンダーは早急に EHR クラウドへの対応を決断する必要性に迫られるだろう。 ―以上 3