1. 【事例】 69歳女性
2012年1月腹部膨満を主訴に前医(大学病院)を受診し、卵巣癌
(pT3cN1M1)と診断。子宮全摘+両側付属器切除+大網切除が施行さ
れた。術後化学療法も行われたが効果を認めず、癌性腹膜炎・腸閉塞
を発症した。自覚症状の緩和目的に塩酸モルヒネおよびオクトレオチド
持続皮下注射が開始され、本人・家族が在宅医療を希望したため同年
11月5日退院となった。同日より当院訪問診療が開始となった。
【Liverpool Care Pathway】
以下の3つのセクションにおいてケアの目標を「達成:Achievement」か「未達成:Variance」で評価する。
「未達成:Variance」の項目については、原因を分析し対処法を用いて介入する。
セクション1(初期アセスメント):開始時の患者の身体および精神症状, 看取りに向けて不必要な処方や治療・
検査・介入を見直すための目標を評価する。
セクション2(継続アセスメント):適切なケアが提供されているかを一定間隔で継続評価する。(患者の身体面、
精神面/病状認識、宗教/スピリチュアルな支援の要望、 家族ケアなど)
セクション3(死亡診断) :患者の死亡後の手続き、遺族ケアに関する目標を評価する。
青木拓也
日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター、東京ほくと医療生活協同組合 北足立生協診療所
Liverpool Care Pathway (LCP) は看取りの時期にある患者・家族に、適切なケアを提供するためのクリニカルパスである。LCPは多くの人々が急性期病院で死を迎えている状況
を鑑み、 ホスピスでの看取りのケアを急性期病院や非悪性疾患に普及させるため、 英国で開発された経緯がある。現在LCPは日本語版も開発されており、在宅バージョンも存
在する。今回LCP在宅バージョンを活用した結果、卵巣癌患者の在宅緩和ケアに有用であった事例を経験したため報告する。
NEXT STEP
LCPとは別個に、精神的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアル・ペインに対するケアは、
患者各々の個別性をふまえた上で補強していく必要がある。
参考文献
1) Care of the Dying Pathway (LCP) (日本語版) 在宅バージョン
2) Kaori Ichihara et al . The significance and possibility of introduction of a Japanese language version of the Liverpool
Care Pathway for the Dying Patient. Palliative Care Research 2012 ; 7(1) : 149-162.
考察
LCPを活用することによって緩和ケアの標準化が図られ、必要なケアがもれなく
実施されることが期待される。本事例においても刻々と症状が変化する終末期患
者とその家族に対し、必要とされる評価とアセスメントを実施する上で有用であっ
た。ただし緩和ケアは患者・家族の個別性が大きく影響する側面も持つため、パ
スにのみ依存したケアが必ずしも良いアウトカムを生むとは限らない。
《LCPによる身体的苦痛の評価・対処》
《LCPによる精神的苦痛・スピリチュアル・ペインの評価・対処》
在
宅
看
取
り
◇
死
亡
診
断
◇
建具店経営
主介護者
LCPの使用開始基準
予後が数日または一週間程度
かつ以下のうち2項目以上に該当
□患者が終日臥床状態である
□半昏睡/意識低下が認められる
□経口摂取がほとんどできない
□錠剤の内服が困難である