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Internetトラフィックエンジニアリングの現実
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Internetトラフィックエンジニアリングの現実
1.
© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. 2017年8月27日 鍋島公章 株式会社Jストリーム Internetトラフィック エンジニアリングの現実 July Tech Festa 2017@産業技術大学院大学
2.
2© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. はじめに 本資料の目的 トラフィックエンジニアリングの説明 大規模配信側視点 BGPではなくCDN マネージャ視点 技術詳細ではなく、社会的背景、技術概要、効果
3.
3© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. エンジニアリング サイエンスとエンジニアリング サイエンス エンジニアリング 目的 真理の探究 人類の幸福 アウトプット 論文 ビジネス 大学 理学部 工学部 キャッチフレーズ It’s beautiful (体系・数式の美しさ) It works (動いてなんぼ) イメージ 洗練 泥臭さ
4.
4© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. Internetトラフィックエンジニアリング 速度制御 ・シェーピング ・ペーシング 透過型プロキシー ・コンテンツ変換 複製(網側) ・TCP Proxy 経路制御 ・BGP CDN ・リクエストルーティング ・コンテンツ複製(サーバ側) 広義:IPネットワーク運用における パフォーマンス評価と最適化 狭義:(大量の)Internetトラフィックを 上手くコントロール(経路制御)すること 優先処理 ・VoLTE グローバルDC ・エニキャスト
5.
5© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. Internetトラフィックエンジニアリング 関連 閉域網(VPN):MPLS TE 交通(土木工学):交通制御 (Traffic Engineering) RFC 2702 Requirements for Traffic Engineering Over MPLS RFC 3346 Applicability Statement for Traffic Engineering with MPLS
6.
6© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. Internetトラフィック管理の難しさ Internet ネットワークを相互接続させたネッ トワーク(分散協調ネットワーク) ピアリング、トランジット Internetトラフィック 複数の事業者・ネットワークを通過 配信、DC、IX、トランジット、ISP トラフィック取引 トラフィック=お金
7.
7© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. ネットワークの中立性問題(コスト負担問題) 誰がInternetのコストを負担するか? ユーザ(ISP)とサーバ(OTT)のパワーゲーム(費用の押し付け合い) による全体最適化 パワーゲーム=ユーザを人質としたチキンゲーム 例:OTTとISP間の回線容量が足りない OTT→ISP:このままだとISPユーザ減るよ! ISP→OTT:このままだとOTTユーザ減るよ! Internet 配信費用ネット利用料
8.
8© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. 米国事例 2010~2014年(自社CDN以前) 巨人2社 VoD:Netflix (2014末:約4,000万加入(2016末約5,100万加入) ) ブロードバンド接続:Comcat(2014末約2,200万加入(2016末約2,400万加入)) 両社間の接続 対等(無料ピアリング) Netflixトラフィック増加とともに接続性が悪化(2013年10月ごろ) Comcastがピアリングの有料化をNetflixに要求 Netflixが配信料をComcastに支払うことで合意(2014年2月)
9.
9© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. コスト負担問題 現状とトレンド 国内固定網:だいたいバランス? 消費者ISP市場規模:数千億円※1 配信市場規模:数千億円※2 国内モバイル網:ユーザがInternetを維持 データ通信市場規模:数兆円 配信市場規模:数千億円 ゼロレーティング モバイルネット利用料を配信側が負担 Internet 配信費用ネット利用料 ※1:足回り(光ファイバ)含めると2兆円弱 ※2:配信市場規模:DC等回線+CDN (CDN単体市場は数百億程度)
10.
10© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. トランジット トランジット( ):Internet全体への接続性を購入 国際(Tire1)ISP 日本(大手) 海外 ISP 国際(アジア等) 日本(地方)
11.
11© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. ピアリング ピアリング( ):ISP間の相互トラフィック交換 プライベート・ピア (直接接続) パブリック・ピア (IX経由) ISP ISP ISP ISP IX 費用折半 ISPDC ペイド (Paid) IX ISPDC トラフィックはIX経由 費用は直接支払 主にDCとISP間
12.
12© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. トラフィック取引(マネーフロー) 概要 国際(Tire1) 国際(アジア等) 国内(全国) 国内(地方) IX ユーザのみ DCのみユーザ+DC ローカルISP・DC ピアリング トランジット グローバルDC (Google等)
13.
13© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. グローバルDC 特徴 自社だけで全世界をカバー だれとでも無料ピアリング(トランジット販売無し) 技術 エニキャスト:網内に同一IPサーバを複数配置 コールドポテト:できるだけユーザに近い所からトラフィックを出す ISP ISP 8.8.8.8 8.8.8.8 ISP コールドポテト ホットポテト
14.
14© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. インタラクティブ通信のエンジニアリング ローバルDC:コールドポテト 最大限、グローバルDCの国際ネットワークを使う 品質管理が容易(一般に高品質) ホップ(中継ルータ)数が減る(レイテンシ向上) CDN:CDNサーバ間の特殊処理 CDN専用バックボーン 専用(わがまま:公平性無視)プロトコル オリジンサーバCDNサーバ CDNサーバ TCP TCP 特殊プロトコル CDN専用バックボーン
15.
15© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. BGP BGP基本 1、それぞれのネットワークが経路情報(+ポリシー)を外部に広報 受け取りたい:経路広報 受け取りたくない:PATHプリペンド(ダミーパス追加) 2、それぞれは(1が正しいと信じて)経路テーブルを作成 経路情報 経路情報 経路情報 経路情報 経路情報 経路情報 経路情報 経路情報 経路 テーブル 経路 テーブル 経路 テーブル 経路 テーブル
16.
16© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. BGPの特徴 BGP 受信トラフィック Internet全体に対しある程度のコントロールが可能 ポリシーは伝播される 受信ポリシーの広報 分散協調システムにおける「ある1つのネットワークの希望する経路」 送信側がそのポリシーを遵守しない場合もある 送信トラフィック Internet全体に対するコントロールはできない ポリシーの伝播なし 送信ポリシーは自ネットワークの出口制御まで、その先の制御は、その先のネッ トワークにお願い
17.
17© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. 配信事業者の視点 BGPトラフィックエンジニアリング できること 出来るだけ多くのISPとピアリング(一般なコスト:トランジット>ピアリング) (配信事業者に)安いトランジットISPを上手く使う 送信トラフィックの制御は難しい まだまだ頑張りたい 配信コストの9割以上を占める回線費用を圧縮 配信コストの内訳 サーバ費用:回線・ルータ費用=1:10~ CDN技術の積極活用 アグレッシブな送信制御
18.
18© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. CDN基本 特徴 地理分散された多数の配信サーバ リクエストナビゲーション(GSLB、GTM) トラフィックエンジニアリング ユーザの近くにサーバ配置 回線を出来るだけ使わない 配信の柔軟性 いろいろな場所かから いろいろなパターンで配信
19.
19© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. CDN運用 運用テクニック※ Tire1 ISPからの配信 ISP無償コロケーション 配信拠点のオークション調達 海外からの配信 活用テクニック 巨大キャリアのCDN活用 ※注意点 一般論であり、現在は通用しないテクニックも含む
20.
20© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. CDN運用:運用テクニック Tire1 ISPに配信サーバを(格安で)置く Tire 1 ISPは、そのトラフィックを国際トランジットとして販売 Tire 1 (国際)ISP 日本国内 ローカルISP 海外
21.
21© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. CDN運用:運用テクニック ISP無償コロケーション ローカルISPに無償でサーバを置いてもらう ローカルISPにとっては上位ISPへの回線負担が減る 無償で置かせたサーバから近傍のISPに配信する Tire 1 (国際)ISP 日本国内 ローカルISP
22.
22© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. CDN運用:運用テクニック 配信拠点のオークション調達 CDNでは配信拠点の移設が容易 CDN=安価で使える網構成を追い続けるための技術 100円/Mbps 200円/Mbps 300円/Mbps (オープン) 入札
23.
23© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. 海外 CDN運用:運用テクニック 海外から配信する 配信費用:1/10程度 動画:数Mbps程度なら問題なし(バッファリング) マルチCDN:パフォーマンスが落ちたら国内から配信 バッチ系ダウンロード:非インタラクティブ Tire 1 (国際)ISP 日本国内
24.
24© J-Stream Inc.
All Rights Reserved. CDN活用:巨大キャリアのCDNコントロール 国内ISP CDNサーバは、国内ISPではなく、国際ISPに置かせる 国際ISP ①CDNサーバから配信料を徴収 ②CDNが配信したトラフィックを他のISPにトランジットとして販売 巨大キャリア ③そのCDNの有力代理店 国際ISP日本国内 国内ISP ISPs ISPs 巨大キャリア ・国内ISP(AS)と国際ISP(AS)を持つ通信キャリア 一粒で3度美味しい
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All Rights Reserved. CDN利用方法 OTT事業者のCDN利用形態 単独CDNから、マルチCDN、自社CDNへの移行が進む 出典:OTT Video Services (2017) http://www.streamingmedia.com/Research/7064-OTT-VIDEO-SERVICES-INNOVATION- OPPORTUNITY-MATURATION--TECHNOLOGY-TRENDS-IN-OTT-DELIVERY.htm 利用形態 OTT事業者数 単独(汎用)CDN 30% マルチ(汎用)CDN 48% 自社CDN 22%
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All Rights Reserved. マルチCDN 複数のCDNを使ったトラフィックエンジニアリング ユースケース 概要 ラウンドロビン 一定比率で複数のCDNを利用 国別切替 国別に使用するCDNを選択 ベストパフォーマンス 地域別、時間別で最速のCDNを利用 バックアップ プライマリCDNがダウンした時にバックアップCDNを利用 オーバーフロー プライマリCDNの利用量が一定以上になった時、セカンダ リCDNのみを利用 バースト対応 (ハイブリッドCDN) オンプレミス設備or自社CDNの帯域を使い切った時、汎 用CDNを追加利用 最小コスト 一定条件(最低速度)の元で最小コストのCDNを利用
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All Rights Reserved. 自社専用CDNの普及(北米、2016年下期) ハイパージャイアントは自社専用CDNを構築、運用 固定網: 56.94% (マルチCDN利用も含むと61.74%) モバイル網: 24.59% (マルチCDN利用も含むと41.58%) 背景 配信トラフィック 自社トラフィック > 汎用CDN 固定:56.94% モバイル:24.59% Netflix 35.15 % Youtube 20.87 % Youtube 17.53 % Facebook 13.97 % Amazon Video 4.26 % HTTP - Other 9.36 % HTTP - Other 4.19 % SSL - Other 6.85 % iTunes 2.91 % Instagram 6.66 % Hulu 2.68 % Snapchat 5.17 % SSL - Other 2.53 % Netflix 3.72 % Xbox One 2.18 % iTunes 3.02 % Facebook 1.89 % Google Cloud 2.87 % BitTorrent 1.73 % MPEG - Other 2.37 % サービス別トラフィック出典:Sandvine Global Internet Phenomena https://www.sandvine.com/trends/global-internet-phenomena/
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All Rights Reserved. 自社専用CDN 2010年ごろまで ハイパージャイアントも汎用CDNサービス(Akamai等)を使用 汎用CDNがInternetを支配(半分程度のトラフィックを配信) 2017年現在 Internetのビデオ化が顕著(トラフィックの7割以上はビデオ) 一部OTTがビデオマーケットを寡占 有料VoD:Netflix 無料VoD:Youtube 自社専用CDNへ切り替え 自社専用CDNがInternetを支配(半分以上のトラフィックを配信)
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All Rights Reserved. 自社専用CDN背景 背景・メリット・デメリット 大項目 補足 背景 CDNサーバの低廉化 ・オープンソースHTTPサーバソフトウェア の成熟(Cacheモード) 動画のHTTP化 ・オープンソースHTTPサーバが利用可能 メリット 柔軟・詳細・シンプルな 運用 ・共用運用の煩雑さ無し ・設定コンソール不要 ・コンフィグ直設定による詳細設定 ・消費者行動分析による複製管理 デメリット 規模が必要
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All Rights Reserved. 複製管理のトレンド CDNトレンド:単純配信から全体管理へ 背景 自社専用CDNの普及 汎用CDN 設備が余る⇒大幅ディスカウント(Akamaiでもメディア配信は減収減益) 配信のみでは儲からない⇒サービス全体の受託を目指す 垂直統合(CDN+OVP(Online Video Platform)+顧客DB) 配信管理+コンテンツ管理+ユーザ管理 複製はハイブリッド(ミラー+キャッシュ)利用 予測可能な人気コンテンツ:ミラー コンテンツの属性分析、ユーザ行動分析 その他(ロングテール):キャッシュ
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All Rights Reserved. CDNによるInternetの単純化 CDN配信サーバのスペック 配信キャパ:1台で数十Gbps SSDとメモリの塊←高価 配信サーバの配置 一定規模以上のISPのみ 中小ISPは切り捨て
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All Rights Reserved. ネットワーク構造の今後 CDN/OTTを中心とした、シンプルなネットワーク構造 CDNサーバを置いてもらえないISPは大手に吸収される
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All Rights Reserved. おわりに Internetトラフィックエンジニアリング パワーゲームの武器 Internetトラフィックエンジニアリングのトレンド BGP→汎用CDN→マルチCDN→自社CDN Internetの今後 メディア配信プラットフォームへ 双方向通信はおまけ パワーゲームによる単純化、集約 基本構造の変化 より高度な配信・複製管理 ユーザの行動分析(ビッグデータ解析)
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All Rights Reserved. 参考文献その他 講演サポートページ https://tech.jstream.jp/blog/meeting/jtf2017_te/
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