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EBMワークショップ徳島2014
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2014年11月15日 徳島大学図書館蔵本分館にて開催したワークショップで用いたスライドです。
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1.
EBMの基本 (公財)大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 総合診療科・救命救急センター・人材開発センター
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2.
今日の流れ • EBMとは •
現場から、課題を そして、それを整理する • チェックポイントとバイアスリスク • さらに進んだポイント QUADAS • 情報を見極める目 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 2
3.
あなたのEBMのイメージを • EBMを一言で説明するとどんなものだと感じ ていますか • EBMの実践において重要視されるもの •
EBMの実践において軽視されるもの 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 3
4.
治療・予防・指導の目的 • 高血圧症 •
ぎっくり腰 • 上半身のやけど • インフルエンザの予防注射 • 胃がん検診 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 4
5.
医療行為の目的とは • 治癒 –
病原菌の除去、腫瘍の完全な摘出など • 再発防止 – リュウマチ熱後の抗菌薬の投与、てんかんへの抗痙攣剤の投与など • 機能障害の対策 – リハビリ、形成手術など • 合併症の予防 – 無症状の高血圧への降圧剤の投与、心房細動患者への抗凝固療法など • 現在の症状の改善 – ホルモン療法、鎮痛剤の投与、抗不安薬の投与など • 疑念や心配を晴らす – 誤診を明らかにする、予後について話し合うなど • 苦痛のない尊厳のある死を迎える – 診断的処置をやめ痛みの除去に重点を変える、患者の自尊心を尊重するなど 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 5
6.
疾患の転帰 6つのD 転帰 ポイント Death: 死亡
早すぎる死は、通常好ましくない Disease: 疾患・合併症 その疾患の症状、身体徴候、検査の異常値、さら にその疾患に伴う合併症の発生など Discomfort: 不快・苦しみ 痛み、吐き気、呼吸困難、倦怠感、かゆみ、耳鳴 り、めまいなどの症状 Disability: 機能障害 家庭生活や仕事、レクリエーションなどでの活動 制限、能力制限 Dissatisfaction: 不満 悲しみや怒りなど、疾患やそのケアに対する感情 的反応 Destitution: 貧困 疾患のケアに対する直接的出費や間接的経費、 さらに疾患による収入減などによる経済的困難・ 困窮 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 6
7.
EBMの定義 • 最も妥当な研究の根拠と、臨床経験、患者の 価値観、の統合である – David
L Sacke8, Evidence-‐based Medicine 1997 • 現在では、医療資源が加えられ、4つの要素 の統合であるとされている 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 7
8.
EBMの4要素 2014/11/15 • 現場で利用可能な 人材・機器・資金 • 最も妥当で、現場・ 状況に当てはまり、 結果が明白なもの • 患者・家族の価値観 • 社会の価値観・価値 基準・ルール • 医療チームの経験、 技術、腕前 経験 価値 観 資源 根拠 徳島 EBMワークショップ 8
9.
Evidence Gapについて 1990年代は、この克服の時代だった 心筋梗塞の急性期治療
血栓溶解剤と予防的キシロカイン
10.
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11.
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心筋梗塞の予防的リドカイン投与 2014/11/15 Antman JAMA 1992 徳島 EBMワークショップ 11
12.
治療だけではない・・・
13.
熱性けいれんに続く非熱性けいれんの危険率 (Ellenberg, JHら JAMA
1980; 247: 1337) 非熱性けいれんの発生率 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 13
14.
熱性けいれんに続く非熱性けいれんの危険率 (Ellenberg, JHら JAMA
1980; 247: 1337) • 医療施設での研究では、その医療施設に搬 送された時点でバイアスが発生する。 • けいれんが長く続いたり、意識障害などの 他の障害がある、あるいは再発を繰り返す 症例などの方がより大きな施設に紹介され やすい。 • もっと大事なこと:熱性痙攣がなく、てん かんになった人もたくさんいる。 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 14
15.
拡張型心筋症の予後はどの程度か (Sugrue DDら Ann
Intern Med 1992; 117: 117) population based studies� referred patients� 予測生存曲線� pop. based� referred� 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 15
16.
拡張型心筋症の予後はどの程度か (Sugrue DDら Ann
Intern Med 1992; 117: 117) • Mayo Clinicに紹介される時点でバイアスが生じ る。 – 治療に抵抗性であったり、他の合併症があった り、すると紹介されやすい。 • 以前にはこのreferred patientのデータをもとに、 ある治療を行なうとこの死亡率と比較して有意に 死亡率が低いとして治療の有効性を論じた研究が なされていた。 – 過去の報告の予後を対照として治療の有効性を 論じる場合には、なるべくpopulation basedの 信頼度の高い論文を対照にする。 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 16
17.
EBMの意義 • Evidence Gapの縮小
– 情報データベースや検索方法の整備・改善 – 研究の妥当性・バイアスリスクの評価 • 研究の妥当性の改善 – 根拠としての評価手法・基準の明示化 • 患者価値観の導入 – 患者・住民のガイドライン作成への参加 • 医療判断プロセスの共有 – Informed consentからShared decision makingへ 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 17
18.
EBMの手順 ステップ ステップに先立って:学習者が「プロフェッショナリズム」を身につけている。現場での判断をよりよ くしたいという意志・使命感がステップを実践する原動力となる。 ステップ1 問題の定式化:具体的な症例や状況から取り組むべき課題を抽出する作業を経験さ せる。課題はpatient/population, intervention/exposure, (comparison),
outcomeの要素を意識し、 解決可能になるよう「具体化」に焦点を当てる。 ステップ2 情報検索:課題から情報を探しださせる。課題にあった情報源が選択できる か、適切か検索が行えるか、得られた情報のリストから妥当性や適用性を考慮して適切 なものを選択できるかがポイントになる。 ステップ3 情報の吟味:情報に対して一定の手順に従って妥当性・結果の意味・適用性 について吟味を行いその情報のあいまいさも含めて評価する。 ステップ4 判断の適用・実施:課題に対して判断を下し、必要な方策を考える。判断に あたっては情報だけではなく、常識や様々な事情、患者や家族の願いや想いを含めるこ とを勧める。 ステップ5 判断の評価:一連の作業を振り返る。個々の判断の結果を重視すると治療本 来の有効性を見誤る危険性があるので、手順の妥当性に焦点を絞り、問題点や改善策を 整理する。 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 18
19.
EBMの手順 課題の定式化
情報検索 情報の批判的吟味 その結果の適用・行動 その結果の評価・学習 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 19
20.
疑問を課題にかえる 学問に関する疑問:探求心に基づくもの 電気ウナギはどのようにして電気を発する か
ニュートリノに質量はあるか 行動に関する疑問:判断・解決が求めら れるもの 今日授業に行くべきか この手術を受けるべきか 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 20
21.
では、step 1 を •
あなたは、ある病院の医師である。あるとき、友人から相談を受けた。そ の友人の知り合いに35才の女性がいて、最近話題になっているダウン症 のスクリーニングテストを受けようかどうしようか悩んでいるらしい。 • 少し詳しく話を聞くと、その女性は現在妊娠12週で経過は順調なのだが、 周囲からダウン症のスクリーニングテストの話を耳にし、少し調べてみる と最近従来のテストに比べてかなり精度の高い胎児のDNAをチェックす る手法があることを知って迷ってきたらしい。 • 「99%の精度で判定ができる、って書いてあるらしいのよ。で、産科の先 生に相談したら、希望があればその検査を行っている医療機関を紹介す るけど、自分としてはお勧めしない、て、答えられて見捨てられたような気 分になったって落ち込んでいてね・・・ 別に、検査が陽性だったらどうしよ うと思ってるわけじゃないらしいのよ。今回が初めての妊娠だし、ただ母 親が事前に自分の子供のことを知りたいっていう気持ちはわかるじゃな い。」 • あなたは、その産科の先生としっかり相談することが一番大事だと伝えた 上で、35才の母親であればある程度のリスク上昇はあるけど、検査で行 動を変えないのならあまり検査を受ける意味はないな、と感じていた。 ちょっと調べてみて、もし何かわかったら連絡するよと話した。 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 21
22.
22 課題にまとめるポイント 課題の定式化 PICO
PECO P: PaRent/PopulaRon I: IntervenRon (E: Exposure) C: Comparison/Control O: Outcome それぞれ具体的にまとめる
23.
23 課題の定式化の利点 何を解決すべきか明確になる 「何とか良くしたいのよ」「そうね」
これでは何のことか分からない 「そろそろ○○さんにリハビリを勧めた 方が職場復帰が早くなると思うのだけ ど」「そうね。どんなリハビリから始め ようかしら」 こっちの方がかなりよい
24.
Step 2、3へ • 情報の検索と吟味
• しかし、現在では「吟味のすんだ情報源」が準 備され、それを探すことが容易になっている • でも、今日は用意された論文を吟味してみま しょう • ポイント – チェックシート – バイアスリスク 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 24
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チェックポイントの基本構造 • 研究結果は信じられるか – 研究の妥当性・バイアスリスクを評価
• 研究結果は何か – 研究結果の「定量的指標」にこだわる 「統計学 的な信頼度」にこだわる • それを目の前の患者に当てはめてよいか – 現場への適用の妥当性 – 患者・社会の価値観の組入 – 真の効果、コストや手間も考慮する 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 25
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なぜチェックポイント? • 従来の評価法 – 研究デザインが適切であればOK
• これからの評価法 – 研究デザインはふるい落とし基準の一つ – その上で、バイアスリスク(Risk of bias)を評価 – さらに、一定の質を満たした研究について、アウト カムごとに結果を統合する メタ分析 – 治療効果というプラス部分と、リスク・負担・費用・ 苦痛などのマイナス部分とのバランスを意識する
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チェックシート 治療 • ランダム割付か •
研究対象者の全てが評価されているか • 最初の割付通りに評価されているか • 評価は、割付内容と目隠しされているか • 最初の段階で差はないか • 治療内容に差はないか • ・・・・ 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 27
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チェックシート 診断・検査 • 研究の対象となった検査結果が、診断を確定す る検査と別々に目隠しされて比較されているか •
実際にその研究の対象となる患者群で検討され ているか • 研究対象の検査結果にかかわらず、確定検査 が行われているか • 検査方法は実行可能なように明確に記載されて いるか • ・・・・・ 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 28
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もっと一般的なチェックポイント QUADAS 2 QUADAS
http://www.bris.ac.uk/quadas/ QUADAS 2: 4
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では実際に、日常の情報から • 新聞報道 •
ニュースリリース 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 30
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今日のシナリオと論文 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 31 •
あなたは、ある病院の医師である。あるとき、友人から相談を受けた。そ の友人の知り合いに35才の女性がいて、最近話題になっているダウン症 のスクリーニングテストを受けようかどうしようか悩んでいるらしい。 • 少し詳しく話を聞くと、その女性は現在妊娠12週で経過は順調なのだが、 周囲からダウン症のスクリーニングテストの話を耳にし、少し調べてみる と最近従来のテストに比べてかなり精度の高い胎児のDNAをチェックす る手法があることを知って迷ってきたらしい。 • 「99%の精度で判定ができる、って書いてあるらしいのよ。で、産科の先 生に相談したら、希望があればその検査を行っている医療機関を紹介す るけど、自分としてはお勧めしない、て、答えられて見捨てられたような気 分になったって落ち込んでいてね・・・ 別に、検査が陽性だったらどうしよ うと思ってるわけじゃないらしいのよ。今回が初めての妊娠だし、ただ母 親が事前に自分の子供のことを知りたいっていう気持ちはわかるじゃな い。」 • あなたは、その産科の先生としっかり相談することが一番大事だと伝えた 上で、35才の母親であればある程度のリスク上昇はあるけど、検査で行 動を変えないのならあまり検査を受ける意味はないな、と感じていた。 ちょっと調べてみて、もし何かわかったら連絡するよと話した。
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今日のシナリオと論文 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 32
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今日の流れ • EBMとは –
根拠+経験+価値観+資源 • 現場から、課題を そして、それを整理する – PICO 具体化 患者中心のアウトカム設定 • チェックポイントとバイアスリスク – しっかりと見極めて、評価する • さらに進んだポイント QUADAS – 国際的な取り組みによる評価手法の開発 • 情報を見極める目 – シナリオがまずある その上で、選択の段階から情報の 妥当性を意識する 2014/11/15 徳島 EBMワークショップ 33