超高齢社会における地域課題の複雑さと「ネットワークが創発する知能」研究への期待 ―不動産・介護・医療分野を例として―

超⾼高齢社会における地域課題の
複雑さと「ネットワークが創発
する知能」研究への期待
―不不動産・介護・医療療分野を例例
として―
株式会社LIFULL 　リッテルラボラトリー
主席研究員　清⽥田　陽司

© LIFULL Co.,Ltd. 　本書の無断転載、複製を固く禁じます。 2
社名・ブランド名の変更更 (2017年年4⽉月1⽇日）

総掲載物件数No.1の

不動産・住宅情報サイト
暮らしに密着したさまざまな

情報サービス (引越,
保険,
介護,

子育て,
音楽ライブ,
スポーツ選手支援
etc.)
世界約50カ国向けに展開する

住宅・中古車・求職などの
アグリゲーションサイト

(本社: スペインバルセロナ)
株式会社LIFULLのサービス群

⾃自⼰己紹介
清⽥田陽司
株式会社LIFULL 　リッテルラボラトリー
福岡県⽣生まれ→⼤大学(院)＠京都→ボスの異異動で東京へ
関⼼心分野: ⾃自然⾔言語処理理応⽤用 → 検索索・推薦 → 情報リテラ
シー (図書館) → ⽣生活領領域 (不不動産、介護 etc.)
経歴: ⼤大学教員 → 兼業で起業 → そちらが本業に → 買収
対外的活動
•  ⼈人⼯工知能学会編集委員
•  情報処理理学会データベースシステム研究会幹事
•  WebDB Forum 産学連携担当幹事
•  IEEE DSAA 2017 Sponsorship co-‐‑‒chair
•  JST「情報管理理」誌外部編集委員 etc.

リッテルラボラトリー
•  ルーツは2007年年設⽴立立の東
京⼤大学発スタートアップ
(株)リッテル
•  住まいや暮らしに関わる
最先端技術のR&D
•  レコメンデーション
•  AI関連技術（ディー
プラーニングなど）
•  ユーザーインタ
フェース (UX)
•  VR / AR / MR
新感覚お部屋探しアプリ
HOME Sヘヤサク！
部屋作りシミュレーション
GRID VRICK

Agenda
•  「不不動産」の研究課題
•  「介護」の研究課題
•  「医療療」と「不不動産」「介護」の関連
•  「都市」を理理解するヒント
•  「ネットワークが創発する知能」への期待

「不不動産」の研究課題

2011年年時点での研究開発計画
住まい
地域
グルメ
ファッション
ビューティ
アミューズメ
ント
金融
医療
教育
分野別DB
ユー
ザー
検索
最適な情報
レコメンデーションエンジン
ユーザーＤＢ（客観情報、行動履歴、嗜好性）

住まい探しにおけるレコメンデーションの課題
あなたにおすすめのお部
屋はこれ！
まったく同じ
部屋は一つしか
ない
どれだけ探せば満
足できる部屋が見つ
かるの？
?

不不動産物件レコメンデーションの問題
⼀一般的なレコメンデーションは有効ではない
•  不不動産物件を推薦する際の課題 [三條 2015]
–  まったく同じ物件は⼆二つとして存在しない
–  基本的に履履歴データなし
–  個⼈人属性⼊入⼒力力の動機づけが困難
•  サイトの訪問⽬目的が明確でないユーザや検討期間
が⻑⾧長い商品には向かない [⼤大知 2013]

不不動産情報サイトで不不動産会社を選ぶ際のポイントは？
(RSC 2015年年調査)
物件の写真の点数が多い
物件の写真の見栄えが良い
71.9％
32.5％

どちらの物件情報がユーザーにとってより嬉しい？
A社
B社

その画像は本当に「キッチン」ですか？

deep learning (CNN) による不不整合画像検出の取り組み

LIFULL HOMEʼ’Sデータセット (国⽴立立情報学研究所)
国内の賃貸不不動産物件データ
約530万件
•  所在地 (郵便便番号、最寄り駅など)
•  賃料料、⾯面積、築年年数、部屋タイプ etc.
•  建物構造 (⽊木造、鉄⾻骨、鉄筋コンクリート
etc.)
•  各種こだわり条件 (ペット可、楽器、カウ
ンターキッチン、バス・トイレ別 etc.)
物件画像約8300万点
間取り図約510万点
重厚な感じの

エントランス
日当たりの

良いリビング
主な研究分野:

• 画像処理 (ディープラーニング)

• 自然言語処理

• Web・ソーシャルメディア解析

• 経済学
(価格推定)

• 建築学

• 都市学

LIFULL HOMEʼ’Sデータセットの利利⽤用状況

Washington Univ. in St. Louis 古川泰隆先⽣生の
グループによる研究
h.ps://arxiv.org/pdf/1612.01225.pdf

JSAI 2017 オーガナイズドセッション「不不動産とAI」

価格推定
センサー

(IoT)
街歩き＋

クラウドソーシング
住まい探し

現在遂⾏行行中の共同研究
›  Twitterデータからの「住まい探しコーパス」の構築
•  電通⼤大栗栗原研究室
•  クラウドソーシングを利利⽤用し、ツイートに住まい
探しに関する⾏行行動をタグ付け
›  街の雰囲気情報のデータ化 (100ninmapコラボ)
•  NAIST 荒牧先⽣生/京⼤大北北先⽣生/諏訪東京理理科⼤大宮
部先⽣生/京産⼤大河合先⽣生
›  介護分野をターゲットとした共同研究
•  九州⼯工業⼤大井上研究室
不不動産を中⼼心に、関連する分野にも

平成28年（2016年）版高齢社会白書（全体版）図表1-1-13より抜粋

⼈人⼝口ピラミッドの変化
h.p://www.mof.go.jp/budget/ﬁscal_condiKon/related_data/sy014/sy014f.htm

空き家率率率の推移と将来予測
（株）野村総合研究所　「2018年、2023年、2028年および2033年における日本の総住宅数・空
き家数・空き家率（総住宅数に占める空き家の割合）の予測」

h.ps://www.nri.com/jp/news/2015/150622_1.aspx

「介護」の研究課題

介護施設探しのステークホルダー
相談
アドバイス

施設紹介
入居者紹介

施設がなかなか決まらない⼤大きな要因
相談
アドバイス

施設紹介
入居者紹介
必要な医療

サービス
予算の問題
家族内の

意見の対立

介護分野のデータ分析からの知⾒見見
•  数⼗十年年前からの⼈人間関係が⼤大きく影響
–  しかし、課題に直⾯面するまでは「⾃自分⾃自⾝身のリアルな問題であ
る」という実感が薄い
•  不不動産、医療療、保険などと密接な関係
–  しかし、別々の業界であるためほとんど連携できていない

クラウドソーシングによる「仮想的な⾃自分の将来像」推定の可能性
›  「課題に直⾯面する将来の⾃自分」と、「現時点での
⾃自分の選択」をどうすれば結びつけられるか？
•  現時点で課題に直⾯面している⼈人々がもつ知⾒見見を
活かす
•  過去数⼗十年年の⾃自らの⾏行行動選択と、現時点での状況の
相関関係を⽤用いる
›  「どのように⾏行行動を変えれば未来はどう変わるの
か」を⾒見見せることで、よりよい選択のサポートが
できるのではないか？

「医療療」と
「不不動産」「介護」の
関連

情報処理理学会連続セミナー2016
「スマートなヘルスケアとライフケア」

地域医療療を俯瞰する必要性
地域の実情に応じた課題を住⺠民も含めた幅広い関
係者で検討し、合意を形成していくためのデータ
が必要

データ
•  National Database (NDB)
–  電⼦子レセプトデータのアーカイブ
–  毎年年16億件あまりのデータが蓄積
–  厚⽣生労働省省保険局が管理理
•  DPCデータ
–  DPC=包括医療療費⽀支払い制度度（出来⾼高払いに代わる新しい医療療
費制度度）
–  患者ごとの個票データが、DPCを採⽤用する病院から提出
–  年年間1000万件程度度
•  医療療圏ごとの⼈人⼝口将来推計
•  医療療圏ごとの医療療職の年年齢分布

不動産
医療
介護
保険・金融
都市・地域

「都市」を理理解する
ヒント

LIFULL HOMEʼ’S総研によるレポート
「官能都市」(2015) 「寛容社会」(2017)

⽇日本の典型的な都市再開発

エベネザー・ハワード「⽥田園都市」(1898年年)
Ebenezer
Howard
-‐
To-‐morrow:
A
Peaceful
Path
to
Real
Reform,

London:
Swan
Sonnenschein
&
Co.,
Ltd.,
1898.
(public
domain)

ル・コルビュジエ「輝く都市」(1930年年)
h.p://www.archdaily.com/411878/ad-‐classics-‐ville-‐radieuse-‐le-‐corbusier

プルーイット・アイゴー（⽶米国ミズーリ州セントルイス）
1956年完成、1972年に爆破解体
h.ps://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Prui.-‐igoeUSGS02.jpg

「アメリカ⼤大都市の死と⽣生」(1961)
Jane
Jacobs
(1916
–
2006)

都市が多様性をもつための4条件
1.  混合⽤用途の必要性: 地区が、最低2つ以上の機
能を果たすこと
2.  ⼩小さな街区: 街区は短く、街路路や⾓角を曲がる機
会が多いこと
3.  古い建物の必要性: 古さや条件が異異なる各種の
建物が混在すること
4.  密集の必要性: ⼗十分な密度度で⼈人がいること

訳者の⼭山形浩⽣生⽒氏による批評
複雑系の創発、ハブや弱い紐紐帯の重要性に1961
年年の時点で到達していたことがすごい
cf. 複雑系の主要な概念念は1990年年代に成⽴立立
•  サンタフェ研究所を中⼼心とした複雑系の概念念確
⽴立立
•  ミルグラム: スモール・ワールド実験 (6次の隔
たり)
•  グラノヴェッター: 複雑ネットワークの理理論論 (弱
い紐紐帯の強み)

ボヘミアン＝ゲイ指数（クリエイティブ都市論論）
ボヘミアン指数
＝芸術に関わる⼈人々の
割合
ゲイ指数
=LGBTの⼈人々の割合
ボヘミアン＝ゲイ指数
の⾼高い都市圏は経済の
活性度度が⾼高い
（新しい経験への柔軟
さ、寛容度度、多様な⼈人
材）

「ネットワークが創発
する知能」への期待

「⼈人⽣生」のシミュレーション
•  少⼦子⾼高齢化の進⾏行行を前提とし、⾏行行動変容を引き
起こすことにつながるシミュレーション
•  居住地域の選択に役⽴立立つシミュレーション

「都市」「地域」のシミュレーション
•  少⼦子⾼高齢化の進⾏行行を前提とし、地域住⺠民も含め
たステークホルダーの合意形成に役⽴立立つシミュ
レーション
•  政策決定の指針となるシミュレーション
•  多様性（移⺠民の受け⼊入れ、LGBTへの寛容性な
ど）の価値の共有につながるシミュレーション

超高齢社会における地域課題の複雑さと「ネットワークが創発する知能」研究への期待 ―不動産・介護・医療分野を例として―

Recommended

Recommended

More Related Content

What's hot

What's hot (20)

Similar to 超高齢社会における地域課題の複雑さと「ネットワークが創発する知能」研究への期待 ―不動産・介護・医療分野を例として―

Similar to 超高齢社会における地域課題の複雑さと「ネットワークが創発する知能」研究への期待 ―不動産・介護・医療分野を例として― (20)

More from Yoji Kiyota

More from Yoji Kiyota (20)

超高齢社会における地域課題の複雑さと「ネットワークが創発する知能」研究への期待 ―不動産・介護・医療分野を例として―