20131130 ps大賞プレゼンスライド eラーニングによる「まなび場」の展開(抜粋)
- 12. S さん(中学生):数学
S さん(中学生):数学
27 点
前期中間( 6 月)
R さん(中学生):数学
R さん(中学生):数学
61 点
20 点
前期期末( 9 月)
前期中間( 6 月)
N 君(中学生):英語
N 君(中学生):英語
30 点
前期中間( 6 月)
59 点
前期期末( 9 月)
R 君(中学生):英語
R 君(中学生):英語
60 点
40 点
前期期末( 9 月)
前期中間( 6 月)
12
80 点
前期期末( 9 月)
© Yusuke Ohashi All Rights Reserved.
Editor's Notes
- NPO法人アスイクの大橋です。
仙台を中心に、困窮家庭の子どもの学習支援を行なっています。
今日は、私たちがすららネット、みやぎ生協と協働で行なっている活動について、プレゼンいたします。
- はじめに、Tさんのお話をします。
Tさんは、シングルマザーの母親と2人で暮らしています。
お母さんは、5年前に夫のDVが原因で離婚。2ヶ月ほどシェルターで暮らした後に、夫に見つからない仙台に引っ越してきました。
最初はスーパーの惣菜販売のパート、倉庫のパートを掛け持ちして貯金を取り崩しながら生活していましたが、体をこわし、そして心をこわし、
どうしようもなくなって生活保護を受けるようになりました。
うつ病で自殺念慮があり、Tさんは母親が心配で部活もやめて、学校が終わるとすぐ家に帰ります。友達と部活の話で盛り上がることも、放課後に遊びに行くこともありません。
夜も母親が家を飛び出していかないか不安で、Tさんも寝付けなくなり、次第に学校にも行ったり行かなくなったりという状態になりました。
そんな状態なので、学力は、小学校の基本的なレベルも十分ではありません。
何を聞いても、うなずいたり、首を振ったりするだけで、自分の将来なんて、考えたりする余裕がないように見えます。
ただ、「生きてる実感がしない」、とだけつぶやきました。
- いま、この日本で、6.3人に1人の子どもが貧困状態にあります。
全国で、305万人。
Tさんは、このうちの1人にすぎません。
さらに、貧困は次の世代に連鎖します。
生活保護を受けている家庭の約25%が、子どもの時代に生活保護を受けている。
これが、日本の現実なんです。
- 私たちは、震災後に避難所の中で学習サポートの活動をはじめた団体ですが、問題の本質が元から拡大していた貧困問題だと気づきました。
最初は、子どもに対して、ボランティアをマンツーマンでつけてサポートするというやり方でしたが、そのやり方では限界を感じるようになります。
- 繰り返しますが、子どもの貧困率は15.7%。
仙台市の中学生だけでも、3000人以上います。
極端な話、3,000人の子どもに、3,000人のボランティアを集め、それを維持していくことは不可能です。
また、ボランティアはもちろんプロではないので、子どもの学力を把握して、その子に合ったやり方でサポートするということも難しい。
さらに、困窮家庭の子どもは広い地域に存在しているので、どこに集めるか、という場所の問題もありました。
- そんな課題を抱えていたときに、人づての紹介で、私たちはeラーニングを開発しているすららネットさんに出会い、
Eラーニングすららを導入することになりました。
まず、この「すらら」がどのようなeラーニングなのか、湯野川社長からお話いただきます。
- これは、いま説明された「すらら」を使い、実験的に立ち上げた「まなび場」の写真です。
ご覧の通り、子どもたちはパソコンに向かって学習しますので、スタッフやボランティアの役割が、教えることから、子どもたちと
一緒に目標を考えたり、励ましたりするコーチングのような役割に変わりました。
- そこで、さらにみやぎ生協へ協働の話を持ちかけました。
- みやぎ生協は、県内に46もの店舗を持ち、各店舗には必ず集会室があります。
その集会室を、私たちとの協働事業として、子どもたちのまなび場に無料で使わせていただける提携を結びました。
これは私たちだけに一方的なメリットのある提携ではありません。
みやぎ生協でも、困窮者に対する家計相談、貸付事業をはじめています。
私たちの活動に参加する家庭の保護者に家計相談をすすめたり、逆に家計相談に来た家庭にまなび場を紹介するといった
シナジーも期待できる提携です。
そもそも、生協は相互扶助の組織ですので、私たちのような外部の組織と提携することによって、
困窮家庭の子どもをサポートできるようになることは、生協のミッションを効果的に実現することにも近づくのです。
(それは、協働によって、お互いのミッションが実現に近づくという点は、すららネットにとっても同様です)
- この協働によって、アスイクにとって、どのような成果が生まれているか。
まず、私たちが提供しているまなび場の数は、すらら導入前の6ヶ所から、わずか1年半で22か所まで増えました。
- まなび場に参加している子どもの数も、導入前の48人から、186人にまで飛躍的に増加。
まだまだ十分な数ではありませんが、より多くの子どもたちに、放課後のまなび場を提供できるようになっています。
- 場所や人数が増えただけでなく、基礎学力の向上効果も見え始めています。
これは一例ですが、学校のテストで20点台だった子どもが、60点台にまであがったというケースもあります。
学校のテストの結果だけが貧困の連鎖の原因ではありませんが、
高校に進学する、選択肢を広げるという意味では、大事なポイントだと思います。
- 実際に現場で起きているケースについても、ご紹介します。
Nさんは被災して、仙台市内の仮設住宅で生活しています。
シングルマザーの母親は、建設現場で日雇い労働をしていて、収入も不安定。生活も不規則です。
次第に、Nさんは学校に行かなくなりました。
そんなNさんに母親もついきつい言葉をぶつけてしまい、Nさんから暴力を振るわれることもあったそうです。
思いつめた母親は、2人で心中することも考えていました。
そんなときに、私たちの活動を知り、連絡をしてくださいました。
最初はしぶっていたNさんですが、eラーニングなら人に見られないし、楽しいからやってみたいと、
毎回欠かさず参加してくれています。
母親にも生活相談を行なっている組織につなぎ、少しずつ落ち着きを取り戻し始めています。
もし、このまなび場がなかったら、Nさん母娘は、衝動的な行動をしてしまっていたかもしれません。
社会とのつながりを再生することで、人の命を救う。私たちの活動には、そんな意義もあるのだと実感しています。
- 他の子どもたちからも、ポジティブなコメントが寄せられています。
「勉強する時間が増えた」
「学校の授業よりもわかりやすい」
嬉しいコメントですが、残念なことに、eランニングと書いてあるので、もうちょっと頑張らなければなりません(笑)。
- この協働モデルのインパクトは、アスイクの活動だけにとどまりません。
子どもの貧困問題に対する関心が高まっている中、全国で子どもたちの学習支援を行なう動きが広がっています。
しかし、私たちが直面したような同じ問題にぶつかる団体も多いというのも現状です。
ボランティアだけでは子どもの基礎学力を効果的に高められない。
そもそも、地域に大学生もいないので、ボランティアを集めにくい。
そういった問題を抱える全国のNPOなどに対して、私たちがつくりあげたeラーニングを活用した学習支援モデルを提供しはじめました。
被災地では既に10団体に提供。最近では、東京や福岡など、全国に広まってきています。
このモデル・ノウハウ移転事業をとおして、経済的な問題に関わらず、子どもたちが学びの機会と、人とのつながりをもてる社会づくりに貢献していきます。
そして、それはNPOだけではできないこと、企業だけでもできないことです。
双方の力を合わせることによって、はじめて実現できることだと思います。
最後に、